基本情報技術者単語帳 - コンピュータ構成要素
コンピュータ 【電子計算機】
与えられた手順に従って複雑な計算を自動的に行う機械。特に、電子回路などを用いてデジタルデータの入出力、演算、変換などを連続的に行うことができ、詳細な処理手順を人間などが記述して与えることで、様々な用途に用いることができる電気機械のこと。
歴史的には手回しで歯車などを駆動する機械式の自動計算機なども存在したが、現代でコンピュータと呼ばれる機械は一般に、マイクロプロセッサ(CPU/MPU)や半導体メモリなどの半導体集積回路(ICチップ)を中心に構成され、記憶装置に記録されたオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトといったコンピュータプログラム(ソフトウェア)を実行するものを指す。
コンピュータの分類
一般的にコンピュータそのものとみなされる機器には、個人向けの汎用コンピュータである「パーソナルコンピュータ」(PC:Personal Computer/パソコン)や、企業や官公庁などの情報システムで用いられる大規模・高性能コンピュータである「サーバ」(server)や「メインフレーム」(mainframe computer)、科学技術計算などに用いる超高性能コンピュータである「スーパーコンピュータ」(supercomputer)などがある。
また、現代の電気機器の多くは内部の装置の制御などのために機器内部に小型のコンピュータシステムを内蔵しており「組み込みシステム」(embedded system)と呼ばれる。
このような組み込み型のコンピュータを備えた機器には携帯電話・スマートフォンやタブレット端末、ビデオゲーム機、通信装置やネットワーク機器、テレビ受像機、ビデオレコーダー、デジタルカメラ、電子制御の家電製品や産業機械、輸送機械などがある。
コンピュータの構成
一般的なコンピュータは、プログラムの実行状況や各装置の状態を制御する「制御装置」、データの計算や加工を行う「演算装置」、データを記録する「記憶装置」、人間や他の機器など外界との情報のやり取りを行う「入力装置」および「出力装置」などで構成される。この五つの要素を「コンピュータの五大装置」(五大機能)と呼ぶこともある。
このうち、制御装置と演算装置は現代では一つの装置や半導体チップとして統合されていることが多く、これを「処理装置」(PU:Processing Unit)という。コンピュータシステム全体の制御を司る中心的な処理装置のことを「中央処理装置」(CPU:Central Processsing Unit)という。
記憶装置は当座の動作に必要なプログラムやデータの一時的な記憶に用いる「主記憶装置」(メインメモリ)と、永続的な記録に用いる「外部記憶装置」(ストレージ)あるいは「補助記憶装置」に分かれていることが多い。
計算手順はCPUに対する命令の列を記憶装置にデータとして記録し、順に読み出して実行していく方式(プログラム内蔵方式)になっており、これを「コンピュータプログラム」あるいは単にプログラムという。
プロセッサ
処理装置、処理機、加工業者などの意味を持つ英単語。ITの分野では、一定の手順に基づいてデータを変換・演算・加工する機能を持った装置やソフトウェア、システムなどのことをプロセッサという。扱う処理の種類や対象によって「○○プロセッサ」のように用いる。
マイクロプロセッサ
単にプロセッサといった場合は、コンピュータの構成要素のうち、データの演算や変換、プログラムの実行、他の装置の制御などを担う処理装置のことを指すことが多い。この意味では「PU」(Processing Unit:プロセッシングユニット)も同義。
特に、コンピュータ全体の制御を司る「CPU」(Central Processing Unit:中央処理装置)や、その機能を小さなICチップに集積した「MPU」(Micro-Processing Unit)あるいは「マイクロプロセッサ」(microprocessor)のことをプロセッサと呼ぶことが多い。
また、CPUの働きを補助あるいは肩代わりし、特定の処理や演算の遂行に特化したプロセッサが用いられることもある。画像処理を行うための「グラフィックスプロセッサ」(GPU:Graphics Processing Unit)や実数計算を高速に処理する「数値演算コプロセッサ」(FPU:Floating-Point Unit)などである。
パソコン 【PC】
個人向けの小型、低価格の汎用コンピュータ製品。個人が手元に置いて直接操作して利用するもので、利用者がソフトウェアを導入することで様々な用途に利用できる。
現代のパーソナルコンピュータは本体および表示装置(ディスプレイ)、キーボード、マウスなどの機器で構成される。狭義の「パーソナルコンピュータ」はこのうち本体部分を指し、プログラムを実行しデータを処理するCPU(マイクロプロセッサ)、プログラムやデータを一時保存するメインメモリ(RAM)、永続的に保管するストレージ(外部記憶装置)、マザーボード、電源ユニット、外部入出力端子などの部品で構成される。
ソフトウェア環境として汎用性の高いオペレーティングシステム(OS)が導入され、利用者が用途や目的に応じて必要なアプリケーションソフトを導入して使用する。OSはWindowsやmacOSなどの製品が本体に導入済みの状態で販売されることが多いため、パーソナルコンピュータの構成要素の一部とみなすことも多い。
形態による分類
<$Img:Laptop-PC.jpg|right|rupeshtelang|https://pixabay.com/illustrations/computer-laptop-worksheet-5433031/>机上に据え置きで利用する形態の製品を「デスクトップパーソナルコンピュータ」(desktop PC)と呼び、その中で、筐体に高さがあり縦置きする形状のものを「タワーパーソナルコンピュータ」(tower PC)という。デスクトップ型はディスプレイやキーボードなどの装置が別々に提供され、ケーブルや無線で接続して使用する形態が多いが、ディスプレイと本体が一体化している製品もある。
一方、すべての装置が薄型の小型の筐体に一体化していて持ち運び可能な形態の製品を「ノートパーソナルコンピュータ」(laptop PC)という。二枚の板状の部材をヒンジで繋いで開閉できるようにした形状で、内側の片面が液晶ディスプレイ画面に、もう一方がキーボードやタッチパッドとなっている。
近年ではディスプレイに触れてタッチパネルとして操作できる機種も増えており、ディスプレイ側をヒンジから取り外して単体でタブレット端末としても使用できる「2in1タブレット」と呼ばれる製品カテゴリーも一般的になっている。
機種による分類
<$Img:Mac-Image.jpg|right|Mac>現代のパーソナルコンピュータ製品は大きく分けて2系統に分類できる。一方は米マイクロソフト(Microsoft)社の「Windows」(ウィンドウズ)をOSとして使うことが多い「Windowsパソコン」あるいは「PC/AT互換機」と呼ばれる製品群で、米インテル(Intel)社製CPUや他社の互換製品を用いるなど、メーカーが異なっても仕様や設計の多くが共通している。
もう一方は米アップル(Apple)社が一社単独で展開する「Mac」(マック)シリーズ(旧称Macintosh:マッキントッシュ)で、同社が本体および専用のOSである「macOS」(マックオーエス)、主要な周辺機器やソフトウェアを一貫して提供している。
「パーソナルコンピュータ」という表現は両者を含む個人向け小型コンピュータの総称とすることが多いが、「パソコンとMac」のようにWindowsパーソナルコンピュータのみを指す狭い意味で用いる人もいる。英語でも事情は似通っており、“PC” という略称でWindowsパーソナルコンピュータのみを表し、“PC vs Mac” のように表記する人がいる。その場合、総称としては省略しない “personal computers” を用いることが多い。
近年では、米グーグル(Google)社の「Chrome OS」(クロームオーエス)を搭載した「Chromebook」(クロームブック)シリーズが第三勢力として台頭しつつあり、Windowsが動作するが英アーム(ARM)社系CPUを採用しIntel系とはソフトウェアの互換性が限られる製品群など、従来の枠組みには収まらない機種も増えてきている。
ワークステーション 【WS】
業務用の高性能な個人用コンピュータのこと。大型コンピュータのように複数人で共用せず、利用者の作業場所に固定的に設置して一人が一台を専有して使用するような業務用コンピュータを意味する。
科学技術計算や設計・製図、コンピュータグラフィックス(CG)の製作などのために用いられることが多く、原則として法人ユーザー向けに販売される。ほとんどの機種は箱型の筐体にキーボードやマウスなどの入力装置、液晶ディスプレイなどの出力装置を接続する形態となっており、見た目はデスクトップ型やタワー型のパソコンとほとんど変わらない。
一般的なパソコンに比べると高性能・高機能・高価格で、用途に応じて特殊な装置や専用のオペレーティングシステム(OS)、アプリケーションソフトなどを内蔵していることが多い。かつては専業のメーカーもあり、それぞれ独自仕様のハードウェアやソフトウェアを提供していた。
2000年代以降は次第にパソコン系の製品と共通仕様の装置やソフトウェアが主流となり、単にパソコンの高級機種(ハイエンドPC)や特定の目的に特化したパソコン製品のことをワークステーションと呼ぶことが増えている。また、機種や性能など技術的な詳細は問わず、サーバと対比して利用者が直接操作するコンピュータを指してワークステーションということもある。
エンジニアリングワークステーション (EWS:Engineering Workstation)
科学技術計算や数値シミュレーション、CAD/CAMなどによる建築物や工業製品の設計、画像処理、印刷物の組版など技術的な用途のために用いられるものを「エンジニアリングワークステーション」(EWS)という。
最も主流の製品カテゴリーで、主に大学や企業の研究所などで研究・開発や技術的な業務のために導入された。1990年代まではコンピュータメーカーが自社製品向けに開発したUNIX系OS(商用UNIX)を搭載する機種が一般的だったため、「UNIXワークステーション」とも呼ばれた。
グラフィックスワークステーション (GWS:Graphics Workstation)
コンピュータグラフィックスの製作・編集などの用途に特化した製品は「グラフィックスワークステーション」(GWS)とも呼ばれる。その時代の最も高性能なGPU(Graphics Processing Unit)や大容量のメインメモリなどを内蔵し、3次元グラフィックス(3DCG)などに必要な大量の計算を高速に処理することができる。
主な用途はや3DCGを多用するゲーム開発やCGアニメーション映像の製作などだが、科学研究や工業製品の開発などで、部品の3Dモデルの設計やシミュレーション結果の可視化といったエンジニアリング用途で使われることもある。
スーパーコンピュータ 【スパコン】
大規模な科学技術計算などを行うために構築された超高性能コンピュータシステム。その時点での最先端の技術や製品を結集して開発され、価格も性能も他のコンピュータとは比べ物にならないほど高い。
科学研究や技術開発、軍事研究、気象予測などにおける数値解析やシミュレーションなどの大規模計算を行うことを主目的に開発・運用されるもので、各国の大学や国立研究所、国防研究機関、大企業の研究開発部門などに設置されることが多い。
スーパーコンピュータを構成するハードウェアや、大規模計算や並列処理のためのソフトウェア、アルゴリズムなどを包括する技術分野を「HPC」(High Performance Computing:ハイパフォーマンスコンピューティング)という。
性能や構造などの外形的な特徴により何を満たしていればスーパーコンピュータと言えるかを明確に定義することはできないが、その時代に業務用に量産される大型コンピュータの最上位機種よりも数十倍から数百倍、あるいはそれを超えるような性能・規模のものが該当することが多い。
スーパーコンピュータの中でも最も性能の高い部類に入る機種は、一基ごとに特注で設計・開発・製造されるものが多い。これをスケールダウンしてパッケージ化した、相対的に小規模な量産品が開発されることもあり、企業の研究部門などに向けて販売される。
性能指標
スーパーコンピュータの性能は様々な指標により計測・比較されるが、科学技術計算などでの利用が多いことから、最も単純な指標として毎秒実行できる浮動小数点演算の回数である「FLOPS」(FLoating-point Operations Per Second)が用いられる。
しかし、スーパーコンピュータは構成が複雑で様々な用途や処理方式が用いられるため、連続して計算を行う回数だけで総合的な性能を測ることは難しく、特定の応用分野における模擬的な処理を実装したプログラムを実行して性能を実測する「ベンチマーク」がよく用いられる。
中でも有名な「LINPACK」を用いて世界中のスーパーコンピュータの性能を計測・比較し発表する「TOP500 Supercomputer Sites」と呼ばれるプロジェクトがあり、そのランキングが総合的な性能評価としてよく引用される。ランキングは半年に一回更新され、日本からは「地球シミュレーター」(2002~2004)や「京」(2011)、「富岳」(2020~2021)などがトップを獲得したことがある。
デスクトップパソコン 【desktop PC】
パソコン製品の形態による分類の一つで、室内に固定的に設置して使用する据え置き型の筐体を持つ機種のこと。ノート型のように持ち運ぶことは難しいが、性能や機能で優れていることが多い。
形態の変遷
もとは、平たい箱型の筐体で、机(desk)の上(top)に横置きして箱型のCRTディスプレイを上に乗せて使用する機種を指していた。近年では、ディスプレイの脇や机の下などに設置する縦長(縦置き)の「タワー型」や「スリム型」、液晶ディスプレイと本体を一体化した「ディスプレイ一体型」(オールインワン型)が一般的となっている。
現代ではディスプレイが薄型の液晶タイプのみとなり、パソコン本体のような奥行きが無くなったこともあり、初期のような横置きしてディスプレイを乗せる設計の製品はほぼ消滅している。このため、「デスクトップ型」といった場合には持ち運びを想定しない据え置き型の総称とするのが一般的だが、稀に歴史的な文脈などではタワー型や一体型と区別して横置きの平たい筐体の機種を指す場合がある。
特徴
デスクトップ型はノート型などに比べ筐体が大きく、内部の空間や側面のパネルの面積も広いため、高性能の部品を搭載することができ、コネクタ類も豊富で、内部のドライブベイや拡張スロットなどによる拡張性も高い。メーカーや機種に固有の独自仕様なども少なく、部品のカスタマイズや追加、交換などもしやすい。
いわゆるWindowsパソコン(PC/AT互換機)では部品の寸法や接続仕様などが標準化されており、様々なメーカーから多種多様な製品が供給されるため、構成によっては同じ性能でノート型などより極端に格安な製品などもある。一方、同時代で最高の機能・性能を実現しようとすれば大きな筐体や拡張性が必須であるため、業務用やゲーム用の極めて高性能な高額機種もデスクトップ型となる。
ノートパソコン 【ノートPC】
本に似た薄い形状の持ち運びが容易なパソコン製品。2枚の板状の部品を重ねた構造になっており、片方が液晶ディスプレイに、片方がキーボードになっている。CPUやRAM、ハードディスクなどの主要部品はキーボードの下に収納されており、側面や背面に拡張ポートや電源などの端子が配されている。
ノートPCの大きさや重さには様々なバリエーションがあり、主な用途も少しずつ異なる。A4版サイズ以上の大きな製品は画面も広く、光学ドライブなどの周辺機器も充実しており、各部品の性能も高いことが多いが、重量が2~3kgと重くて嵩張るため、頻繁に持ち運んで利用する用途には向かない。
こうした製品は企業や家庭などで省スペースの個人用パソコンとしてデスクトップパソコンの代わりに据え置きで利用することが多い。ゲーム用途を重視したデスクトップPC並みの高性能製品は「ゲーミングノート」とも呼ばれる。
B5版サイズ前後の製品は小さくて軽く、持ち運びに適した製品で「モバイルノート」などと呼ばれる。画面やキーボードが狭く、筐体サイズの制約から光学ドライブを搭載していない製品が多いなど、長時間使用や単体での運用には適さないが、パワーユーザーが外出時に携行する「2台目」用途などでの利用が多い。筐体の薄さやバッテリー持続時間を追求した製品が多いのもこのカテゴリの製品の特徴である。
さらに小型の手のひらサイズの廉価なノートPCも存在し、「UMPC」「ゲーミングポータブルPC」などと呼ばれる。画面サイズ10インチ程度以下、重量数百グラムの製品カテゴリである。当初はWeb閲覧やメールの送受信といった基本的なインターネット利用のための安価な製品カテゴリーを指していたが、近年ではモバイルゲーム機として用いるためのゲームコントローラー一体型製品などを指す。
英語では “laptop PC” (ラップトップPC)あるいは “notebook PC” (ノートブックPC)という。日本語では “notebook” のことを「ノート」と呼んでいるが、英語では “notebook” と “note” は別の概念で省略語の関係ではない(noteはメモ、注釈の意味で手帳の意味はない)ため、“note PC” という呼び方はしない。
サーバ 【サーバー】
コンピュータネットワークにおいて、他のコンピュータに対し、自身の持っている機能やサービス、データなどを提供するコンピュータのこと。また、そのような機能を持ったソフトウェア。
コンピュータ(ハードウェア)のことを明示的に指し示す場合は「サーバコンピュータ」「サーバマシン」「サーバ機」などと呼ばれ、ソフトウェアのことを指す場合は「サーバソフト」「サーバソフトウェア」「サーバプログラム」などと呼ばれる。「SV」「srv」「srv」などの略号で示されることもある。
一方、ネットワークを通じてサーバにアクセスし、その機能やサービス、データなどを受信したり利用したりするコンピュータやソフトウェアは「クライアント」(client)と呼ばれる。WebサーバにアクセスするためのWebブラウザなどが該当する。サーバとクライアントを組み合わせて構成するシステム「クライアントサーバシステム」という。
いわゆる大型汎用機(メインフレーム)などの分野では、実際の処理を担うコンピュータ本体や内部で動作するソフトウェアを「ホスト」(host)、ホストへ接続してデータ入力や画面出力を行なう装置やソフトウェアを「ターミナル」(terminal)と呼ぶ。
一般の外来語としては「ウォーターサーバー」のように末尾に長音記号「ー」を付す表記・発音が一般的だが、ITの分野では歴史的に3音以上の末尾にある “-r” 音の長音記号を省略する慣例があり、「サーバ」と表記することが多い。近年では一般的な表記にならって「サーバー」と表記する例も増えている。
サーバの種類
通常、個々のサーバ機やサーバソフトは外部に提供する機能やサービス、対応しているデータ形式やプロトコル(通信規約)が決まっており、「データベースサーバ」「Webサーバ」「ファイルサーバ」のように、提供する機能などの種類を冠して「○○サーバ」と呼ぶ。
サーバコンピュータは多数のクライアントからの処理要求に応えるため、内部の装置に高性能・大容量のものを搭載することが多い。タワー型サーバなどパソコンと同じような形態の機種と、ブレードサーバやラックマウントサーバなどサーバ専用の形態で提供される製品がある。
企業などの情報システムでサーバをクライアントと同じ建物に設置して自社運用する方式を「オンプレミス」(on-premise)という。一方、専門の事業者が運用するデータセンターに設置されたサーバを間借りしてインターネットや専用回線を通じて利用する方式を「クラウド」(cloud)という。
モバイル端末 【モバイルデバイス】
小型あるいは薄型、軽量で簡単に持ち運ぶことができ、電源コードを繋がなくても一定時間使用できる情報機器。ノートパソコンやスマートフォン、タブレット端末などの総称。
様々な場所に持ち運んで使用したり、手に持ったまま、あるいは身につけたまま使用することができる携帯型の端末で、充電式のバッテリーを内蔵し、屋外など電源の無い場所でも電池が尽きるまで使用することができる。
多くはWi-Fi(無線LAN)や移動体データ通信、Bluetoothなどの無線通信に対応し、通信ケーブルなどが無くても場所でもインターネットに接続したり周囲の機器と通信したりすることができる。パソコンや外部機器との接続、充電などのためにUSB端子などや専用ケーブルのコネクタを備える機器が多い。
具体的な製品の例として、ノートパソコン、スマートフォン、タブレット端末、携帯型ゲーム機、スマートウォッチ、アクティビティトラッカー、GPS端末、デジタルオーディオプレーヤーなどが挙げられる。
文脈によっては、ワイヤレスイヤホンなど無線接続の周辺機器、電子辞書など通信機能のない携帯型の電子機器、カーナビゲーションシステムやETC車載器、ドライブレコーダーのような自動車などに固定的に設置される装置、モバイルルータなど人が操作する端末ではない中継機器などを含む場合もある。
スマートフォン 【スマホ】
個人用の携帯コンピュータの機能を併せ持った携帯電話。単に高機能というだけでなく、汎用のオペレーティングシステム(OS)を搭載し、利用者が後からソフトウェアなどを追加できるようになっている機種を指す。
「スマート」(smart)は「賢い」という意味で、アプリを導入して様々な用途に使用できることを表している。一般的なスマートフォンの持つ機能としては、パソコンと同じWebブラウザによるウェブ閲覧や、電子メールの送受信、文書ファイルの作成・閲覧、写真や音楽、ビデオの再生・閲覧、カレンダー機能、住所録、電卓、内蔵カメラによる写真や動画の撮影、テレビ電話などがある。
一般的な機種は、ほぼすべての操作を画面に指を触れるタッチパネルによって行う。筐体前面のほぼ全面が液晶(または有機EL)画面となっており、表示装置兼入力装置となっている。文字入力も画面に表示された文字盤(ソフトウェアキーボード)をタッチして行う。
通信機能としては無線LAN(Wi-Fi)と携帯電話事業者の移動体通信に対応し、屋内ではWi-Fi、屋外や移動中は移動体通信と使い分けることができる。Bluetoothに対応している機種ではイヤフォンなどを無線接続することができ、NFC(Near Field Communication)に対応している機種ではタッチ決済などを利用できる。
インターネットなどを通じて、その機種が搭載しているOSに対応したアプリケーションソフトを入手して追加することができる。スマートフォン向けのアプリケーションは「アプリ」(app)と略されることが多い。WebブラウザでWebアプリケーションを利用することもできる。
OSメーカーや通信キャリアなどが、自社の対応機種に追加できるアプリを探し出して入手することができるネット上の店舗「アプリストア」を運営している。SNSやメッセンジャー、ゲームソフト、オフィスソフトなど様々な追加ソフトが提供されている。販売されているものと無償配布されているものがある。
スマートフォン市場は米アップル社(Apple)社の「iOS」を搭載した「iPhone」と、米グーグル(Google)社が開発した「Android」を搭載した機種にほぼ二分されている。Android対応のスマートフォンは様々なメーカーが販売している。世界的には単一機種ではiPhoneが最も人気だが、OSとしてはAndroidの方が普及している。日本市場は世界と傾向が異なり、iPhoneが単体で過半のシェアを獲得している。
タブレット端末
個人用コンピュータの分類の一つで、板状の筐体の片面が触れて操作できる液晶画面(タッチパネル)になっており、ほとんどの操作を画面に指を触れて行うタイプの製品のこと。
タッチ操作を基本とする携帯型コンピュータのことで、AndroidやiOSなどスマートフォンと共通のオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションソフトを利用する製品を意味することが多い。パソコンと共通のWindowsなどで動作する製品は「タブレットPC」と呼ぶことが多い。
雑誌大の広さの薄型軽量の筐体を持ち、充電池を内蔵し持ち運んで好きな場所で利用できる。無線LAN(Wi-Fi)や移動体データ通信サービスに接続機能を内蔵しており、インターネットなどを通じてコンテンツやアプリケーションソフトを入手し、閲覧・操作することができる。
ほとんどの製品はソフトウェア環境がスマートフォンと共通となっており、機能や使えるソフトの種類、対応サービスなどもスマートフォンに準じるため、画面の広いスマートフォンの一種と考えることもできる。映像の視聴や電子書籍・雑誌の読書などは画面の広いタブレット端末に向いている。
米アップル(Apple)社の「iPad」で認知度が急激に高まった製品カテゴリーで、同製品と、米グーグル(Google)社のAndroid OSで動作する、いわゆる「Androidタブレット」が市場をほぼ二分している。最近では単に「タブレット」と呼ばれることも多い。着脱式のキーボードなどを備えノートパソコンとしても利用できる製品は「2in1タブレット」とも呼ばれる。
シングルボードコンピュータ 【SBC】
概ね手のひらサイズ程度までの小さな電子基板に単体のコンピュータとして必要なほぼすべての機能や要素を実装したもの。
基板上にCPU(マイクロプロセッサ/MPU)やメインメモリ(RAM)、ストレージ、チップセット、入出力端子などを実装された小型コンピュータで、画面出力やネットワークインターフェースなどを備えたパソコンなどに近い仕様の製品もある。
Linuxなど汎用のオペレーティングシステム(OS)が動作するよう設計されていることが多く、ネットワーク上でサーバとして動作させたり、Pythonなどのスクリプト言語でハードウェアの入出力制御を行うことができる。
もともとは産業機械の組み込みシステムで制御用コンピュータとして使われていた製品などがこのように呼ばれており、その場合はより簡素な仕様でリアルタイムOSなど特殊なソフトウェア環境を有するものが多い。
近年では「Raspberry Pi」(ラズベリーパイ)などパソコンやスマートフォンなど汎用の小型コンピュータに近い機能や仕様を持った新たな製品カテゴリーが台頭し、組み込み用途に限らず趣味や教育など幅広い用途で利用される。
マイコンボード (ワンボードマイコン)
概ね名刺サイズかそれより小さな電子基板に、電子機器の制御などを行うマイクロコンピュータ(マイコン)としての機能を実装したもの。
CPUとしてパソコン向けなどで用いられる複雑で高性能なマイクロプロセッサではなくマイクロコントローラやSoC(System on Chip)、RISC系プロセッサなど軽量な製品を搭載し、RAMやI/Oインターフェース、プログラム記憶用の不揮発メモリなどコンピュータとしての動作に必要な一通りの機能を内蔵している。
