ファンチャート【fan chart】

ファンチャートとは?

複数のデータ系列の変動を比較するグラフの一種で、ある時点の値を基準として、その後の推移を基準値に対する割合で折れ線グラフとして描いたもの。グラフ左端の起点ではすべての系列が同じ値(1.0や100%)に重なり、そこから右へ進むにつれて各線が上下に広がっていく形状が、開いた扇(fan)に似ていることからこのように呼ばれる。
ファンチャートのイメージ画像

すべての系列を特定の基準値に対する割合に変換する「正規化」を行い、スケールを揃える。初期値や値域が大きく異なる系列同士でも、増減の度合いを同じ尺度で比較できる。絶対値の折れ線グラフでは規模の大きい系列の変化が目立ち、小さい系列の動きが埋もれやすいが、ファンチャートではその問題が生じない。

複数の指標の時系列における変化の仕方を比較したい場合に用いられる。企業ごとの売上高や株価の推移、異なる国のGDP成長率、人口動態など、スタートラインの異なる複数の対象を公平に比較したい場面で活用される。基準点には、新製品の発売日や特定の政策が導入された年など、比較上の意味を持つ時点が選ばれることが多い。

もう一つの用法として、将来予測の不確実性を表す形式がある。中央に最も可能性の高い予測線を置き、その上下に信頼区間を段階的な帯として重ねることで、予測の幅を扇形に示す。帯は外側ほど発生確率が低く、期間が先になるほど広がる傾向があり、50%・75%・90%といった予測区間ごとに色や濃淡で区別される場合が多い。この形式はイギリス中央銀行(イングランド銀行)が金融政策報告書で採用したことで広く知られるようになり、インフレ率や経済成長率の見通しを示す際に中央銀行や国際機関でも用いられている。

注意点として、基準時点の値が一時的に異常な高値・低値であった場合、その後の推移全体のグラフ形状が下方・上方に大きく歪むため、適切な基準点の選定が求められる。また、絶対値ではなく比率を可視化する性質上、実際の規模感はグラフから直接読み取れないことに留意が必要である。

この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
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