専用線 【leased line】

概要

専用線(leased line)とは、通信事業者が顧客の拠点間接続などのために貸与する、専用の通信回線および回線網のこと。様々な顧客が共用する公衆回線・公衆網と異なり、借り受けた企業などが自社の通信のために回線を独占的に使用することができる。

相手先を指定して切り替えて接続する公衆回線と異なり、あらかじめ契約した複数の拠点間が専用の回線で常に接続され、常時通信可能な状態になる。公衆網の混雑などに影響されず安定して通信でき、また、盗聴や改竄などの危険も小さい。大企業などで複数の拠点をまたぐ内線電話網の構築や、コンピュータネットワークLAN)の相互接続、インターネット接続などに利用される。

料金は距離や通信容量・速度、通信品質などに応じて期間ごとの定額となっていることが多く、拠点間の通信頻度・通信量が多い場合には公衆回線を経由するより割安になる場合もある。最も安いメニューでも数十万円単位の額となるため、個人や小規模事業者の利用は一般的ではない。

類似する概念

単に専用線といった場合は、広域の回線網を保有・運用する通信会社(電気通信事業者)が顧客に提供するサービスを指すのが一般的だが、行政機関やインフラ事業者などが自身が利用するために敷設・運用している回線(私設線)を含めることもある。

専用線を使う代わりに、暗号技術を用いて公衆網やインターネット上に拠点間を結ぶ専用のネットワーク構築する手法を「VPN」(Virtual Private Network仮想プライベートネットワーク)という。専用線ほどの信頼性や安全性は得られないが、圧倒的に安価に専用網を利用することができる。

HSD (High Super Digital/ハイスーパーディジタル)

NTTコミュニケーションズが提供していたデジタル専用線サービス。1990年に分割前の旧NTTが開始したもので、2016年3月末で終了した。

企業内ネットワークの拠点間接続などのために提供された法人向けの通信サービスで、同社の広域通信網を介して二地点間を専用回線で結んだ。帯域保証や24時間監視、障害時の回線自動切り替えなど、高い通信品質や信頼性を備えていた。伝送速度に応じて64kbps~6Mbpsまで12種類の品目が用意され、接続する拠点間の距離と速度によって月額料金が決まる定額制の料金体系となっていた。

NTTでは1984年に独自のYインターフェースによるデジタル専用線サービス(SD:Super Digital)を開始したが、ISDNの標準規格の策定などを受けて1990年にIインターフェースを採用した専用線が開始された。

公専接続

企業などが保有・占用する専用回線を、片方の端点でNTT(分割前の旧NTTおよび現NTT地域会社)の一般公衆回線と接続すること。1995年4月に自由化された。

例えば、東京と大阪に拠点を持つ企業が両者を専用回線で結んでいる場合、東京の拠点を公専接続しておけば、大阪から東京の顧客に電話をかける際、自社回線を経由することで加入電話の料金を東京からの分のみにすることができる。

公専公接続

企業などが保有・占用する専用回線を、両端でNTT(分割前の旧NTTおよび現NTT地域会社)の一般公衆回線と接続すること。1996年10月に自由化された。

加入者回線からの接続を受けて自社専用線で遠隔地へ中継し、接続先で再び加入者回線へ乗り入れるという接続形態が可能となった。これにより、いわゆる新電電NCC)がNTT(当時)の加入者回線網を利用して低額な長距離通話サービスを開始した。顧客が長距離の通話をする場合、最寄りのNCC拠点までNTT回線で接続し(公)、相手先の最寄り拠点までNCC回線(専)、通話先へは再びNTT加入者回線(公)、という経路をたどる。

(2018.5.2更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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