ナレッジ【knowledge】
概要

IT分野で「ナレッジ」と言う場合、単なるデータや記録物、断片的な情報などとは異なり、特定の目的の解決に直接役立つ体系的な知識や、実践的なノウハウ、経験則などを言語化・可視化したものを指す。一般的な情報が単なる事実の集合であるのに対し、ナレッジは実務での利用を前提に構造化された内容を指す。
人間が扱う知識には、データや文書として表出しやすい「形式知」(explicit knowledge)と、経験や勘、コツのように個人の内部に蓄積されやすく言語化が難しい「暗黙知」(tacit knowledge)がある。あえて「ナレッジ」と呼ぶ場合は、後者の暗黙知にあたる、従来の情報の枠組みでは扱いにくい非定型な知見を指すことが多い。
このような知識を文書や事例として整理し、索引付けや検索によって活用できるように蓄積した仕組みを「ナレッジベース」(knowledge base)と呼ぶことがある。社内の業務マニュアルやFAQ集、過去の問い合わせ対応記録などを統合的に管理し、再利用可能な情報資産として扱うシステムなどが当てはまる。
組織内に分散した個人の知識や経験を共有し、業務改善や意思決定、生産性の向上に活用するための活動や枠組みを「ナレッジマネジメント」(knowledge management)と呼ぶ。社員が持つ業務上のノウハウをデータベース化したり、定期的な勉強会や情報共有の場を設けたりすることで、属人化していた知識を組織の共有財産として活用できるようにする取り組みである。
近年では、大規模言語モデル(LLM)をはじめとする人工知能(AI)の発展に伴い、社内に散在する膨大なナレッジを自動で集約・整理したり、自然言語での質問に対してナレッジベースから的確な回答を抽出したりする技術の実用化が進んでいる。企業のカスタマーサポートやヘルプデスクでは、こうした技術を活用したFAQシステムやチャットボットの導入が増え、対応の迅速化や品質の均一化に役立てられている。
情報システムによるナレッジ活用が重視される背景としては、多くの業種で企業の競争力の源泉が有形資産から知識資産へと移行したことが挙げられる。雇用の流動化やベテラン社員の退職が進む中、属人化していた知見やノウハウを組織の共有財産として残す重要性が高まり、社内の暗黙知をいかに効率良く形式知化し、ITシステムを通じて流通させるかという課題が広く認識されるようになった。