Diffie-Hellman鍵交換 【Diffie-Hellman key exchange】 DHE / ディフィー・ヘルマン鍵共有 / DH鍵交換

概要

Diffie-Hellman鍵交換(Diffie-Hellman key exchange)とは、信用できない通信経路で安全に暗号鍵など秘密の情報を交換するための手順の一つ。公開鍵暗号の原型となった手法で、1976年にホイットフィールド・ディフィー(Bailey Whitfield Diffie)氏とマーティン・ヘルマン(Martin Edward Hellman)氏によって考案された。

暗号化復号に同じ暗号鍵を用いる共通鍵暗号秘密鍵暗号)は、インターネットのような危険な経路メッセージをやり取りする送り手と受け手が事前に同じ暗号鍵を共有する必要があるが、鍵の受け渡しにはメッセージと同じ危険な経路を使うわけにはいかず、これとは別に安全な交換手段を用意しなければならないという難問(鍵配送問題)があった。

Diffie-Hellman鍵交換では離散対数問題と呼ばれる数学上の問題を利用する。大きな素数pについて、p未満の自然数gおよびxを選択し、gのx乗をpで割った余り(剰余)mを算出する。pとgを既知として、あるxを与えてmを算出するのは容易である一方、あるmを元に対応するxを割り出すのは困難である(効率の良い計算法は見つかっていない)という非対称性がある。

今、AとBの二者が鍵を交換したい時、まずpとgを決定して共有し(この二つは第三者に知られても構わない)、AとBはそれぞれ自分だけの秘密の自然数aとbを決める。AはBにgのa乗をpで割った余り i (= ga mod p )を送り、BもAに同様の値 j = gb mod p を送る。Aは送られてきた j に対して同様の計算 k = ja mod p をい、Bも i について同様の計算をうと、いずれも同じkとなり、これを暗号鍵とする。

コンピュータの計算能力に対して素数pのが十分に大きければ、鍵の交換過程で送受信される情報を第三者が盗聴しても、それだけでは鍵そのものを割り出すことは困難となる。ただし、Diffie-Hellman鍵交換そのものだけでは、二者の通信に割り込んで情報をすり替えて相手方になりすます中間者攻撃を防げない。

また、長大な桁数の素数を探索すること自体が簡単ではなく、実用上は多くのシステムで同じ素数が繰り返し使い回されている実態が報告されている。素数が固定されている前提であれば解読の困難性が下がってしまう問題が指摘されている。

(2018.6.29更新)

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この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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