FTPS【FTP over SSL/TLS】

IPネットワーク上でファイルを送受信するFTP(File Transfer Protocol)は暗号化の仕組みを持たず、ファイルの送受信に使う制御用の接続とデータ転送用の接続がいずれも平文で行われる。インターネットなどのオープンなネットワークでそのまま利用すると、通信経路上でユーザー名やパスワード、転送内容が第三者に読み取られる危険があった。
FTPSはこの弱点を補うために開発されたもので、Web通信の暗号化(HTTPS接続)にも用いられる「SSL」(Secure Socket Layer)および後継の「TLS」(Transport Layer Security)によって通信を暗号化し、盗聴や改竄を防ぐ。あわせてデジタル証明書による相手の認証も行われ、なりすましへの対策も可能となっている。
FTPSには「Explicit」(明示)モードと「Implicit」(暗示)モードの二方式がある。前者は、まず通常のFTP接続を確立してから「AUTH TLS」(またはAUTH SSL)コマンドによって暗号化通信に切り替える方式で、標準のFTPポートを使うため既存環境との互換性を保ちやすい。後者は、接続の最初から暗号化が有効になっており、専用のポート番号(990番)を使用する。
FTPSは、FTPの枠組みを維持したまま暗号化を追加できるため、既存のFTPサーバやFTPクライアントを活かした導入が可能な場合がある。ただし、制御用とデータ転送用で複数のポートを使う構造上、ファイアウォールの設定が複雑になりやすく、通信を許可する経路を適切に調整する必要がある。企業間のファイル送受信やWebサーバへのアップロードなど、セキュリティ要件の厳しい場面で使われる。
なお、FTPSと名前が似た技術に「SFTP」があり、ファイルを安全に転送するという用途は似ているものの、技術的にはまったく別物である。SFTPは「SSH」(Secure Shell)というプロトコルの上で動作するファイル転送の仕組みであり、FTPを拡張したものではない。規格の設計が根本から異なるため、互換性はなく、用途や環境に応じて使い分けられる。