電子書籍 【electronic book】 e-book
概要
電子書籍(electronic book)とは、デジタルデータとして作成・記録された電子文書のうち、従来の(紙の)書籍や雑誌と同じ体裁にまとめられたもの。内容が決まった大きさと形のページに分かれ、表紙や裏表紙、目次、奥付など本としての形式に則って作られている。雑誌は「電子雑誌」、漫画は「電子コミック」とも呼ばれる。パソコンやスマートフォン、タブレット端末などに専用の閲覧ソフトウェアを導入して閲覧する場合と、電子書籍の購入や保存、閲覧などの機能に特化した小型の携帯端末である電子書籍端末(電子書籍リーダー)で読む場合がある。
紙の本と同じように内容がページごとに整形され、ページを前後に繰って読むことができるほか、電子データの特性を生かしてWebページのようにページ間やWebコンテンツへハイパーリンクを設定したり、動画や音声、端末の振動などを内容に組み込んだものもある。
紙の本との違い
読者にとっては、物理的な保管スペースが不要な点や、一台の端末に何冊分でも入れて持ち歩ける点、オンラインで購入後、配送を待たずすぐにデータを受信して読める点などの利点がある。
一方、主に携帯端末で利用する場合に、画面の明るさやページをめくる動作(のもたつき)など基本的な操作感や閲覧体験が紙より劣る場合がある点や、電池切れで読めなくなる点、電子書店の閉店で購入済みの書籍データが開けなくなる点、著作権保護の仕組みのため家族や友人にも貸したり譲渡したりできない点、端末の画面サイズが決まっており大判の雑誌などが読みにくい場合がある点などの難点もある。
出版社にとっては製本や流通、在庫などのコストが省ける利点はあるが、データ形式や販売方法が電子書店ごとにばらばらなため、同じ物を取次を通して全国の書店に卸す紙の本に比べ販売管理にかかる手間やコストは却って増えることがある。また、既存の書店や印刷会社、出版取次会社にとっては、自ら電子書籍流通事業に参入しない限り紙の本の流通が減る分だけ事業は打撃を受ける。
電子書店 (電子書籍ストア)
一般的に電子書籍はオンライン上の電子書店(電子書籍ストア)でデータを購入して閲覧することができる。書店によって販売する電子書籍のデータ形式が異なり、対応する閲覧ソフトや端末を用意する必要がある。
販売方式には、無期限の閲覧権を一冊ずつ購入する買い切り型、一定期間の閲覧権を購入するレンタル型、毎月一定額の課金で指定された書籍の中からいくつでも閲覧できる読み放題型(定額課金型/サブスクリプション型)などがある。キャンペーンのため期間限定で特定の書籍を無償配信する書店も多い。
配信方式には、インターネットを通じて開いたページのデータだけを送り、端末側にデータを保存しないストリーミング型と、データ全体を端末に複製するダウンロード型がある。オフラインでも読めるダウンロード型が主流となっている。
ダウンロード型の多くは著作権保護のためにデータが暗号化されており、インターネットを通じて会員認証を行い閲覧権限を確認したり、端末に権限情報を格納することにより、購入者のみ復号して閲覧できるようにする。この仕組みのため、購入元の電子書店が閉店すると購入済みだったはずの書籍がすべて閲覧できなくなる問題が起きている。
世界的には、Andoird端末向けの米グーグル(Google)社「Google Playブックス」やiOS端末向けの米アップル(Apple)社「Apple Books」などプラットフォーム事業者によるものや、「楽天kobo」(コボ)や米アマゾン・ドットコム(Amazon.com)社「Kindleストア」など大手電子商取引サイト(ECサイト)による電子書店のシェアが大きい。
国内では、ソニーの「Reader Store」など端末メーカー系、「LINEマンガ」やヤフー系列の「eBookJapan」などネット企業系、大日本印刷「honto」や凸版印刷「BookLive!」など印刷会社系、書店系、家電量販店系、独立系などもある。日本の電子書籍市場の特徴として電子コミックのシェアが極めて高い点がよく指摘され、電子コミック販売に特化した電子書店も多い。
データ形式
電子書籍には様々なデータ形式(ファイル形式)があり、表題や文章などの文字情報、画像や図版、それらのレイアウトを指定する組版情報などを一つのファイルにまとめて保存する。
紙の書籍と同じようにページ内での要素の位置や大きさが固定されているものを「フィックス型」、閲覧者側で画面サイズの違いや文字サイズの変更などを反映して動的にレイアウトし直すものを「リフロー型」という。
多くの形式はDRM(著作権保護)機能が組み込まれており、端末には暗号化された書籍データが配信あるいは保存される。電子書店が発行した正規の暗号鍵がなければ閲覧できない仕組みになっており、海賊版がネットなどで流通することを防いでいる。
著名なデータ形式としては、HTMLやCSSなどWebページの記述形式を取り込んだXMLベースのEPUB(イーパブ)形式、Amazon Kindle(アマゾン・キンドル)で採用されているAZW形式やKindle形式、初期の日本の電子書籍でよく用いられたXMDF形式、日本の電子コミックで一般的な.book(ドットブック)形式などがある。
汎用の電子文書ファイル形式であるPDF(Portable Document Format)に整形済みの書籍データを保存して配信する方式も見られる。この場合は暗号化による保護はできない。