シミュレータ【simulator】シミュレーター
概要

シミュレータは、対象となる現実のシステムを数式や論理モデルとして「モデル化」し、時間の経過や外部からの入力に応じた状態の推移を計算することで動作する。連続的な変化を微分方程式で近似する方式、離散的なイベントを順に処理する方式、乱数を用いて確率的な挙動を再現する方式など、対象に応じて様々な計算手法が採用される。
シミュレータの出力結果や模擬的な現象の再現を「シミュレーション」(simulation)という。これはあくまでモデルに基づく近似であり、模倣対象の現実を完全に再現するわけではない。モデルの精度や前提条件によって結果の信頼性は左右されるため、得られた結果はその限界を踏まえた上で解釈することが求められる。
航空や宇宙開発、医療などの分野では、試験や訓練手段の一つとしてとして活用されている。これらの分野では、現物や実地の環境は事故のリスクが大きくコストが高いため、シミュレータによる代替が効果的である。工学や自然科学の分野では、建物の耐震性評価や気象予測、電子回路の動作検証、製品開発における性能試験など、実験を低コストで高速に代替する手段として広く導入されている。
機械の操作や操縦を模倣するシミュレータの中には、現物または現物そっくりな操縦席や操作装置、3DCGや実際の録画映像を用いた高精細な再現映像などを組み合わせ、実物に近い体験環境を構築するものもある。航空機の操縦を再現する「フライトシミュレータ」や鉄道車両の運転を再現する「トレインシミュレータ」の中には、本来の専門的な訓練用途から離れてビデオゲームとして提供されているものもある。
シミュレータと混同されやすい概念に「エミュレータ」(emulator)がある。エミュレータが特定機器の命令体系や動作仕様を忠実に再現することを目的とするのに対し、シミュレータは対象の挙動や関係性をモデル化して計算し直す点に違いがある。例えば、古いゲーム機のソフトを現代の機器で動かす仕組みやスマートフォンアプリをパソコンで動作させる仕組みはエミュレータであり、シミュレータではない。