長音記号 【ー】 音引き / 伸ばし棒 / 長音符 / 長音符号

概要

長音記号(ー)とは、記号文字の一つである「ー」のこと。日本語の約物の一つで、母音を伸ばして発音する長音を意味する。一般的にはカタカナの文字の一つと認識されている。

外来語や擬音語・擬態語(オノマトペ)をカタカナ表記する際によく用いられる記号で、「コート」「ドカーン」のように、直前の母音を伸ばして発音することを指示する。通常は漢字やひらがなで表記する言葉をカタカナ書きする場合には用いられず、実際には長音で発音する箇所も「オオサカ」のようにひらがなに準じた表記とする。

ひらがな書きでは長音を「いいだ」「おおば」のように母音(あいうえお)で表すのが一般的で、通常は長音記号を用いないが、俗に、話し言葉や擬音語・擬態語、感嘆詞などを表記する際に「あちゃー」「おはよー」「ちゅどーん」のように用いることはある。かなり砕けた調子になるため正式な場面で使うべきではないとされる。

IT分野での長音記号の省略

伝統的に、電気工学など一部の工学系の学問分野では、3音以上の外来語について、英語の “-er” “-or” “-ar” “-y” などに由来する長音記号を省略する慣例がある。通信情報コンピュータなどの分野でもこの慣例を引き継いで、語末の長音記号を省略することが多い。

このルールによると、例えば、“computer” は「コンピュータ」、“server” は「サーバ」、“user” は「ユーザ」、“memory” は「メモリ」、“security” は「セキュリティ」、“binary” は「バイナリ」などとなる。一方、2音以下の場合、 “bar” は「バー」、“power” は「パワー」、“tree” は「ツリー」、“copy” は「コピー」となる。

一方、物理学や化学など理学系を中心とする学問分野にはそのような慣例はなく、一般的な表記と同じように長音記号を付ける。この相違は戦前から存在するとされ、戦後の国語審議会などでも「長音記号を付すのが原則だが、省く慣用がある場合はそれでよい」とされている。

工学・産業分野では、日本工業規格のJIS Z 8301で、この「3音以上は長音省略」ルールが明文化されたこともあり、“center” を「センタ」、“master” を「マスタ」、“synergy” を「シナジ」など、一般的な表記と乖離した極端な省略の徹底がわれることもあった。

2005年にJIS規格が改訂され、「長音を省略してもしなくても誤りとはしない」と柔軟な姿勢に転化した。2008年には大手ソフトウェアメーカーのマイクロソフトソフトウェア内の表示や関連文書などで長音記号を付す表記を原則とするよう転換し、現在ではIT分野でも「サーバー」「ユーザー」のように長音ありの表記が一般化しつつある。

(2023.8.14更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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