ARPANET 【Advanced Research Projects Agency Network】
概要
ARPANET(Advanced Research Projects Agency Network)とは、1969年に米国防総省の高等研究計画局(ARPA、現在のDARPA)が導入したコンピュータネットワーク。各地に分散した大型コンピュータ同士を通信回線で相互接続したもので、後のインターネットの原型となった。当初は米国内の4つの大学や研究機関(カルフォルニア大学ロサンゼルス校、スタンフォード研究所、カルフォルニア大学サンタバーバラ校、ユタ大学)を繋いで開通し、その後徐々に接続拠点を増やしていった。
データを一定の長さに区切って制御情報を付してそれぞれ独立に伝送するパケット通信方式や、異なるネットワークを共通のアドレス体系や通信方式で結び、拠点間・機器間でバケツリレー式に転送を繰り返して宛先まで届ける仕組み(IPやルーティングに相当)、データの受信確認や再送制御により伝送の確実性を確保するコネクションの仕組み(TCPに相当)など、現在では当たり前に利用されている多くの技術の開発や実装、検証に用いられた。
1983年に米軍関係機関のネットワークがMILNETとして分離され、1986年には全米科学財団(NSF)が学術機関向けにNSFNETを開設、大学や研究機関などはそちらに移っていった。ARPANETからは徐々に接続拠点数が減っていき、1990年に正式に廃止された。
目的を巡る議論
ARPANETの目的について、「主要拠点が核攻撃を受けても全体が停止しない堅牢な分散型通信ネットワークを米軍が必要としていた」とする説明がよく行われるが、当時の関係者の多くは、当時の限られた大型コンピュータを地理的に離れた研究者も利用できるようにするためで核戦争に備える目的は無かったと証言している。
このような誤解が生まれたのは、当時のARPAの上級管理者の中に同趣旨の説明をする者がいたことや、ARPANETプロジェクトの直前に米軍事系シンクタンクのランド研究所がこの目的で研究を行い、ARPANETに似たパケット通信による分散ネットワークを提唱していたためとされる(ARPANET関係者は同プロジェクトとの関連を否定している)。
DARPA (ARPA)
DARPA(Defence Advanced Research Projects Agency/国防高等研究計画局)は米連邦政府機関の一つで、国防総省の傘下で軍事技術や軍事に役立つ可能性のある科学技術の研究・開発を行う機関である。
自前の研究施設などは持たず、大学や企業、研究機関などへの委託や助成、研究プロジェクトの公募、先端技術を応用した競技会の開催などが主な事業となる。陸海空軍、海兵隊など軍そのものからは独立しており、各軍の利害や戦略などに囚われず軍事転用可能な先端的な科学技術の研究・開発を推進している。
IT分野では、現在のインターネットの原型となる広域的なパケット通信ネットワークであるARPANETでよく知られ、その名残りはネットワーク制御用データの交換に用いられる「.arpa」ドメインなどに残っている。
1958年に設立された際の名称は「ARPA」(Advanced Research Projects Agency、アーパ)だったが、1972年にDARPA(ダーパ)に改称、1993年にARPAに戻り、1996年に再びDARPAに改称され現在に至る。
関連用語
関連リンク (外部サイト)
他の辞典による解説 (外部サイト)
- ウィキペディア 「ARPANET」
- Web担当者Forum 用語集 「ARPA」
- MDN Web Docs 用語集 「ARPANET」
- ケータイ用語の基礎知識 「ARPA」
- JPRS 用語辞典 「ARPANET」
- Computer Hope (英語) 「ARPANET」
- WhatIs.com (英語) 「ARPANET」
- Techopedia (英語) 「Advanced Research Projects Agency Network」
- Gartner Information Technology Glossary (英語) 「ARPANET」
- PC Magazine (英語) 「ARPAnet」