不正のトライアングル 【fraud triangle】
概要
不正のトライアングル(fraud triangle)とは、人が不正行為をはたらくのは「機会」「動機」「正当化」の三要素が揃った時であるとするモデル。アメリカの犯罪学者ドナルド・クレッシー(Donald R. Cressey)氏が提唱した理論をもとに会計学者のスティーブ・アルブレヒト(W. Steve Albrecht)氏がモデル化した。主に組織内で従業員が不正行為を犯すに至るメカニズムを分析した理論で、人は三つの重要な要因が揃ったときに不正にはしるため、三つが揃わないようにするという観点で対策を立てる必要があると考える。
一つ目は不正を企図する「動機」(motive)あるいは「圧力」(pressure)で、そもそも本人がなぜ不正を働こうと思うのかという誘因や必要性を表す。例えば、「投資に失敗して多額の借金を抱えてしまった」「まとまったお金を用意できれば家族の重い病気を治療できる」といったことである。
二つ目は不正を行う「機会」(oppotunity)で、本人にとって不正を成功させるチャンスとなる状況を指す。例えば、「会計管理や入出金が一人に任されている」「監査や内部統制が機能しておらず経費精算をチェックする仕組みがない」など、不正を行っても発覚しにくい環境が該当する。
三つ目は本人の主観として不正を「正当化」(rationalization)してしまう心の働きである。例えば、「これは借りるだけで、投資で増やして返済すれば良い」「自分の待遇は能力や実績に照らして不当に低く、埋め合わせが必要である」など、自分に都合の良い理屈を考え出して倫理的な抵抗感を失わせる心理的作用を指す。
(2021.5.5更新)