LinuxやWindowsのような汎用のOSを用いず外部からバイナリプログラムを転送して直接実行したり、リアルタイムOSなど組み込みシステム用のソフトウェア環境を用いることが多い。外部との通信もGPIOやSPI、I2Cなどシリアルインターフェースが主体で、画面出力やネットワークインターフェースなどは無いことが多い。
半導体製品の評価ボードとして使用したり、電子機器や機械などの制御用として内蔵する組み込みシステムとして利用されることが多い。組み込み用途の製品ではシングルボードコンピュータ(SBC)との区別は曖昧で、似たような製品でもマイコンボードと呼ばれたりSBCと呼ばれたりする。
1970年代には、まな板くらいの大きさの(現代から見れば大きめな)ワンボード型コンピュータが最初期の個人用小型コンピュータとして人気を博したこともあるが、程無くより複雑な構成のマイコン、パソコンに発展していった。近年では電子工作などの制御用ボードとして「Arduino」(アルデュイーノ)などのオープンな仕様の製品が再び注目を集め、産業用だけでなく趣味や教育などの分野で利用されている。
メインフレーム 【大型汎用機】
大企業や官公庁などの基幹情報システムなどに用いられる大型のコンピュータ製品。最も古くから普及している製品カテゴリーで、多数の利用者や業務で共有し、大量の重要なデータや処理を扱うため、極めて高い性能や信頼性を実現している。
建物の一室やワンフロアを占めるほどの大型の本体(ホスト)と、通信回線や構内ネットワークで接続された操作用の端末(ターミナル)で構成され、日常的な操作は端末を通じて行われる。電源や処理装置、記憶装置などほとんどの構成要素が多重化され、処理性能や耐障害性の向上が図られている。
CPU(処理装置)などの部品やオペレーティングシステム(OS)などのソフトウェアの多くは各社が自社で開発・製造する独自仕様の製品で、顧客は一社からすべての要素をパッケージしたシステムとして購入する形となる。
コンピュータ上で実行される業務システム(アプリケーションソフト)は顧客の事業や業務に合わせてゼロから設計・開発されることが多く、メーカーがソフトウェア開発まで請け負ってハードウェアと一括で納品する場合と、開発受託企業(インテグレータ)がメーカーから仕入れたコンピュータにソフトウェアを導入して納品する場合がある。
ミニコンやオフコン、パソコンなど安価で小型な汎用コンピュータ製品が登場する1980年代頃までは、コンピュータといえば汎用コンピュータのことであったため、「汎用コンピュータ」という呼称は比較的新しいものである(単に「コンピュータ」と呼ばれていた)。
日本語で「汎用」と呼ばれるのは、それ以前のコンピュータは特定の用途ごとに特注で製造されるのが一般的だったからで、ソフトウェアや機器構成を柔軟に変更し、異なる種類の業務や用途に対応・共有できることは画期的なことだった。
汎用コンピュータを製造・販売できるメーカーは大手コンピュータメーカーに限られ、現在では米IBM社、米ユニシス(Unisys)社、仏アトス(Atos/旧Bull)社、富士通、NEC、日立の6社が残るのみとなっている。世界的にはIBMのシェアが高いが、日本では国産の人気が高い。
近年では、一部のシステムではパソコンや小型サーバコンピュータをネットワークを通じて相互に接続した分散型のシステムが汎用コンピュータに取って代わるようになり、最盛期に比べ市場規模は大きく落ち込んでいるものの、過去のシステムとの互換性や高い堅牢性などから、伝統的大企業や官公庁を中心に一定の地位を維持している。
マイコン
マイクロコントローラあるいはマイクロコンピュータの略で、前者は組み込みシステム向けの統合型のICチップ、後者はパソコンの旧称を意味する。
マイクロコントローラ (MCU:Micro-Control Unit)
コンピュータの機能一式を一枚のICチップに実装した製品。家電製品や産業機械などの制御用コンピュータとして組み込まれる。
演算・制御装置(CPU)、メモリ装置(RAMやROM)、入出力回路(I/O)、タイマー回路などを一つの集積回路に実装した製品で、単体でコンピュータとしての一通りの機能を有する。マイクロコンピュータを含む制御システムを「マイコンシステム」あるいは「組み込みシステム」(エンベッドシステム:embedded system)という。
マイクロコンピュータは機器の制御という目的から、パソコンなどに内蔵されるマイクロプロセッサに比べ機能はシンプルで性能も低いが、安価で他に必要な部品も少なく、システム全体の基板面積や部品点数、消費電力を少なく抑えることができる。現在では家電からAV機器、携帯電話、産業機械、自動車などほとんどの電子・機械製品に何らかの形でマイクロコンピュータが組み込まれている。
マイクロコンピュータ
<$Img:Microcomputer.png|right|by sergeitokmakov from pixabay|https://pixabay.com/illustrations/old-computer-8bit-technology-retro-4962268/>個人向けの小型で安価な汎用コンピュータの、1970~80年代における一般的な名称。現在では一般的に「パーソナルコンピュータ」(パソコン、PC:Personal Computer)と呼ばれる製品カテゴリの創成期の呼称。
コンピュータといえば企業などの大きな組織が利用する大型汎用機(メインフレーム)やミニコンピュータ、オフィスコンピュータなどしかなかった1970年代後半、安価なマイクロプロセッサの発明により個人が家庭で使える汎用コンピュータとしてマイクロコンピュータが登場した。
当初は限られた好事家が購入・利用するに過ぎなかったが、性能や機能の向上、低価格化、優れたオペレーティングシステム(OS)や業務に使えるソフトウェアの登場などにより、次第にオフィスや家庭に普及していった。1980年代後半頃から「パソコン」という呼称が広まり始め、現在では歴史的な文脈以外でマイクロコンピュータと呼ぶことはほとんどない。
コンピュータの五大装置
コンピュータのハードウェアを構成する主要な装置を5つに分類したもの。制御装置、演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置の5つ。それぞれの機能(制御、演算、記憶、入力、出力)を指して「五大機能」と呼ぶこともある。
制御・演算
制御装置はプログラムに記述された命令の解釈・実行と他の装置の制御を行い、演算装置は算術演算や論理演算などのデータ処理を行う。この二つは現代のコンピュータ製品では中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)として一つの半導体チップ(マイクロプロセッサ/MPU)にまとめられるのが一般的となっている。
記憶
記憶装置はプログラムやデータを保存する装置で、当座の使用のため一時的に保存することができる主記憶装置(メインメモリ)やCPU内部のレジスタおよびキャッシュメモリ、永続的な保管のために用いる補助記憶装置(外部記憶装置/ストレージ)に分類される。
メインメモリには、高速に読み書きできるが容量あたりの単価が高く、装置の電源を切ると内容が消えてしまう半導体メモリのDRAM(Dynamic Random Access Memory)が用いられることが多い。
ストレージには、読み書きは低速だが安価で電源を切っても内容が消えない装置や記憶媒体が用いられ、ハードディスクなどの磁気ディスク装置や、CDやDVDなどの光学ディスク装置、SSDやメモリーカード、USBメモリなどのフラッシュメモリ装置などがよく知られる。
入力・出力
入力装置は外部からデータを送り込むための装置で、人間による操作をコンピュータに伝えるマウスやキーボード、ペンタブレットなどのほか、外部の情報を取り込んでデジタルデータとしてコンピュータに伝送するイメージスキャナやマイク、カメラなどがある。
出力装置はコンピュータ内部のデータを外部に取り出すための装置で、ディスプレイやスピーカー、プリンタなどが該当する。
ALU 【Arithmetic and Logic Unit】
コンピュータを構成する基本的な装置の一つで、算術演算(四則演算)や論理演算などの計算を行う装置。現代のコンピュータでは制御装置とともにマイクロプロセッサ(CPU/MPU)などの論理回路の一部として実装されている。
加算器や論理演算器などの演算回路を持ち、整数の加減算、論理否定(NOT)、論理和(OR)、論理積(AND)、排他的論理和(XOR)などの基本的な演算を行うことができる。
これらの回路を組み合わせて、乗算や除算、余剰、実数(浮動小数点数)演算、否定論理和(NOR)、否定論理積(NAND)などの演算ができるようになっているものもある。
制御装置
機械やシステムの構成要素のうち、主に他の要素の動作の制御などの機能を担うもの。コンピュータの場合はCPUの機能の一部として内蔵されている。
コンピュータの制御装置
コンピュータを構成する装置のうち、他の装置の制御を行うものを制御装置と呼ぶ。演算装置、記憶装置、入力装置、出力装置と合わせてコンピュータの五大装置という。
現代のコンピュータではほとんどの場合、演算装置と共に中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)という装置の一部として実装される。また、CPUはマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)と呼ばれる単一の半導体集積回路(ICチップ)の形で提供されている。
制御装置は演算装置やレジスタ(CPU内部の記憶回路)を操作して命令の実行制御を行ったり、メインメモリ(RAM)などの記憶装置とプロセッサ間のデータや命令の読み出しや書き込みの制御、外部の装置との信号の入出力制御などを行う。
初期のコンピュータの設計では演算装置とは独立・分離していたが、現代のプロセッサにおいては両者が統合されて一体的に設計されるため、両者の区別にはほとんど意味がなくなり、「実行ユニット」「プロセッサコア」のような用語で呼ばれることも多い。
記憶装置
コンピュータの構成要素の一つで、データやプログラムの保存・記憶を行うための装置。レジスタやキャッシュメモリなどCPU内部の半導体メモリ、メインメモリ(主記憶装置/RAM)、ストレージ(外部記憶装置/補助記憶装置)などに分類される。
用途や実装方式、性能、コストなどにより様々な種類の装置があり、これらを組み合わせてコンピュータシステムを構成する。一般に、より高速に読み書き可能な装置ほどコストが高かったり永続的な記憶ができない(電源を落とすと内容が失われる)という特性があるため、小容量の高速な装置、中容量の中速の装置、大容量の低速で永続記憶可能な装置を組み合わせ、状況や使用頻度などに応じて使い分ける。このような階層型の構造を「記憶階層」(memory hierarchy)という。
プロセッサ内部の記憶装置
最も高速だが大きな容量を取ることができないのはCPU(MPU/マイクロプロセッサ)の半導体チップ上に設けられた記憶素子の集合で、中でも、論理回路が処理や演算に直接用いる「レジスタ」(register)は一般的なプロセッサで数十バイトしかないが最も高速に動作する。
また、直近に使用したデータや使用頻度の高いデータをチップ内に保持しておいて、すぐ参照できるようにするための記憶素子を「キャッシュメモリ」(cache memory)という。プロセッサによっては搭載しないこともあるが、数KB(キロバイト)から数百KB程度であることが多い。キャッシュメモリ内部にも記憶階層がある場合があり、より高速だが容量の少ない順に1次キャッシュ、2次キャッシュ、3次キャッシュ、と2~3段階で構成される。
メインメモリ
メインメモリは主記憶装置とも呼ばれ、現代のコンピュータの大半では半導体メモリ素子の一種であるRAM(Random Access Memory)が用いられる。現代のパソコンなどでは数GB(ギガバイト)程度の容量であることが多い。
CPUはストレージに直接アクセスできないため、実行中のソフトウェアが当座必要なデータやプログラムはメインメモリに置いておく必要がある。内容は起動時や必要になった時点でストレージから読み込まれ、CPUが処理した結果なども一旦メインメモリに置かれる。電源を落とすと内容が失われるため、永続的に保管しておきたいものはストレージに書き込む必要がある。
RAMのメモリチップそのものを主基板(マザーボード/メインボード)などに直に実装する場合もあるが、パソコンなど汎用的なコンピュータの多くは、メモリチップをいくつか実装した小さな基板であるメモリモジュールを主基板上の専用の差込口(メモリスロット)に差し込んで装着する。
ストレージ
ストレージはコンピュータの電源が切れても内容が失われない装置で、永続的に必要なデータやプログラムの保存に用いられる。RAMなどに比べ動作が低速な装置が大半で、また、CPUから直に読み書きできないため、コントローラICなどを通じて内容をメインメモリとの間でやり取りする必要がある。駆動装置(ドライブ)と記憶媒体(メディア)が一体化している装置と、取り外して交換できる装置があり、後者はメディアを追加することで全体の容量を増やすことができる。
パソコンなどで主要な記憶装置としてよく用いられるのは磁気ディスクを装置内に固定したハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)で、現代では数百GBから数TB(テラバイト)の製品がよく用いられる。ハードディスクに代わって台頭しているのが不揮発の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリを用いたSSD(Solid State Drive)で、フラッシュメモリを用いたストレージには他にUSBメモリやメモリーカードなどもある。
データやプログラムの運搬や配布などによく用いられるのがレーザーで内容の読み書きを行う光学ディスクで、登場順にCD、DVD、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク/BD)などがあり、この順に容量が大きく読み書きも高速である。CDは音楽・音声の記録や販売に、DVDやBDは映像ソフトの記録や販売に特によく用いられる。
入力装置 【入力機器】
コンピュータなどの機器本体にデータや情報、指示などを与えるための装置。一般的には人間が操作して入力を行う装置のことを指し、手指の動きや打鍵を電気信号に変換して伝達するキーボードやマウス、タッチパネルなどが該当する。
コンピュータの登場以前から、ボタンやレバー、ツマミ、ペダルなどの入力装置が機械の操作に用いられてきたが、情報機器ではこれらに加えてより複雑で汎用的な情報入力を実現するため、多数の操作要素や高度な機構を持つ装置が発明された。
例えば、文字が刻印された小さな鍵盤が敷き詰められたキーボード、手で位置や移動を入力するためのマウスなどのポインティングデバイス、画面表示と位置入力を兼用するタッチパネルなどが発達した。特殊なゴーグルなどを利用して視線の方向を検知し、画面上の位置を指示して入力する装置なども開発されている。
ビデオゲームでは、数種類のボタンやスティック、加速度センサーなどを手のひらサイズに収めたゲームコントローラ(ジョイパッド/ジョイスティック)が最も一般的な入力装置として用いられるほか、カメラやセンサーなどを組みわせて四肢の動きを検知するシステムが用いられたり、実在の機械を模した専用の装置(ハンドルやレバー、フットペダルを組み合わせたレースゲーム用筐体など)が用いられることもある。
広義には、人間の動作に限らず外界から情報を取り込んで電気信号やデジタルデータとしてコンピュータに伝達する機器全般が含まれる。マイクやイメージスキャナ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、バーコードリーダー、指紋センサー、X線撮影装置、超音波診断装置、光学式読み取り装置(OCRやOMR)などである。
出力装置 【アウトプットデバイス】
コンピュータが扱う情報を利用者に認識できる形式で提示する装置。ディスプレイやプリンタ、スピーカーなどが含まれる。
コンピュータシステムを構成する主要な装置の一つで、データを人間に認識できる形で外部に物理的に出力する装置である。光の像を投影して画面を映し出すディスプレイ(モニタ)やプロジェクタ、紙などに印字・印刷を行うプリンタやプロッタ、音声を発するスピーカーやイヤフォンなどが該当する。
主に人間の視覚や聴覚に働きかける原理の機器が多いが、振動で情報を知らせるバイブレーターや、ゲームコントローラなどで操作感(押しやすさ、回しやすさなど)を状況に応じて変化させるフォースフィードバック機構など、触覚を利用する装置もある。
映画館や体験型アミューズメント施設などに見られる、映像に合わせて霧や風を吹き出す装置なども広義には出力装置の一種と言える。未だ研究段階ながら、香り(触覚)や味(味覚)を動的に合成してコンピュータからの出力とする装置も構想されている。
これに対し、人間や環境、外部の機器から情報を取り込んでデータとしてコンピュータ本体に伝える装置を「入力装置」(input device:インプットデバイス)といい、キーボードやマウス、タッチパネル、ゲームコントローラ、マイク、イメージスキャナ、各種センサーなどが含まれる。
出力装置と入力装置を合わせて「入出力装置」(I/O device)と総称することもある。イヤホンマイクやプリンタ複合機(イメージスキャナとしても利用できるプリンタ)、振動機能付きコントローラなど、入出力の両方の機能を一体的に提供する装置もある。
CPU 【Central Processing Unit】
コンピュータの主要な構成要素の一つで、他の装置・回路の制御やデータの演算などを行う装置。演算装置と制御装置を統合したもので、現代では一枚のICチップに集積されたマイクロプロセッサ(MPU:Micro-Processing Unit)を用いる。
CPUはメインメモリ(RAM)に格納された機械語(マシン語)のプログラムを、バスを通じて一命令ずつ順番に読み出し(フェッチ)、その内容を解釈して行うべき動作を決定(デコード)し、内部の回路を駆動して実際に処理を実行する。現代のCPUの多くはマイクロプログラム制御方式を採用しており、機械語の一命令は、より細かな動作(マイクロコード)の組み合わせに分解されてから実行される。
命令セット
CPUは実行可能な命令の体系が決まっており、これを命令セット(instruction set)あるいは命令セットアーキテクチャ(ISA:Instruction Set Architecture)という。記憶装置から読み出されたどのようなビット列がどのような動作に対応するかを定めたもので、機械語のプログラムはこれを用いて記述される。
命令セットは各CPUの機種ごとに固有だが、同じメーカーの同じ系列の製品では同じ命令セットが採用されることが多く、その場合は異なる製品が同じプログラムを実行することができる。同じ命令セットでも製品の世代が下るに連れて新しい命令が追加されることが多く、新しいCPUは古いCPU向けのプログラムも実行できる一方、古いCPUは新しい命令セットのプログラムは実行できないという関係になる(後方互換性)。
有力なメーカーの製品には、別のメーカーが同じ命令セットを採用した互換CPU製品を開発・販売することもある。例えば、米インテル(Intel)社のx86命令セットは広く普及しており対応ソフトウェアが豊富なため、これをそのまま実行できる互換CPUを米AMD社などが製造している。
構造
一般的なCPUの内部は、命令の解釈や他の回路への動作の指示などを行う制御ユニット、論理演算や算術演算を行う演算ユニット(ALU:Arithmetic and Logic Unit)、データの一時的な記憶を行うレジスタ、外部との通信を行うインターフェース回路などで構成される。
また、レジスタとメインメモリのあまりに大きな速度差、容量差を埋めるため、両者の中間の速度と容量を併せ持つキャッシュメモリが内蔵されることが多く、浮動小数点演算に特化した演算ユニット(FPU:Floating-Point Unit)なども標準搭載されることが多い。
以前はマザーボード上のチップセットや単体のICチップとして提供されてきた、メモリコントローラやI/Oコントローラ、グラフィックス処理(GPU)などの機能が統合された製品も数多く登場している。コンピュータに必要な機能のほとんどをCPUの内部に統合した製品はSoC(System-on-a-Chip)と呼ばれる。
性能
内部の演算回路やレジスタが一回の動作でまとめて伝送、保存、処理できるビット数が決まっており、この値が大きいほど一度に多くのデータを処理でき、また、広大なメモリ空間を一元的に管理できる。
一度にnビットのデータを処理できるCPUをnビットCPUというように呼び、CPUが発明された当初は4ビットであったが、8ビット、16ビット、32ビットと拡張されてゆき、現代では64ビットCPUが広く普及している。
また、ほとんどのCPUはコンピュータ内部の特殊な回路から一定周期で発信されるクロック信号に合わせて動作するようにできている。より高い周波数の信号で動作するものほど、単位時間あたりに多くの動作を行うことができ、性能が高い。例えば、2GHz(ギガヘルツ:毎秒10億回)で動作するCPUと1GHzのCPUならば、他の仕様が同じなら約2倍の速度差がある。
並行処理
単純な構造のCPUは一つの命令列から一つずつ順番に命令を取り出し実行していくが、現在のCPU製品の多くは、何らかの形で複数の命令、あるいは複数の命令列を同時並行に処理できる機能を内蔵しており、クロックあたりの性能を引き上げている。
よく用いられるのはパイプライン処理で、一つの命令を複数の段階に分割してそれぞれを別の回路で実行することにより、いくつかの命令の実行を並行して進めることができる。ある命令が実行段階にあるとき、次の命令がデコードを、その次の命令がフェッチを行うといったように、前の命令の完了を待たずに空いた回路に先行して次の命令を投入する方式である。
また、大抵の命令は限られた回路しか利用しないという性質を利用して、空いている回路で実行できる別の命令を同時に投入する方式を同時マルチスレッディング(SMT:Simultaneous Multithreading)という。擬似的に二つのプログラムを並行に実行することができ、最良の場合で数割の性能向上が果たせる。Intel社のCPUに内蔵されるハイパースレッディング(Hyper-Threading)機能が有名である。
一つの半導体チップの内部に、命令の解釈・実行を行うユニット(CPUコア)自体を複数搭載するという手法も広まっており、マルチコアプロセッサ(multi-core processor)という。それぞれが独立して別のプログラムを並列に実行でき、複数のCPUを搭載するのとほとんど同じ効果を得ることができる。ちなみに、一台のコンピュータに複数のCPUを内蔵する方式はマルチプロセッサ(multiprocessor)という。
GPU 【Graphics Processing Unit】
コンピュータに搭載される半導体チップの一種で、画面表示や画像処理に特化した演算装置。特に、3次元グラフィックス(3DCG)描画や動画の圧縮・展開などに必要な演算を高速化する並列処理に優れた構造のもの。
コンピュータには制御や演算のためにCPU(MPU/マイクロプロセッサ)が搭載されている。これは汎用的に設計されており様々な命令を実行できるが、一度に実行できる命令は数個から数十個(数値演算並列化機能使用時)程度に限られる。
一方、GPUは画像処理などで多用される特定の比較的単純な数値計算に特化した演算回路を大量に内蔵しており、一度に数百回から数千回の演算を一気に実行することができる。CPUで同じ計算を行う場合よりはるかに高速に処理することができる。
また、グラフィック描画に関連する機能を豊富に用意しており、3次元から2次元への座標値の変換(ジオメトリ処理)、立体表面に貼り付けられた画像パターン(テクスチャ)や光、陰影などから各画素の表示色を決定する処理(シェーディング)などを高速に実行できる。
単体のICチップとして実装されたGPUを「dGPU」(ディスクリートGPU)と呼び、コンピュータのマザーボードに実装したり、ビデオカード(グラフィックカード)に搭載して拡張スロットに差し込んで使用する。CPUの内部にGPUの回路を統合したものは「iGPU」(内蔵GPU)と呼ばれ、廉価版のCPU製品などに組み込まれている。
GPUはコンピュータグラフィックスを多用するビデオゲームなどで主に用いられてきたが、近年では汎用の高速な数値計算装置として様々な分野で利用されるようになっており、これを「GPGPU」(General Purpose GPU)あるいは「GPUコンピューティング」(GPU computing)という。科学技術計算や暗号処理、仮想通貨、音声認識・合成、人工知能(機械学習)などの分野で広く普及している。
RISC 【Reduced Instruction Set Computer】
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)の命令語の仕様の設計方針の一つで、固定長の少数の単純な命令のみを備え、実行効率を向上させる考え方。主に高性能コンピュータ向けや携帯機器向けのプロセッサ製品で採用されている。
命令語の種類や内容を規定する命令セットアーキテクチャ(ISA:Instruction Set Architecture)の分類の一つで、単純な機能を持つ少数の命令語のみを実装し、すべての命令の語長と実行時間(クロック数)を同一に揃えている。これにより、パイプライン処理で待ち時間が生じなくなるため、どの命令も1クロックで実行することができる。
各命令の実行回路は半導体素子を物理的に結線した論理回路(ワイヤードロジック)で実装されるため、命令をより小さな動作単位であるマイクロコードへ変換・分解する必要がなく、少ないクロック数で高速に実行することができる。回路規模も小さく、チップのサイズや消費電力も抑えることができる。
RISC方式は1970年代後半に、複雑化する一方の命令セットやプロセッサ設計に対するアンチテーゼとして考案された。これ以降、従来型の不揃いで高機能な命令セットを用いる設計様式を「CISC」(Complex Instruction Set Computer:複合命令セットコンピュータ)と呼んで区別している。
主な製品
代表的なプロセッサ製品として、米IBM社のPOWERシリーズ(および小型機器向けのPowerPCシリーズ)、米ミップス・テクノロジーズ(MIPS Technologies)社のMIPSシリーズ、旧サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)社(現Oracle社)のSPARCシリーズ、ルネサステクノロジのSuperHシリーズ(元は日立製作所の製品)などがある。
最も成功していると言われるのは英アーム(ARM)社のARMアーキテクチャで、主にスマートフォンなど携帯情報機器に広く採用されている。同社は命令セットなどを他社にライセンス供与するのみで製品の製造・販売は行っておらず、具体的なプロセッサ製品は提携各社から提供されている。
