ハッキング【hacking】ハック/hack
概要

本来のハッキングは、高い技術力と創意工夫によってシステムの制約を乗り越え、想定外の方法で問題を解決したり優れたプログラムを生み出したりする建設的な活動を意味していた。1950〜60年代のマサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする初期のコンピュータ技術者コミュニティで生まれた用語であり、独創性や技術的熟練への称賛を込めた肯定的な表現として用いられていた。
こうした原義は技術者の間では今日も残っており、短期間で集中的に共同開発を行うイベント「ハッカソン」(hackathon)はその例である。一方、コンピュータやネットワークの社会的普及とともに不正アクセスや情報窃取が社会問題化し、一般にはハッキングをサイバー攻撃、コンピュータ犯罪の総称として捉える認識が定着した。
不正なハッキングの手法としては、ソフトウェアの脆弱性の悪用、認証情報の窃取、通信の盗聴、設定不備の利用などがある。これらは情報の漏洩や改竄、サービス停止といった被害を引き起こし、各国で法的規制の対象となっている。近年では国家関与が疑われる大規模な攻撃やランサムウェアの横行など、国家安全保障や経済活動を脅かす重大な脅威として位置付けられる事例も増えている。
悪意ある侵害行為を「クラッキング」(cracking)と呼んで区別すべきとする考え方もあるが、報道や日常語では依然として「ハッキング」と表現することが主流であり、この呼び分けは一般に広く定着するに至っていない。近年では、許可を得てシステムの脆弱性を検査する技術者を「ホワイトハットハッカー」(日本ではホワイトハッカー)、不正目的で攻撃を行う者を「ブラックハットハッカー」(同ブラックハッカー)と呼ぶ区別も行われている。「グレーハットハッカー」のように、両者の中間に位置する概念もある。