暗号資産 【crypto asset】

概要

暗号資産(crypto asset)とは、暗号技術を用いて、コンピュータネットワーク上で単一の管理主体を置かなくても利用者間で安全に値を移転できる仕組みを構築し、この値に財産的な価値を見出したもの。通貨のように取引できる「暗号通貨」を指すことが多いが、他の応用例もある。

所有者の端末に、その暗号資産の取引履歴などを記録した分散台帳(ブロックチェーン)の複製が保管される。ブロックチェーン暗号技術で保護されており、所有者が自分に有利なように記録を改竄しようとしても、他の所有者が保管する台帳と整合性が取れず、書き換えは棄却される。

この仕組みにより、現実の通貨のような中央集権的な発行主体や管理主体を置かなくても、個々の所有者によるデータ保管、所有者相互のデータのやり取りのみで安全に取引を完結させることができる。各所有者の保有高を改竄不可能な形でネットワーク上に保管し続けることができる。

ブロックチェーン上での値の移動を通貨の支払いとみなし、代金の決済などに利用できるようにしたものを「暗号通貨」(cryptocurrency)という。ビットコイン(Bitcoin)やイーサリアム(Ethereum)などがよく知られ、支払いや蓄財、投資などで通貨の代わりに用いられている。

為替取引のようにネット上の交換所で現実の通貨や他の暗号通貨と交換することもできる。中央銀行のような発行主体が存在しないため財産的な裏付けは無いが、企業などが発行し、法定通貨やコモディティに価値が連動するよう設計された「ステーブルコイン」も存在する。

一方、株式や債券、会員券、引換券などに類似する、通貨以外の何らかの財産的な権利の所有や移転をブロックチェーン上に記録するシステムもあり、広義の暗号資産に含まれる。セキュリティトークン(デジタル証券)、ユーティリティトークン、NFT非代替性トークン)などが該当する。

日本では2016年の資金決済法改正により「仮想通貨」の名称で規定が追加されたが、2020年の金融商品取引法および資金決済法の改正で呼称が「暗号資産」に統一された。日本の法制度上の「暗号資産」は通貨性のあるもの(暗号通貨)に限定され、NFTなどは該当しないとされるため、一般的な概念の “crypto asset” に含まれる範囲とは必ずしも一致しない。

(2023.9.25更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

試験出題履歴

ITパスポート試験 : 令3 問25
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。