パソコン向けではCISC型の米インテル(Intel)社x86シリーズや互換製品が圧倒的に強く、RISC型プロセッサはそれ以外の市場、特にUNIX系ワークステーション/サーバや組み込み機器、家庭用ゲーム機、デジタル家電、スマートフォンやタブレット端末などで採用されることが多い。
CISC 【Complex Instruction Set Computer】
CPU(マイクロプロセッサ)の命令語の仕様の設計方針の一つで、複雑で高度な機能を持つ命令語をなるべくたくさん用意する考え方。パソコン向けなどで広く普及している米インテル(Intel)社のx86系やx86-64系プロセッサなどが代表的である。
CPUに直接指示を与える機械語(マシン語)を構成する命令の種類や内容を規定する「命令セットアーキテクチャ」(ISA:Instruction Set Architecture)の分類の一つで、様々な機能を持った多種多様な命令語を備えたものを指す。
命令ごとに様々な操作対象の指定方法(アドレッシングモード)を組み合わせることができるという特徴を備え、これを「直交性が高い」という。内部で一つの命令をより細かく単純な「マイクロ命令」(マイクロコード)の列に置き換えてから実行する「マイクロプログラム方式」が用いられる。
命令語長や実行時間が命令によってまちまちであるため、パイプライン処理などで並列度を高めにくい。命令が多く複雑なため回路規模も大きくなりがちで開発期間・コストも増大しがちである。一方、一つの命令で複合的な処理や複雑な処理が可能なため、同じ処理内容ならば機械語のプログラムは短くて済み、コンパイラなどで最適化を行わなくても高速なコードを生成できる。
RISCとの違い
もともとCPUは誕生以来CISC型で設計されており、他と区別する必要がないためCISCという用語は存在しなかった。1970年代後半に対照的な考え方の「RISC」(Reduced Instruction Set Computer)が考案されたとき、従来の方式を区別するためにCISCという用語が産み出された(レトロニム)。
RISCは従来方式の複雑さを排し構成要素を単純化・画一化することで効率を向上させる考え方で、固定長の少数の単純な命令のみを備え、アドレッシングモードも削減されている。マイクロプログラムへ変換せず直に実行し、パイプラインを用いてすべての命令を同じ1クロックで処理することができる。
近年ではCISC型のプロセッサ製品にもRISCの知見から得られた設計が取り込まれ、RISC型にもCISC的な複雑さを増す機能拡張が続いた結果、両者の差異は薄れつつある。現在では歴史的な技術の発展を説明する際にCISCとRISCの違いに言及されることが多い。
ワイヤードロジック 【結線論理】
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)などの内部で命令を実行する際、演算や処理を物理的な素子や配線を組み合わせた論理回路によって直に行うこと。
チップ内に各命令に対応する回路群を組み込み、これを用いて処理を行う。高速に実行できるが命令ごとに物理的な回路を用意しなければならないため、命令セットが大きいと比例して回路が大規模化してしまう。単純な命令に絞り込んだRISC(Reduced Instruction Set Computer)方式のプロセッサの実行部などで用いられる。
一方、CISC(Complex Instruction Set Computer)型マイクロプロセッサなど、機能が豊富で複雑なプロセッサの場合には、命令をマイクロコードと呼ばれる単純な命令の組み合わせに分解し、マイクロコードを処理するための回路の組み合わせにより実行するマイクロプログラム制御方式が用いられることが多い。複雑なプロセッサでも一部の処理を高速化するため部分的にワイヤドロジック制御方式による処理を行う場合がある。
マイクロプログラム
コンピュータのCPU(MPU/マイクロプロセッサ)が実行する機械語(マシン語)の命令列を、内部的により単純な命令(マイクロコード)の列に自動変換したもの。このような変換を行う方式を「マイクロプログラム制御方式制御方式」という。
CPUが実行するコンピュータプログラムは機械語の命令を並べた形式になっているが、CISC方式のプロセッサでは複雑な挙動を行う命令が存在し、すべての命令に一対一に対応する実行回路を用意することが現実的でない場合がある。
このような場合に、プロセッサ内部の専用の回路が読み込んだ命令を単純な動作のマイクロコードの列(マイクロプログラム制御方式)に分解し、マイクロコードの実行回路を用いて命令を実行していくという方式が用いられる。
マイクロプログラム制御方式方式の利点として、内部構造(マイクロアーキテクチャ)が大きく異なるプロセッサ間でも命令セットの互換性を確保しやすく、同じメーカーの新製品が回路設計を刷新して機能や性能を向上しつつ過去の製品との互換性(後方互換性)を維持するのに役立つ。
一方、単純な機能の命令のみで機械語の命令セットを構成するRISC方式のプロセッサでは、マイクロコードに分解しなくてもすべての命令について実行回路を用意できるため、マイクロプログラム制御方式制御方式を利用しない構造が一般的である。
加算器 【アダー】
2進数の加算(足し算)を行う論理回路。1桁の加算を行う「半加算器」、繰り上がりを考慮した「全加算器」を組み合わせ、任意桁の加算器を構成することができる。
基本となる回路は「半加算器」(half adder:ハーフアダー)で、2進数の値の同じ桁(ビット)同士を加算して、結果を出力する。出力はその桁の値と、上位桁への繰り上がりを表す「キャリー」(carry out)の2つとなる。
2つのビットが両方「0」なら和は「0」、片方が「1」なら「1」を出力するが、両方「1」ならば結果は「10」と2桁の値になるため、その桁の値として「0」を、キャリーとして「1」を出力する。キャリーは隣の桁の値に反映させる。
下の桁からの繰り上がりを考慮した回路は「全加算器」(full adder:フルアダー)という。二数の同じ桁のビットと、下の桁の加算器から出力されたキャリーの3つを入力とし、加算後のその桁の値とキャリーを出力する。キャリーはさらに上位桁の全加算器の入力となる。
全加算器は3つの入力を加算して、「00」から「11」までの8種類の結果を得る。下位ビットの値がその桁の出力となり、上位ビットの値がキャリー出力となる。全加算器は半加算器2つとOR回路1つで構成することができる。
複数桁の2進数の加算器は、最下位桁に半加算器を置き、上位側に桁の数だけ全加算器を並べ、各加算機のキャリー出力を上位桁の全加算器の入力に接続すればよい。例えば、半加算器1つと全加算器7つを並べれば8ビットの加算器となる。
レジスタ
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部にある、演算や実行状態の保持に用いる記憶素子。最も高速な記憶装置だが、一般的なCPU製品で数個から数十個(容量に換算して数十バイト程度)と数が限られる。GPUなど特殊なプロセッサでは数万個(数百キロバイト)のレジスタを内蔵するものもある。
演算などの処理を行うためのデータをメインメモリ(RAM)やキャッシュメモリから読み出して置いたり、計算結果や途中経過などを保持したり、読み込みや書き出しを行うメモリ上のアドレス(番地)などを指し示したりするために用いられる。メモリ内の記憶素子のように番地によって識別されるのではなく、それぞれ個別の識別名が与えられている。
命令によって役割が決まっているものを専用レジスタ、特定の役割が割り当てられておらずプログラムの都合で様々な用途に使い回せるものを汎用レジスタという。プログラムからアクセスできずプロセッサ自身が内部的に使用するための特殊なレジスタ(内部レジスタ)を持つ製品もある。
専用レジスタの種類や役割はプロセッサの仕様により異なるが、多くの製品に共通するものとして、アキュムレータ、データレジスタ、アドレスレジスタ、インデックスレジスタ、ベースレジスタ、スタックポインタ、ステータスレジスタ(フラグレジスタ)、プログラムカウンタなどがある。
デコーダ
一定の規則や方式に基づいて符号(コード)化された情報に対し、符号化時とは逆方向の変換を行い、元のデータを復元する装置や回路、ソフトウェア、システムなどのこと。そのような処理のことは「デコード」(decode)という。
例えば、データ圧縮によって元のデータよりも少ない容量で表現された圧縮データを伸張(解凍/展開)して圧縮前の状態に復元するソフトウェアや、暗号化されたデータを暗号鍵に基づいて復号し平文に戻すソフトウェアなどが該当する。
CPUの内部では、機械語で表現された命令コードを解釈し、プロセッサ内部で用いるマイクロコードによる表現に変換する回路のことを「命令デコーダ」(instruction decoder)あるいは略してデコーダという。制御装置に内蔵されている。
一方、データを一定の規則に基づいて特定の符号に変換する装置やソフトウェアなどのことを「エンコーダ」(encoder)、そのような処理を「エンコード」(encode)という。エンコーダとデコーダの両方の機能を持つものは「コーデック」(codec:coder/decoder)と呼ばれる。
アキュムレータ
蓄積するもの、蓄圧器、蓄電池、蓄財家などの意味を持つ英単語。半導体の分野では、マイクロプロセッサなどの内部でデータを記憶するレジスタの一種で、論理演算や算術演算の結果を一時的に保持しておくためのものをアキュムレーターと呼ぶ。「累算器」「積算器」と訳されることもある。
あるデータに対していくつかの演算を連続して行うという状況は非常に多く発生するが、このとき前の命令の演算結果を次の命令が受け取るのにいちいちメモリにアクセスするのは非効率なため、プロセッサ内部で高速にデータの受け渡しができるように設けられている。
古い時代のコンピュータでは、基本的な算術演算などを行う命令の多くが、引数に指定された値やメモリアドレスの内容とアキュムレーターに保存されている値で演算(加減乗除など)を行い、結果をアキュムレーターに上書きするという動作になっていた。
マイクロプロセッサの時代になると演算命令の対象や結果の格納先としてアキュムレーター以外も広く指定できるようになっていき、アキュムレーターは単なる汎用のデータ保管用レジスタの一種に過ぎなくなった。ただし、製品によっては一部の命令で暗黙のうちにアキュムレーターを対象とするものが残っている場合もある。
パソコン向けなどで広く普及している米インテル(Intel)社のx86/x64系プロセッサやその互換製品の場合、8ビットプロセッサの時代にアキュムレーターとしてAレジスタが設けられ、その後16ビットのAXレジスタに、32ビットのEAXレジスタに、64ビット(x64)のRAXレジスタに、それぞれ拡張されてきた。
プログラムカウンタ 【プログラムレジスタ】
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部でデータを保持するレジスタの一種で、次に実行すべき命令が格納されているメモリ上の番地(アドレス)を保存しているもの。また、その保存しているアドレス値。「PC」と略記されることもある。
レジスタ(register)はプロセッサの回路内に存在する極めて高速に読み書きできる記憶装置で、用途に応じて様々なものが用意されている。命令アドレスレジスタはそのうちの一つで、次に実行すべき命令がメモリ上のどの番地に格納されているかを指し示している。
プログラムの実行が開始され、メモリ上のある番地から実行すべき命令が読み出されると、プロセッサ内の制御回路によって命令の長さの分だけ命令アドレスレジスタの値が加算され、次に実行すべき命令(の先頭位置)の番地を指し示すようになる。分岐やジャンプは、命令アドレスレジスタの内容を飛び先のプログラムが格納されている番地に書き換えることで実現される。
命令レジスタ 【インストラクションレジスタ】
CPU(マイクロプロセッサ)内部の高速な記憶装置であるレジスタの一種で、実行する命令の内容を格納するもの。
プロセッサが命令を実行する際、プログラムカウンタ(PC:Program Counter)と呼ばれるレジスタの内容を参照し、メインメモリ上の現在の実行位置から命令を読み出し、命令レジスタに格納する。この段階を「フェッチ」(fetch)という。
読み出された命令は、操作の種類を表す「オペコード」(opcode)や操作対象を指示する「オペランド」(operand)などが含まれており、命令デコーダという回路によりその内容が解析される。この段階を「デコード」(decode)という。
最後に、解析された命令の内容に応じて必要なデータなどをレジスタやメインメモリから取り出し、処理を実行する。スーパースカラや命令パイプラインなどで複数の命令を並列に処理するプロセッサの場合は、同時に実行状態に置かれる命令の数だけ命令レジスタが用意されている。
汎用レジスタ 【ジェネラルレジスタ】
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部の高速な記憶装置であるレジスタの一種で、状況に応じて様々な用途に用いることができるもの。一般的なプロセッサでは十個程度用意されていることが多い。
特定の用途や機能を一切持たず、プログラム次第でどのように使うこともできるものと、特定の命令では用途が決まっているものの、それ以外の命令では他の用途に使い回すことができるものがある。
いくつかの手順を組み合わせた複雑な計算を行う際に途中の値を一時的に保持したり、処理に必要なメモリアドレスを格納したりするのに使われることが多い。
汎用レジスタをうまく活用することで処理に必要なデータやアドレスをメモリから読み出したり、メモリに書き出す回数を減らすことができ、実行速度の向上を図ることができる。
インデックスレジスタ 【指標レジスタ】
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部の記憶装置であるレジスタの一種で、アクセスしたいメモリ上の番地(アドレス)の、基準値からの相対的な値を格納するためのもの。汎用レジスタを転用することが多い。
データ列などの先頭からの相対位置を記憶しておくためのもので、配列など等間隔で連続して置かれた複数のデータに順番にアクセスする際に用いる。命令群をループしながらインデックスレジスタの値を同じ数ずつ加算していくことで、同じ命令が列内のデータを端から順に処理していくことができる。
CPUへの命令の中で、扱うデータのメモリ上の位置を指示する際、命令のアドレス部の値にインデックスレジスタの値を加えたものを用いる方式を「インデックスアドレス指定」(指標アドレス指定)という。
ベースレジスタ 【基底レジスタ】
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部の記憶装置であるレジスタの一種で、アクセスしたいメインメモリ上の番地(アドレス)の基準値や先頭位置を記憶しておくためのもの。
メモリ上に展開されたある大きさのデータやプログラムを扱う際に、その先頭の番地(ベースアドレス)を格納するために用いられる。通常はそのプログラムの先頭位置を格納する。
CPUへの命令の中で、扱うデータのメモリ上の位置を指示する際、命令のアドレス部の値にベースレジスタの値を加えたものを用いる方式を「ベースアドレス指定」(基底アドレス指定)という。データの位置をプログラムの先頭からの相対位置で指定することにより、プログラムがメモリ上のどこに置かれてもプログラムを改変せずに同じようにデータにアクセスすることができるようになる(再配置可能)。
スタックポインタ
マイクロプロセッサ内部(MPU/CPU)でデータを保持するレジスタの一種で、スタックと呼ばれるメモリ領域の現在の操作位置を保持するためのもの。
スタック(stack:「堆積」の意)とは、平積みした本のように、後に入れた要素から先に取り出すというルールで管理される記憶領域で、プログラム実行中の一時的なデータ置き場として常用される。
スタックポインタはメモリ上に確保されたスタック領域の中で次にデータを書き込むべき番地を保持する。CPUがスタックへの書き出しを指示するとスタックポインタの値は書き込んだデータの長さの分だけ増え、読み出しを指示すると読み出されたデータの長さだけ減る。
AND回路 【AND gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力がいずれも「H」(Hight:高電圧)のときのみ出力が「H」となり、それ以外の場合は出力が「L」(Low:低電圧)となるもの。論理積(AND)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の両方が「H」のとき出力が「H」となり、片方あるいは両方が「L」のとき出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理積(ビットAND)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のAND演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。AND回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでAND回路を構成することができる。
OR回路 【OR gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力のいずれもが「L」(Low:低電圧)のときに出力が「L」となり、それ以外の場合は出力が「H」(High:高電圧)となるもの。論理和(OR)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の片方あるいは両方が「H」のとき出力が「H」となり、両方「L」のときのみ出力が「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット論理和(ビットOR)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のOR演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。OR回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路(のみ)の組み合わせでOR回路を構成することができる。
NOT回路 【NOT gate】
基本的な論理回路の一つで、一つの入力と一つの出力を持ち、入力の逆の状態を出力するもの。論理否定(NOT)演算を行う回路である。
入力が「H」(High:高電圧)なら出力は「L」(Low:低電圧)、入力が「L」なら出力は「H」となる。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビット否定(ビットNOT)演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のNOT演算を行うことができる。
最も基本的な論理ゲートの一つで、様々なデジタル回路の構成部品として用いられる。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。NOT回路が用意されていない場合でも、NAND回路あるいはNOR回路を用いてNOT回路を構成することができる。
論理回路
デジタル信号を処理して論理演算や記憶などを行うための電子回路。単純な論理演算を行う回路を膨大な数組み合わせればCPU(MPU/マイクロプロセッサ)のような複雑な装置を作ることができる。
二状態のいずれかを取るデジタル信号を入力および出力とする論理素子を配線で結び、様々な論理演算や記憶を行う回路を構成する。信号の状態は論理的には2進数の「0」と「1」、あるいは真偽値(真理値/ブール値)の「真」と「偽」に対応し、物理的には電圧の高低で表すことが多い。高電圧を「真」や「1」に対応付ける方式を「正論理」、逆を「負論理」という。
論理素子は「論理ゲート」(logic gate)とも呼ばれ、何らかの論理演算を行う機能を持った単体の素子である。一つ以上の入力を取り、所定の演算を行って一つの信号を出力する。実際の電子回路上では抵抗やトランジスタなど複数の電子部品を組み合わせて実装される。図で表す際の記号には標準規格があり、MIL記号やJIS記号などがよく用いられる。
基本的なゲートとして、否定(NOT)演算を行う「NOTゲート」、論理和(OR)演算を行う「ORゲート」、論理積(AND)演算を行う「ANDゲート」、排他的論理和(XOR)演算を行う「XORゲート」、否定論理和(NOR)演算を行う「NORゲート」、否定論理積(NAND)演算を行う「NANDゲート」などがある。複雑な挙動の論理回路もほとんどがこれらの組み合わせで構成されている。
<$Fig:logic|center|false>現在の入力のみから出力を決定する回路を「組み合わせ回路」(combinational logic)と呼び、加算を行う加算器のように演算を行う回路などが該当する。一方、内部に状態を持ち、過去の入力で変更された現在の内部状態と入力を組み合わせて出力を決定する回路を「順序回路」(sequential logic)という。フリップフロップ回路(ラッチ回路)やカウンタ回路などが該当する。
半加算器 【ハーフアダー】
2進数の加算(足し算)を行う論理回路(加算器)のうち、下の桁からの繰り上がりを考慮せず、単純に二数の和のみを求める回路のこと。より複雑な加算器の構成要素となる。
加算を行う回路を加算器というが、半加算器は2つのビット列の同じ桁の値同士を加算し、その桁の加算後の値と、上位桁への繰り上がりの有無を表す「キャリー」(carry out)の2つを出力する。キャリー出力は繰り上がりがなければ「0」、あれば「1」となる。
2つのビットが両方「0」ならその桁の値として「0」(0+0=0)を、片方が「1」なら「1」(0+1=1, 1+0=0)を出力するが、両方「1」ならば結果は「10」(1+1=10)と2桁の値になるため、その桁の値として「0」を、キャリーとして「1」を出力する。キャリーは隣の上位桁の全加算器に入力される。
半加算器は基本的な論理回路の組み合わせで構成でき、AND回路2つ、OR回路1つ、NOT回路1つで作ることができる。XOR回路が利用可能であれば、XOR回路1つとAND回路1つで構成することもできる。
半加算器は下の桁からの繰り上がりを考慮しないため、そのままでは最下位桁の加算にしか使えない。下の桁からの繰り上がりを入力として受け付けるものは「全加算器」(full adder:フルアダー)と呼ばれ、2つの半加算器とOR回路により構成することができる。最下位桁以外の加算には全加算器が用いられる。
全加算器 【フルアダー】
2進数の加算(足し算)を行う論理回路(加算器)のうち、下の桁からの繰り上がりを考慮し、3つの数の和を求める回路のこと。複数桁の加算機の構成要素となる。
加算を行う回路を加算器というが、全加算器は2つのビット列の同じ桁の値と、隣の下位桁からの繰り上がりを加算し、その桁の加算後の値と、上位桁への繰り上がりの有無を表す「キャリー」(carry out)の2つを出力する。キャリー出力は繰り上がりがなければ「0」、あれば「1」となる。
加算する3つの値の「0」と「1」の組み合わせにより「00」から「11」までの8種類の和が得られるが、下位ビットがその桁の値として、上位ビットが上位桁へのキャリーとして出力される。キャリーは隣の上位桁の全加算器に入力される。
一方、下位桁からの繰り上がりを考慮せず、単純に2つの値の和を求める回路を「半加算器」(half adder:ハーフアダー)という。繰り上がりのない最下位桁の和を求めるのに使われる。全加算器は半加算器2つとOR回路1つを組み合わせて構成することができる。
最下位桁に半加算器を置き、各桁についての全加算器を桁の数だけ並べて連結すると、複数桁の2進数の加算を行う論理回路を構成することができる。例えば、半加算器1つと全加算器7つを並べれば8ビットの全加算器となる。
順序回路
デジタル回路のうち、入力と現在の内部状態により出力が決まるもの。フリップフロップ回路やラッチ回路などが該当する。
内部に現在の状態を保持する記録回路を持ち、現在の入力信号と過去の入力によって与えられた内部状態の2つを合わせて出力を決定する。入力が同じでも、その時の内部状態によって出力される信号は変化することがある。
例えば、最も単純な順序回路の一つである「RSフリップフロップ」はSとRの2つの入力と1つの出力を持ち、(S,R)を(1,0)とすると出力が1に、(0,1)とすると出力が0に切り替わる。(0,0)のときは直前に切り替えられた出力が維持される。
ラッチやフリップフロップの他にも、レジスタやカウンタなど何らかの内部状態を保持するものが該当する。CPUやGPUなどのプロセッサもそれ自体が巨大な順序回路の一種と考えることもできる。一方、内部状態を持たず、その時の入力のみから出力が決定されるデジタル回路を「組み合わせ回路」(combinational circuit)という。
組み合わせ回路
デジタル回路のうち、入力のみから出力が決まるもの。基本的な論理ゲートを組み合わせて構成され、内部状態を持たない。論理ゲートそのものや加算器、マルチプレクサなどが該当する。
ある入力の組み合わせからは常に同じ出力が得られ、過去の入力などの影響を受けないような回路を指す。算術演算や論理演算、それらを組み合わせたデータ処理などを行う回路は組合せ回路として構成されることが多い。
NOT回路、OR回路、AND回路、XOR回路、NOR回路、NAND回路など、基本的な論理演算を行う論理ゲートは組合せ回路の一種である。また、加算器(半加算器/全加算器)、乗算器、コンパレータ(比較器)、エンコーダ、デコーダ、マルチプレクサ、デマルチプレクサ、バレルシフタなどが組合せ回路に分類される。
一方、内部状態を保持する仕組みを持ち、内部状態と現在の入力の2つを勘案して出力を決定するデジタル回路を「順序回路」(sequential circuit)という。内部状態は過去の入力の影響を受け、同じ入力でも内部状態によって出力が変化することがある。
NAND回路 【NAND gate】
基本的な論理回路の一つで、二つの入力と一つの出力を持ち、入力が両方「H」(High:高電圧)のときのみ出力が「「L」(Low:低電圧)となり、それ以外の場合は出力が「H」となるもの。論理積(AND)の結果を反転(NOT)した否定論理積(NAND)演算を行う回路である。
正論理の場合、入力の片方あるいは両方が「L」のときに出力が「H」となり、両方「H」のとき「L」となる(負論理の場合はこの逆)。「H」と「L」を2進数の「1」と「0」に対応付ければビットNAND演算を、真理値の「真」(true)と「偽」(false)に対応付ければ論理演算のNAND演算を行うことができる。
現在の入力のみから出力が決まる組み合わせ回路の一つで、最も基本的な論理ゲートの一つである。回路図に用いる記号をIEC、MIL/ANSI、DINの各規格がそれぞれ定めており、JIS規格はIEC記号に準拠している。
