メタバース 【metaverse】
概要
メタバース(metaverse)とは、3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)で構成された仮想空間に複数(多数)の利用者が通信ネットワークを介して同時にアクセスし、コミュニケーションや商取引など何らかの社会的な活動を行うネットサービス。利用者は仮想空間内で自分の分身として振る舞う「アバター」(avatar)と呼ばれる3Dキャラクターを操作し、空間内を移動したり、他の利用者とアバターを介して交流したり、現実の物品や空間内アイテムの売買などの経済活動を行ったり、会合や催しなどの社会活動に参加することができる。
空間内の「自分」を現実世界の自身の身元や属性と紐づけるか否かはサービスや利用者によって様々で、オンラインゲームや匿名掲示板のように現実とは切り離されたサービス内での人格として他の匿名の利用者と交流する場合と、実名SNSのように現実の「自分」として現実の知り合いなどと交流することが中心となるサービスがある。
VR(Virtual Reality:仮想現実)技術と組み合わせ、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)などで視界全体に渡って仮想空間を展開し、体の動きに合わせて視界が移動するなど没入感を伴うシステムも研究されているが、VRや感覚上の没入感をメタバースの要件とすべきかどうかは見解が分かれる。
オンラインゲームとの違い
同一の3D仮想空間に利用者が操作するキャラクターが複数同時に現れ、互いに交流や協力、あるいは対戦したりするオンラインゲームはMMORPGなどの形ですでに普及しているが、これをメタバースの類型の一つに含めるか異なるものとするかは論者によって異なる。
ゲームとは異なるとする立場でよく挙げられる相違点としては、あらかじめ用意された目的や活動(敵キャラクターを倒す等)が決まっていないか少なくとも中心的な要素ではない点、舞台が完結した架空世界ではなく現実世界と地続き(現実の企業がイベントを開催する等)である点、利用者側で空間や物体などを(ある程度)創作・編集できる点などがある。
歴史
“metaverse” という語は、英語で「超~」「高次~」などの意味を持つ接頭辞 “meta-” に、「宇宙」「全世界」などを意味する “universe” を組み合わせた造語である。1992年に米作家ニール・スティーブンソン(Neal Stephenson)が発表したサイバーパンク小説 “Snow Crash” (邦題スノウ・クラッシュ)に登場する架空の仮想世界の名称が初出とされる。
メタバース的なサービスの先駆けとして知られるのは多人数参加型オンラインゲームのMMORPGで、1997年開始の「Ultima Online」(ウルティマオンライン)を皮切りに多数のサービスが提供され、オンラインゲームの一大ジャンルとして広く定着している。
一方、ゲームとは異なる3DCGによる仮想空間を提供するサービスとして初めて注目を集めたのは2006年開始の「Second Life」(セカンドライフ)で、当時100万人以上の利用者を集め企業がプロモーションに活用するなどブームとなったが、当時は単に「仮想空間」「仮想世界」、英語圏では “virtual world” 等と呼ばれ、メタバースという用語はまだ使われていなかった。
用語として「メタバース」が注目されるようになったのは2021年のことで、大手SNSの「Facebook」「Instagram」で知られる米フェイスブック(Facebook)社が「Meta」に社名を変更し、メタバース事業を今後の柱とする方針を示したことでメタバースブームへの期待が高まった。
しかし、何が「メタバース」なのかについて広く合意された明確な定義はなく、技術要件などの標準化も行われていない中で期待感だけが先行・過熱しており、注目を集めたい企業などが宣伝文句として「メタバース」を乱用する状況が生じている。実体が不明瞭なまま言葉が独り歩きする「バズワード」として消費されつつある。
関連用語
他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 独立行政法人日本芸術文化振興会委託事業 PwCコンサルティング「文化芸術活動におけるデジタル技術の活用による表現活動等の先行事例調査 調査報告書」(PDFファイル)にて引用 (2023年5月)