第1種の誤り【type I error】第一種過誤
概要

仮説検定では、何らかの主張を立証するために「効果がない」「差がない」などとする仮説を「帰無仮説」とし、本来主張したい内容を「対立仮説」として設定する。調査や実験で得たデータから統計量を計算し、あらかじめ定めた基準を満たせば帰無仮説を棄却し、対立仮説を支持する。
この判断は確率に基づいて行われ、一定の割合で誤りが生じ得る。実際には帰無仮説が正しい、すなわち主張が成立していないにもかかわらず、偶然のばらつきによって帰無仮説が棄却され、対立仮説が採用されてしまうのが第1種の誤りである。
具体例として、新薬の効果を検証する試験が挙げられる。「新薬に効果はない」を帰無仮説とした場合、実際には効果がないにもかかわらず、検定の結果として誤って「効果がある」と判定されてしまうケースがこれに該当する。効果のない薬が効果ありと判断されて世に出る恐れがあるため、医療や薬品開発の分野では特に慎重な扱いが求められる。
第1種の誤りが生じる確率は「有意水準」と呼ばれ、検定を行う前にあらかじめ設定される。通常はギリシャ文字のα(アルファ)で表され、一般に5%や1%といった値が用いられる。有意水準を5%に設定した場合、帰無仮説が真であっても理論上5%の確率で誤って棄却されることになる。統計的に「有意」と判定された結果であっても、第1種の誤りが生じる可能性は完全には排除されない。
これに対し、実際には対立仮説が正しいにも関わらず帰無仮説を棄却できない過誤は「第2種の誤り」と呼ばれる。先の新薬の例でいえば、実際には効果があるのに「効果はない」という帰無仮説を棄却できず、効果が確認できなかったと判断してしまう状況がこれに当たる。第1種の誤りと第2種の誤りは異なる種類の誤判定であり、有意水準を厳しくして第1種の誤りを起こりにくくすると、第2種の誤りが増えやすくなるトレードオフの関係にある。両者のリスクを同時にゼロにすることはできないため、検定を設計する際には、誤りがもたらす影響の大きさに応じて許容できるバランスをどう取るかが重要な検討事項となる。