スマートグリッド 【smart grid】
概要
スマートグリッド(smart grid)とは、電力の送配電網に情報システムを統合し、高度で自律分散的な需給調整機能を持たせたもの。発電所や変電所、企業や家庭の配電盤、電力計などにセンサーやコンピュータを導入して通信網で相互に接続・通信することにより、それらの情報を活用して従来より高度できめ細かな制御を行なうというコンセプトである。
電力会社では、検針や手続き、保守の手間やコストが削減できるほか、需要家の動向をリアルタイムに把握することで発送電計画の精度を高め、省エネや信頼性の向上を実現できるとされている。
電力の品質や供給体制は国によって大きく異なり、発送電の事業者が制度上分離している国や、電力網の安定性が低い国で特にスマートグリッドへの期待・関心が高い。
スマートメーター (smart meter)
電力計にデジタル計測機能や簡易なコンピュータ、通信機能を内蔵し、送配電網や建物内のシステムと通信・連携させることができるようにしたものをスマートメーターという。
電力会社では遠隔から自動で検針したり、電力の供給開始や中断、アンペア設定の変更などを行うことができるようになり、電力網の運用コストを低減できる。
また、契約者側では宅内のコンピュータなどと繋ぐことで、現在の電力消費量や電気料金、過去の履歴や将来の予測などの把握が容易になる。
電気料金の安い深夜に蓄電池や電気自動車などに充電して高額な時間帯の受電量を抑制したり、自家発電設備や太陽光発電パネルの余剰電力を電力会社や近隣の需要家に売却するといったことも可能になるとされる。
HEMS (Home Energy Management System)
家庭内の電気設備や家電製品の稼働状況や電力使用量を監視・記録し、また、設備を遠隔から制御することにより、電力使用量や電力料金の低減・最適化を図る情報システムを「HEMS」(Home Energy Management System)という。
家庭内の照明や家電製品、電気設備、電力配線を監視し、各機器の電力使用状況をリアルタイムに表示したり、遠隔から自動的に電源のオン・オフや給電量の調整などを行い、電力の浪費を減らすことができる。
また、家庭用燃料電池や太陽光発電パネル、家庭用蓄電池など発電・蓄電設備がある場合には、電力会社からの受電・送電設備と一括して管理し、電気料金の高い時間帯に積極的に発電・売電したり、安い時間に充電するといった制御を行い、電力使用の最適化を行う。
BEMS (Building Energy Management System)
ビル内の各電力設備の稼働状況や電力使用量を監視・記録し、また、設備を遠隔から制御することにより、電力使用量や電力料金の低減・最適化を図る情報システムを「BEMS」(Building Energy Management System)という。
ビル内に設けたコンピュータシステムに、ビル内の配線を利用して構築された通信ネットワークを介して各設備・機器の使用状況や、ビル内に配置された各種センサーからの情報を収集し、記録・蓄積する。また、蓄積された情報を解析し、機器の起動・停止などの制御を遠隔から一括して行う。
温度センサーの情報を元に空調の動作設定をこまめに調節したり、人感センサーと連動して人のいない場所の照明を消灯するといった制御を行い、電力使用量を削減する。
また、オフィスビルなどに適用される電気料金の大口契約は過去の最大使用量を参考に基本料金を設定するといった商習慣があるため、真夏の午後など電力使用のピーク時に優先度の低い設備を停止させ、最大値が一定以下に収まるように制限する「ピークカット」を行う機能もある。