MPEG-1 【Moving Picture Experts Group phase 1】 ISO/IEC 11172
概要
MPEG-1(Moving Picture Experts Group phase 1)とは、動画・音声データの圧縮方式の国際的な標準規格の一つ。ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の合同作業部会であるMPEG委員会が策定した最初の規格で、1993年にISO/IEC 11172として標準化された。いわゆるアナログテレビ(SDTV)の1/4程度のサイズ(横352×縦240ピクセルまたは352×288ピクセル)の解像度を主な対象とし、VHSビデオテープ並の品質で圧縮・記録することができる。映像はプログレッシブ方式のみ対応し、インターレース映像には対応しない。
このサイズの動画と付随する音声を合わせて1.5Mbps(毎秒1.5メガビット)程度のデータ量に圧縮することができる。これはCDの初期の仕様における読み出し速度(1x/等速)と同じで、有力な想定用途の一つにCDによる動画の記録や頒布が含まれていた。
MPEG-1における動画の圧縮符号化方式「MPEG-1 Video」は、画像圧縮方式のJPEGなどで用いられる離散コサイン変換(DCT)やエントロピー符号化などに加え、直前の画面(フレーム)との違いを効率よく符号化するフレーム間予測、およびこれを高度化した「動き補償」と呼ばれる技術を採用している。
音声の圧縮方式は「MPEG-1 Audio」と呼ばれ、左右2チャンネルのステレオ音声に対応する。圧縮率などの特性の異なる「Layer 1」「Layer 2」「Layer 3」の3つの仕様が規定されている。数字が大きいほど圧縮効率が良く(処理は重くなる)、同音質なら最も圧縮率の高い「MPEG-1 Audio Layer 3」規格は単体で音声圧縮方式として広く普及し、「MP3」の略称でよく知られる。
MPEG-1はCDに1時間程度の動画を記録するVideo CD規格や、初期のデジタルカメラのムービー録画機能などに採用された。コンピュータ上のファイルとして保存する際の拡張子としては「.mpg」「.mpeg」「.m1v」などが使われるが、「.mpg」「.mpeg」は後に現れたMPEG-2やMPEG-4でも使われることがあり、MPEG-1ファイルであるとは限らない。