IPv6アドレス 【IPv6 address】
概要
IPv6アドレス(IPv6 address)とは、インターネットなどで用いられるIP(Internet Protocl)のバージョン6(IPv6)における機器の識別番号(アドレス)。128ビットの値で、約340澗(1000京の3400京倍)台の機器を識別することができる。現在のインターネットで一般的に用いられているIPv4アドレスの後継として設計されたもので、アドレス割り当ての逼迫を解消して様々な用途に使用できるよう、2128=340澗2823溝6692穣938𥝱4634垓6337京4607兆4317億6821万1456個の広大なアドレス空間を使用できる。
表記法
IPv4では「198.51.100.1」のように8ビットずつ区切って十進数を4つ並べて表記したが、同じ記法だと長くなりすぎるため、16ビットずつ「:」(コロン)で区切って16進数で表記し、0が連続する区間は省略するという記法を採用している。例えば、「2001 : 0db8 : 0000 : 0000 : 0000 : 0123 : 0000 : 00ab」は「2001 : db8 :: 123 : 0 : ab」のように表記する。
種類と形式
一般的な一対一の通信に用いられる「ユニキャストアドレス」は128ビットを前半64ビットと後半64ビットに分け、前半はルーティングなどでネットワークの識別に用いる「ネットワークプレフィックス」、後半は単一ネットワーク内での機器(厳密には機器内のネットワークインターフェース)の識別に用いる「インターフェースID」となっている。
ネットワークプレフィックスのうち上位側48ビット以上はインターネット内でネットワークを識別する「(グローバル)ルーティングプレフィックス」、下位側16ビット以下は単一組織内の管理する複数のネットワークを識別する「サブネットID」となっている。どちらに何ビット割り当てるかは運用組織ごとに決める。
複数の機器が同じユニキャストアドレスを共有することができ、送信者からネットワーク的に最も近いノードに誘導される「エニーキャスト」という仕組みが組み込まれている。DNSルートサーバやCDN(コンテンツデリバリネットワーク)のように全世界に同じ役割のサーバを分散配置する必要がある用途で使用する。
インターネットには接続せず(できず)、当該ネットワーク内でのみ有効な「リンクローカルアドレス」は、先頭10ビットが「1111111010」、続く54ビットが「0」、後半64ビットが機器ごとのインターフェースIDとなる(fe80::/64)。機器自らを固定的に指し示すループバックアドレスは末尾が「1」で残りすべてが「0」の「0:0:0:0:0:0:0:1」(::1)が用いられる。
複数の機器への一斉送信に用いられる「マルチキャストアドレス」は、先頭8ビットが「11111111」で、続く4ビットが通信方式などを指定する「フラグ」、続く4ビットが有効範囲を示す「スコープ」、残り112ビットが送信対象の集団を識別する「グループID」となっている。
歴史と運用
IPv6の最初の標準規格は1995年にRFC 1883として発行され、その後改訂や詳細仕様、拡張仕様の策定が行われてきた。ちょうどインターネットが一般に開放される頃だったが、インターネットの普及はIPv4をベースに進められ、2010年代にはIPv4アドレスが逼迫する事態を招いた。
アドレス逼迫問題への対応やネットワーク運用の効率化などを目的にIPv6への移行が模索されたが、IPv4とは直接の互換性がないためインターネット全体でプロトコルの置き換えを進めるのは容易ではなく、なかなか普及が進まない状況が続いた。
2010年代後半には大手ネットサービスがサーバをIPv6対応にしたり、一般のインターネットサービスプロバイダ(ISP)も契約者へのIPv6アドレスの払い出しやIPv4ネットワークとの中継サービスなどを展開するようになり、2020年時点でインターネットの通信流量(トラフィック)全体の数割がIPv6へ移行したと見られている。