読み方 : ハッシュかんすう

ハッシュ関数 【hash function】 ハッシュアルゴリズム / hash algorithm / 要約関数 / メッセージダイジェスト関数 / message digest function

概要

ハッシュ関数(hash function)とは、入力データに一定の手順で計算を行い、データの長さによらずあらかじめ決められた固定長の出力値を得る関数。暗号技術の一部などとして応用されている。

解説 ハッシュ関数は同じ入力からは必ず同じ値が得られ、どのような長さの入力からも同じ長さの値を得る。得られた値は「ハッシュ値」(hash value)と呼ばれる。値の長さは実用上は数バイトから数十バイト程度とすることが多い。計算過程で情報の一部が欠落するため、出力値(だけ)を元に入力データの候補を推測することはできても、完全に元通りに復元することはできない。

ハッシュ値は元のデータの特徴を表す短い符号として利用することができ、データの比較や検索を高速化することができる。例えば、複数の大きな容量のファイルの内容が同一であるかを比較する際に、端から順にすべてのデータを照合すれば時間が掛かるが、それぞれハッシュ値を計算しておけば一瞬で比較が完了する。用途や特性により様々な計算手法があり、データ改竄や破損の検知、類似データ探索などにも応用される。

暗号学的ハッシュ関数 (一方向性ハッシュ関数)

ハッシュ関数のうち、暗号電子署名などセキュリティ上の用途に適した性質を持つものを「暗号学的ハッシュ関数」あるいは「一方向性ハッシュ関数」という。

これは入力データと出力値の間に規則性がなく、入力が少しでも異なれば類推不能なまったく異なる出力値となる。ある特定の出力値が得られるような入力を効率よく求めることができない「弱衝突耐性」や、同じ出力値となる別の入力を容易には見つけられない「強衝突耐性」などの性質を備えている。

これらの性質により、パスワードなどの秘密の情報をハッシュ値として伝送あるいは保管すれば、認証などで入力値と登録値が一致するかどうかは元の情報が無くても検証できる一方、攻撃者がハッシュ値を盗み取っても元の情報に復元することはできない。また、デジタル署名が施されたメッセージを改竄して同一の署名を付け直すといった攻撃も阻止できる。

標準規格として1990年代に考案された「MD5」(Message Digest 5)や「SHA-1」(Secure Hash Algorithm 1)がよく知られ、長年に渡り様々な分野で利用されてきた。これらは2010年代にはハッシュ値の短さ(MD5は128ビットSHA-1は160ビット)や攻撃手法の研究が進んだことからセキュリティ用途としては十分安全とは言えない状況になっており、「SHA-2」や「SHA-3」など新しい規格への移行が推奨されている。

(2024.2.14更新)

他の用語辞典による「ハッシュ関数」の解説 (外部サイト)

資格試験などの「ハッシュ関数」の出題履歴

▼ ITパスポート試験
令1秋 問93】 ディジタル署名やブロックチェーンなどで利用されているハッシュ関数の特徴に関する、次の記述中の a、b に入れる字句の適切な組合せはどれか。

▼ 基本情報技術者試験
令7修7 問28】 暗号学的ハッシュ関数における原像計算困難性,つまり一方向性の性質はどれか。
令6公 問2】 キーが小文字のアルファベット1文字(a,b,…,z のいずれか)であるデータを,大きさが10のハッシュ表に格納する。ハッシュ関数として,アルファベットのASCIIコードを10進表記法で表したときの1の位の数を用いることにする。
令5修7 問28】 ファイルの提供者は,ファイルの作成者が作成したファイルAを受け取り,ファイルAと,ファイルAにSHA-256を適用して算出した値Bとを利用者に送信する。
令4修7 問39】 暗号学的ハッシュ関数における原像計算困難性,つまり一方向性の性質はどれか。
令3修12 問44】 入力パスワードと登録パスワードを用いて利用者を認証する方法において,パスワードファイルへの不正アクセスによる登録パスワードの盗用防止策はどれか。
令3修6 問8】 自然数をキーとするデータを,ハッシュ表を用いて管理する。キーxのハッシュ関数 h(x) を h(x) = x mod nとすると,任意のキーaとbが衝突する条件はどれか。
令3修6 問36】 ディジタル署名などに用いるハッシュ関数の特徴はどれか。
令1修12 問9】 キーが小文字のアルファベット1文字(a,b,…,z のいずれか)であるデータを,大きさが10のハッシュ表に格納する。ハッシュ関数として,アルファベットのASCIIコードを10進表記法で表したときの1の位の数を用いることにする。
令1修12 問35】 ディジタル署名などに用いるハッシュ関数の特徴はどれか。
令1秋 問40】 ファイルの提供者は,ファイルの作成者が作成したファイルAを受け取り,ファイルAと,ファイルAにSHA-256を適用して算出した値Bとを利用者に送信する。
平30修7 問36】 ディジタル署名などに用いるハッシュ関数の特徴はどれか。
平29修12 問7】 キーが小文字のアルファベット1文字(a,b,…,z のいずれか)であるデータを,大きさが10のハッシュ表に格納する。ハッシュ関数として,アルファベットのASCIIコードを10進表記法で表したときの1の位の数を用いることにする。
平27修12 問37】 ディジタル署名などに用いるハッシュ関数の特徴はどれか。
平25秋 問38】 ディジタル署名などに用いるハッシュ関数の特徴はどれか。
平23秋 問42】 入力パスワードと登録パスワードを用いて利用者を認証する方法において,パスワードファイルへの不正アクセスによる登録パスワードの盗用防止策はどれか。