なりすまし 【スプーフィング】 spoofing / 成り済まし

概要

なりすまし(スプーフィング)とは、自分以外のある特定の人物のふりをして、その人に成り代わって活動すること。特に、その人しか得ることのできない情報や金品などを取得したり、その人にしか許可されていない行為を行うこと。

ITの分野では、ある人がコンピュータやネットワークを利用するために利用している識別・認証情報(アカウント名やパスワードなど)を不正に取得し、その人のふりをしてアクセスするなりすまし行為が問題となっている。不正に取得した認証情報で金融機関のオンラインサービスなどにアクセスされ、預金などを盗み取られるといった被害が起きている。

電子メールの差出人情報を偽装するなどして、ある特定の人物や組織からのメッセージであるかのように装い、騙された受信者に個人情報や秘密の情報を送信させるといった手口のなりすまし行為もある。この手口で騙し取った情報を使って本人になりすまし、金融機関に不正アクセスするといった二重のなりすましによる詐欺手法を「フィッシング」(phishing)などと呼ぶ。

また、サイバー攻撃などの手法の一つで、データの送信元アドレスなどを改ざん・偽装し、別のアドレスやコンピュータからのアクセスであるかのように装うことで、他の人の仕業に見せかけたり、追及されにくいようにすることもなりすましという。攻撃者が罪を無関係な第三者になすりつけ、司法当局が誤ってなりすまされた被害者を罰してしまう事件も発生している。

SNSなどでのなりすまし行為

SNSなどのネットサービスでは、自分とは無関係な有名人や企業、団体などの名前を勝手に名乗り、その人物・組織を装って発言などを行うなりすまし行為も発生している。IDやパスワードの詐取、行使などを行わなくても誰でも簡単に実行できてしまうため、著名人などになりすますいたずらが後を絶たず問題となっている。

なりすます対象は著名な人物や団体とは限らない。何らかの論争の渦中にある人が、自分と対立する側の匿名ユーザーを装った別のアカウントを作成し、わざと対立側に不利な発言などを行うといったなりすまし行為もある。「自作自演」「偽旗作戦」などとも呼ばれる。

なお、動物や人工物など人間以外の存在、故人や歴史上の人物、創作物に登場するキャラクターなどを自称するSNS利用者もいるが、こうした行為は「本人」が実在しない(ことが誰の目にも明白である)ため、なりすましとは区別され「なりきり」などと呼ばれる。

近年では、ネット広告などで著名人の名前を勝手にかたり、無関係な第三者が広告を作成して掲載する「なりすまし広告」も問題となっている。実業家が投資の勧誘をするなど本人の実績や信用を勝手に利用する広告で、宣伝されている商品やサービスなどがそもそも詐欺である事例も多いとされる。

(2024.1.8更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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