フローティングスタティックルート【floating static route】
フローティングスタティックルートとは?

ルータは宛先となるネットワークへの経路情報を基に、どの隣接ルータへパケットを転送するか判断する。経路情報には、管理者が手動で登録する「スタティックルート」と、OSPFやEIGRPなどのルーティングプロトコルにより隣接ルータ同士で情報交換しながら自動的に構築される「ダイナミックルート」の2種類がある。同じ宛先への経路が複数存在する場合、どちらを採用するかはルータ内部の基準で判断される。
その判断基準となるのが「アドミニストレーティブディスタンス」(AD値)である。AD値は経路情報の信頼度を示す数値で、値が小さいほど優先される。標準的な設定では、直接接続(隣接ルータ)には「0」、スタティックルートには「1」という高い優先度が割り当てられており、OSPF(110)やEIGRP(90)などのダイナミックルートより常に優先して使用される。
フローティングスタティックルートは、この優先順位を逆転させたものである。管理者がスタティックルートのAD値をダイナミックルートのAD値より大きい数値に設定することで、平常時はダイナミックルートが優先され、スタティックルートはルーティングテーブル上に現れない待機状態に置かれる。回線障害や機器の不具合などでダイナミックルートが消滅した時に初めてフローティングスタティックルートが有効化され、通信が継続される。
この仕組みは、複雑な動的ルーティングの設定を追加することなく冗長化を実現できるため、回線やネットワークのバックアップ経路として様々な場面で利用される。例えば、主回線にダイナミックルーティングを使い、回線が切れた場合の予備として従量制で低速のモバイル回線などへ切り替えるといった運用が行われる。普段は通信を行わない回線を非常時専用に確保しておくことで、回線コストを抑えながら障害対策を実装できる。