ラストワンマイル 【last one mile】 加入者回線 / subscriber line / ファーストワンマイル / first one mile / ローカルループ / local loop
概要
ラストワンマイル(last one mile)とは、「最後の1マイル」という意味の英語表現で、通信業界では加入者宅と最寄りの通信拠点施設までの間の通信回線のことを指す。通信事業者側から見て通信回線網の最も末端にあたるためこのように呼ばれるが、加入者側から見て「最初の1マイル」という意味で「ファーストワンマイル」(first one mile)と呼ぶ事業者もある。
1990年代まで通信サービスの加入者宅(一般企業や家庭、公的機関など)に引き込まれる通信回線のほとんどは銅線など金属ケーブル(メタルケーブル)を利用したアナログ電話回線であり、日本では旧電電公社・NTTが全国の電話局などを拠点に敷設したものを同社自身が利用してきた。
1990年代後半にインターネットの普及が本格化し、アナログモデムによるダイヤルアップ接続より高速な通信回線、通信方式を求める声が高まると、事業者側の施設から個々の加入者宅まで至る膨大な規模の通信回線網をどのように敷設、維持、更新していくのかという難題が意識されるようになり、この区間のことをラストワンマイルと呼んで拠点間や事業者間の基幹回線網(バックボーン)と区別して論じられるようになった。
当初はISDNやADSL(xDSL)など、メタル回線のままデジタル通信を導入して高速化を図る手法が広まったが、2000年代に入るとNTT東日本・NTT西日本による本格的なラストワンマイルへの光ファイバー網(FTTH)の整備が進んだ。NTTのような独占的事業者のラストワンマイル区間を他事業者に開放する制度が開始され、物理的にはNTT地域会社の電話回線や光ファイバー回線を利用しながら、新興通信事業者などが独自にサービスを提供できるようになった。
また、地域は限られるがすでに回線網を敷設していた各地のCATV(ケーブルテレビ)事業者や有線放送事業者も、既存回線網を活かした高速インターネット接続事業へ参入し、さらに徐々に同軸ケーブルなど既存の回線インフラを光ファイバー網に更新していった。地域独占の送配電網(電力のラストワンマイル)を所有していた電力会社も、通信子会社(電力系通信事業者)を通じて電力インフラを活用した光ファイバー網の整備を進めた。
運輸・物流業界のラストワンマイル
運輸や物流の分野でも、主に宅配便における末端の拠点から配達先に至る最後の区間のことをラストワンマイルという。
ネット通販の普及で荷物が激増する一方、送料無料化に代表される値下げ圧力、ライフスタイルの多様化による不在率上昇と再配達の増加、ドライバーの待遇問題と人手不足など、消費者向け物流の抱える矛盾や問題がこの区間に集中して現れるようになっている。