「機能的完全性」(functional completeness)を備え、AND回路やOR回路、NOT回路などの基本的な論理ゲート、あるいは加算器などのより複雑な回路を含め、任意の論理回路はNAND回路のみの組み合わせで実装できることが知られている。また、他の論理ゲートより少ない半導体素子(トランジスタなど)で実装できるため実用上もよく利用される。
アドレッシング
機器やデータの所在情報(アドレス)を指定したり割り当てること。主に対象を連続した番号(番地)で識別するシステムで用いられる概念である。
メモリアドレッシング
コンピュータ内部で、CPUがメインメモリ(RAM)内でデータを読み書きしたい番地を指定することをアドレッシングという。32ビットCPUであれば番地を32ビット値で表す「32ビットアドレッシング」が、64ビットCPUであれば64ビット値で表す「64ビットアドレッシング」が行われる。
CPUが実行する機械語では様々なアドレス指定方式を用意しており、これを「アドレッシングモード」(addressing mode)という。命令のオペランドに番地の値を直に記述する「直接アドレス指定」(絶対アドレス指定)、番地の値が保存されたメモリ上のアドレスを記述する「間接アドレス指定」などの種類がある。
IPアドレッシング
IPネットワーク内で機器の識別に用いるIPアドレスの割り当て方式のことを「IPアドレッシング」ということがある。IPv4アドレスの場合を「IPv4アドレッシング」、IPv6の場合を「IPv6アドレッシング」という。
現在インターネットで広く普及しているIPv4の場合、IPアドレスは32ビットの値で表される。これを、アドレス領域ごとに固定された長さの上位ビットをネットワークアドレス、残りの下位ビットをホストアドレスとするアドレッシング方式を「クラスフルアドレッシング」という。
アドレス領域全体をクラスAからクラスC(特殊用途のクラスD、Eもある)に分け、クラスAアドレスは上位8ビットが、クラスBアドレスは上位16ビットが、クラスCアドレスは上位24ビットがそれぞれネットワークアドレスとなる(残りの下位ビットがホストアドレス)。
一方、クラスによる区分を廃止し、サブネットワークごとに個別にネットワークアドレスの範囲を表すサブネットマスクを指定する方式を「クラスレスアドレッシング」という。ネットワークアドレスの長さは1ビット単位で可変長であり、サブネットマスクが「255.255.255.240」であれば上位28ビットがネットワークアドレスとなる。
インストラクション 【命令語】
命令、指示、指図、教育、指導、取扱説明書などの意味を持つ英単語。コンピュータの分野では、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)などに与える機械語の命令のことを命令語という。実行可能な形式のコンピュータプログラムは命令語の組み合わせとして構成されている。
プロセッサがどのような命令語を実行できるかは設計時に決まっており、その体系を「命令セット」あるいは「命令セットアーキテクチャ」(ISA:Instruction Set Architecture)という。これはプロセッサ内部の回路構造(マイクロアーキテクチャ)とは独立に定義され、ISAが共通しているプロセッサは内部の構造が異なっていても同じプログラムコードを実行できる。
IPC (Instructions Per Cycle)
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)の性能指標の一つで、クロック周波数あたりの実行命令数。あるベンチマークプログラムを実行した場合に、1クロックあたり平均いくつの命令を実行できるかを示したもの。この値が高いほど実行効率が高く性能が高い。1命令当たりの平均クロック数を表すCPIとは互いに逆数の関係にある。
マイクロプロセッサは内部の個々の回路の動作のタイミングを合わせるために、クロック(時計)と呼ばれる素子から一定の時間間隔で信号を発信し、これに合わせて各回路が演算やデータ転送を行なうようになっている。この間隔のことを1クロック(あるいは1サイクル)と呼び、この間に実行できる平均の命令数が高いほど処理能力が高い。
CPI (Cycles Per Instruction)
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の性能指標の一つで、一つの命令を実行するのにCPUクロック周期が何サイクル必要かを表したもの。同じクロック周波数なら、この値が小さいプロセッサほど効率よく高速にプログラムを実行することができる。1クロック当たりの平均実行命令数を表すIPCとは互いに逆数の関係にある。
プロセッサの構造・設計によって大きく規定されるが、同じプロセッサでも命令によって必要なサイクル数が異なる場合があるため、厳密にはどのような命令で構成されたプログラムを実行するかにより変化する。異なる設計のプロセッサを比較する場合は同じ内容の処理を行うベンチマークテストなどを行なって計測することが多い。
最も単純なプロセッサでは、一命令ごとに順番に読み出し、デコード、実行、書き戻しなどの実行ステージを経るため、5~10CPI程度となることが多い。パイプラインを導入して各ステージで別の命令を処理できるようにすることで、1サイクルに近づけることができる。
さらに、スーパースカラ型のプロセッサでは複数の実行ユニットを並行に動作させ、依存関係にない命令を同時に実行することで、1を下回る値(平均すると1クロックの間に1つ以上の命令を実行できる)を実現することもできる。
アドレス指定方式 【アドレッシングモード】
CPUが命令を実行する際に処理対象となるデータの所在を指定する方法のこと。主にメインメモリ上の番地(アドレス)を決定する方式を指し、命令のアドレス部に記載されたデータと、実行時に特定のレジスタに格納された値などの組み合わせによって指定される。最終的に決定された、読み出したいデータのアドレスのことを「有効アドレス」という。
CPUは機械語で記述された命令列をプログラムとして実行するが、命令の中にはメモリ上の特定の位置の内容を読み込んで処理するものがある。その場合、命令のオペランド部(アドレス部)でデータの存在するメモリアドレスを記述するが、その指定方式にはいくつかの種類があり、命令によって対応している方式が異なる。
命令のアドレス部に直に有効アドレスを指定する方式を「直接アドレス指定」、アドレス部で指定したアドレスに格納された値を有効アドレスとする方式を「間接アドレス指定」、特定のレジスタの値と組み合わせて有効アドレスを求める方式を「アドレス修飾」あるいは「修飾アドレス指定」という。
修飾アドレス指定には「ベースアドレス指定」「インデックスアドレス指定」「相対アドレス指定」などの種類があり、これらを組み合わせることもある。また、アドレス部に処理したいデータを直接記述することがあり、メモリ上のアドレスは指定しないが便宜上「即値アドレス指定」と呼ばれる。
分岐命令 【条件分岐命令】
コンピュータのCPU(MPU/マイクロプロセッサ)が直に解釈・実行できる機械語(マシン語)の命令のうち、次に実行する命令の位置を指定するための命令を分岐命令という。
「条件分岐命令」(conditional branch instruction)は条件に従って分岐するか否かを決める命令で、条件と飛び先のメモリアドレスなどを記述する。直前の命令の実行結果などが条件を満たすか否かにより、次の命令の実行位置を飛び先アドレスへジャンプさせるか、次の命令にそのまま進む(分岐しない)か決定する。
プロセッサの命令セットによって用意されている命令は異なり、利用できる条件や分岐の仕方(「値が0ならジャンプする命令」と「0以外ならジャンプする命令」など)によって何種類かの条件分岐命令が用意されていることが多い。
また、条件を指定せず、必ず指定されたアドレスへ次の実行位置を移動させる命令もあり、「ジャンプ命令」(jump instruction)あるいは「無条件分岐命令」(unconditional branch instruction)という。分岐しないのに無条件分岐という名称は奇妙だが、「次の実行位置を指定する」という点が条件分岐命令群と同じであるためこのように呼ばれる。
割り込み 【インタラプト】
コンピュータのCPU(中央処理装置)に現在実行中の処理を一時中断させ、強制的に指定された処理を実行させること。また、CPUに伝達されるそのような処理要求。
CPUは周辺機器などから処理要求を受信したり、実行中のプログラムで急を要する処理を行う必要が生じると、現在実行している処理を中断し、用意されたプログラムを実行する。割り込んだ処理が終了すると、再びそれまで実行していた処理を再開する。
このうち、外部の回路や周辺機器などハードウェアが発生させるものを「ハードウェア割り込み」あるいは「外部割り込み」という。割り込みコントローラなどを経由してCPUの専用端子に信号が送られ、実行中の処理を中断して機器の制御に必要な処理などを実行する。
一方、CPUが実行中のプログラム自身が発生させるものを「ソフトウェア割り込み」あるいは「内部割り込み」という。例外的な事象が発生したことをオペレーティングシステム(OS)に伝え、適切な対応を迫る。算術演算でオーバーフロー(桁あふれ)やゼロ除算などが発生したり、書き込み禁止のメモリ領域へ書き込もうとした場合などに起きる。
内部割り込み 【ソフトウェア割り込み】
実行中の処理を中断して強制的に指定された処理を実行させる割り込み処理の一つで、実行中のプログラム自身に起因するもの。ハードウェアが引き起こすものと対比してソフトウェア割り込みとも呼ばれる。
実行中のプログラムがゼロ除算を行ったり、書き込みが禁止されたメモリ領域へ書き込もうとするなど、何らかのエラーや例外(exception)が起きると、これを処理するために割り込みが発生する。
また、OSの機能を呼び出す際にCPUの実行モードを切り替えるなどの目的で、プログラム自身が割り込み命令を実行してあえて発生させる場合もあり、「SVC割り込み」(スーパーバイザコール割り込み)などと呼ばれることもある。
これに対し、実行中のプログラム以外の外部の要因(ほとんどはハードウェアによる処理要求)によって発生する割り込みを「外部割り込み」(external interrupt)あるいは「ハードウェア割り込み」(hardware interrupt)という。
外部割り込み 【ハードウェア割り込み】
実行中の処理を中断して強制的に指定された処理を実行させる割り込み処理の種類の一つで、実行中のプログラム以外の外部の要因によって発生したもの。ハードウェアによる処理要求により引き起こされるためハードウェア割り込みとも呼ばれる。
主に入出力装置やタイマーなどが処理を要求するため発生するもので、利用者がキーボードを操作したり、ネットワークを通じて外部からデータを受信したり、外部記憶装置がデータの読み書きを終えたりすると発生する。
装置が割り込みを行いたいときは割り込みコントローラと呼ばれる回路やICチップを呼び出し、CPUに割り込み信号を送信してもらう。CPU側が制御命令により一時的に禁止したり再開したりできるものを「マスカブル割り込み」(maskable interrupt)、抑止できず強制的に割り込まれるものを「ノンマスカブル割り込み」(non-maskable interrupt)という。
これに対し、実行中のプログラムでエラーや例外が発生したり、OSの機能を呼び出したりする際に発生する割り込みは「内部割り込み」(internal interrupt)あるいは「ソフトウェア割り込み」(software interrupt)という。
割り込みコントローラ (interrupt controller)
コンピュータ内部の制御回路の一つで、周辺機器とCPUの間に接続され、周辺機器からの割り込み処理要求を受信してCPUに割り込み信号を発生させる装置。周辺機器に対する窓口を担うCPUの秘書のような存在で、単体のICチップではなくチップセットなどの一部として実装されることが多い。
周辺機器はボタンを利用者に押されるなど何らかの処理を行いたくなると、それをCPUに伝えるために割り込み信号を発信する。割り込みコントローラがコンピュータ内に存在する場合、この信号はいったんコントローラに集められる。
コントローラは装置ごとに設定されている優先度などに基づいてどのタイミングでどの信号をCPUに伝えるかを判断し、適切な順序で信号を伝える。また、無効に設定されている機器からの信号を無視してCPUに伝えないといった処理も行う。
システムコール 【スーパーバイザコール】
コンピュータ上で実行中のプログラムが、オペレーティングシステム(OS)のカーネルの特権的な機能を呼び出す仕組み。また、そのための命令や関数などのインターフェース仕様(API)。「サービスコール」(service call)「カーネルコール」(kernel call)と呼ぶシステムもある。
現代的なコンピュータやOSの設計では、システムの安定性と安全性を確保するため、一部の処理や操作はOSの中核部分であるカーネルが特権的に実行し、一般のプログラムからは直接実行することができないようになっている。
例えば、ハードウェアへの直接的なアクセスや、仮想メモリの管理、割り込み設定の変更などはCPUの特権命令を用いて処理され、スーパーバイザモードと呼ばれる特権的な動作モードで稼働しているOSカーネルしか実行できない。
アプリケーションソフトなど利用者が直接操作するプログラムの多くは一般的な動作モードであるユーザーモードで実行されるため、特権命令を実行するにはSVCによりカーネルに処理を依頼する必要がある。この手続きは内部割り込み(ソフトウェア割り込み)を発生させる形で実装されることが多いため「SVC割り込み」とも呼ばれる。
カーネルは依頼に従って命令を実行するが、プログラムが特権命令を直に実行する場合と異なり、不正な操作や誤った操作でシステムが危険に曝されないよう一定の制限やチェックを行う。
クロック周波数 【動作周波数】
電子基板や半導体チップなどの内部で、複数の電子回路が信号を送受信するタイミングを揃えるための周期的な電気信号を、単位時間あたり何回発振するかを表す値のこと。単位は「Hz」(ヘルツ)。
クロック信号には様々な形式があるが、最も基本的なものは一定時間ごとに高電圧と低電圧が切り替わる信号で、基板内や回路内に設けられた発振器により生成され、各装置や回路に供給される。
クロック信号を毎秒何回発するかを表すのがクロック周波数で、この値が大きいほど、1秒を短い間隔で区切って信号の処理や伝送を実行するため、他の条件が同じなら装置をより高速に動作させることができる。
クロック信号を毎秒1回発振するのが1Hzで、毎秒1000回を1kHz(キロヘルツ)、毎秒100万回を1MHz(メガヘルツ)、毎秒10億回を1GHz(ギガヘルツ)という。現代のコンピュータのクロック周波数は数百MHzから数GHzが多い。
原則として基板上のチップや回路は単一(同一)のクロック周波数で動作するが、近年ではCPUなど特定のチップの内部だけ、外部からの信号の数倍の周波数を用いて高速に動作させる場合もあり、「CPUクロック」「メモリクロック」「ベースクロック」などのように呼び分ける。
クロック周期 (clock cycle/クロックサイクル)
クロック信号の繰り返し周期一回分にかかる時間の長さをクロック周期(クロックサイクル)という。クロック信号の始まり(電圧の立ち上がりなど)から、次のクロックの始まりまでの時間で、クロック周波数の逆数となる。
例えば、クロック周波数1MHzの信号は毎秒100万回の発振を繰り返すため、一回あたりのクロック周期は100万分の1秒(1マイクロ秒)となり、1GHzならば10億分の1秒(1ナノ秒)となる。
インストラクション 【命令語】
命令、指示、指図、教育、指導、取扱説明書などの意味を持つ英単語。コンピュータの分野では、マイクロプロセッサ(MPU/CPU)などに与える機械語の命令のことをCPIという。実行可能な形式のコンピュータプログラムはCPIの組み合わせとして構成されている。
プロセッサがどのようなCPIを実行できるかは設計時に決まっており、その体系を「命令セット」あるいは「命令セットアーキテクチャ」(ISA:Instruction Set Architecture)という。これはプロセッサ内部の回路構造(マイクロアーキテクチャ)とは独立に定義され、ISAが共通しているプロセッサは内部の構造が異なっていても同じプログラムコードを実行できる。
IPC (Instructions Per Cycle)
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)の性能指標の一つで、クロック周波数あたりの実行命令数。あるベンチマークプログラムを実行した場合に、1クロックあたり平均いくつの命令を実行できるかを示したもの。この値が高いほど実行効率が高く性能が高い。1命令当たりの平均クロック数を表すCPIとは互いに逆数の関係にある。
マイクロプロセッサは内部の個々の回路の動作のタイミングを合わせるために、クロック(時計)と呼ばれる素子から一定の時間間隔で信号を発信し、これに合わせて各回路が演算やデータ転送を行なうようになっている。この間隔のことを1クロック(あるいは1サイクル)と呼び、この間に実行できる平均の命令数が高いほど処理能力が高い。
CPI (Cycles Per Instruction)
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の性能指標の一つで、一つの命令を実行するのにCPUクロック周期が何サイクル必要かを表したもの。同じクロック周波数なら、この値が小さいプロセッサほど効率よく高速にプログラムを実行することができる。1クロック当たりの平均実行命令数を表すIPCとは互いに逆数の関係にある。
プロセッサの構造・設計によって大きく規定されるが、同じプロセッサでも命令によって必要なサイクル数が異なる場合があるため、厳密にはどのような命令で構成されたプログラムを実行するかにより変化する。異なる設計のプロセッサを比較する場合は同じ内容の処理を行うベンチマークテストなどを行なって計測することが多い。
最も単純なプロセッサでは、一命令ごとに順番に読み出し、デコード、実行、書き戻しなどの実行ステージを経るため、5~10CPI程度となることが多い。パイプラインを導入して各ステージで別の命令を処理できるようにすることで、1サイクルに近づけることができる。
さらに、スーパースカラ型のプロセッサでは複数の実行ユニットを並行に動作させ、依存関係にない命令を同時に実行することで、1を下回る値(平均すると1クロックの間に1つ以上の命令を実行できる)を実現することもできる。
MIPS 【Million Instructions Per Second】
コンピュータの処理速度をあらわす単位の一つで、毎秒何百万回の命令を実行できるかを表す値。1MIPSのコンピュータは、1秒間に100万回の命令を処理できる。主にマイクロプロセッサの性能を反映するため、プロセッサの性能指標として扱われることもある。
命令の体系(命令セットアーキテクチャ)の異なるプロセッサの間では、一つの命令で実行できる内容に違いがあり、同じ内容の処理を行うのに何命令要するかが異なるため、MIPSは同じ命令セットのプロセッサ(互換性のあるプロセッサ)同士でなければ比較できない。
GIPS (Giga-IPS/billion instructions per second)
コンピュータの処理速度をあらわす単位の一つで、毎秒何十億回の命令を実行できるかを表す値。1GIPSのコンピュータは、1秒間に10億回の命令を処理できる。MIPSの1000倍に相当する単位。主にマイクロプロセッサ(MPU/CPU)の性能を反映するため、プロセッサの性能指標として扱われることもある。
MIPS同様、命令の体系(命令セットアーキテクチャ)の異なるプロセッサの間では単純に比較することはできず、同種のプロセッサの製品モデルや世代による違いを比較するのに用いることが多い。
サイクルタイム 【サイクル時間】
繰り返し行なう作業や処理の、一回の工程にかかる所要時間。工場の生産ラインなどでは、実際にラインから完成品が送り出されてくる周期を表す。
ある工程を開始・着手してから、次に同じ工程を開始する(できるようになる)までの時間のことである。複数の系統で並列に工程を実施できる場合(同じ生産ラインが複数ある場合など)は、工程にかかる所要時間を系統の数で割った値がサイクルタイムとなる。
例えば、ライン生産方式の工場で、3分のサイクルタイムで各工程が完了する場合、3分に1個のペースで製品が完成することになる。一方、稼働時間と生産数が与えられ、これを達成するために一工程にかけられる時間を逆算したものを「タクトタイム」(ピッチタイム)という。
コンピュータのサイクルタイム
コンピュータについてサイクルタイムという場合は、各回路の動作タイミングを同期させるクロック周期(クロックタイム)のことを指すことが多い。
コンピュータ内では基板上のICチップや回路、チップ内の素子などの間で信号の送受信や処理のタイミングを合わせるため、「クロック信号」(clock signal)という一定の周期の信号に合わせて一斉に動作するようにできている。
この信号が毎秒何回のペースで発振するかを「クロック周波数」(clock frequency)と呼び、現代のコンピュータでは毎秒数億回(数百メガヘルツ)から数十億回(数ギガヘルツ)に及ぶことがある。このクロック信号の周期をクロックタイムあるいはサイクルタイムと呼ぶことがあり、周波数の逆数となる。例えば、クロック周波数が1GHzであればサイクルタイムは10億分の1秒(1ナノ秒)となる。
同じコンピュータの内部でも装置や回路によって異なる周波数で動作することもあり、主基板(マザーボード)上の伝送路などを駆動するクロック信号の周期を「マシンサイクルタイム」、メインメモリ(RAM)のクロック周期を「メモリサイクルタイム」、CPUのクロック周期を「CPUサイクルタイム」など呼ぶことがある。
FLOPS 【FLoating-point Operations Per Second】
コンピュータの処理速度をあらわす単位の一つで、1秒間に実行できる浮動小数点数演算の回数。科学技術計算や3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)描画処理などにおける性能指標として用いられることが多い。
浮動小数点数は広い範囲の実数を表現できる数値のデータ形式で、その計算を毎秒何回実行できるかをFLOPSで表す。値が大きい場合は他の単位と同じように接頭辞を付け、1000FLOPSを1kFLOPS(キロフロップス)、100万FLOPSを1MFLOPS(メガフロップス)というように表す。
浮動小数点数は表すことができる数値の範囲の広さによって単精度、倍精度、半精度、4倍精度などの種類があるため、どの精度で計算する場合のFLOPS値であるかを明示する必要がある。「単精度:16GFLOPS、倍精度:4GFLOPS」のように精度ごとの性能を併記する場合もある。
一般に、単体のCPUやGPUは仕様上の計算能力(理論値)がそのまま実際の能力(実効値)となるが、多数のプロセッサを搭載するスーパーコンピュータのようなシステムでは、処理の制御やチップ間の通信などに時間を浪費(オーバーヘッド)するため理論値通りの性能は出ない。ベンチマークソフトを実行して実測値を計測する必要がある。
2020年代の一般的な半導体製品では、CPUが数百GFLOPS(gigaFLOPS:10億FLOPS)、GPUが単精度で数TFLOPS(teraFLOPS:1兆FLOPS)のものが普及している。最先端のスーパーコンピュータは数百PFLOPS(petaFLOPS:1000兆FLOPS)となっており、分散コンピューティングネットワークでは総計算能力1EFLOPS(exaFLOPS:100京FLOPS)を超えるものも現れている。
命令ミックス 【インストラクションミックス】
コンピュータの処理性能を測定する際に実行するテスト用のプログラムに含まれるCPU命令の組み合わせ(種類と構成比)のこと。
コンピュータのCPU(MPU/マイクロプロセッサ)の性能を測定する方法として、あるプログラムの起動から終了までにかかった時間を計測し、実行した命令の回数で割ることにより1秒あたりの命令実行回数(IPS:Instructions Per Second)を決定する手法がある。
CPUには多数の動作の異なる命令が組み込まれており、命令ごとに所要時間が異なるため、どの命令を何回ずつ実行するかによって計測値は変化する。このため、試験に使ったプログラムに含まれる各命令について、命令Aが何回(何%)、命令Bが何回(何%)…という実行回数(構成比率)を明らかにする必要がある。この命令の組み合わせのことを命令ミックスという。
試験者や機種が違っても同じように計測や比較ができるよう、命令の組み合わせについての標準が定められたこともあった。1950年代の米IBM社製メインフレーム向けに、主に科学技術計算を想定して設計された「ギブソンミックス」や、事務処理や会計処理を想定して設計された「コマーシャルミックス」などである。
パイプライン処理
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)内部での命令実行方式の一つで、一つの命令を複数の段階に分割してそれぞれを別の回路で実行することにより、いくつかの命令の実行を並行して進める方式。
プロセッサ内部での一つの命令の実行は、命令の読み込み(フェッチ)、解釈(デコード)、実行など複数の段階からなるサイクルで構成されている。単純な構造のプロセッサでは前の命令実行のすべての段階が終了しなければ、次の命令に取り掛かることができない。
これに対し、パイプライン機構を備えたプロセッサは各段階のユニットを独立に制御でき、前の命令がデコードに移ったら次の命令をフェッチするといった動作が可能になる。理論的には実行段階の数(通常3~6段階程度)と同じ数の命令を同時に実行状態に起くことができ、一命令あたりの実行時間を大幅に短縮することができる。
各段階をさらに細かく分割し、それぞれにユニットを割り当てる方式を「スーパーパイプライン」と呼び、10段以上の深さのパイプラインを構成する場合もある。最も極端なパイプラインを持つことで有名な米インテル(Intel)社のPentium 4(ペンティアム4)プロセッサのパイプラインは20段構成となっており、同社はこれを「ハイパーパイプライン」と称した。
スーパーパイプライン
マイクロプロセッサ(MPU/CPU)の高速化手法の一つで、命令を細かい工程に分解して並列に実行するパイプライン処理を、高度に細分化・多段化したもの。
プロセッサが一つの命令を実行するには、命令の読み出し、データの読み出し、演算、結果の書き込み、などのように複数の工程を経るが、各工程の処理機構を独立して動作させ、流れ作業的に前の命令のサイクルが終わる前に次の命令を処理し始める方式を「パイプライン処理」(パイプライン制御)という。
