ハーバードアーキテクチャ 【Harvard architecture】
概要
ハーバードアーキテクチャ(Harvard architecture)とは、コンピュータの設計様式の一つで、命令用の記憶装置(メモリ)と命令が処理するデータ用の記憶装置が伝送路も含めて分離している方式。現代では組み込みシステムなどに採用例がある。1944年に米ハーバード大学で開発された「Harvard Mark I」(ハーバード・マークワン)に由来する方式で、命令用のメモリとデータ用のメモリが別々に実装され、処理装置から異なる伝送路を通じてそれぞれアクセスするようにできている。
現代のコンピュータの多くはジョン・フォン・ノイマン(John von Neumann)の名に由来する「ノイマン型アーキテクチャ」で、同じメモリ装置(メインメモリ)に命令とデータの両方を記録し、同じ伝送路を通じて読み込みや書き出しを行う。
ノイマン型はメモリも伝送路(バス)が共用であるため、メモリがCPUの高速化に追いつけず隘路となりやすい「フォンノイマンボトルネック」という問題が知られるが、ハーバードアーキテクチャでは両者が物理的に分離しているため並行して伝送することができ、高速化しやすい。
一方、コンピュータには命令用メモリとデータ用メモリがあらかじめ決まった容量だけ実装され、一方が足りないからといって他方を融通するといった使い方はできないため、装置の効率性は低くなりがちである。部品点数や制御回路も複雑となるため同じ用途ならばコスト上も不利になる。
現代では、パソコンなどの汎用コンピュータのほとんどはノイマン型で設計されているが、家電の制御用コンピュータのような後からソフトウェアを更新する必要のない小規模な組み込みシステムなどでは、プログラムをROMに焼き付けて固定的に実装し、データ用に小容量のRAMを搭載したハーバードアーキテクチャとして設計されることがある。
(2023.11.16更新)