NATトラバーサル 【NAT traversal】 NAT越え / NAT-T
概要
NATトラバーサル(NAT traversal)とは、NATを用いて外部と接続されているプライベートネットワーク内の機器が、直接インターネットに接続されているように振る舞うことができるようにする技術。様々な方式の総称。NAT(ネットワークアドレス変換)はネットワーク境界上の中継機器が特定のプライベートIPアドレスとグローバルIPアドレスを対応付け、転送時に宛先アドレスなどを書き換えて通信する技術で、少ないグローバルアドレスで多数の機器を接続できるようにすることができる。
これはWeb閲覧など内部側の機器が外部のサーバに接続を開始する利用形態が想定されている。グローバル側のどのアドレスのどのポート番号が内部のどの機器に紐付けられるかは動的に切り替わるため、外部から内部の機器にアクセスして通信を開始するような使い方はできない。
この制約により、通信主体の双方がインターネットに直接接続されている前提で動作する通話(VoIP)ソフトやインスタントメッセンジャー、オンラインゲーム、VPN、ファイル共有ソフト(P2Pソフト)などは正常に動作しないことがある。
NATトラバーサルはこの制限を緩和してこれらのアプリケーションが機能するよう取り計らう。NATに様々な方式があることから、NATトラバーサルも様々な方式の総称である。狭義には、IPsecによる通信がNATを通過できるようにする「IPsec NAT-Traversal」(IPsec NAT-T)を指すことがある。
標準化された汎用的な手法としては「STUN」(Simple Traversal of UDP over NATs)や「TURN」(Traversal Using Relay NAT)などがよく知られており、デジタル家電などでは「UPnP」(Universal Plug and Play)を応用した手法が用いられることもある。SIPを利用する音声通話やビデオ会議などの分野では「B2BUA」(Back-To-Back User Agent)や「ICE」(Interactive Connectivity Establishment)などの方式も用いられる。