一般的なパイプライン機構は5段階前後で構成されることが多いが、スーパーパイプラインといった場合にはより小さな処理単位に細分化され、10段階以上の工程に分解される。多くの命令を並列に実行できるが、分岐予測にミスした場合のペナルティなども大きくなるため、増やせば増やすほど性能が向上するわけではない。
最も極端なパイプラインを持つことで有名な米インテル(Intel)社の「Pentium 4」(ペンティアム4)プロセッサは20段構成のパイプラインを持ち、同社はこれを「ハイパーパイプライン」(Hyper Pipelined Technology)と称した。
スーパースカラ
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)の高速化手法の一つで、命令を解釈・実行する回路を複数備え、依存関係にない複数の命令を同時に実行できるようにしたもの。
単純な構造のCPUはコンピュータプログラムを構成する命令の列から度に一つずつ読み込んで順番に処理していくが、スーパースカラ型のCPUは内部に実行ユニットを複数持ち、一度に複数の命令を読み込んで同時に実行することができる。
ただし、読み込んだ複数の命令の間に、「前の命令の結果を後の命令が利用する」といった依存関係がある場合や、「前の命令で別の番地に分岐してしまい後続命令の実行が不要になる」場合もあるため、すべての命令を並列に実行できるわけではない。依存関係をチェックする回路は並列度が増すと急激に複雑化するため実行ユニットの数はあまり多くは増やせず、実用上は2~4並列程度の構成が多い。
CPUで並列処理を行なう方式にはマルチコアやマルチプロセッサなどもあるが、これらは複数のプログラム(命令の流れ)を並列に実行できるもので、単一のプログラム内で前後に並んだ命令を並列に実行するスーパースカラとは異なる。また、ベクトルプロセッサは一つの命令で複数のデータを同時に処理できる方式で、命令自体を複数実行できるわけではない。
VLIW 【Very Long Instruction Word】
CPU(マイクロプロセッサ)の設計様式の一つで、依存関係にない複数の命令を一つの命令としてまとめて投入し、複数の実行ユニットで並列に実行する方式。
例えば、32ビット長の命令を4つ同時に投入・実行できる128ビット長の実行ユニットを搭載するVLIWプロセッサでは、プログラムを4命令ずつ一度に実行することができる。
同時に実行する命令同士には、前の命令の結果を次の命令が利用するという前後関係(依存関係)が存在しないことが必要であり、規定の数に達しない場合は空いたユニットが「NOP」(No Operation:何もしない)命令で埋められる。常にユニットの数だけ並列に命令を実行できるわけではない。
コンパイラによる最適化
プロセッサ内部の制御回路は分岐予測など依存関係の解析や調整などを行わないため、設計が単純で廉価に高速化を図れるが、並列度を高めるにはコンパイラなどのソフトウェア側でVLIWを考慮した機械語コードを生成する必要がある。
その際、特定のVLIWプロセッサに最適化されたコードは並列度が異なる別のプロセッサでは実行のタイミングがずれてしまうため、性能を最大限に引き出すにはプロセッサ毎に最適化されたコードを用意する必要がある。
シングルコアCPU
マイクロプロセッサ(CPU/MPU)のうち、演算・制御のための回路群を一セットだけ内蔵しているもの。複数の回路群を持つ「マルチコア」と対比する際に用いるレトロニム(retronym)表現。
コンピュータプログラムを解釈して命令を実行するための回路を一揃え内蔵しており、一度に一つの命令の流れを実行していくことができる。マルチコア方式が発明される以前のCPU製品はシングルコアに分類される。
一方、単体のプロセッサとして動作可能な演算・制御回路のまとまり(プロセッサコア)を一枚のICチップに複数実装したものを「マルチコアプロセッサ」(multi-core processor)という。一つのチップに複数のプロセッサが内蔵されているのに近い設計様式で、同時に複数のプログラムを実行できる。
なお、シングルコア型であっても、空いている回路をやりくりして同時に2つの命令の流れを実行状態に置く「同時マルチスレッディング」に対応している場合は、ソフトウェアから見ると2つのコアが内蔵されているように見える。米インテル(Intel)社の「ハイパースレッディング」(HTT:Hyper-Threading Technology)対応製品などが該当する。
マルチコアCPU 【multi-core CPU】
2つ以上のプロセッサコアを単一のICチップに集積したマイクロプロセッサ(MPU/CPU)。コアの数に応じて複数のコンピュータプログラムを並列に実行することができる。
一般的なCPUでは、命令の解釈や演算、他の装置の制御などを行う回路を組み合わせた「プロセッサコア」(processor core)が1セット入っている。マルチコアプロセッサにはこのコアが複数内蔵されており、ちょうどCPUを複数個搭載しているような状態になる。
マルチコアプロセッサでは、各コアは単体で機能が完結していて独立しているため、それぞれのコアは他のコアに影響されることなく動作できる。一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載するマルチプロセッサと同じように、処理を複数のコアで分散して並列に実行することで性能を向上させる。
コアの数を増やしていけば同時に実行できるプログラムの数も増え、複数台のコンピュータを用意したのと同じように全体として性能を向上させることができる。ただし、単体のプログラムの実行性能(シングルスレッド性能)はこの方法で向上させることはできない。
演算回路などはコアごとに独立しているが、一部のキャッシュメモリ(2次キャッシュなど)や外部とのデータ伝送路などは複数のコアで共有される。キャッシュの共有は、あるコアが読み込んだデータを別のコアが流用できるなど性能面でのメリットもある。
一方、マルチコアプロセッサのデメリットとして、1個のプロセッサ製品にほぼフルセットのコアを複数個詰め込むという性質上、どうしてもプロセッサのサイズ(面積やトランジスタ数)は大きくなり、製造コストは高くつく。
マルチコアプロセッサはOSからは独立した複数のマイクロプロセッサとして扱われ、動作感もマルチプロセッサ構成とほとんど変わらないため、利用者やソフトウェア開発者はマルチコアプロセッサ上での動作を特に意識する必要はない。
内蔵するコア数によって呼び方が変わり、2コアは「デュアルコア」、4コアは「クアッドコア」、6コアは「ヘキサコア」、8コアは「オクタコア」と呼ばれる。10コアや12コアの製品も開発されているが、これらは単に「数字+コア」と呼称されることが多い。
ヘテロジニアスマルチコア (heterogeneous multicore)
異なる種類(heterogeneous)のプロセッサコアを一つのICチップに集積して一体的にどうさせる方式をヘテロジニアスマルチコアという。
機能や得意分野の異なる複数の種類のコアを統合することにより、様々な場面で総合的に高い性能を発揮できるように設計されている。ただし、性能を引き出すためには複雑なプログラミングが必要とされるため、対応ソフトの開発コストは高くなりがちになる。
ヘテロジニアス方式は組み込みシステム向けのプロセッサなどで採用例があり、ソニーのプレイステーション3のCPUである「Cell/Broadband Engine」プロセッサなどが有名。一方、パソコンやサーバ向けの汎用CPU製品では同じコアを複数搭載するホモジニアスマルチコアが主流となっている。
ホモジニアスマルチコア (homogeneous multicore)
同じプロセッサコアを複数集積したマルチコアプロセッサのことをホモジニアスマルチコアという。通常、単にマルチコアと言えばこの方式のため、あえて明示することは少なく、異なる種類のコアを組み合わせるヘテロジニアスマルチコアと対比する文脈で主に用いられる用語である。x86/x64系プロセッサなど、一般に広く流通する汎用的なCPU製品の多くがこの方式である。
並列処理 【パラレルプロセッシング】
コンピュータに複数の処理装置を内蔵し、複数の命令の流れを同時に実行すること。互いに独立した複数のプログラムを同時に実行でき、全体として性能向上が可能だが、前後関係や依存関係にあるプログラムは並列化できない。
一台のコンピュータに複数のCPU(マイクロプロセッサ/MPU)を搭載して並列に処理を行う方式を「マルチプロセッサ」(マルチプロセッシング)、一つのCPUの内部に複数の演算・制御回路(プロセッサコア)を設け、それぞれが独立に処理を実行する方式を「マルチコアプロセッサ」という。
また、個々の命令のほとんどは実行に際し限られた回路しか使用しないという性質を利用して、空いている回路で実行できる別の命令を同時に投入する同時マルチスレッディング(SMT: Simultaneous Multithreading)も、不完全ながら広義には並列処理の一種と考えることもできる。
複数の命令の流れを同時刻に独立に進めることができるため、単一の処理装置を用いる場合に比べ、最大で装置の数を乗じた処理性能(プロセッサ4基なら4倍)を発揮できる可能性がある。ただし、すべてのソフトウェアや処理内容が完全な並列化に対応できるわけではないため、最大性能を完全に発揮できる場面は限られる。
並行処理 (concurrent processing)
コンピュータの単一の処理装置を複数の命令の流れで共有し、同時に実行状態に置くこと。ある瞬間に実行される命令の流れは一つだが、巨視的には同時に複数の命令の流れが実行されているように見える。
処理装置の処理時間を極めて短い時間ごとに分割し、実行する命令の流れを次々に切り替えることにより、複数の命令の流れを同時に実行することができる。
複数の異なるプログラムを並行して進めることをマルチプロセス(マルチタスク)、一つのプログラム内で複数の命令の流れを並行して進めることをマルチスレッドという。
使用する処理装置は一つであるため、並列処理とは異なり、命令の流れを増やしたからといって全体の処理性能が向上することはない。むしろ、命令の流れを切り替える処理(コンテキストスイッチ)の分だけ性能は劣化してしまう。
SIMD 【Single Instruction/Multiple Data】
コンピュータが並列処理を行う方式の一つで、一つの命令を同時に複数のデータに適用する方式。そのような処理方式をベクトル演算、ベクトル処理などと呼ぶことがある。
SISDでは実行される命令の流れは単一だが、そこに与えられるデータの流れは複数あり、同じ処理を複数のデータに同時に実行することができる。同じ計算を大量のデータに対して適用しなければならない3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の描画処理や、動画・音声の圧縮や再生、暗号化・復号などでよく用いられる。
ベクトル型のスーパーコンピュータや、GPU、DSPといったメディア処理や信号処理に特化したICチップにSISD方式の演算回路が搭載される。汎用のCPU(マイクロプロセッサ/MPU)でも、SISD方式で実行できる拡張命令セットなどを用意しているものもある。
フリンの分類
SISDはコンピュータの設計様式を整理した「フリンの分類」の一つである。1966年にコンピュータ科学者のマイケル・フリン(Michael J. Flynn)氏が提唱した分類で、命令列とデータ列それぞれの並列性を組み合わせた「SISD」「SIMD」「MISD」「MIMD」の4類型がある。
SISD (Single Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に、一つの命令を実行する方式。最も単純なコンピュータの構成で、命令にも扱うデータにも基本的には並列性がなく、いずれも一つの流れで順番に処理していく。単独で使用される用語ではなく、SIMDやMIMDなどの並列性のある構成と対比して単純な構成のコンピュータを指す場合に用いられる。
MIMD (Multiple Instruction/Multiple Data)
複数のデータ列を、それぞれ対応する複数の命令列によって並行に処理する方式。並列処理の多くがこの方式で、一つのプロセッサに複数のコアを内蔵したマルチコアプロセッサや、一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載したマルチプロセッサシステムがこれに該当する。
MISD (Multiple Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に複数の異なる命令を同時に実行する方式。並列化を処理性能の向上ではなく信頼性や耐障害性の向上のために利用するシステムなどで用いられ、多重化・冗長化システム(フォールトトレラントシステム)、多数決システムなどがこれに分類される。CPUのパイプライン機構をMISDの例とする場合もある。
SIMD 【Single Instruction/Multiple Data】
コンピュータが並列処理を行う方式の一つで、一つの命令を同時に複数のデータに適用する方式。そのような処理方式をベクトル演算、ベクトル処理などと呼ぶことがある。
SIMDでは実行される命令の流れは単一だが、そこに与えられるデータの流れは複数あり、同じ処理を複数のデータに同時に実行することができる。同じ計算を大量のデータに対して適用しなければならない3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の描画処理や、動画・音声の圧縮や再生、暗号化・復号などでよく用いられる。
ベクトル型のスーパーコンピュータや、GPU、DSPといったメディア処理や信号処理に特化したICチップにSIMD方式の演算回路が搭載される。汎用のCPU(マイクロプロセッサ/MPU)でも、SIMD方式で実行できる拡張命令セットなどを用意しているものもある。
フリンの分類
SIMDはコンピュータの設計様式を整理した「フリンの分類」の一つである。1966年にコンピュータ科学者のマイケル・フリン(Michael J. Flynn)氏が提唱した分類で、命令列とデータ列それぞれの並列性を組み合わせた「SISD」「SIMD」「MISD」「MIMD」の4類型がある。
SISD (Single Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に、一つの命令を実行する方式。最も単純なコンピュータの構成で、命令にも扱うデータにも基本的には並列性がなく、いずれも一つの流れで順番に処理していく。単独で使用される用語ではなく、SIMDやMIMDなどの並列性のある構成と対比して単純な構成のコンピュータを指す場合に用いられる。
MIMD (Multiple Instruction/Multiple Data)
複数のデータ列を、それぞれ対応する複数の命令列によって並行に処理する方式。並列処理の多くがこの方式で、一つのプロセッサに複数のコアを内蔵したマルチコアプロセッサや、一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載したマルチプロセッサシステムがこれに該当する。
MISD (Multiple Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に複数の異なる命令を同時に実行する方式。並列化を処理性能の向上ではなく信頼性や耐障害性の向上のために利用するシステムなどで用いられ、多重化・冗長化システム(フォールトトレラントシステム)、多数決システムなどがこれに分類される。CPUのパイプライン機構をMISDの例とする場合もある。
SIMD 【Single Instruction/Multiple Data】
コンピュータが並列処理を行う方式の一つで、一つの命令を同時に複数のデータに適用する方式。そのような処理方式をベクトル演算、ベクトル処理などと呼ぶことがある。
MISDでは実行される命令の流れは単一だが、そこに与えられるデータの流れは複数あり、同じ処理を複数のデータに同時に実行することができる。同じ計算を大量のデータに対して適用しなければならない3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の描画処理や、動画・音声の圧縮や再生、暗号化・復号などでよく用いられる。
ベクトル型のスーパーコンピュータや、GPU、DSPといったメディア処理や信号処理に特化したICチップにMISD方式の演算回路が搭載される。汎用のCPU(マイクロプロセッサ/MPU)でも、MISD方式で実行できる拡張命令セットなどを用意しているものもある。
フリンの分類
MISDはコンピュータの設計様式を整理した「フリンの分類」の一つである。1966年にコンピュータ科学者のマイケル・フリン(Michael J. Flynn)氏が提唱した分類で、命令列とデータ列それぞれの並列性を組み合わせた「SISD」「SIMD」「MISD」「MIMD」の4類型がある。
SISD (Single Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に、一つの命令を実行する方式。最も単純なコンピュータの構成で、命令にも扱うデータにも基本的には並列性がなく、いずれも一つの流れで順番に処理していく。単独で使用される用語ではなく、SIMDやMIMDなどの並列性のある構成と対比して単純な構成のコンピュータを指す場合に用いられる。
MIMD (Multiple Instruction/Multiple Data)
複数のデータ列を、それぞれ対応する複数の命令列によって並行に処理する方式。並列処理の多くがこの方式で、一つのプロセッサに複数のコアを内蔵したマルチコアプロセッサや、一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載したマルチプロセッサシステムがこれに該当する。
MISD (Multiple Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に複数の異なる命令を同時に実行する方式。並列化を処理性能の向上ではなく信頼性や耐障害性の向上のために利用するシステムなどで用いられ、多重化・冗長化システム(フォールトトレラントシステム)、多数決システムなどがこれに分類される。CPUのパイプライン機構をMISDの例とする場合もある。
SIMD 【Single Instruction/Multiple Data】
コンピュータが並列処理を行う方式の一つで、一つの命令を同時に複数のデータに適用する方式。そのような処理方式をベクトル演算、ベクトル処理などと呼ぶことがある。
MIMDでは実行される命令の流れは単一だが、そこに与えられるデータの流れは複数あり、同じ処理を複数のデータに同時に実行することができる。同じ計算を大量のデータに対して適用しなければならない3次元コンピュータグラフィックス(3DCG)の描画処理や、動画・音声の圧縮や再生、暗号化・復号などでよく用いられる。
ベクトル型のスーパーコンピュータや、GPU、DSPといったメディア処理や信号処理に特化したICチップにMIMD方式の演算回路が搭載される。汎用のCPU(マイクロプロセッサ/MPU)でも、MIMD方式で実行できる拡張命令セットなどを用意しているものもある。
フリンの分類
MIMDはコンピュータの設計様式を整理した「フリンの分類」の一つである。1966年にコンピュータ科学者のマイケル・フリン(Michael J. Flynn)氏が提唱した分類で、命令列とデータ列それぞれの並列性を組み合わせた「SISD」「SIMD」「MISD」「MIMD」の4類型がある。
SISD (Single Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に、一つの命令を実行する方式。最も単純なコンピュータの構成で、命令にも扱うデータにも基本的には並列性がなく、いずれも一つの流れで順番に処理していく。単独で使用される用語ではなく、SIMDやMIMDなどの並列性のある構成と対比して単純な構成のコンピュータを指す場合に用いられる。
MIMD (Multiple Instruction/Multiple Data)
複数のデータ列を、それぞれ対応する複数の命令列によって並行に処理する方式。並列処理の多くがこの方式で、一つのプロセッサに複数のコアを内蔵したマルチコアプロセッサや、一台のコンピュータに複数のプロセッサを搭載したマルチプロセッサシステムがこれに該当する。
MISD (Multiple Instruction/Single Data)
一度に一つのデータを対象に複数の異なる命令を同時に実行する方式。並列化を処理性能の向上ではなく信頼性や耐障害性の向上のために利用するシステムなどで用いられ、多重化・冗長化システム(フォールトトレラントシステム)、多数決システムなどがこれに分類される。CPUのパイプライン機構をMISDの例とする場合もある。
マルチプロセッサ 【マルチCPU】
一台のコンピュータシステムに複数のマイクロプロセッサ(CPU/MPU)を搭載すること。複数のプロセッサで異なるデータや命令を並列に処理することでシステム全体の処理能力を向上させることができる。
各プロセッサが対等な立場で処理を分担する方式を対称型マルチプロセッシング(SMP)、複数のプロセッサの間で役割分担や制御-非制御の関係などが存在し、対称な関係になっていないような方式を非対称型マルチプロセッシング(AMP/ASMP)という。
複数のプロセッサが同一の基板や筐体に収納され、電子回路のレベルで結合されたシステムを密結合マルチプロセッサ、複数のコンピュータを高速な通信路で結んで仮想的に一台のコンピュータのように振る舞わせるシステムを疎結合マルチプロセッサという。後者はクラスタシステムあるいはコンピュータクラスタと呼ばれる方が一般的である。
一つのマイクロプロセッサに複数のプロセッサコア(CPUコア)を搭載し、マルチプロセッサと同じように並列処理が可能なプロセッサをマルチコアプロセッサ(multicore processor)という。
密結合マルチプロセッサ (TCMP:Tightly Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがメインメモリを共有し、一つのOSによって制御されるものを密結合マルチプロセッサという。共有メモリと各プロセッサ固有のメモリの2階層になっている場合もある。一つのプロセッサパッケージに複数の独立したプロセッサコアが搭載されているマルチコアプロセッサは密結合マルチプロセッサの一種とみなされることがある。
疎結合マルチプロセッサ (LCMP:Loosely Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがそれぞれメインメモリなどを持ち、別々のOSインスタンスによって動作するものを疎結合マルチプロセッサという。
ストレージ(外部記憶装置)など一部の装置を共用する場合もあるが、多くの場合、単体で完結して動作する独立したコンピュータを通信インターフェースを介して連携して動作させ、全体を一つのシステムとする構成が多い。このようなシステムはクラスタシステム(コンピュータクラスタ)とも呼ばれる。
マルチプロセッサ 【マルチCPU】
一台のコンピュータシステムに複数のマイクロプロセッサ(CPU/MPU)を搭載すること。複数のプロセッサで異なるデータや命令を並列に処理することでシステム全体の処理能力を向上させることができる。
各プロセッサが対等な立場で処理を分担する方式を対称型マルチプロセッシング(SMP)、複数のプロセッサの間で役割分担や制御-非制御の関係などが存在し、対称な関係になっていないような方式を非対称型マルチプロセッシング(AMP/ASMP)という。
複数のプロセッサが同一の基板や筐体に収納され、電子回路のレベルで結合されたシステムを密結合マルチプロセッサ、複数のコンピュータを高速な通信路で結んで仮想的に一台のコンピュータのように振る舞わせるシステムを疎結合マルチプロセッサという。後者はクラスタシステムあるいはコンピュータクラスタと呼ばれる方が一般的である。
一つのマイクロプロセッサに複数のプロセッサコア(CPUコア)を搭載し、疎結合マルチプロセッサと同じように並列処理が可能なプロセッサをマルチコアプロセッサ(multicore processor)という。
密結合マルチプロセッサ (TCMP:Tightly Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがメインメモリを共有し、一つのOSによって制御されるものを密結合マルチプロセッサという。共有メモリと各プロセッサ固有のメモリの2階層になっている場合もある。一つのプロセッサパッケージに複数の独立したプロセッサコアが搭載されているマルチコアプロセッサは密結合マルチプロセッサの一種とみなされることがある。
疎結合マルチプロセッサ (LCMP:Loosely Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがそれぞれメインメモリなどを持ち、別々のOSインスタンスによって動作するものを疎結合マルチプロセッサという。
ストレージ(外部記憶装置)など一部の装置を共用する場合もあるが、多くの場合、単体で完結して動作する独立したコンピュータを通信インターフェースを介して連携して動作させ、全体を一つのシステムとする構成が多い。このようなシステムはクラスタシステム(コンピュータクラスタ)とも呼ばれる。
マルチプロセッサ 【マルチCPU】
一台のコンピュータシステムに複数のマイクロプロセッサ(CPU/MPU)を搭載すること。複数のプロセッサで異なるデータや命令を並列に処理することでシステム全体の処理能力を向上させることができる。
各プロセッサが対等な立場で処理を分担する方式を対称型マルチプロセッシング(SMP)、複数のプロセッサの間で役割分担や制御-非制御の関係などが存在し、対称な関係になっていないような方式を非対称型マルチプロセッシング(AMP/ASMP)という。
複数のプロセッサが同一の基板や筐体に収納され、電子回路のレベルで結合されたシステムを密結合マルチプロセッサ、複数のコンピュータを高速な通信路で結んで仮想的に一台のコンピュータのように振る舞わせるシステムを疎結合マルチプロセッサという。後者はクラスタシステムあるいはコンピュータクラスタと呼ばれる方が一般的である。
一つのマイクロプロセッサに複数のプロセッサコア(CPUコア)を搭載し、密結合マルチプロセッサと同じように並列処理が可能なプロセッサをマルチコアプロセッサ(multicore processor)という。
密結合マルチプロセッサ (TCMP:Tightly Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがメインメモリを共有し、一つのOSによって制御されるものを密結合マルチプロセッサという。共有メモリと各プロセッサ固有のメモリの2階層になっている場合もある。一つのプロセッサパッケージに複数の独立したプロセッサコアが搭載されているマルチコアプロセッサは密結合マルチプロセッサの一種とみなされることがある。
