INSネット 【Information Network System】 INSネット64 / INSネット1500

概要

INSネット(Information Network System)とは、旧NTTおよび現NTT東日本・NTT西日本によるISDNサービス。電話回線と共通の金属線ケーブルや新たに敷設した光ファイバー回線を用いるデジタル通信サービスで、音声通話とデータ通信が利用できる。1988年に開始され、2024年に新規加入受付終了、2028年にサービス廃止予定。

もとは1980年代に旧電電公社および初期のNTTが推進していた通信網の近代化計画で、「ISDN」(Integrated Services Digital Network)と呼ばれる通信規格で加入者回線網をデジタル化し、様々な通信サービスを統合して一体的に提供する構想だった。「INSネット」の名称は同構想に基づいて1988年に開始された同社によるISDN通信サービスの名称としてそのまま引き継がれた。

加入者回線上でデジタル信号をやり取りし、デジタルデータ化された音声通話や、ファクシミリFAX)による画像伝送、各種のデータ通信サービスを一本の回線で提供する。サービスごとに回線を引き込む必要がなく、一本のデジタル回線を様々な用途に切り替えて使用することができる。

主なサービス品目として、従来からアナログ信号による音声通話(いわゆるアナログ電話)用として敷設済みの銅線メタル線)の加入者回線を利用する家庭向けの「INSネット64」と、新たに敷設された光ファイバー回線網で通信する法人・事業向けの「INSネット1500」が用意された。

INSネット64

一般家庭向けのINSネット64は市中の電話用メタル回線網はそのままに、通信線の末端のNTT局舎と加入者側にデジタル方式の交換機および終端装置を設け、アナログ回線から接続を切り替え(収容替え)て提供された。従来型のアナログ電話機やFAX(G3 FAX)などは加入者側の終端装置DSU)に繋いでそのまま使うことができ、アナログ回線の相手とも従来通り通信・通話できた。

デジタル通信ならではの機能として、高画質のFAX(G4 FAX)やパソコン通信・インターネットへの高速接続(64/128kbps)などが提供された。また、一本の回線がISDNのBチャネル(64kbps)2本、制御用のDチャネル(16kbps)1本を束ねた構成となっており、一契約で二つの異なる相手先と同時に通信・通話することができた。アナログ回線で問題となっていた、通話のためにインターネット接続を中断しなくて済む利便性は高く評価された。

INSネット1500

光ファイバー回線にBチャネル(64kbps)23本とDチャネル(64kbps)1本を束ねた構成で、アナログ電話回線23回線分を同時に利用でき、データ通信の場合は最高1.5Mbpsで通信できる。主に企業向けに提供され、同時に多数の相手と通話する大規模な事業所(アナログ回線23契約より安価だった)や、INSネット64加入者からの接続を大量に受け付けるインターネットサービスプロバイダISP)の通信拠点(アクセスポイント)に導入された。

歴史

1988年に民営化して間もない旧NTT(分割前)が大都市で提供を開始し、その後全国で利用できるようになった。1990年代後半のインターネット普及の初期には、主にデータ通信の速さ(アナログモデムは28.8kbpsまでだったがISDNは64Kbpsだった)が評価され、ピーク時の2001年には約1000万契約まで普及した。

2000年前後になるとアナログ電話回線を利用した商用ADSLサービスが本格的に始まり、高速性や常時接続(定額制)を武器に急激に普及、INS回線をアナログ収容に戻し、各社のADSLサービスでインターネットに接続するという動きが活発になった。

2000年代半ばにはNTTグループの次世代網NGNを利用した本格的な家庭向け光ファイバー通信サービス(Bフレッツやフレッツ光など)が開始され、圧倒的な高速性からメタル回線からの移行が進んでいる。NTT東日本・NTT西日本では光回線網への一本化を進めており、INSネットは2024年で新規加入受付を終了し、2028年末の完全終了に向けて段階的にサービスを縮小、終了していく。

(2024.6.12更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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