直流給電 【direct current power distribution】
概要
直流給電(direct current power distribution)とは、電気機器への外部からの給電を直流電流によって行うこと。特に、IT分野でコンピュータやネットワーク機器などへの給電を直流で行うこと。交流電流を用いる場合より変換ロスを軽減できるためデータセンターなどで導入されている。発電所から需要家までの電力の送配電システムは一定周期で電流の流れる方向が切り替わる交流電流(AC:Alternating Current)によって行われるが、電気機械のほとんどは常に一定の電流が流れる直流電流(DC:Direct Current)によって動作するため、本体内あるいは電源ケーブルに付属するACアダプタによってAC-DC変換を行っている。
データセンターなどで運用されるサーバなどの機器は、停電や瞬停、電圧変動などでトラブルが起きるのを防ぐため、無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)という機器を介して電力網からの給電を受けている。UPS内では外部からの交流電流を直流変換してバッテリーに充電し、そこからもう一度DC-AC変換して交流電流を機器側に流している。
UPSから受電した機器側では再度AC-DC変換を行うため、送電網から機器内部までに3回の変換(機器内部でDC-DCの降圧を行うのを含めれば4回)を繰り返しており、大きな電力のロスが生じている。電力の変換回路は発熱するため、機器内や施設内に排熱・冷却設備を用意しなければならず、その運用にも電力がかかる。
直流給電では、電力網から施設の受電設備が交流電流を受け取る際に一度だけ直流変換し、施設内の機器には直流で配電する。これにより、何度も繰り返し交直変換を行う無駄を排し、冷却コストも軽減することができる。専用の設備を導入する必要があり、内部に設置する機器も直流給電に対応している必要がある。
実用化が先行したのは48Vの比較的低電圧で供給する方式だが、低電圧だと施設内の電気配線による抵抗損失が大きくなり肝心のエネルギー効率が悪化してしまうため、300V以上の高電圧「HVDC」(High Voltage Direct Current)で給電する方式が開発され、導入が進んでいる。