疎結合マルチプロセッサ (LCMP:Loosely Coupled Multi-Processor)
マルチプロセッサシステムの構成法の一つで、複数のプロセッサがそれぞれメインメモリなどを持ち、別々のOSインスタンスによって動作するものを疎結合マルチプロセッサという。
ストレージ(外部記憶装置)など一部の装置を共用する場合もあるが、多くの場合、単体で完結して動作する独立したコンピュータを通信インターフェースを介して連携して動作させ、全体を一つのシステムとする構成が多い。このようなシステムはクラスタシステム(コンピュータクラスタ)とも呼ばれる。
アムダールの法則 【Amdahl's law】
コンピュータシステムの構成要素の一部を改良して得られる性能向上は、その要素が処理時間に寄与する度合いに制限されるという法則。並列処理の高速化の限界を示す法則として知られる。
ハードウェアやプログラムなど、システムを構成する一部を改良すると性能が向上し処理時間が短縮されるが、ある要素の改良によって短縮する時間は、その要素が関与する時間の長さを超えることはできないことを示す法則である。
例えば、ある計算をCPU1基で2時間で行うプログラムのうち、並列に処理可能な部分が1時間分、並列化できない処理が1時間分あるとする。これを10基のCPUで並列処理すると、並列化部分は10倍高速化され6分に短縮されるが、並列化不可能な部分は相変わらず1時間かかるため、全体では1時間6分にしか短縮されない。どんなにCPUを追加投入しても1時間を切ることはできない。
並列化が可能な部分の処理は資源を限りなく追加していけば限りなくゼロに近づけることができるが、並列化不可能な部分の時間は変化しない。システム全体の性能は究極的には並列化不可能な部分に費やされる時間によって制約されることになる。
アムダールの法則は1967年に米コンピュータ科学者のジーン・アムダール(Gene Amdahl)氏によって提唱された。同氏は1970年代に当時の米IBM社のメインフレームコンピュータ製品の互換機を開発・販売していた米アムダール社(Amdahl Corporation)の創業者としてよく知られる。
同期 【シンクロナイゼーション】
複数の主体の間で周期やタイミング、内容などを一致させること。一般的には「同じ時期」を表すことが多いが、ITの分野での用法はこれとは異なる。対義語は「非同期」。
通信の同期
通信の分野では、機器やソフトウェアなどの間で信号やデータの送受信のタイミングを合わせ、正しく伝送されるよう制御することを同期という。
コンピュータ内部の通信では、一定周期のクロック信号に合わせて各回路や装置が信号を送り出すクロック同期が行われることが多い。クロック同期はデータの伝送だけでなく処理や制御のタイミングを合わせるのにも用いられる。
ファイルやデータの同期
同じデータを複数の場所に保存している時に、一か所でデータが更新されると他で保存されているデータにも変更が自動的に反映され、常に同一性が保持されることを同期という。
パソコンとスマートフォン、手元のコンピュータとクラウド上のサーバなど、一人が利用する複数の端末でデータを同期するよう設定することで、どの機器や環境でも常に最新の状態を利用することができ、また、一か所でデータの破損や消失が起きても復元することができる。
映像や音声の同期
映像や音声、字幕など、複数の異なる種類のデータが一体として一つのコンテンツを構成している場合に、再生時に各要素のタイミングを合わせてズレが生じないよう制御することを同期という。
プログラム実行における同期
並行して実行されている複数のプログラム間で、処理の実行のタイミングを調整することを同期という。主に二つの異なる用法で用いられる。
一つは、あるプログラムが別のプログラムを呼び出したり、プログラム内で関数やサブルーチンなどを呼び出す際に、呼び出し側が呼び出し先の完了や応答を待って次の処理に進むことを指す。呼び出し側が応答を待たずに呼び出し先と並行して先の処理を実行する方式は非同期処理という。
もう一つは、複数のプログラムが並列に実行されているとき、同じ記憶領域などの資源に同時にアクセスしてしまって内容の整合性が失われるのを防ぐ制御のことを指す。セマフォやミューテックス、ロックなどの機構を用いて、プログラムの実行順を決めて順番に資源を使用させる。
クラスタ
(果物や花の)房、塊、群れ、集団などの意味を持つ英単語。同種のものがたくさん密集している様子を表す。
SNSのクラスタ
SNSなどのネットサービスやソーシャルメディアで、似たような属性(所属や趣味、政治信条など)や共通点を持った利用者同士が相互に繋がって形成された集団をクラスタということがある。
グループ機能のようなサービス上の機能などで明確に組織化されたものというよりも、友達関係や購読関係を通じて緩やかに連帯する一群の利用者という意味合いで用いられることが多い。
コンピュータクラスタ
企業の情報システムなどで、複数のコンピュータを連結・連携し、利用者や他のコンピュータに対して全体で一台のコンピュータであるかのように振舞うシステムを「コンピュータクラスタ」「クラスタシステム」と呼び、単にクラスタと略すことがある。そのようにコンピュータを束ねることを「クラスタリング」(clustering/クラスタ化)という。
クラスタ化されたコンピュータ群はまとめて一台のコンピュータを扱うように管理・運用することができ、いずれかが障害などで停止してもシステム全体が止まることはなく、処理を続行したまま修理や交換が行える。
ストレージのクラスタ
記憶装置の分野で、ハードディスクなどの円盤(ディスク)状の記録媒体をオペレーティングシステム(OS)が管理する際の最小の単位をクラスタということがある。
ディスク状の記憶媒体は、木の年輪のように同心円状の「トラック」に分割され、これをさらに放射状に等分した「セクタ」に分割される。
OSが媒体を管理する場合は、セクタ単位では小さすぎる(管理に必要な容量が多すぎる)ため、複数のセクタをまとめたクラスタ単位で管理することが多い。1クラスタを何セクタとするかは媒体やOSの種類によって様々である。
メモリ
記憶、記憶力、回想、追憶、記念などの意味を持つ英単語。ITの分野ではコンピュータに内蔵される半導体集積回路(IC)を利用したデータの記憶装置を指すことが多い。
コンピュータを構成する装置の一つで、CPU(MPU/マイクロプロセッサ)などから直接読み書きすることができる記憶装置のことを「主記憶装置」(main memory:メインメモリ)というが、通常はこれを略してメモリと呼んでいる。また、主記憶装置を含む、半導体素子により電気的にデータの記憶や読み書きを行う記憶装置を総称して「半導体メモリ」という。
主記憶装置としてのメモリ
コンピュータ内部でCPUがソフトウェアの実行のために当座必要なプログラムやデータを記憶しておくための記憶装置を主記憶装置あるいはメモリという。一方、プログラムやデータを長期的、永続的に保管しておくために利用される装置は「外部記憶装置」「補助記憶装置」あるいは「ストレージ」(storage)などと呼ばれる。
一般に主記憶装置は外部記憶装置よりはるかに高速に動作する装置が用いられるが、単価や装置構成上の制約から少ない容量しか搭載することができない。このため、コンピュータは起動すると外部記憶から主記憶に必要なプログラムやデータを読み込んで実行し、必要なくなったデータなどは主記憶からすみやかに消去して新たに必要になったものと入れ替える。永続的に保管する必要があるデータなどは外部記憶へ書き込まれて保存される。
現代のコンピュータでは主記憶装置として、電気的に動作し高速に読み書きできる「RAM」(Randam-Access Memory)、特に「DRAM」(Dynamic RAM)を用いることが多いため、RAMやDRAMを主記憶装置あるいはメモリの同義語のように用いることが多い。歴史的にはRAM以外の装置が主記憶だった時代もあり、また、今後、RAMとは異なる原理の記憶装置を主記憶に用いるための技術の研究・開発も行われている。
RAM/DRAMは電源を落とすと内容が失われる「揮発性メモリ」の一種であるため、これを主記憶装置の特徴と説明することもあり、現代のコンピュータの設計については当てはまるが、本来これはRAM/DRAMの特性であり、他の装置を用いた場合はその限りではない。
半導体記憶装置としてのメモリ
電気的に情報を記録できる半導体素子を集積し、ある一定の容量のデータの記録、読み書きが可能な半導体集積回路(IC/LSI)を「半導体メモリ」あるいは単にメモリという。
半導体メモリ装置の多くは主記憶装置やそれに準じる用途に用いられるが、フラッシュメモリのように外部記憶装置(ストレージ)として用いられることがあり、主記憶装置をメモリと呼ぶ場合と紛らわしいので注意が必要である。
RAM
自由に読み書きできるが電源を断つと内容が失われる装置を「RAM」(Randam-Access Memory:ランダムアクセスメモリ)と呼び、記憶を保持するために定期的に電荷の再注入が必要な「DRAM」(Dynamic RAM:ダイナミックRAM)と不要な「SRAM」(Static RAM:スタティックRAM)に分かれる。
コンピュータの主記憶としてよく用いられるのはDRAMで、パソコンなどの場合は細長い電子基板にいくつかのDRAMチップ(メモリチップ)を実装したDRAMモジュール(メモリモジュール)をマザーボードに装着して利用する。
ROM
一方、電源を落としても記録内容が維持されるが、利用者が内容を書き込めないか書き込み方法に制約のある装置を「ROM」(Read-Only Memory:リードオンリーメモリ)という。コンピュータ内部に固定的に設置されてファームウェアやBIOSなどを記憶したり、プラチックのパッケージなどに収められてソフトウェアの流通などに用いられる。
このうち、製造時に内容を記録し、以後は内容の消去や上書きが一切できないものを「マスクROM」(Masked ROM)、利用者が特殊な装置を用いて一度だけ内容を記録できるものを「PROM」(Programmable ROM)、特殊な装置を用いて何度も内容の消去、再書込が可能なものを「EPROM」(Erasable Programmable ROM)という。
さらに、特殊な装置が不要で読み出しと同じ装置で消去、再書込ができるようにしたものは「フラッシュメモリ」(flash memory)と呼ばれ、自由に読み書き可能な不揮発メモリとして外部記憶装置(ストレージ)に利用される。
メインメモリ 【主記憶装置】
コンピュータ内部でデータやプログラムを記憶する記憶装置のうち、中央処理装置(CPU)と基板上の電気配線などを通じて直に接続されたもの。「メモリ」「RAM」とも呼ばれる。
CPUの命令によって直に読み書きが可能な記憶装置で、実行中のプログラムコードや当座の処理に必要なデータなどが保存される。外部記憶装置(ストレージ)に比べ読み書き動作は桁違いに高速だが、単価が高いため機器に搭載できる容量は何桁か少ないのが一般的である。
現代のコンピュータで主記憶装置として用いられるのは半導体記憶装置(半導体メモリ)のRAM(Random Access Memory)の一種であるDRAM(Dynamic RAM)がほとんどで、機器の電源を切るなどして装置への通電を止めると記憶内容が失われるという特性がある。
このため、データやプログラムの永続的な保管にはストレージを用い、コンピュータの起動時に主記憶装置に必要なプログラムなどを読み込んで実行するという動作が基本となっている。
また、現代のCPU製品の多くは内部にDRAMよりも高速な「キャッシュメモリ」と呼ばれる記憶回路を内蔵しているが、これはDRAMとのやり取りを高速化する一時的な保管場所としてのみ用いられ、プログラムから明示的に動作を制御することはできないようになっている。
記憶階層
コンピュータの記憶装置を、特性やコストの異なる複数の装置を組み合わせて構成すること。また、そのような様々な記憶装置の組み合わせ。
記憶装置には様々な種類があり、アクセス速度が高いほど容量あたりの単価が高いという傾向がある。このため、高速な記憶装置を少量、低速な記憶容量を大量に用意し、使用頻度などに応じてデータやプログラムの配置を工夫するという手法が用いられる。
現代の一般的なコンピュータでは、CPU内部のレジスタやキャッシュメモリが最も高速だが高価で容量が少なく、それに中容量の主記憶装置(メインメモリ、RAM)、大容量の外部記憶装置/補助記憶装置(ハードディスクやフラッシュメモリストレージなど)を組み合わせた構成が用いられる。それぞれの容量の差は2~3桁にも及ぶことがある。
記憶装置
コンピュータの構成要素の一つで、データやプログラムの保存・記憶を行うための装置。レジスタやキャッシュメモリなどCPU内部の半導体メモリ、メインメモリ(主記憶装置/RAM)、ストレージ(外部記憶装置/補助記憶装置)などに分類される。
用途や実装方式、性能、コストなどにより様々な種類の装置があり、これらを組み合わせてコンピュータシステムを構成する。一般に、より高速に読み書き可能な装置ほどコストが高かったり永続的な記憶ができない(電源を落とすと内容が失われる)という特性があるため、小容量の高速な装置、中容量の中速の装置、大容量の低速で永続記憶可能な装置を組み合わせ、状況や使用頻度などに応じて使い分ける。このような階層型の構造を「記憶階層」(memory hierarchy)という。
プロセッサ内部の記憶装置
最も高速だが大きな容量を取ることができないのはCPU(MPU/マイクロプロセッサ)の半導体チップ上に設けられた記憶素子の集合で、中でも、論理回路が処理や演算に直接用いる「レジスタ」(register)は一般的なプロセッサで数十バイトしかないが最も高速に動作する。
また、直近に使用したデータや使用頻度の高いデータをチップ内に保持しておいて、すぐ参照できるようにするための記憶素子を「キャッシュメモリ」(cache memory)という。プロセッサによっては搭載しないこともあるが、数KB(キロバイト)から数百KB程度であることが多い。キャッシュメモリ内部にも記憶階層がある場合があり、より高速だが容量の少ない順に1次キャッシュ、2次キャッシュ、3次キャッシュ、と2~3段階で構成される。
メインメモリ
メインメモリは主記憶装置とも呼ばれ、現代のコンピュータの大半では半導体メモリ素子の一種であるRAM(Random Access Memory)が用いられる。現代のパソコンなどでは数GB(ギガバイト)程度の容量であることが多い。
CPUはストレージに直接アクセスできないため、実行中のソフトウェアが当座必要なデータやプログラムはメインメモリに置いておく必要がある。内容は起動時や必要になった時点でストレージから読み込まれ、CPUが処理した結果なども一旦メインメモリに置かれる。電源を落とすと内容が失われるため、永続的に保管しておきたいものはストレージに書き込む必要がある。
RAMのメモリチップそのものを主基板(マザーボード/メインボード)などに直に実装する場合もあるが、パソコンなど汎用的なコンピュータの多くは、メモリチップをいくつか実装した小さな基板であるメモリモジュールを主基板上の専用の差込口(メモリスロット)に差し込んで装着する。
ストレージ
ストレージはコンピュータの電源が切れても内容が失われない装置で、永続的に必要なデータやプログラムの保存に用いられる。RAMなどに比べ動作が低速な装置が大半で、また、CPUから直に読み書きできないため、コントローラICなどを通じて内容をメインメモリとの間でやり取りする必要がある。駆動装置(ドライブ)と記憶媒体(メディア)が一体化している装置と、取り外して交換できる装置があり、後者はメディアを追加することで全体の容量を増やすことができる。
パソコンなどで主要な記憶装置としてよく用いられるのは磁気ディスクを装置内に固定したハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)で、現代では数百GBから数TB(テラバイト)の製品がよく用いられる。ハードディスクに代わって台頭しているのが不揮発の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリを用いたSSD(Solid State Drive)で、フラッシュメモリを用いたストレージには他にUSBメモリやメモリーカードなどもある。
データやプログラムの運搬や配布などによく用いられるのがレーザーで内容の読み書きを行う光学ディスクで、登場順にCD、DVD、Blu-ray Disc(ブルーレイディスク/BD)などがあり、この順に容量が大きく読み書きも高速である。CDは音楽・音声の記録や販売に、DVDやBDは映像ソフトの記録や販売に特によく用いられる。
記録メディア 【記憶媒体】
信号やデータを何らかの物理状態に置き換えて記録することができる装置や部品のこと。磁気ディスクや磁気テープ、光学ディスク、フラッシュメモリなどが該当し、文脈によっては単にメディア、媒体と呼ばれることもある。
コンピュータなどの情報機器でデータの永続的な保管に用いられるストレージ(外部記憶装置)は、データを何らかの微細な物理的パターンに置き換えて記録・保持するメディアと、これを駆動して読み書き操作を行なう「ドライブ」(drive)と呼ばれる装置からなる。
記録媒体がディスク(円盤)やカセット、カートリッジ式になっており、ドライブ装置から着脱・交換可能(リムーバブル)になっている装置と、装置内部にメディアが封入・固定されていて入れ替えられない機器がある。フロッピーディスクや光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)などは前者、ハードディスクやSSD、USBメモリは後者に分類される。
半導体メモリ 【半導体記憶装置】
半導体の回路を電気的に制御してデータの記憶を行う記憶装置。読み書き動作が高速なためコンピュータのメインメモリ(主記憶装置)などに用いられる。
磁気記憶装置や光学記憶装置など他方式に比べ、記憶素子に対するデータの書き込み、書き換え、消去を電気的に行うため動作が高速で、面積や体積あたりの記憶密度が高く、駆動部品がないため消費電力が少なく振動に強い。
一方、生産コストが高いため容量あたりの単価が高く、種類によっては電源を切ると内容が失われたり内容の書き換えができないなど何らかの制約がある。電源を切ると記憶内容が失われるものを「揮発性メモリ」(volatile memory)、失われないものを「不揮発性メモリ」(non-volatile memory)という。
揮発性メモリ
揮発性メモリの代表例は「RAM」(Random Access Memory)で、このうち「DRAM」(Dynamic RAM)はコンピュータの主記憶装置(メインメモリ)として広く普及している。
動作が高速でDRAMで必要な記憶維持のための再書き込み動作が不要な「SRAM」(Static RAM)は電池などと組み合わせて永続的なデータ記憶に用いられることがある。
不揮発性メモリ
不揮発性メモリの代表は「ROM」(Read Only Memory)で、最初に発明された「マスクROM」は製造時に内容を書き込むと以降は書き換えや消去ができないが、電源を落としても内容が消えない特性がある。ゲームソフトの販売用メディアや、電子機器の組み込みソフトウェアの記憶用として普及した。
その後、製造時に内容を記録せず、利用者が専用の装置で一度だけ内容を書き込むことができる「PROM」(Programmable ROM/EPROMと区別する場合はOTPROM)が開発され、さらに、消去と再書き込みを繰り返すことができる「EPROM」(Erasable Programmable ROM)が開発された。消去を紫外線で行う「UV-EPROM」、電気的に行う「EEPROM」などの種類がある。
EEPROMからさらに発展し、コンピュータに装着した状態でデータの書き換え、消去が可能な「フラッシュメモリ」(flash memory)が発明された。任意に書き換え可能かつ無電源で永続的にデータを保持でき、磁気記憶装置のハードディスクに代わる超高速動作のストレージ(外部記憶装置)として、SSDやUSBメモリなどの形で急速に普及している。
フラッシュメモリに代わる次世代の書き換え可能な不揮発性メモリとして、「FeRAM」(Ferroelectric RAM/強誘電体メモリ)や「MRAM」(Magnetoresistive RAM/磁気抵抗メモリ)、「PRAM」(Phase-change RAM/相変化メモリ)、「ReRAM」(Resistive RAM/抵抗変化型メモリ)などの研究・開発が進んでいる。
揮発性メモリ
データの記憶に用いられる半導体メモリの分類の一つで、外部からの給電が途絶えると記憶内容が失われる記憶素子を用いるもの。コンピュータのメインメモリ(主記憶装置)によく用いられるDRAMなどが該当する。
メモリ装置は内部の半導体素子の動作原理の違いにより、通電している間だけ記憶内容を維持できる揮発性メモリと、給電が途絶えても内容が失われず永続する「不揮発性メモリ」(non-volatile memory/不揮発メモリ)に分かれる。
揮発性メモリの代表は「DRAM」(Dynamic RAM)であり、コンピュータが稼働している間に利用されるデータやプログラムを一時的に保管しておくメインメモリとして広く普及している。失われては困るデータはストレージ装置に格納することで永続的に保管する。
「SRAM」(Static RAM)も揮発性メモリだが、記憶の維持に微弱な電力しか必要としないため、電池やバッテリーと組み合わせ、本体電源がオフの時にも内容が失われないように構成したシステムがよく用いられる。永続的なデータ保管に利用されるため不揮発性メモリと勘違いされることもある。
一方、不揮発性メモリには「ROM」(マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなど)や「フラッシュメモリ」、「MRAM」、「FeRAM」などが含まれる。ROMから普及が始まったため不揮発性だとデータの書き込みができないと考えられがちだったが、その後の技術の進展でフラッシュメモリのように書き換え可能な素子が一般化している。
不揮発性メモリ 【非揮発メモリ】
データの記憶に用いられる半導体メモリの分類の一つで、外部からの給電がなくても記憶内容を維持することができる記憶素子を用いるもの。コンピュータのストレージ(外部記憶装置)にも用いられるフラッシュメモリなどが該当する。
メモリ装置は内部の半導体素子の動作原理の違いにより、通電している間だけ記憶内容を維持できる「揮発性メモリ」(volatile memory/揮発メモリ)と、記憶の維持自体には電力を消費せず、電源を落としても内容が維持される不揮発性メモリに分かれる。
前者にはコンピュータのメインメモリに用いられる「DRAM」(Dynamic RAM)や高速な書き換え速度と低消費電力で知られる「SRAM」(Static RAM)などがあり、後者には「ROM」(マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなど)や「フラッシュメモリ」、「MRAM」、「FeRAM」などが含まれる。
ROM
初期に発明され普及したのはROM(Read Only Memory)で、製造時に内容が記録され、後から消去・書き換えができない記憶素子が用いられていた。出荷時にコンピュータに内蔵されるファームウェアの記録媒体や、ソフトウェア製品の流通媒体(家庭用ゲームカートリッジなど)としてよく利用された。
後に限定的な書き換え機能を持つ方式が開発され、製造時ではなく利用者の手元で専用の装置を用いて一度だけ書き込める「PROM」(Programmable ROM)、専用の装置で消去と再書き込みができる「EPROM」(Erasable Programmable ROM)、利用環境で電気的に繰り返し消去と再書き込みが可能な「EEPROM」(Electrically Erasable and Programmable ROM)などの種類がある。
フラッシュメモリ
ROM技術から発展した任意に書き換え可能な「フラッシュメモリ」(flash memory)もあるが、DRAMなどの揮発性メモリに比べると書き換え速度や耐久性(消去・上書き回数の上限)などが劣るため、磁気メディアや光学メディアより高速なストレージ装置の記憶媒体としてSSDやUSBメモリ、メモリーカード、スマートフォン内蔵ストレージなどの形で普及している。
ユニバーサルメモリ
「磁気抵抗メモリ」(MRAM:Magnetoresistive RAM)や「強誘電体メモリ」(FRAMまたはFeRAM:Ferroelectric RAM)など、DRAMに匹敵する高速性や書き換え耐性を持つ不揮発性メモリも進められている。電源を落としても消えない主記憶装置として利用できると期待されており、メモリとストレージの役割を兼ねた「ユニバーサルメモリ」(universal memory)として用いられることが想定されている。
RAM 【Random Access Memory】
半導体メモリ装置の一種で、データを繰り返し書き込み、書き換え可能で、装置内のどこに記録されたデータも等しい時間で読み書き(ランダムアクセス)できる性質を持ったもの。主にコンピュータの主記憶装置(メインメモリ)として用いられる。
データを保存することができるICチップで、内部に大量に敷き詰められた微細な半導体記憶素子の状態を電気信号によって変化させる。記憶内容を保持するために定期的に再書き込み動作(リフレッシュ)が必要な「DRAM」(Dynamic RAM)と、何もしなくても記憶が保持される「SRAM」(Static RAM)がある。
いずれも通電をやめる(装置の電源落とす)と記憶内容は失われるため、フラッシュメモリなどとは異なり永続的な記憶装置(ストレージ)として用いることは難しい。SRAMは特殊な用途に限定的に用いられることが多く、広く普及しているのはDRAMであるため、単に「RAM」という場合はDRAMを指すことがほとんどである。
DRAMはコンピュータ内部でCPUが必要とするプログラムやデータを置いておくメインメモリとして広く普及している。内部の操作を電気的に行うため磁気方式の装置などに比べ極めて高速に動作するが、記憶の保持に通電が必要で容量単価も高いため、SSDやハードディスクなどのストレージと組み合わせて使用する。
パソコンなどのRAM
<$Img:Random-Access-Memory-2.png|right|PopaBogdan>パソコンなどの汎用コンピュータのメインメモリとして用いるRAMには標準規格があり、いくつかのメモリチップを実装した「メモリモジュール」をマザーボードなどに設けられたメモリスロットに差し込んで使用する。
業界団体のJEDECが策定しているメモリ規格がよく用いられ、製品の世代により「DDR3 SDRAM」「DDR4 SDRAM」「DDR5 SDRAM」などの種類がある。これらの中でさらに、メモリチップの動作周波数や外部とのデータ伝送速度などにより仕様が細かく分かれている。
