ファクトリーリセット【factory reset】マスターリセット/master reset
概要

電子機器は使用を続けるうちに、利用者による設定変更やデータの保存、アプリケーションの導入が積み重なっていく。ファクトリーリセットは、これらの変更や蓄積されたデータをすべて取り消し、製造直後に近い状態へ復元する機能で、複雑な内部状態を保持する機器に搭載されている。
スマートフォンの場合、利用者が保存した写真や文書、後から導入したアプリケーションは記憶装置から消去される。一方、メーカーが出荷時に組み込んだ標準アプリは削除されないが、保持していた利用履歴や設定、アカウントとの紐付けは消去され、初回起動時の状態に戻る。
ファームウェアやオペレーティングシステム(OS)の扱いは機器によって異なる。古い機器では出荷当時の旧バージョンへ巻き戻す方式も見られたが、近年の多くの機器では、適用済みのシステム更新は維持したまま、設定領域と利用者データ領域のみを初期化する方式が一般的である。組み込み機器など一部の製品では、本体に保存された初期バージョンのシステムで強制的に上書きされる場合もある。
実行方法は機器により異なり、設定メニューからソフトウェア操作で行うのが一般的である。ただし、システムが起動しない致命的な不具合に備え、本体の物理ボタンを長押しする方法や、専用の穴にピンを差し込んでリセットスイッチを作動させる方法など、ハードウェアから直接命令を送る手段が用意されている機器も多い。
ファクトリーリセットを行うと、記憶装置内のデータは通常の操作では復元できなくなる。ただし、これはデータの完全な消去を保証するものとは限らず、外部ストレージやクラウド同期領域は対象外となることもある。記録データの消去を目的とする機能ではないため、機器を譲渡や処分する際に確実な情報の抹消が必要な場合は、メーカーが提供する消去方式についても確認しておくことが望ましい。