IPマルチキャスト 【IP multicasting】
概要
IPマルチキャスト(IP multicasting)とは、IPネットワーク上で、特定の複数の相手に同じデータをいっぺんに送信すること。送信側はデータを一度送信するだけで、経路途上の通信機器が受信者のいる経路にだけデータを複製して送り届ける。一対多の放送型のデータ配信を効率的に行うことができる。受信者はあらかじめ自らのアドレスを送信者に対して通知し、受信者のグループ(マルチキャストグループ)に参加する。送信者はマルチキャストグループを表す特殊なIPアドレスに宛ててデータを送出すると、ネットワーク内のルータなどの機器が中継時に自動的にデータを複製して各受信者に送り届ける。
インターネットなどで用いられるIP(Internet Protocol)の拡張仕様の一つだが、経路上の中継機器などがすべて対応している必要があるため閉域網で用いられる。映像や音声のストリーミング配信などに応用されており、その特性から上位のプロトコルとしてUDP(User Datagram Protocol)が併用されることが多い。
ユニキャスト・ブロードキャストとの違い
通常の一対一のデータ送信は「ユニキャスト」(unicasting)と呼ばれる。複数の相手に送りたい場合は個別にデータを発信する必要があるため、受信希望者が多数いる場合、受信者の数だけ何度も同じデータを送出しなければならないが、マルチキャストでは同じデータは同じ経路を一度しか通過しないため、受信者が増えても通信回線への負荷の増大は抑えられ、効率的に一斉配信することができる。
また、複数の受信者に同時にデータを配信する方式には「ブロードキャスト」(broadcasting)もあるが、これは無差別の同報送信であり、同じネットワーク上の全機器に同時にデータが配信される。マルチキャストのように特定の受信者に選択的にデータを送り届けることはできない。
マルチキャスト用IPアドレス
IPアドレスにはマルチキャスト用の特殊なアドレス領域が予約されており、これを利用してデータの送受信を行う。IPv4アドレスでは「クラスD」としても知られる「224.0.0.0」~「239.255.255.255」の領域が、IPv6アドレスでは「ff00::/8」で始まる領域がマルチキャスト用として利用される。
普及状況
通信機器の対応状況や設定や管理の難しさから、インターネットにおいて任意のネットワークをまたいでIPマルチキャストを利用することはできない。一つの組織内で構築・運用されるプライベートなIPネットワークや、インターネット上でも特定の通信事業者やISP(プロバイダ)内のネットワークでのみ利用できる放送型通信サービスなどで利用されている。
関連用語
関連リンク (外部サイト)
他の辞典による解説 (外部サイト)
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 全国地域情報化推進協会「ブロードバンド整備マニュアル
」(PDFファイル)にて引用 (2007年4月)