例えば、「DDR4-2400」型のメモリモジュールはDDR4 SDRAM方式でバスクロック600MHz、伝送速度192.2GB/s(ギガバイト毎秒)で動作させることができる。マザーボードやCPUは接続できるモジュールの仕様(の範囲)が決められており、対応する製品を購入して装着する必要がある。
ROMとの違い
一度記録した内容の消去・書き換えができないメモリ装置を「ROM」(Read Only Memory)という。RAMと対比することが多いが、“Read Only”(読み込み専用)と対になる表現は “Recordable”(記録可能)、“Rewritable”(書き換え可能)、“Read/Write”(読み込み/書き込み)などであり、また、ROM(の読み込み)はランダムアクセス可能であるため、語義的には対になっていない。
これは、RAMは本来 “Random Access read/write Memory” の略だったが、略称に引きずられて “read/write” が脱落した呼称が定着してしまい、また、RAMと本来対になる「SAM」(Sequential Access Memory:逐次アクセスメモリ)も過去に存在したが廃れてしまったため、このような状況になったとされる。
なお、スマートフォンの仕様表などで「RAM容量」「ROM容量」といった項目が記載されていることがあるが、前者はメインメモリ容量、後者は内部ストレージの容量を意味する。スマートフォンなどに内蔵されるストレージ装置にはフラッシュメモリが用いられるが、フラッシュメモリはROMの技術から発展したもので、以前は「フラッシュROM」と呼ばれていたことから、その名残りでこのような表記が残っているものと考えられる。
ROM 【Read Only Memory】
半導体などを用いた記憶素子および記憶装置の一つで、製造時などに一度だけデータを書き込むことができ、利用時には記録されたデータの読み出しのみが可能なもの。
コンピュータなどの電子機器を制御するBIOSやファームウェアなどを記録するために機器の本体に内蔵されていることが多く、利用者が直に目にする機会はあまりない。家庭用ゲーム機などでは、ソフトウェアの流通手段として、ROMに内容を記録してプラスチック製のケースに納めたROMカセットが用いられることもある。
工場での製造時に一度だけデータを記録するものを「マスクROM」(mask ROM)、工場出荷時には何も記録されておらず、利用者が専用の書き込み装置を用いてデータを記録するものを「PROM」(Programmagle ROM)という。PROMの中には内容の消去や再書込が可能なものがあり、これを「EPROM」(Erasable Programmable ROM)という。
EPROMの一種であるEEPROM(Electrically EPROM)から発展し、電源を落としても記録が消えず、内容を自由に読み書きができるメモリ素子に「フラッシュメモリ」がある。これを当初は「フラッシュROM」と呼んでいたため、スマートフォンやタブレット端末などの内部ストレージがフラッシュメモリで構成されている場合、カタログなどでこれを「ROM」と表記する場合がある。
なお、単にROMという場合は半導体メモリ素子を利用した製品を指すが、光学ディスクの「CD-ROM」「DVD-ROM」「BD-ROM」のように、メモリ装置以外の読み出し専用の記憶装置や記憶媒体(メディア/ディスク)のことも(比喩的に)ROMと呼ぶことがある。
DRAM 【Dynamic Random Access Memory】
半導体素子を利用した記憶装置の一つで、記憶内容の維持のために繰り返し再書き込み動作を行う必要があるタイプのもの。低コストで大容量の製品を製造できるため、主にコンピュータの主記憶装置(メインメモリ)として用いられる。
DRAMは半導体メモリのうち、通電をやめると記憶が失われる「揮発性メモリ」(volatile memory)に分類される。書き込みや消去を電気的に繰り返し行うことができる「RAM」(Random Access Memory)の一種である。
コンデンサ(キャパシタ)とトランジスタを組み合わた記憶素子(メモリセル)を利用して、電荷が蓄えられた状態をデジタルデータの「1」に、失われた状態を「0」に対応付けて記憶を保持する。ICチップ内に大量のメモリセルが碁盤目状に敷き詰められて提供される。
蓄えられた電荷は放っておくと徐々に失われていくため、読み出しや書き込みの動作とは別に、毎秒数回程度の短い周期で各素子のデータを読み出して同じデータを再度書き込み直す「リフレッシュ」(refresh)と呼ばれる動作が必要となる。これは装置に内蔵された制御回路により自動的に行われる。
何もしなくても記憶が維持されリフレッシュ動作が不要な「SRAM」(スタティックRAM)に比べ、読み書きが遅く、リフレッシュ動作の分だけ消費電力が大きいという欠点があるが、個々の素子の回路構造が単純で集積密度を向上(大容量化)しやすく、容量あたりの製造コストを下げやすい。
素子の動作速度よりも価格や容量が重視される用途で用いられ、コンピュータのメインメモリ用途として広く普及している。「DDR SDRAM」などの標準規格も策定され、パソコンでは複数のDRAMチップを小さな電子基板に実装した「メモリモジュール」をマザーボードに差し込んで使用する。
1960年代に米IBM社の研究所で発明され、当初は動作原理が特許で保護されていた。1970年代に本格的に量産、実用化され、半導体の微細化に伴い急激に容量の増大、容量単価の減少が進んだ。現代ではあらゆる電子機器に必須の部品であり、最も大量に生産される半導体製品の一つとなっている。
SRAM 【Static Random Access Memory】
読み書き可能な半導体メモリであるRAMの方式の一つで、一定時間ごとに記録内容の再書き込み処理(リフレッシュ動作)を行う必要のないもの。
内容の書き換えが可能で電源断によって内容が失われるRAM(Random Access Memory)のうち、DRAM(Dynamic RAM)は記憶素子に内容を記録してから時間が経つと次第に内容が失われていくため、一定時間ごとに同じ内容を記録し直すリフレッシュ動作が必要で、稼働中は大きく電力を消費する。
一方、SRAMは記憶素子にフリップフロップ回路などを利用し、一度記録した内容は通電が維持される限り何もしなくても保持され続けるという特性がある。リフレッシュ動作が不要なため同規模の回路で比べるとDRAMより消費電力が少ない。
また、DRAMに比べて読み書きを高速に行うことができるが、記憶素子の構造が複雑なため高密度化が難しく、記憶容量あたりの製造単価も高額となる。コストや容量よりも省電力性や高速性が求められる用途に適しており、コンピュータ内部ではCPUとDRAMの中間に配置される高速なキャッシュメモリとしてよく利用される。
また、ハードディスクや光学ドライブなどのストレージ装置、ネットワーク機器、ディスプレイやプリンタなどの出力装置でも、伝送速度の異なる回路や装置間で円滑にデータのやり取りが行えるよう、一時的にデータを溜めておくバッファ装置としてSRAMが広く利用されている。
SRAM自体は電源を落とすと内容が失われる揮発性メモリだが、読み書きを行わずに単に記録を保持し続けるだけなら消費電力が極めて少ないため、SRAMと小型の電池を組み合わせ、機器本体の電源を落としても内容が失われない不揮発メモリのような永続的な記憶装置(バッテリーバックアップメモリ)として用いられることがある。
フラッシュメモリ
半導体素子を利用した記憶装置の一つで、何度も繰り返し書き込みができ、通電をやめても記憶内容が維持されるもの。近年、データを永続的に保存するストレージ(外部記憶装置)製品の記憶素子として急激に普及している。
フラッシュメモリは半導体メモリのうち、電源を落としても記録されたデータが消えない不揮発性メモリ(nonvolatile memory)に分類される。電気的に繰り返し自由に消去や再書き込みができる特徴はRAMと同じだが、技術的にはROM(の一種であるEEPROM)に由来するため「フラッシュROM」とも呼ばれる。
素子の構造や動作方式により大きくNAND型とNOR型の二種類に分かれる。最初に開発されたのはNOR型で、バイト単位で高速に読み出しができ、信頼性が高いが、後に開発されたNAND型の方が集積度を高めやすく、書き込みが高速であるという特徴の違いがある。
SLCとMLC
初期のフラッシュメモリはメモリセル(記憶素子)の電荷の有無にデジタル信号の「0」と「1」を対応付ける1ビット記録の素子(SLC:Single Level Cell/シングルレベルセル)が用いられた。後に、セルに投入した電荷量を段階的に識別することで1セルに複数ビットを保存できる素子(MLC:Multi-Level Cell/マルチレベルセル)が開発された。
初期のMLCは4段階識別・2ビット記録だったため、現在でもこれを指してMLCと呼ぶことが多いが、8段階識別・3ビット記録の「TLC」(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)や、16段階識別・4ビット記録の「QLC」(Quad-Level Cell/クアッドレベルセル)も開発されており、MLCはこれら多値記録方式全体の総称を指すこともある。
特徴と用途
フラッシュメモリは磁気ディスクや光学ディスクなどに比べ、半導体素子に電気的にアクセスするためデータの読み書き速度が桁違いに速く、ドライブ装置に可動部がないため動作音もなく衝撃や振動にも強い。
ただし、素子の構造上劣化の進みが速く、初期には数百回程度、近年でも数万回程度の再書き込みによって素子が破損することが知られている。この点をカバーするため、制御回路により書き込み回数を各素子に均等に分散させる「ウェアレベリング」(wear leveling)と呼ばれる処理が行われる。
他方式のメディアに比べ価格も桁違いに高く小容量の製品しかなかったが、2000年代半ば頃からは量産効果や技術の進歩により飛躍的に低コスト化され、磁気ディスクなどの用途を奪う形で普及が拡大している。
主な用途としては、スマートフォンなどの携帯情報端末の内蔵ストレージや、数cm角の薄いプラスチックケースに収めたカード型の記憶媒体である「メモリーカード」、指先大の短い棒型や角型のケースに収めUSB端子でコンピュータに接続する「USBメモリ」などがある。
DIMM 【Dual Inline Memory Module】
コンピュータのメインメモリとして利用されるメモリ基板(メモリモジュール)の一種で、基板の端に並んだ金属端子が基板の表と裏でそれぞれ別の端子として機能するもの。
細長いプラスチック基板の片面あるいは両面にDRAMチップ(メモリチップ)が複数実装され、長辺の一方に外部と接続するための数十の金属端子が並んでいる。この端子のある側を、マザーボードなどに設けられた専用の差込口(DIMMスロット、DIMMソケット)に差し込んで利用する。
DIMMの形状や端子の仕様は業界団体のJEDECが標準化した規格が最も普及しており、対応するチップや用途などよって様々なものが存在する。単にDIMMといった場合はJEDEC規格のDIMMの総称を意味することが多い。
DIMMの派生仕様として、物理的なサイズを縮小したものを「SO-DIMM」(Small Outline DIMM)という。基板面積が狭く搭載できるメモリチップの数は少ない。携帯型コンピュータのメインメモリとして、あるいはプリンタやネットワーク機器の拡張メモリなどとして用いられる。
DIMM以前によく用いられいたメモリモジュールは「SIMM」(Single Inline Memory Module)という。形状や仕組みは一見DIMMに似ているが、両面の端子が区別されておらず同じ信号の送受信に用いられていた。DIMMは表裏を分離して別の端子としているため、端子の列の数が同じでも端子数は2倍に増えている。
SO-DIMM 【Small Outline Dual In-line Memory Module】
コンピュータのメインメモリに用いられるメモリモジュールの種類の一つで、DIMMの物理的なサイズを縮小した規格。DIMM同様、端子形状やピン数はメモリ規格によって異なり、様々な種類がある。
通信仕様やデータ伝送速度などはDIMMサイズのモジュールに準じ、メモリ規格に定められた方式や速度でデータが伝送される。基板の面積が狭い分、搭載されるメモリチップの容量はフルサイズのモジュールより少ない。
主にノートパソコンや省スペースデスクトップPC、あるいはプリンタや通信機器などの拡張メモリとして利用される。汎用品が大量生産されるDIMMに比べ、同じ仕様の製品の用途や出荷量が限られるため、容量が少ない割に価格は割高である。
当初よく用いられたサイズは幅67.7mm(2.66インチ)×高さ31.75mm(1.25インチ)、厚さ3.8mm(0.15インチ)以下の形状で、SDRAMやDDR SDRAM、DDR2 SDRAMなどで用いられた。DDR3 SDRAMなどではこれよりわずかに幅が長く高さの低いサイズが用いられる。
ピン配置はメモリ規格によって決まっており、少ないものでは100ピンから多いものでは260ピンといった高密度のものもある。ピン数が同じでも規格が異なるものは誤挿入による誤作動や破損を防ぐため切り欠きの位置を変えて別の規格のメモリスロットには差し込めないようになっている。DDR SDRAMの200ピンとDDR2 SDRAMの200ピンのように一見して区別しにくい場合もある。
キャッシュメモリ 【緩衝記憶装置】
CPU(マイクロプロセッサ)などのICチップ内部に設けられた高速な記憶装置の一つ。使用頻度の高いデータを蓄積しておくことにより、相対的に低速なメインメモリ(主記憶装置)へのアクセスを減らすことができ、処理を高速化することができる。
プロセッサ内部の回路として読み書き可能な半導体メモリを集積し、プログラムの実行のためにメインメモリから読み込んだ命令やデータを一時的に保管しておく。メインメモリを読み書きするよりは何桁も高速にアクセスできる。
CPUなどの内部には、命令を実行するための回路に必要なデータを送り込むための「レジスタ」(register)もある。キャッシュメモリのアクセス速度はレジスタよりは低速だが、容量は数kB(キロバイト)から数MB(メガバイト)程度と、数個~十数個しかないレジスタよりは遥かに多い。
容量や速さの異なる2~3段階(2~3種類)のキャッシュメモリを用いる場合があり、実行回路に近く高速で容量の少ない方から順に「1次キャッシュ」「2次キャッシュ」「3次キャッシュ」といったように呼称する。実行回路はまず1次キャッシュにデータが無いか探し、無ければ2次キャッシュに、さらに無ければ3次キャッシュ、といったように順番に探す。
一般的な汎用のCPUは「フォンノイマン型」と呼ばれる構成になっており、命令もデータも区別せずメインメモリに混在させるため、キャッシュメモリも両者の区別なく記録する。一方、命令とデータが装置レベルで分離している「ハーバード型」の場合には、「命令キャッシュ」と「データキャッシュ」が分かれており、データの伝送路や制御方式も異なる。一部の組み込みシステムなどに見られる方式である。
ストレージ 【外部記憶装置】
コンピュータの主要な構成要素の一つで、データを永続的に記憶する装置。磁気ディスク(ハードディスクなど)や光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ装置(USBメモリ/メモリカード/SSDなど)、磁気テープなどがこれにあたる。
一般的には通電しなくても記憶内容が維持される記憶装置を指し、コンピュータが利用するプログラムやデータなどを長期間に渡って固定的に保存したり、他の機器へのデータの運搬や複製、配布などのために用いられる。
コンピュータ内には補助記憶とは別に、半導体記憶素子などでデータの記憶を行う主記憶装置(メインメモリ)が内蔵されており、利用者がプログラムを起動してデータの処理を行う際には補助記憶から必要なものをメモリに呼び出して使う。
同じコンピュータに搭載される装置同士で比較すると、補助記憶はメモリに比べて記憶容量が数桁(数十~数千倍)大きく、容量あたりのコストが数桁小さいが、読み書きに要する時間が数桁大きい。一般的な構成のコンピュータではメインメモリ容量の百倍から千倍程度の容量の固定内蔵ストレージを用意することが多い。
記録原理による分類
補助記憶装置は駆動装置(ドライブ)が記憶媒体(メディア)を操作して、記憶素子の物理状態に信号を対応付けて記録する。様々な動作原理の装置があり、主に磁気を利用するもの、レーザー光を利用するもの、電荷(半導体素子)を利用するものに分けられる。
磁気記録方式の補助記憶には磁気テープやハードディスク、フロッピーディスクなどがある。平たい媒体表面の磁性体の磁化状態を変化させて信号を記録する装置で、媒体を薄いテープ状にしてリールに巻き取った「磁気テープ」と、平たい円盤(ディスク)状にして中心軸(スピンドル)で高速に回転させる「磁気ディスク」に分かれる。
一昔前まで補助記憶の大半を占めていた方式で、現在でもパソコンに内蔵される固定補助記憶としてハードディスクがよく用いられる。磁気テープは容量あたりの単価が極めて安いという特徴から、現在でも企業や官公庁などの大規模なデータ保管に用いられることがある。
光学記録方式の補助記憶はCDやDVD、Blu-ray Discなどの光学ディスクで、信号を媒体表面の細かな凹凸や化学的な状態の変化として記録し、高速で回転させながらレーザー光を照射して反射光の変化を読み取る。
製造時にデータを記録する読み出し専用ディスクと利用時にデータの書き込みや上書きができる追記型や書き換え型のディスクがあり、前者は映像やソフトウェアなどのコンテンツの販売で、後者は映像の録画やデータのバックアップ、機器間のデータの運搬などでよく利用される。
近年では、読み出し専用メモリ(ROM)から発展した書き換え可能な不揮発メモリ(電源を落としても内容が消えない半導体メモリ)であるフラッシュメモリの大容量化、低価格化が進み、補助記憶装置として広く普及している。ハードディスクの代わりに固定内蔵ストレージとして用いられる「SSD」(Solid State Drive)、携帯機器の内蔵ストレージ、データの運搬に用いられるUSBメモリやメモリーカードなどがフラッシュメモリを応用した補助記憶である。
<$Fig:storagecomparison|center|true>ディスクキャッシュ
ハードディスクなどのストレージ(外部記憶装置)にデータを読み書きする際に半導体メモリを経由させることで高速化する技術。また、そのために用いられるメモリ装置。
メモリと磁気ディスクではデータの読み書き速度が何桁も異なるため、ディスク上で使用頻度の高いデータや直近に使用したデータをメモリに複製しておくことで、次に必要になったときに再びディスクにアクセスするよりはるかに高速に読み込むことができる。
また、書き込みにかかる時間も同様に巨大な速度差があるため、データを一旦メモリに書き出して専用の回路でディスク側へ転送することで、CPUなどを書き込み作業から早期に解放し、書き込み待ち時間を削減することができる。このような仕組みを書き込みキャッシュ(ライトキャッシュ)という。
ディスクキャッシュはハードディスク装置などに内蔵され専用のコントローラICで制御されるものと、コンピュータのメインメモリ(RAM)の一部を割り当て、OSによって制御されるものがある。前者はソフトウェアや利用者側が普段存在を意識することはなく、自動的に運用される。後者は有効にするために設定作業などが必要な場合がある。
ハードディスクなど磁気媒体の装置では劇的な速度向上が見込めるが、同じ半導体メモリであるフラッシュメモリを記憶媒体に用いるSSDやUSBメモリ、メモリーカードなどのストレージでは大きな効果は期待できない。
ライトスルーキャッシュ 【ストアスルーキャッシュ】
CPU(マイクロプロセッサ)のキャッシュメモリの動作方式の一つで、CPUがメインメモリ(RAM)へデータの書き込みを行なう際に、メモリとキャッシュへ同時に書き込む方式。
キャッシュメモリはCPUに内蔵された記憶装置で、容量は少ないがメインメモリよりも極めて高速に読み書きできる。直近に利用したメモリ上の内容の一部を複製しておくことで、次に必要になったときにメモリから読み直すよりも素早く取り出すことができる。
ライトスルーではメモリへの書き込み時に同じ内容をキャッシュへも書き込む。常に同時に書き込みを行うため制御が単純で内容の整合性も保ちやすいが、必ずメモリへのアクセスが発生するためCPUの待ち時間が大きく、キャッシュによる高速化の恩恵を受けにくい。
なお、1次キャッシュと2次キャッシュなど多段階のキャッシュメモリが実装されている場合に、上位のキャッシュと下位のキャッシュへ同時に書き込む方式のことを指してライトスルーという場合もある。
これに対し、一旦キャッシュメモリ(あるいは上位のキャッシュ)にのみ高速に書き込みを行い、キャッシュから消去される寸前にメインメモリ(あるいは下位のキャッシュ)へ内容を移し替える方式を「ライトバックキャッシュ」(write-back cache)という。
ライトバックキャッシュ
CPU(マイクロプロセッサ)のキャッシュメモリの動作方式の一つで、CPUがメインメモリ(RAM)へデータを書き込む際、一旦キャッシュに書き込みを行い、その内容が消される寸前にメモリへの移し替えを行う方式。
キャッシュメモリはCPUに内蔵された記憶装置で、容量は少ないがメインメモリよりも極めて高速に読み書きできる。直近に利用したメモリ上の内容の一部を複製しておくことで、次に必要になったときにメモリから読み直すよりも素早く取り出すことができる。
ライトバックではメモリへの書き込み処理が発生するとキャッシュにのみ書き込む。その後、キャッシュに新しいデータが追加されていき、書き込んだ内容が追い出される寸前にメモリへの書き出しを行う。制御が複雑でキャッシュとメモリの整合性を維持するのも難しくなるが、メモリへの書き込み頻度を抑えることができるため動作の高速化を図ることができる。
なお、1次キャッシュと2次キャッシュなど多段階のキャッシュが実装されている場合に、一旦上位のキャッシュにのみ書き込みを行い、後で下位のキャッシュへ移し替える方式を指してライトバックという場合もある。
これに対し、書き込み時にキャッシュとメモリの両方に常に同時に同じ内容を書き込む方式を「ライトスルーキャッシュ」(write-through cache)という。ライトバックより実装が容易で内容の整合性も取りやすいが、メモリへのアクセス頻度が多く性能は低い。
メモリインターリーブ
コンピュータのメインメモリ(RAM)へのアクセスを高速化する手法の一つで、複数のメモリ装置(メモリバンク/メモリモジュール)をまたぐようにメモリアドレスを割り当て、読み書き動作を同時並行に行う方式。
CPUがメモリへアクセス要求を行ってから実際にデータが送られてくる(あるいは書き込みが完了する)までにはレイテンシ(latency:遅延)と呼ばれる時間差が生じる。CPU内部の処理に比べメモリの読み書きは非常に時間がかかるため、コンピュータの処理速度はこの「待ち時間」に常に足を引っ張られている。レイテンシを短縮する試みは常に行われているが、CPU内の記憶素子との差は埋めがたく、また、低レイテンシのメモリは高価である。
一方、メモリへのアクセス要求は短期的には局所性が極めて強く、連続した領域に順番に読み書きを行うことが多い。この特徴を利用して、複数のメモリバンクにまたがって連続したアドレスを交互に振っておき、あるデータにアクセスする遅延時間の最中に次のアドレスへアクセス要求を発行して時間を有効利用するのがメモリインタリーブである。
バンクの数を増やせばその分高速にアクセスできるようになり、2つのバンクを用意すれば2倍、4つで4倍の高速化を図ることができる。ただし、実際にはコントローラのオーバーヘッドや、不連続なアドレスへのアクセスがあるため、バンクの数だけ線形に性能が向上するわけではない。
安価な高レイテンシのメモリで高い性能を得られる反面、メモリコントローラが複雑になり高価になることや、部品点数が増えて故障率が上がってしまうという欠点もある。もともと高い性能が要求されるサーバなどで使われてきた技術だが、近年ではパソコンでも同じ仕様・容量のメモリモジュールを2枚単位でメモリスロットに装着することでメモリインタリーブを利用できるものがある。
メモリバンク
コンピュータ内でメインメモリ(RAM)として用いられるメモリ装置の論理的な構成単位。複数のメモリチップを束ねて一体的に管理するもので、パソコンなどの場合はメモリモジュールの一面に実装されたチップ群で構成されることが多い。
コンピュータが内蔵するメモリ装置はある程度の容量ごとにまとめて管理され、メモリコントローラはアクセス要求が発生すると対象となる領域を選択し、その領域に対してだけアクセスを行うことで効率を上げる。この管理単位をメモリバンク、あるいは単にバンクと呼ぶ。
一般的な仕様のパソコンのように、メモリモジュールをマザーボードのメモリスロットに差し込む構造の場合には、1枚のモジュールの片面をメモリバンクとして管理することが多い。片面実装のモジュールならバンク数1、両面実装のモジュールならバンク数2となる。
メモリコントローラは管理できるバンク数の上限が決まっており、多数のスロットが用意されていても上限を超えるモジュールを管理することはできない。4スロットの基板を6バンクまでのコントローラで管理する場合、両面実装のモジュールを4スロットすべてに装着すると8バンクとなってしまうため正しく管理できない。
複数のバンクをまたぐようにアドレスを割り当てるメモリインターリーブを利用するにはバンク数が2の累乗(2、4、8…)になるように装着する必要がある。
アクセス時間 【アクセスタイム】
コンピュータ内部でCPUが記憶装置にデータの書き込み、読み出しを行うのに必要な時間。記憶装置の性能評価の指標の一つとして用いられる。
メインメモリ(RAM)のアクセス時間はCPUがメモリへのアクセスを要求してからデータの転送が終了するまでの時間で、主に行アドレス(CAS)信号から列アドレス(RAS)信号への切り換え遅延時間(RCD:RAS to CAS Delay)と、行アドレスを与えてからデータが読み出せるようになるまでの時間(CASレイテンシ)で構成される。
ハードディスクやCDなどディスク(円盤)型メディアを利用した外部記憶装置においては、ヘッドが所定の位置まで移動する時間(シークタイム)、読み出すデータの位置までディスクが回転する時間(サーチタイム)、データを読み出して転送するまでの時間(データ転送時間)の3つの合計がアクセス時間となる。
記憶装置の能力を表す数値として用いられるアクセス時間は、特定の位置のデータを読み出すのではなく、初期条件、データの読み出し位置などをランダムな条件下で何度も測定した値の平均値(平均アクセス時間)が用いられる。
実効アクセス時間 (effective access time)
メインメモリ(主記憶)とキャッシュメモリ(キャッシュ)が両方搭載されているコンピュータで、CPUからメモリへの1回のアクセスにかかる平均時間のこと。
