読み方 : フィップス
FIPS【Federal Information Processing Standards】連邦情報処理標準
概要
FIPSとは、アメリカ合衆国の連邦政府機関が軍事以外の用途で購買・利用する情報・通信機器が満たすべき技術標準を定めた規格。工業技術の標準化を推進するNIST(米国立標準技術研究所)によって策定されている。暗号化アルゴリズムやセキュリティ要件などを規定している。

具体的には、「AES」などの暗号アルゴリズム、「SHA-2」などのハッシュ関数、乱数生成器の要件、デジタル署名の方式など、情報セキュリティに関わる技術仕様が多くを占める。各規格には「FIPS 140-3」「FIPS 197」のように固有の番号が付され、それぞれが独立した文書として公開されている。
中でも広く知られているのが「FIPS 140」シリーズである。暗号モジュールのセキュリティ要件を定めたこの規格は、ハードウェアやソフトウェアの暗号実装が一定水準を満たしているかどうかを評価する基準として参照される。レベル1からレベル4まで四段階の認定区分があり、連邦政府機関向けのシステムやセキュリティ製品では、このFIPS 140認定の取得が実質的な条件となる。
FIPS準拠が直接的に義務付けられているのは米連邦政府だが、政府と取引する民間企業や、医療・金融など規制の厳しい分野においても、FIPSへの準拠が製品選定の判断基準の一つとなっている。日本企業であっても、米国市場向けの製品開発やグローバルな調達基準への対応が必要な場合には、FIPS認定の有無が重要になることがある。
NISTはFIPSの各規格を継続的に見直しており、暗号技術の進歩や脅威の変化に応じて改訂・廃止が行われる。例えば、暗号標準の「DES」(FIPS 46-3)が廃止されて「AES」(FIPS 197)で置き換えられた例がよく知られる。近年では量子コンピュータへの耐性を持つ「耐量子暗号」をFIPSとして標準化する動きが進んでおり、既存の暗号基盤からの移行を見据えた議論や研究開発が国際的に広がっている。
(2026.5.28更新)