非可逆圧縮 【lossy compression】 不可逆圧縮 / ロッシー圧縮 / 非可逆符号化
概要
非可逆圧縮(lossy compression)とは、データ圧縮方式のうち、圧縮符号化の過程でデータの一部の欠落や改変を許容することで極めて効率よく圧縮する手法のこと。非可逆圧縮されたデータを展開(解凍)しても元のデータには完全には一致しない。コンピュータプログラムや文字などのデータは1ビットでも変化すればその意味する内容自体が変わってしまうが、画像や動画、音声などはデータ上は細部が僅かに異なっていても人間の視聴覚には違いが気付きにくい場合がある。
このような特性を活かし、人間が認識しにくい手法で元のデータの一部を省略・改変したり、別の表現形式へ変換するなどして、効率よく短い符号に圧縮する方式を非可逆圧縮という。
元のデータを一切毀損しない可逆圧縮とは異なり完全に元のデータを復元することはできないが、人間にほとんど違いがわからない程度の改変でも劇的に圧縮率を高めることができる利点がある。また、多くの方式では圧縮時に品質劣化の程度を指定することができ、品質を犠牲にして極端に小さな容量に圧縮することもできる。
画像や動画、音声の圧縮形式の多くが非可逆圧縮を採用しており、JPEG、MPEG-1、MPEG-2、MPEG-4、H.264、H.265、MP3、AAC、WMAなど主要なデータ形式のほとんどが非可逆となっている。用途に応じて使い分けられるよう、Lossless JPEGやWMA Losslessのように仕様の一部として可逆圧縮を用意している形式もある。
なお、実際には元のデータを効率良く圧縮できる状態に変換し、圧縮符号化自体は可逆圧縮アルゴリズムを用いて行うため、正確には圧縮方式そのものが可逆と非可逆に分かれているわけではないが、実用的にはこの変換処理も含めて圧縮方式や圧縮形式の仕様の一部とみなされるため、便宜上このような区分が常用されている。
(2019.7.4更新)