DOCSIS 【Data Over Cable Service Interface Specifications】
概要
DOCSIS(Data Over Cable Service Interface Specifications)とは、ケーブルテレビ(CATV)の回線を利用して高速なデータ通信を行うための規格。もともと北米の業界団体などが推進していもので、国際電気通信連合(ITU-T)によって「J.112」として標準化された。仕様の検討や製品の認証などは業界団体のケーブルラボ(CableLabs)が行なっている。ケーブルテレビの回線網に用いられる同軸ケーブルで高速なデータ通信を行う規格で、通信用信号の放送波との重畳(並列伝送)が可能で、一本の回線でテレビ視聴とインターネット接続を両立することができる。一方向の放送用に敷設された回線を転用するため、下り(局舎→加入者宅)の方が上り(加入者→局)よりも高速な非対称型の通信方式となっている。
1990年代に各メーカーが独自に策定した仕様群を統合し、1997年に「DOCSIS 1.0」が発表された。1999年に1.1、2002年に2.0と改良されていった。日本のケーブルテレビ局でも採用が進み、下り30~42Mbps程度と当時のADSL回線より高速なケーブルインターネット接続が提供された。
2007年に策定された「DOCSIS 3.0」ではIPv6やAESによる暗号化に対応した。複数の周波数帯域を束ねる「チャネルボンディング」(channel bonding)技術により、最高で下り160Mbps、上り120Mbpsの通信速度に対応した。2013年の「DOCSIS 3.1」では最高で下り10Gbps、上り1Gbpsに対応した。2017年の「DOCSIS 4.0」では上下共に最高10Gbpsの全二重(full duplex)規格が追加され、FTTHサービス(光ファイバー回線)に引けを取らない性能を実現した。
CableLabs (ケーブルラボ)
CableLabsはCATV機器の研究開発・認定のために1988年に設立された業界団体で、主に北米の有力ケーブルテレビ事業者などが参加している。ケーブルテレビ回線網を用いたデータ通信のためのDOCSIS標準の策定、および、対応機器の接続試験や認定を行っている。
日本でもBSデジタル放送の運用開始を機に、ケーブルテレビにおけるデジタルハイビジョンやデータ放送、インターネットサービスへの対応などを推進するため、2000年に社団法人日本ケーブルテレビ連盟内の組織として日本ケーブルラボ(JLabs)が設立された。2009年に一般社団法人となり独立した非営利法人となっている。