電子署名 【electronic signature】 デジタル署名 / digital signature
概要
電子署名(electronic signature)とは、文書やメッセージなどのデータの真正性を証明するために付加される短いデータ。作成者を証明し、改竄やすり替えが行われていないことを保証する。欧米で紙の文書に記されるサイン(signature)に似た働きをするためこのように呼ばれる。対になる2つの暗号鍵を用いる公開鍵暗号の原理と暗号学的ハッシュ関数を組み合わせた仕組みで、メッセージの送信者は本人しか知らない秘密鍵と本文を元に一定の手順で算出した固定長の符号をメッセージに添付し、相手方に送る。
受信者は受け取った本文と、秘密鍵と対になる送信者の公開鍵などを用いて一定の手順で同様の符号の算出を試み、添付されたものと照合する。両者が一致すれば、メッセージが確かに送信者本人のものであり、かつ伝送途上で第三者による改竄やすり替えが行われていないことが確認できる。
電子署名はインターネットなど信頼できない経路を通じたメッセージの送受信でよく用いられるが、文書の安全な保管などにも用いられる。作成者が後になって自分が作成したことを否定するのを防ぐ(否認防止)証拠として用いられる場合もある。
公開鍵証明書とPKI
受信者が署名を検証するには送信者の公開鍵が必要だが、インターネットなど信頼できない経路で伝送すると攻撃者によるすり替えの危険があるため、公開鍵データに送信者と受信者の双方が信用する第三者のデジタル署名を添付するという手法が考案された。これをデジタル証明書(公開鍵証明書)と呼び、信頼できる第三者を認証局(CA:Certificate Authority)という。
証明書の真正性を確認するには認証局の公開鍵が必要であり、これは上位の認証局によって署名されたデジタル証明書によって配布される。このような信頼の連鎖の起点となる最上位の認証局はルート認証局(Root CA)と呼ばれ、実用上は送信者と受信者が同じルート認証局の証明書(ルート証明書)を持っていれば、それに連なる任意の認証局の証明書を用いて鍵を配送することができる。
このような安全な公開鍵配送のための社会的なインフラのことをPKI(Public Key Infrastructure)と呼び、インターネットなどで電子署名を利用するソフトウェアにはあらかじめ世界的に有力なルート認証局の証明書が組み込まれている。
電子署名とデジタル署名の違い
「電子署名」(electoronic signature)とは本来、紙の文書における押印やサインに相当する証明手段を電子的な手段で実現したもの全般を表す総称であり、「デジタル署名」(digital signature)は公開鍵暗号の原理に基づく電子署名の一方式である。
電子署名の方式としては他に、ペン型の入力機器で文書にサインを書き入れる電子サインなどがあるが、最も有力で普及しているデジタル署名を電子署名の同義語のように用いることが多い。