MPEG-4 【Moving Picture Experts Group phase 4】 ISO/IEC 14496

概要

MPEG-4(Moving Picture Experts Group phase 4)とは、動画・音声データの圧縮方式の国際的な標準規格の一つ。ISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)の合同作業部会であるMPEG委員会がMPEG-2に次いで策定した規格で、1999年にISO/IEC 14496として最初の仕様が発行された。

MPEG-1/2の主な用途として想定された蓄積型メディア、放送・通信などに加え、携帯端末や携帯データ通信の普及を見据え、低速な通信回線でも実用に耐える仕様として規格化が進められた。動画・音声データ圧縮符号化(正確には復号)方式の標準に加え、データを格納するためのファイルフォーマットや様々な映像関連技術の標準仕様を規定している。

圧縮符号化方式

MPEG-4における動画圧縮方式は二つあり、一つは当初規定された「ISO/IEC 14496-2」である。これは以前に標準化されたMPEG-1/2およびITU-TのH.263標準を参考に、離散コサイン変換DCT)やエントロピー符号化動き補償フレーム間予測などの技術を基盤に構成され、さらに人間の体や顔(表情)などを3Dグラフィックスで合成する技術など野心的な仕様も盛り込まれた。

もう一方は2007年に追加された「ISO/IEC 14496-10」、通称「MPEG-4 AVC」(Advanced Video Coding)である。ISO/IECITU-T国際電気通信連合・電気通信標準化セクタ)と共同で策定したため、ITU側では同じ規格を「H.264」として標準化している。現代では一般にMPEG-4形式という場合はこちらを指すことが多い。

ISO/IEC 14496-2が撮影された映像の圧縮に留まらず様々な映像生成・制御技術を取り込んで肥大化してしまい、そのほとんどが利用されなかった反省を踏まえ、AVCは一般的な動画の圧縮伸張に特化した仕様となっている。浮動小数点演算を整数演算で代替するなど処理方式を改良することにより、同じ画質でより高い圧縮率を得ることができる。

音声の圧縮方式「MPEG-4 Audio」では数十の形式を規定しており、情報の損失のないロスレス圧縮方式や楽器の演奏データを表現するMIDI形式などが利用できるようになった。最もよく使われる形式はMPEG-2 AACとほぼ同じMPEG-4 AAC形式だが、用途に応じてLC-AAC(Low Complexity AAC)やHE-AAC(High Efficient AAC)などの派生形式が追加された。

格納形式と用途

MPEG-4では米アップルApple)社のQuickTime技術を元に動画・音声を格納するための「MP4ファイル形式」を定めており、一般的には「.mp4」という拡張子が用いられる。ファイル形式は符号化方式とは分離されており、様々な形式のデータを格納できるため、MP4ファイルであっても動画や音声の圧縮方式がMPEG-4のものであるとは限らない。

MPEG-4は携帯電話の動画形式の標準である3GPP形式/3GPP2形式や、Blu-ray Discの動画記録形式の標準の一部、地上デジタル放送の移動体受像機向けの1セグメント放送ワンセグ放送)などに採用され、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、スマートフォンの動画撮影・録画機能の動画形式としてもよく利用されている。また、インターネット上のサービスコンテンツにおける標準的な動画形式として広く普及している。

(2023.8.5更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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