PTP 【Precision Time Protocol】 IEEE 1588
概要
PTP(Precision Time Protocol)とは、IPネットワーク上でマイクロ秒(100万分の1秒)単位の時刻同期を行うためのプロトコル(通信規約)。構内ネットワーク(LAN)上で極めて高精度な時刻同期が必要なシステムに用いられる。2002年にIEEEによって「IEEE 1588」として標準化された。機器間の内蔵時刻(クロック)を正確に合わせるための通信手順やデータ形式を定めた標準規格である。時刻の配信元となるマスターが、提供を受けるスレーブに時刻情報を配信する。NTPのように階層的な構成とすることもでき、大本の配信源(グランドマスター)から時刻を段階的に伝播させる。
配信する時刻情報は1970年1月1日午前0時(UNIXエポック)を起源とする、いわゆるUNIX時間と同じ形式だが、通常のUNIX時間が協定世界時(UTC)を用いるのに対し、PTPでは国際原子時(TAI)を配信する。UTCは閏秒(うるう秒)の調整が行われるが、TAIでは行われない。両者の現在の差分も知らせるため、必要であればUTCを算出することはできる。
ネットワーク上での配信にはUDP(User Datagram Protocol)を利用し、通常のメッセージは320番ポート、イベント送信用に319番ポートを用いる。初期の規格では複数の端末に同報送信するIPv4のIPマルチキャスト送信を利用する方式だったが、2008年の規格改訂でユニキャスト送信やIPv6への対応が追加された。
IPネットワークにおける時刻配信では通常「NTP」(Network Time Protocol)が用いられるが、精度がミリ秒(1000分の1秒)単位であるため、より高精度の同期が必要な場合に用いられる。高精度の時刻合わせは「GPS」(Global Positioning System)によっても可能だが、個別の機器すべてにGPS受信装置を配備するのが困難な状況ではPTPによるネットワーク配信が適している。
(2024.9.7更新)