トークンパッシング【token passing】
概要

複数の機器が物理的な一本の通信回線を共有するネットワークでは、複数の機器が同時にデータを送信すると信号の衝突(collision)が発生し、通信が成立しなくなる。これを防ぐ方法の一つがトークンパッシングである。
回線上には常にトークンと呼ばれる特定の形式の信号が流れており、データを送信したい機器はこのトークンを受け取ることで送信権を得る。送信が終わると、その機器は再びトークンを回線に送り出し、次に送信したい機器がこれを取得できるようにする。トークンを持つ機器以外は送信できないため、衝突は構造上発生しない。
アクセス制御方式としては、イーサネットで採用されている「CSMA/CD」と並んで知られている。CSMA/CDが衝突の発生を前提に事後対応する方式であるのに対し、トークンパッシングは衝突そのものを未然に防ぐ方式であり、通信量が多い状況でも一定の手順に従った制御が維持されるため、遅延の予測がしやすい。一方、通信を行わない機器も順番にトークンを転送する必要があり、接続台数が増えるほど全体の待ち時間は増加する。また、トークンが消失すると通信が成立しなくなるため、これを監視し再生成する管理機構が必要となる。
具体的な規格としては、リング型のネットワーク構成を採用した「トークンリング」(IEEE 802.5)や、バス型の構成を採用した「トークンバス」(IEEE 802.4)があり、光ファイバーを伝送路として用いる「FDDI」(Fiber Distributed Data Interface)でも同様の仕組みでアクセス制御が行われていた。
これらは1980年代から1990年代にかけて企業内ネットワークなどで利用されたが、その後はスイッチングハブの普及によりイーサネットでも衝突の回避が可能となったため、一般的なオフィスや家庭のネットワークでは利用されることがほとんどなくなっている。ただし、通信の確実性やリアルタイム性が重視される工場内の制御系ネットワークなどの分野では、現在もトークンに基づく通信制御が用いられることがある。