フィルターバブル 【filter bubble】
概要
フィルターバブル(filter bubble)とは、大手ネット事業者がサービス内容を利用者ごとに最適化することで、本人が望む情報ばかりに接するようになり社会的な孤立や分断が進む現象。ニュースサイトが自分と近い思想の発行元や著者の記事ばかり推薦してくるような状況が該当する。Web検索やニュース配信などのネットサービスには「フィルタリング」(filtering)の機能があり、様々な条件に基づいて内容が取捨選択される。これには、利用者の登録情報、過去のアクセス履歴、属性や関心、嗜好などに基づいて、一人ひとりに適した内容に「個人化」(パーソナライズ)する仕組みも含まれる。
日常接する情報サービスが過度にパーソナライズされると、本人の思想や世界観、利益、願望にマッチした「望ましい」検索結果やニュースばかりが並ぶようになり、新しい視点や社会の関心事から切り離され、社会に対する視野が狭まる可能性があるとされる。
この様子を、フィルタによって形成された泡(バブル)に一人ひとりの利用者が閉じ込められているという意味込めて「フィルターバブル」という語が考案された。各々が「見たいものだけ見る」ようになった社会では、民主主義を基礎付ける開かれた市民的な議論も困難になる危険性が指摘されている。
この概念は2010年頃に米インターネット活動家のイーライ・パリサー(Eli Pariser)氏によって考案され、2011年に刊行された著書 “The Filter Bubble: What the Internet Is Hiding from You” (邦題:閉じこもるインターネット ― グーグル・パーソナライズ・民主主義)によって広く知られるところとなった。氏はフィルターバブルが懸念されるシステムの例としてGoogle検索とFacebookニュースフィードを挙げている。
似た概念に「エコーチェンバー現象」が知られている。これは2010年代にSNSの本格的な普及と市民生活への浸透、サービスの高度化が進んだことで見られるようになった現象で、自分と似た人とばかり交流し、自分と似た人の発言ばかり好んで目にすることで視野が狭くなり、集団で偏った信念や思想を互いに強化し合って過激化してゆく状態を指す。