プロバイダ責任法 【プロバイダ責任制限法】

概要

プロバイダ責任法(プロバイダ責任制限法)とは、インターネット上で権利侵害が発生した際に、発信者側にサービスを提供しているプロバイダ等の事業者の責任を制限し、また、被害を受けたとする側が発信者情報の開示を請求する権利について定めた法律。2001年11月に成立し、2002年5月に施行された。

特定電気通信役務提供者

この法律は主に「特定電気通信役務提供者」について適用されるが、これには狭義のプロバイダであるインターネット接続事業者(ISP:インターネットサービスプロバイダ)だけでなく、Webサイトの公開・運用を請け負う事業者(サーバホスティング事業者やブログサービス事業者など)、電子掲示板(BBS)やSNSの運営者など、契約者にネット上で情報発信できる環境を提供している者が含まれる。営利事業か否かの区別もなく、状況によっては大学や公的機関、個人などが該当する場合もある。

責任の制限

以前は法的な位置づけが曖昧だった、ネット上で著作権侵害や名誉毀損、プライバシー侵害などが発生した際のプロバイダ等の賠償責任を、一定の条件を満たした場合に免責するよう定めている。

ある情報の流通について権利が侵害されたと主張する者が現れた場合に、当該情報の流通を止めなかった責任について、プロバイダ等自身が発信者ではなく、差し止めが技術的に不可能である、権利侵害であると知らなかったといった条件を満たした場合に免責される。

逆に、権利侵害の申告を受けて情報の流通を止めた場合に発信者側に生じた損害について、停止措置が必要最低限であり、権利侵害を疑う十分な理由があった場合に免責される。選挙運動期間中の候補者や政党などについての情報を差し止めた場合については、別項を設けて似た内容の規定(発信者に生じた損害の免責)を定めている。

リベンジポルノの防止

2014年に成立した私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(通称リベンジポルノ被害防止法)ではプロバイダ責任法の特例を定めており、いわゆるリベンジポルノの公開を停止する措置を講じた場合に、発信者側(加害者側)に生じた損害についてプロバイダ等の賠償責任を免責している。

発信者情報の開示

以前は権利侵害事案の発信者情報の開示について法的な規定がなく、プロバイダ等は被害を訴える側に任意に情報を提供すれば発信者側から、拒否すれば被害者側から訴えられるリスクを負う板挟み状態となっていたが、この法律では開示請求について一定の基準を定めている。

権利侵害を受けたと主張する側は、当該情報による権利侵害が明らかである証拠があり、差し止めや賠償の請求などを行うために発信者情報が必要である場合に、プロバイダ等に発信者情報の開示を請求できる。プロバイダ側は可能な限り発信者に意見の聴取を行い、請求者の訴えが正当であると認められる場合は発信者の情報を開示する。

開示の対象となる発信者情報は、発信者の氏名、住所、メールアドレス、当該情報送信時のIPアドレス、当該情報の送信日時で、プロバイダ側はこれらの情報を取得して保管しておかなければならない。

具体的な手続きや判断基準は業界団体であるプロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会が発行する「プロバイダ責任制限法発信者情報開示ガイドライン」に基づいて行われている。

なお、発信者の情報を開示しなかったことで請求者側に生じた損害について、プロバイダ等自身が発信者ではなく故意や重い過失ではない場合には賠償責任が免責される。

(2018.7.9更新)

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試験出題履歴

ITパスポート試験 : 令3 問17 平30春 問9 平30春 問30 平23秋 問28
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。