IPv6 【Internet Protocol version 6】
概要
IPv6(Internet Protocol version 6)とは、インターネットの基礎となる通信規約(プロトコル)であるIP(Internet Protocol)のバージョンの一つで、2の128乗個という膨大な数の識別番号(IPアドレス)を利用できるもの。インターネット普及期に標準だったIPv4からの移行が進みつつある。インターネットやこれに接続する組織内ネットワーク(LAN)などでは、「IP」(Internet Protocol/インターネットプロトコル)と呼ばれる共通のプロトコル規格に基づいて機器の識別やデータの送受信、ネットワーク間のデータの配送などを行っている。
IPv4とアドレス枯渇問題
インターネットが本格的に普及し始めた1990年代末には、1981年に策定された「IPv4」(IPバージョン4)規格が用いられ、現在も多くのネットワークで標準的に利用されている。これは機器を識別する「IPアドレス」を32ビットで表現する仕組みで、最大で約42億台の機器を単一のネットワークに収容できる。
これは規格制定時には十分過ぎるほど広大なアドレス空間だと考えられていたが、想定を超えるインターネットの爆発的な普及により2000年代半ば頃には新規に割り当てるIPv4アドレスが逼迫する事態となり、より多くのアドレスを利用できるIPv6への本格移行が模索された。
IPv6の主な特徴
IPv6の最大の特徴は、IPアドレスを従来の32ビットから128ビットに大幅に拡張したことである。従来のIPv4アドレスと区別するため「IPv6アドレス」と呼ばれ、2128個、すなわち、約340澗(かん)、約3.40×1038個のアドレスを同一ネットワーク内で利用できる。
各機器へのアドレスの割り当てやネットワークをまたいだデータの転送(ルーティング)、大きなデータを一定の長さの送信単位(データグラム)に分割する仕組みなど、基本的な機能はIPv4までと変わらないが、アドレス設定の自動化やセキュリティ機能の強化、転送効率の向上などの改善が行われている。
IPv4からの移行
一本の通信回線や単一のネットワークなどの単位ではIPv4とIPv6のデータを混在させることは可能だが、アドレス体系やデータ形式がIPv4と異なり直接的な相互運用性がないため、複数のネットワークを接続するにはそれぞれ個別に転送処理を行う必要がある。
また、IPv6を使用する場合でも、既存のインターネット上のIPv4アドレスの機器と通信できなければ利便性が大きく損なわれるため、何らかの中継システムを用意してアドレスの相互変換やデータの転送、相互乗り入れの仕組みを用意する必要がある。
通信事業者にとってはIPv6への移行期にはどうしてもIPv4と両対応せざるを得ず、コスト負担や運用の煩雑化が敬遠され、利用者にとっても目に見える利点に乏しいことから、00年代まではIPv6の利用は実験的な閉じたネットワークでのサービス提供などに留まっていた。
2010年代に入るとIPv4アドレスの未割り当ての領域が完全に枯渇する(以降はネットワーク廃止で返却されるアドレスの再割り当てで対応)といった事態が生じる一方、寡占化の進んだIT大手が本格的にIPv6アドレスでのサービス提供に乗り出すなど環境に変化が生じ、世界的に少しずつ普及が進み始めた。
日本では2011年にNTT東日本・NTT西日本によるフレッツ網がIPv6 IPoE接続(ネイティブ方式)に対応し、2017年に大手移動体通信事業者が端末に割り当てるアドレスをIPv6化するなど環境の整備が進展しており、ISPなども通常のサービスメニューとしてIPv6によるインターネット接続を提供するようになっている。
関連用語
関連リンク (外部サイト)
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試験出題履歴
この記事を参照している文書など (外部サイト)
- 総務省 東北総合通信局「沿岸海域における効率的なワイヤレスブロードバンドシステムの技術的条件に関する調査検討会 報告書
」(PDFファイル)にて引用 (2010年3月)