G.fast
概要
G.fastとは、アナログ通話用のメタル回線で高速なデジタル通信を行うDSL(xDSL)技術の一つで、500mまでの距離を100Mbps~1Gbpsの速度で通信できる規格。ITU-TによってG.9700およびG.9701として標準化されている。DSL(Digital Subscriber Line)はアナログ音声通話のために敷設された電話回線を流用して高周波の信号を送受信する技術で、ADSLやVDSLなどの種類がある。主に1990年代末のインターネット普及の初期に、光ファイバー回線網への置き換えが進むまでの「繋ぎ」の技術としてよく利用された。
G.fastは2014年に策定された新しいDSL規格の一つで、主に建物内の配線として敷設されたメタル回線で高速なインターネット接続を行うために用いられる。100mまでの近距離ならば光ファイバー並みの最高1Gbpsで通信でき、仕様上の上限である500mでも100Mbps程度が確保される。
通信局→加入者宅方向(下り)と逆方向(上り)の通信を極めて短い時間ごとに切り替えるTDD(時分割複信:Time Division Duplex)方式を採用しており、上りと下りに割り当てる時間の割合を変化させることができる。最新の仕様では上下合わせて最高2Gbpsであるため、下りに多めの時間を割り当てれば1Gbpsを超える速度を出すこともできる。
G.fastは古いビルや集合住宅などで、加入者宅や居室まで光ファイバーケーブルを敷設するのが困難な場合に用いられ、通信事業者の拠点施設から建物の電気室などまでを光ファイバー回線で繋ぎ、そこから建物内の各部屋へG.fastで接続するといった使い方が一般的である。屋外の公衆回線網での利用は想定されていない。
(2023.4.13更新)