ISDN 【Integrated Services Digital Network】 サービス総合ディジタル網 / 総合サービスディジタル網
概要
ISDN(Integrated Services Digital Network)とは、公衆通信網の一種で、すべての通信をデジタル化し、一つの回線網で音声通話やファクシミリ(FAX)、各種のデータ通信などの通信サービスを統合的に取り扱うもの。日本では主に分割前の旧NTTや分割後のNTT東日本・NTT西日本により「INSネット」の名称で提供された。電気通信事業者が加入者に提供する加入者回線網の方式の一つで、従来のアナログ電話回線網を置き換えて高度情報ネットワークを実現するために考案された。端末間で送受信するすべての信号をデジタルデータ化し、一本の回線で統一的に取り扱う。
物理的な通信回線としては従来のアナログ電話用に敷設された銅線(メタル線)を利用できるが、通信局側でデジタル交換機に接続を切り替え(収容替え)、加入者側もDSU(Digital Service Unit)やTA(Terminal Adapter)などデジタル方式の通信機器を揃える必要がある。より高速・大容量の通信のために光ファイバー回線を利用することもできる。
BチャネルとDチャネル
ISDNでは一つの回線を複数のデータの流路に分けてそれぞれ独立に通信することができ、この仮想的な通信路のことを「チャネル」(channel)という。様々なチャネルの規格があるが、最も基本的なデータ用の「Bチャネル」(通信速度64kbps)と制御用の「Dチャネル」を、回線の種別に応じて組み合わせて通信路を形成することが多い。
それぞれのチャネルは独立に制御できる。Bチャネル2本を提供する通信サービスで、二つの別の相手と同時に通話したり、一本で通話しながらもう一本でインターネット接続したり、2本とも同じ相手と通信することで通信速度を高めるといった使い方ができる。従来の電話網のように回線交換接続(相手までの通信路を占有する)が基本だが、部分的に常時接続のパケット交換方式のデータ通信サービスを利用することもできる。
BRIとPRI
主な回線種別として、アナログ電話用の銅線を利用できる「BRI」(Basic Rate Interface:基本インターフェース)と、加入者施設まで新たに光ファイバー回線を敷設して利用する「PRI」(Primary Rate Interface:1次群インターフェース)がある。
BRIは2つのBチャネル(64kbps×2)とDチャネル(16kbps)を多重化(2B+D)したもので、一契約で同時に二つの通信・通話先と接続することができる。NTTでは「INSネット64」の名称でアナログ2契約よりも安い基本料金で提供した。主に家庭や小規模事業者が対象で、パソコン通信やインターネット接続を利用したり、通話やFAXを頻繁に利用する場合にアナログから切り替えて加入した。
PRIは光ファイバーを利用してBチャネル23本とDチャネル(64kbps)を多重化(23B+D)したもの(他の分割方法もある)で、全体で約1.5Mbpsの大きな通信容量を提供することができる。NTTでは「INSネット1500」の名称で提供され、同時に多数の相手と通話する大規模な事業所や、パソコン通信事業者やインターネットサービスプロバイダの通信拠点などで使われた。
歴史
構想は1972年から存在したが、国際的な通信規格は1988年に当時の国際電信電話諮問委員会(CCITT/後のITU-T)によって策定された。同年、日本では大都市圏を対象にNTTがINSネットの提供を開始し、すぐに全国で利用できるようになった。
1990年代後半にはインターネット普及の初期に一時的に人気が高まり、最大で1000万契約まで普及したが、2000年代に入るとアナログ電話回線で高速データ通信が可能なADSLや家庭向け光ファイバー(FTTH)サービスが始まり、歴史的な役割を終えた。
世界的には北欧やドイツなどで広く普及したが、北米のようにほとんど導入が進まなかった地域もある。普及した地域も日本と同様、2000年代以降はFTTHなどへの移行が進んでいる。INSネットは2024年1月での終了が発表されており、それまでに代替サービスへの切り替えが必要となる。
関連用語
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他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 独立行政法人情報通信研究機構(NICT) 新世代ネットワーク推進フォーラム IPネットワークWG レジデンシャルICT SWG 戦略ビジョンタスクフォース「家庭生活に役立つホームネットワークの在るICT社会像の実現に向けた調査報告書」(PDFファイル)にて引用 (2011年11月)
- 全国地域情報化推進協会「ブロードバンド整備マニュアル」(PDFファイル)にて引用 (2007年4月)
- 東京地方裁判所「平成17年(ワ)第10394号 特許権侵害差止等請求事件」(PDFファイル)にて引用 (2005年11月)