DHCP 【Dynamic Host Configuration Protocol】

概要

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)とは、インターネットなどのIPネットワークに新たに接続した機器に、IPアドレスなど通信に必要な設定情報を自動的に割り当てるための通信規約(プロトコル)。

機器の利用者ネットワーク設定を手動でわなくても、ネットワーク管理者の側で適切な設定を自動的に適用することができ、技術に詳しくない利用者でも簡単に接続できる。管理者は多くの機器の設定を容易に一元管理することができ、不適切な設定に起因するトラブルを減らすことができる。

スマートフォンなど持ち運ぶ機器の場合、接続先ごとに詳細な設定を管理者から入手して手動で入力しなくても、DHCPを利用するよう設定しておくだけでネットワークごとに接続開始時に適切な設定情報を入手して適用することができる。

DHCPによって通知される設定情報には、問い合わせをった機器が名乗るべきIPアドレスアドレスサブネットマスク、当該ネットワークで利用可能なDNSサーバIPアドレス、外部ネットワークとの出入り口であるデフォルトゲートウェイIPアドレスアドレスのリース期間(使用期限)などがある。追加で時刻同期サーバNTPサーバ)のアドレスなど他の情報を通知することもできる(が、あまり一般的ではない)。

DHCPの仕様は前身の「BOOTP」(Bootstrap Protocol)を拡張したもので、1993年にIETFによってRFC 1541として標準化され、1997年にRFC 2131として更新された。2018年にはIPv6対応版である「DHCPv6」(RFC 8415)も標準化されたが、IPv6自体に自動的にアドレス設定をメカニズムが組み込まれており、特殊な目的以外ではあまり利用されない。従来のIPv4向けのDHCPをIPv6向けと明確に区別したい時は「DHCPv4」と呼ぶこともある。

DHCPサーバとDHCPクライアント

DHCPで設定情報を提供する機能を持ったコンピュータネットワーク機器を「DHCPサーバ」(DHCP server)、サーバへ問い合わせをって設定情報を受け取る機器やソフトウェアを「DHCPクライアント」(DHCP client)という。

企業のネットワークなどでは専用のサーバコンピュータが他のネットワーク管理機能などと共にDHCPサーバとして稼動している場合が多く、家庭のインターネット接続環境ではブロードバンドルータWi-FiルータなどがDHCPサーバ機能を内蔵している場合が多い。

DHCPクライアントネットワーク接続を利用する機器に必要なもので、単体の装置やソフトウェアとして提供されるものではなく、機器を制御するオペレーティングシステムOS)などの中に組み込まれている。パソコンスマートフォンデジタル家電、家庭用ゲーム機など、およそインターネット接続に対応した機器のほとんどはDHCPクライアントとして機能するようにできている。

家庭用のルータ製品などの中には、インターネットサービスプロバイダISP)からグローバルIPアドレスなどの設定情報を受信するためのDHCPクライアント機能と、屋内のパソコンスマートフォンなどにプライベートIPアドレスを払い出すためのDHCPサーバ機能を内蔵し、両方同時に使用する例もある。

なお、DHCPは標準では下位のトランスポート層プロトコルとしてUDPUser Datagram Protocol)を利用し、サーバクライアントからの通信を待ち受けるのはUDP67番ポートクライアントサーバからの返信を待ち受けるのはUDP68番ポートと定められている。

IPアドレス割り当ての手順

クライアントネットワークに接続すると、同じネットワークのすべての機器へ同報送信ブロードキャスト)でDHCPサーバに応答を求める問い合わせ(DHCPディスカバー)を送信する。DHCPサーバが存在する場合、これに呼応して使用すべきIPアドレスを提案する応答(DHCPオファー)をブロードキャストする。

クライアントが提案されたIPアドレスを使用することを決めると、追加の設定情報を求める要求(DHCPリクエスト)を再びブロードキャストする。DHCPサーバが複数ある場合、自らの提案が「落選」したDHCPサーバはこのブロードキャストによってそれを知り、アドレスの割り当てを解除して待機状態に戻る。

最後に、アドレス提案が採用されたサーバクライアントに向けてデフォルトゲートウェイなどの追加情報を記載した承認通知(DHCPアック/Acknowledgement)をユニキャストアドレス指定送信)で送信し、手続き完了となる。

DHCPサーバにはあらかじめ、クライアントに払い出して良いIPアドレスの範囲(IPアドレスプール)が管理者によって設定されており、その中から現在使われていないアドレスを提案する。接続が途絶えたクライアントや使用期限が来たアドレスは回収して空き状態としておき、次に接続したクライアントに払い出す。

(2022.11.10更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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