物理セキュリティ【physical security】
概要

通信ネットワークなどサイバー領域のセキュリティ対策をどれほど強化しても、重要な情報を保管した施設に誰でも立ち入ることができ、機器の操作やデータの持ち去りが容易にできてしまう状態では、攻撃を防ぐことはできない。物理セキュリティは、正規の権限を持たない者が施設や機材に物理的に接触することを防ぐために講じられる対策である。
具体的には、生体認証などを用いた重要施設の入構管理や重要区画の入退室管理がある。共連れやすり抜けを防ぐ「インターロックゲート」(mantrap)、一人での入室を禁止する「TPMOR」(Two Person Minimum Occupancy Rule)、不正な入退場を防ぐ「アンチパスバック」(anti-passback)などの仕組みも、運用管理の一環として用いられている。
機器レベルの対策としては、監視カメラの設置による不審な行動の監視や記録、鍵付きの筐体やセキュリティワイヤーによる機材の持ち出し阻止などがある。重要書類を処分するシュレッダーの導入も、情報漏洩を防ぐ物理セキュリティの一つとして扱われる。近年では自然災害による設備の損壊や停電に備え、耐震構造の採用や自家発電設備の配備といった事業継続のための環境維持も重視されている。
同じ物理世界における対策であっても、人間の行動そのものに関わる事柄は「人的セキュリティ」として区別されることが多い。パスワードをメモに残さない、離席する際に画面を操作可能な状態のままにしない、機密情報をUSBメモリなどで外部に持ち出さないといった事柄がこれに当たる。物理セキュリティが施設や設備という対象を守るのに対し、人的対策は従業員などの行動を対象とする点で異なる。
近年ではリモートワークの普及により、自宅や外出先における端末の管理や、公共の場での画面の覗き見対策なども、物理セキュリティの観点から重要性を増している。データセンターやクラウド基盤では、論理的なアクセス制御と物理的な入退室制御を連動させ、監査ログや認証基盤と組み合わせて多層的に管理する設計が広がっている。