液晶 【liquid crystal】
概要
液晶(liquid crystal)とは、物質が液体と固体(結晶)の性質を同時に併せ持った状態のこと。また、そのような性質を示す物質。日常的には、これを応用した表示装置(液晶パネル/液晶ディスプレイ/液晶テレビなど)やその表示面(液晶パネル)のことを略して液晶と呼ぶこともある。液晶物質は液体のような流動性を持ちながら、分子の方向に一定の秩序があり、結晶のような光学特性を持っている。これを2枚の透明な板の間に封入し、ある一点に電圧をかけたり切ったりすることでその位置にある液晶分子の向きを変え、光の透過率を制御する原理の表示装置を「液晶パネル」という。
液晶物質そのものは発光しないため、背後に蛍光灯やLEDライトなどの光源(バックライト)を設置し、この光を遮ったり通したりすることで像を映し出す。これを「透過型液晶」という。背面光源を持たず、太陽や照明で照らされた明るい場所でその反射光を利用する装置もあり、「反射型液晶」と呼ばれる。
液晶の種類
ある範囲の温度にあるときに液晶としての性質を示すものを「サーモトロピック液晶」(thermotropic LC)、溶液がある範囲の濃度にあるときに液晶としての性質を示すものを「リオトロピック液晶」(lyotropic LC)という。
前者は分子配列によって「ネマティック相」(nematic phase)、「スメクティック相」(smectic phase)などに分類される。表示装置などとして広く応用されているのはほとんどがネマティック液晶で、「ツイステッドネマティック液晶」(TN液晶)など方式名にもなっている。
歴史
1888年にオーストリアの植物学者フリードリヒ・ライニッツァー(Friedrich Reinitzer)氏が奇妙な性質を示す有機化合物を発見し、ドイツの物理学者、オットー・レーマン(Otto Lehmann)氏に解析を依頼した。レーマン氏はこの物質が液体と結晶の中間の性質を持つことを明らかにし、「流動する結晶」(Flüssige Krystalle:flowing crystals)と名付けた。
その後、長年の研究を経て1964年に米RCA社のジョージ・ハイルマイアー(George H. Heilmeier)氏が液晶を応用した表示装置への道を開く重要な現象「DSM」(Dynamic Scattering Mode)を発見、1968年には同社により世界初の液晶表示パネルが発表された。応用製品の実質的な量産化に初めて成功したのは日本のシャープで、1973年に数値表示部に液晶パネルを利用した電卓を発売した。
初期の液晶パネルは「日」の字型に並べた線状の発光領域を点灯・消灯して数字を表示する7セグメントディスプレイの形で電卓や腕時計、電子機器のインジケーターなどに利用された。1990年代半ば頃から技術の進歩により高精細化、大画面化、カラー化が一気に進み、CRT(ブラウン管)に代わってテレビやコンピュータディスプレイの主流となった。