メディアリテラシー 【media literacy】
概要
メディアリテラシー(media literacy)とは、情報を伝達する媒体(メディア)を使いこなす基礎的な素養のこと。メディアを通じて情報を取得・収集し、取捨選択および評価・判断する能力や、自らの持つ情報をメディアを通して適切に発信できる能力を指す。現代人は生活や仕事に必要な情報の多くをテレビや新聞、雑誌などのマスメディアやインターネット上のサイトやサービスなどの情報媒体を通じて得ているが、媒体にはそれぞれ物理的・技術的・商業的な制約や、発信者の立場や意図、経済的・政治的・思想的な背景などから偏りや歪みを避けることはできず、時には誤りや意図的な誇張、改変、虚偽などが含まれることもある。
情報の偏りにも様々な背景があり、例えば、紙面や放送時間の制約から送り手が重要でないと判断した話題が取り上げられなかったり扱いが小さくなることがある。商業的に運営されている媒体が大口広告スポンサーの不祥事を意図的に無視したり、自社や業界が関連する制度を取り上げる際に自らに有利な情報や論調を流すといった媒体の利害に基づく歪みが生じることもある。
また、政治や経済についての話題では、思想的に政権党に親和的な媒体とそうでない媒体で同じ事実について肯定的な論調と否定的な論調に分かれたり、特定の勢力に有利な、あるいは不利な情報を多く流すと行った操作が行われることも珍しくない。
情報の受け手としてのメディアリテラシーは、このような媒体の特性や限界、送り手の意図や背景などを読み解き、メディアから得た情報を鵜呑みにしたり全否定するのではなく、可能な限り客観的かつ正確に評価して活用できるようにする基本的な知識や技能の総体を指す。
1990年代まではメディアリテラシーといえばマスメディアの情報を読み取る受け手としての能力のみを指したが、現代ではインターネットを通じて誰でも公共に情報を発信することができるようになり、自らの持つ情報を適切な手段で発信する基礎的な能力もメディアリテラシーの範疇に含まれるようになった。こうした送り手としての素養はいわゆる「ネットリテラシー」の一部でもある。