メインメモリは低速だが大容量、キャッシュは高速だが小容量という特徴があり、メインメモリの内容のうち使用頻度の高いものなどをキャッシュに保管することでアクセス速度を向上させることができる。あるデータへのアクセス時間は、それがキャッシュ内に見つかればキャッシュのアクセス時間で済み、見つからなければメインメモリのアクセス時間がかかる。
このため、何度もアクセスを試みた際の実効アクセス時間は、キャッシュにデータが見つかる確率(キャッシュヒット率)を用いて、「キャッシュのアクセス時間×キャッシュヒット率+メインメモリのアクセス時間×(1-キャッシュヒット率)」として表すことができる。
シークタイム (seek time/シーク時間/位置決め時間)
ディスク(円盤)状の記憶媒体を用いるストレージ(外部記憶装置)のドライブ(駆動装置、読み書き装置)で、ヘッド部分が盤上の目的の読み書き位置に移動するのにかかる時間。特に、一回の動作にかかる平均時間(平均シークタイム)のことを単にシークタイムということが多い。同じ種類の装置ならシークタイムが短ければ短いほどデータを高速に読み書きすることができる。
磁気ディスクを読み書きする磁気ヘッドや、光学ディスクを読み書きする光ピックアップなどは、ディスク上の指定された位置に移動してから読み書き動作を開始する。このヘッド部を移動する動作を「シーク」(seek)、それにかかる時間をシークタイムという。
一回のシークにかかる時間はヘッドの現在位置と目的位置によって異なるため、性能を評価する際にはランダムに決めた異なる位置間で何度もシークしたときの一回あたりの平均シークタイムを測定する。シーク動作はディスク内の離れた領域に移動する度に必要となるため、シークタイムが短い装置は小さなファイルを連続的に読み込む場合などに特に高い性能を発揮する。
サーチタイム (サーチ時間/回転待ち時間)
ハードディスクや光学ディスクなど円盤型の記憶媒体(メディア)を利用した外部記憶装置(ストレージ)において、読み書きしようとしているデータの位置までディスクが回転するまでの待ち時間のことをサーチタイム(search time/サーチ時間/回転待ち時間)という。
ヘッドが所定の位置まで移動してから、メディアが回転してヘッドの直下に対象の位置が移動してくるまでの時間のことで、回転が高速なほどこの値が小さくなり、素早く読み書きを始められるようになる。
データ転送時間 (transfer time)
記憶装置へのアクセスにかかる時間のうち、記憶媒体からの目的のデータの読み取りを開始してから、読み取りが終了しCPUへの伝送が終了するまでの時間のことをデータ転送時間(data transfer time)という。
対象のデータ量の大きさによってかかる時間が異なるため、異なる装置間で比較する際には同じデータ量にかかる転送時間同士を比較しなければならない。
サイクルタイム 【サイクル時間】
繰り返し行なう作業や処理の、一回の工程にかかる所要時間。工場の生産ラインなどでは、実際にラインから完成品が送り出されてくる周期を表す。
ある工程を開始・着手してから、次に同じ工程を開始する(できるようになる)までの時間のことである。複数の系統で並列に工程を実施できる場合(同じ生産ラインが複数ある場合など)は、工程にかかる所要時間を系統の数で割った値がサイクル時間となる。
例えば、ライン生産方式の工場で、3分のサイクル時間で各工程が完了する場合、3分に1個のペースで製品が完成することになる。一方、稼働時間と生産数が与えられ、これを達成するために一工程にかけられる時間を逆算したものを「タクトタイム」(ピッチタイム)という。
コンピュータのサイクルタイム
コンピュータについてサイクル時間という場合は、各回路の動作タイミングを同期させるクロック周期(クロックタイム)のことを指すことが多い。
コンピュータ内では基板上のICチップや回路、チップ内の素子などの間で信号の送受信や処理のタイミングを合わせるため、「クロック信号」(clock signal)という一定の周期の信号に合わせて一斉に動作するようにできている。
この信号が毎秒何回のペースで発振するかを「クロック周波数」(clock frequency)と呼び、現代のコンピュータでは毎秒数億回(数百メガヘルツ)から数十億回(数ギガヘルツ)に及ぶことがある。このクロック信号の周期をクロックタイムあるいはサイクル時間と呼ぶことがあり、周波数の逆数となる。例えば、クロック周波数が1GHzであればサイクル時間は10億分の1秒(1ナノ秒)となる。
同じコンピュータの内部でも装置や回路によって異なる周波数で動作することもあり、主基板(マザーボード)上の伝送路などを駆動するクロック信号の周期を「マシンサイクルタイム」、メインメモリ(RAM)のクロック周期を「メモリサイクルタイム」、CPUのクロック周期を「CPUサイクルタイム」など呼ぶことがある。
ヒット率 【キャッシュヒット率】
CPU内部のキャッシュメモリに目当てのデータが存在する確率あるいは割合。この値が高いほどデータの読み出しを高速に実行できる。CPU以外のキャッシュ技術(ストレージやネットワークなど)でも同様の概念をこのように呼ぶ。
キャッシュメモリは直近にメインメモリから読み出したデータを一時的に保管しておく高速な記憶装置で、そのデータが再度必要になった際にはメモリより遥かに高速に読み出すことができるが、容量が少ないためすべてのデータを取っておけるわけではない。
CPUがデータを読み出す際にキャッシュメモリ上にそのデータが存在する確率をキャッシュヒット率と呼び、キャッシュの容量やキャッシュに残すデータの選び方(アルゴリズム)などに影響を受ける。
NFP (Not Found Probability)
CPUが過去に読み出したことのあるメモリ領域のデータを読み出す際、当該データがキャッシュメモリに残っていない確率をNFP(Not Found Probability)という。ヒット率とNFPの和は1となる。
NFPはヒット率とは逆にキャッシュメモリからデータを読み出すことができず、メインメモリに読みに行くことになる割合を表す。この値が高いほどデータの読み出し性能は低下する。
CPUによるデータ読み込みの平均アクセス時間は「キャッシュメモリのアクセス時間×ヒット率+メインメモリのアクセス時間×NFP」で求めることができる。
アクセス時間 【アクセスタイム】
コンピュータ内部でCPUが記憶装置にデータの書き込み、読み出しを行うのに必要な時間。記憶装置の性能評価の指標の一つとして用いられる。
メインメモリ(RAM)の実効アクセス時間はCPUがメモリへのアクセスを要求してからデータの転送が終了するまでの時間で、主に行アドレス(CAS)信号から列アドレス(RAS)信号への切り換え遅延時間(RCD:RAS to CAS Delay)と、行アドレスを与えてからデータが読み出せるようになるまでの時間(CASレイテンシ)で構成される。
ハードディスクやCDなどディスク(円盤)型メディアを利用した外部記憶装置においては、ヘッドが所定の位置まで移動する時間(シークタイム)、読み出すデータの位置までディスクが回転する時間(サーチタイム)、データを読み出して転送するまでの時間(データ転送時間)の3つの合計が実効アクセス時間となる。
記憶装置の能力を表す数値として用いられる実効アクセス時間は、特定の位置のデータを読み出すのではなく、初期条件、データの読み出し位置などをランダムな条件下で何度も測定した値の平均値(平均実効アクセス時間)が用いられる。
実効アクセス時間 (effective access time)
メインメモリ(主記憶)とキャッシュメモリ(キャッシュ)が両方搭載されているコンピュータで、CPUからメモリへの1回のアクセスにかかる平均時間のこと。
メインメモリは低速だが大容量、キャッシュは高速だが小容量という特徴があり、メインメモリの内容のうち使用頻度の高いものなどをキャッシュに保管することでアクセス速度を向上させることができる。あるデータへのアクセス時間は、それがキャッシュ内に見つかればキャッシュのアクセス時間で済み、見つからなければメインメモリのアクセス時間がかかる。
このため、何度もアクセスを試みた際の実効アクセス時間は、キャッシュにデータが見つかる確率(キャッシュヒット率)を用いて、「キャッシュのアクセス時間×キャッシュヒット率+メインメモリのアクセス時間×(1-キャッシュヒット率)」として表すことができる。
シークタイム (seek time/シーク時間/位置決め時間)
ディスク(円盤)状の記憶媒体を用いるストレージ(外部記憶装置)のドライブ(駆動装置、読み書き装置)で、ヘッド部分が盤上の目的の読み書き位置に移動するのにかかる時間。特に、一回の動作にかかる平均時間(平均シークタイム)のことを単にシークタイムということが多い。同じ種類の装置ならシークタイムが短ければ短いほどデータを高速に読み書きすることができる。
磁気ディスクを読み書きする磁気ヘッドや、光学ディスクを読み書きする光ピックアップなどは、ディスク上の指定された位置に移動してから読み書き動作を開始する。このヘッド部を移動する動作を「シーク」(seek)、それにかかる時間をシークタイムという。
一回のシークにかかる時間はヘッドの現在位置と目的位置によって異なるため、性能を評価する際にはランダムに決めた異なる位置間で何度もシークしたときの一回あたりの平均シークタイムを測定する。シーク動作はディスク内の離れた領域に移動する度に必要となるため、シークタイムが短い装置は小さなファイルを連続的に読み込む場合などに特に高い性能を発揮する。
サーチタイム (サーチ時間/回転待ち時間)
ハードディスクや光学ディスクなど円盤型の記憶媒体(メディア)を利用した外部記憶装置(ストレージ)において、読み書きしようとしているデータの位置までディスクが回転するまでの待ち時間のことをサーチタイム(search time/サーチ時間/回転待ち時間)という。
ヘッドが所定の位置まで移動してから、メディアが回転してヘッドの直下に対象の位置が移動してくるまでの時間のことで、回転が高速なほどこの値が小さくなり、素早く読み書きを始められるようになる。
データ転送時間 (transfer time)
記憶装置へのアクセスにかかる時間のうち、記憶媒体からの目的のデータの読み取りを開始してから、読み取りが終了しCPUへの伝送が終了するまでの時間のことをデータ転送時間(data transfer time)という。
対象のデータ量の大きさによってかかる時間が異なるため、異なる装置間で比較する際には同じデータ量にかかる転送時間同士を比較しなければならない。
リムーバブルメディア 【可搬記憶媒体】
コンピュータから容易に着脱可能なストレージ(外部記憶装置)のうち、駆動装置(ドライブ)から撮り外せるタイプの記録媒体(メディア)のこと。リムーバブルストレージの同義語とすることもある。
永続的にデータを記録できる(電源を落としても内容が失われない)記憶装置のことをストレージ(storage)というが、コンピュータ本体に固定せず容易に取り外して移動や交換、保存が可能なものをリムーバブルストレージという。
そのうち、メディアと読み書きを行う装置(ドライブ)が分離した構造になっており、ドライブからメディアを取り外せるようになっている場合に、媒体の側をリムーバブルメディアという。ディスク(円盤)型の媒体を用いる場合は「リムーバブルディスク」とも呼ばれる。
CDやDVD、Blu-ray Discなどの光学ディスク、フロッピーディスクやミニディスク、MOなどの磁気ディスクや光磁気ディスク、磁気テープカートリッジ、メモリーカードなどが該当する。ドライブとメディアが一体化しており、装置全体をコンピュータに着脱するUSBメモリやポータブルハードディスクなどは含まれない。
一方、ソフトウェア側からみて、コンピュータに固定的に装着されたストレージ装置ではなく、動作中に着脱可能なストレージを指してリムーバブルメディアと呼ぶこともある。その場合はドライブとメディアの関係に関わらずリムーバブル型のストレージすべてが含まれる。
ハードディスク 【HDD】
コンピュータなどの代表的なストレージ(外部記憶装置)の一つで、薄くて硬い円盤(ディスク)の表面に塗布した磁性体の磁化状態を変化させてデータを記録するもの。一台あたりの容量が大きく容量あたりの単価が安いため、パソコンなどに内蔵されるストレージとして標準的な存在となっている。
構造・原理
装置内にはガラスや金属でできたプラッタ(platter)と呼ばれる円盤型の記憶媒体が数枚封入されており、表面には磁性体が塗布されている。これを回転軸で高速(毎分数千回)で回転させ、アームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを近接させる。特定の箇所の磁化状態を変化させることでデータを書き込むことができ、状態を読み取ることでデータを読み出すことができる。
プラッタの直径は主流の製品で3.5インチ(約8.9cm)だが、小型の機器向けに2.5インチや1インチの製品も存在する。一台の装置にプラッタが1~8枚程度備え付けられ、通常はその両面を記録に用いる。内部的な制御や区画分けはプラッタごとに行われるが、外部から見た記憶領域としては全体で一つとなる。
他媒体との比較
「ハードディスク」とは硬い円盤という意味だが、これはフロッピーディスクなどのようにプラッタの素材に柔らかいプラスチックフィルムなどを用いる装置と対比した表現である。フロッピーディスクなどは記憶媒体と駆動装置(ドライブ)が分離していてディスクだけを取り外して交換したり持ち運べるが、ハードディスクはディスクとドライブが一体化しているため、「ハードディスクドライブ」(HDD:Hard Disk Drive)とも呼ばれる。
磁気ディスクや光学ディスクなどの中では最も記録密度が高く、同じ世代で比較すると装置(媒体)一台あたりの記憶容量は飛び抜けて大きい。読み書きも高速で、パソコンやサーバなどのコンピュータ製品では基幹的な記憶媒体として広く普及している。ドライブ一体型なこともあり一台あたりの価格が高いことや、振動に弱いという難点もある。
SSDへの置き換え
装置の寸法や接続仕様をハードディスクに揃え、内部の記憶媒体をフラッシュメモリに置き換えた製品はSSD(Solid State Drive)と呼ばれ、ハードディスクの代替として近年急速に浸透している。
読み書き速度が桁違いに速く衝撃にも強いという長所があるが、半導体メモリのため価格が高く一台あたりの容量も少ないという欠点があった。近年では低価格化と記憶容量の向上が劇的に進み、従来のハードディスクの用途を置き換える形で普及が加速している。
接続方式
コンピュータ本体に内蔵されるハードディスクの場合、接続インターフェースとして初期にはIDE/ATA(パソコン向け)やSCSI(サーバ・ワークステーション向け)が、2000年代以降はSATA(Serial ATA)が主に用いられている。独自の筐体を持ちケーブルでコンピュータと繋ぐ外付けの装置もあり、USBやIEEE 1394、eSATAなどの規格で接続される。
SSD 【Solid State Drive】
外部記憶装置(ストレージ)の一つで、記憶媒体にフラッシュメモリを用いる固定型の装置。ハードディスクと同じようにコンピュータに接続し、プログラムやデータの永続的な保存に用いる。
ハードディスクなどの磁気ディスク装置は磁気的に、DVDなどの光学ディスク装置は光学的に信号の読み書きを行うが、SSDは半導体素子に電気的にデータの記録、読み出しを行うため、極めて高速に読み書きすることができる。
また、高速で回転する円盤(ディスク)やモーター、盤上を移動する読み書き装置(ヘッド)といった機械部品がないため、消費電力が少なく、耐衝撃性に優れ、振動や駆動音もなく、装置の形状を小型、薄型、軽量にすることができる。
ただし、フラッシュメモリは書き込みを行うごとに素子が劣化するため、同じ容量なら磁気ディスクより書き換え寿命が短い。この欠点を補うため、多くのSSD製品では、なるべく満遍なく各素子に書き込み動作が分散するよう制御装置が記録位置の選択を行う「ウェアレベリング」と呼ばれる制御を行っている。
また、現在のところ容量あたりの単価は磁気ディスクや光学ディスクよりフラッシュメモリのほうが高額なため、同世代の同じ容量の製品の中では割高となる。コンピュータにSSDとハードディスクを両方搭載し、システムファイルや頻繁にアクセスされるプログラムやデータをSSDに保存して、それ以外はハードディスクに保存するといった使い分けが行われることも多い。
筐体仕様(フォームファクタ)やコンピュータ本体との接続インターフェースは、当初は既存の機器と置き換えられるよう3.5インチ筐体やSATA(シリアルATA)などハードディスクと同じ規格が流用されたが、SSDの高速な読み書き性能や省スペース性を最大限活用すべく、mSATAやM.2、NVMe、SATA ExpressなどSSDにより適した規格も策定され、普及しつつある。
SLC/MLC/TLC/QLC
SSDの記憶媒体に用いられるNAND型フラッシュメモリのうち、一つの記憶素子(メモリセル)に2値(1ビット)のデータを格納する方式を「SLC」(Single Level Cell)、3値以上からなる多ビットのデータを格納する方式を「MLC」(Multi-Level Cell)という。
初期のMLC型は4値(2ビット)を記録する方式だったため、狭義にはこれを指してMLCと呼ぶ。これを3ビット以上と区別する場合は「DLC」(Double Level Cell)と呼ぶこともあるが、この呼称は普及していない。3ビット(8値)記録できるものは「TLC」(Triple Level Cell)、4ビット(16値)のものは「QLC」(Quad-Level Cell)、5ビット(32値)のものは「PLC」(Penta-Level Cell)と呼ばれる。
セルに記録できるビット数が少ない方が動作が高速で信頼性、耐久性(書き換え寿命)も高いが、容量あたりの単価が高くつく。SLC型は記録密度が低すぎるためほぼ廃止されており、多値記録セルで記録密度を高める方向に発展している。
CD 【Compact Disc】
薄い樹脂製の円盤(ディスク)の表面に微細な加工を施し、高速で回転させてレーザー光を照射することで信号の読み書きを行う光ディスクの一つ。1980年にソニーと蘭フィリップス(Philips)社が開発した。
音楽ソフトを販売するための記録媒体として開発され、アナログレコードやカセットテープに代わって標準的な音楽販売メディアとして再生機器が広く普及した。後に利用者側の機器でデータを記録できる追記型(CD-R)や書き換え型(CD-RW)の仕様も策定され、コンピュータの補助的なデータ記憶メディア、ソフトウェア販売メディア、配布・交換用メディアとしても広まった。
CDは直径8cmあるいは12cmの中心に穴の空いたプラスチック製の薄いディスクで、ドライブ装置に挿入して高速で回転させる。近接させた光ピックアップから回転する記録面上の特定の位置にレーザー光を照射し、反射した光をセンサーで検知して記録されたデータを読み取る。書き込み型の場合はレーザー光で記録面を加熱して光の反射率を変化させることによりデータを書き込む。
記憶容量は一般的な12cmディスクの場合、データ650MB(メガバイト)または音声74分を記録できる製品と、700MBまたは80分の製品、800MBまたは90分の製品がある。8cmディスクは155MB/18分から300MB/34分まで数種類がある。標準のデータ転送速度は1.2Mbps(メガビット毎秒)で、これを「等速」「1倍速」などと呼び、その整数倍に高速化された機器が一般的となっている(最高は48倍速)。
ディスクへデータ記録する標準形式もいくつか定められており、音声を記録するCD-DA(CD Digital Audio)とコンピュータのファイルを記録するCD-ROM(CD Read Only Memory)が最も一般的に用いられる。動画を記録できるVideo CDやCDV、画像を記録するCD-GやPhoro CD、マルチメディアタイトルを記録できるCD-IやCD-ROM XAなどの規格も策定されたが、いずれもあまり普及しなかった。
CDの仕様や技術を踏襲しながら容量やアクセス速度を高速化した光ディスク規格がいくつかあり、主に動画の記録に用いられるDVDや、DVDをさらに大容量化したBlu-ray Disc(BD/ブルーレイディスク)などがある。DVD機器のほとんどはCDも読み込むことができ、BD機器はDVDに対応するが、BD機器の中にはCDのサポートを打ち切るものも現れている。
商標および規格名としての「CD」は “Compact Disc” の略で、イギリス英語の “disc” の綴りが用いられる。CD以降、光学ディスクの商標や規格名には “disc” 表記が好んで用いられる傾向にある一方、磁気ディスク系では “disk” 表記(アメリカ英語に由来)が一般的であり、あたかも意味上の違いや使い分けがあるように見えるが、単に慣例的なもので深い意味はない。
CD-ROM 【Compact Disc Read Only Memory】
コンパクトディスク(CD:Compact Disc)の規格の一つで、コンピュータなどが扱うデータを記録した読み取り専用のディスク。サイズと記憶容量は何種類かあるが、通常使われるのは直径12cmで容量700MB(メガバイト)のものである。
CDはプラスチック製の穴の空いた円盤型の記録媒体で、ドライブ装置内で高速回転させながらレーザー光を照射して、表面の微細なパターンとして記録されたデータを読み取る。CD-ROMは初期の規格で策定された読み取り専用ディスクの仕様で、データの記録に用いられる。
データの記録は製造工場の専用の装置で行われ、製造時に記録されたデータを利用者側で消去、追記、上書きすることはできない。同じ内容のディスクを大量に生産する商業的なソフトウェア製品、家庭用ゲーム機向けのビデオゲームソフトなどの販売用によく用いられる。
主な仕様
他のCD規格と同じように直径8cm、12cmのディスクがあり、記録容量は当初185MB(8cm) / 650MB(12cm:音楽74分相当)が主流だったが、後に210MB(8cm) / 700MB(12cm:80分相当)が一般的となった。現在一般的に用いられるのは12cm、700MBの規格のみである。
音楽CDで1トラック目に相当する領域にデータを記録し、後続のトラックに音楽を記録することもでき、ゲームソフトなどに用いられた例がある。ただし、データトラックを音声として再生しようとするとスピーカーが損傷したりソフトウェアが予期しない動作をする危険がある。
コンピュータで扱うデータをファイルとして記録する際にはファイルやディレクトリの情報を記録するためのファイルシステムが必要となるが、CD-ROM規格自体には規定がないため、別に策定されたISO 9660規格やその派生仕様(Romeo、Jolietなど)を用いる。
読み込み速度
データの読み出し速度はドライブ装置によって異なり、当初は音声の再生に必要な読み出しスピードである150kB/s(キロバイト毎秒)の装置が製品化された。現在ではこの速度を「等速」「1倍速」と呼ぶ。
その後、この速度の整数倍で高速化が進み、「x2ドライブ」「x16ドライブ」といったように倍率によって性能を表記するようになった。現在では最大で52倍速(7.8MB/s)の製品が存在するが、CDの材料や製法の関係で、これ以上高速に回転させるとディスクが物理的に破損するため、この速度が物理的な上限となっている。
歴史
1985年にソニーと蘭フィリップス(Philips)社が通称「Yellow Book」(イエローブック)と呼ばれる規格書を発行した。1989年にはISO/IEC 10149として国際標準となり、日本でも同様の内容がJIS X 6281として国内標準となっている。その後、特定の用途に向けて記録データの形式を規定したCD-IやCD-ROM XAなどの拡張規格も発表されたが、あまり普及しなかった。
CD-R 【Compact Disc Recordable】
記録可能なコンパクトディスク(CD:Compact Disc)の一つで、利用者が手元で一回だけ書き込みが可能なもの。「追記型」と呼ばれる。
利用者は何も記録されていないブランクディスク(空ディスク)を購入し、パソコンなどでデータを記録することができる。空き領域のある限り何度も追記していくことはできるが、一度書き込んだ内容の書き換えや消去はできない。
コンピュータで作成・編集したデータやプログラムを書き込んで保管や運搬、交換、配布、販売に用いたり、音声ファイルなどを元に音楽CDを作ることもできる。音声が記録されたディスクはCDに対応したオーディオ機器で再生できる。
仕様
記録メディアの容量は650MB(メガバイト)、音声記録74分相当の仕様と、後から追加された700MB、音声80分相当の2種類がある。書き込むにはCD-Rへの書き込み機能に対応したドライブ装置が必要だが、記録済みのCD-Rは読み込み専用の機器の大半で読み込むことができる。
初期の装置では書き込み速度は読み出し時と同じ1.2Mbps(150KB/s、1倍速)だったが、2倍速、4倍速と高速化され、最終的には約50倍速の装置が登場した。これは1枚を1分台で記録できる速度で、これ以上は回転が速すぎてディスクが破損する恐れがあるため、速度を引き上げることは難しいとされる。
原理
CD-Rは記録面に金色や青緑色の有機色素が塗布されており、ドライブ装置内で回転させながらレーザー光を照射し、色素を熱で変性させてデータを記録する。この過程は不可逆であるため、記録済みの箇所のデータの消去や上書きはできない。
熱で変化した部分が通常のCDのピット(微小な凹凸)と同じ役割を果たし、読み込み時に照射されたレーザー光の反射率を変化させる。レーザーで熱を加えることから、CD-Rにデータを書き込むことを俗に「CDを焼く」と言うことがある。
歴史
CD規格には当初、工場での製造時にデータを書き込み、利用者は再生のみを行う読み出し専用ディスクしかなかったが、1988年に太陽誘電が利用者側の機器で書き込むことができるCD-Rを発明し、1990年に「Orange Book Part II」としてCD規格に追加された。
書き込み可能なCD規格には他に、書き込んだ内容を消去して繰り返し書き込むことができる「CD-RW」(CD ReWritable)がある。現在のコンピュータ用の光学ドライブ装置はCDの読み込み、CD-R、CD-RWの読み書きのすべてに対応している製品が一般的となっている。
DVD
コンピュータや映像機器などでデータ記録メディアとして利用される光学ディスクの一種。細かい溝の彫られた樹脂製の円盤で、ドライブ装置内で高速回転させて溝に沿ってレーザー光を照射し、データの読み取りや書き込みを行う。規格の策定は業界団体のDVDフォーラムが行なっている。
サイズは直径8cmあるいは12cmで、中心にドライブ装置の回転軸を挿入する穴が空いている。両面記録、2層記録に対応しており、12cmディスクの記憶容量は片面1層で4.7GB、片面2層で8.54GB、両面1層で9.4GB、両面2層で17.04GBとなっている。
<$Fig:dvdmedia|center|true>コンテンツやソフトウェアの販売などに用いられる読み出し専用の「DVD-ROM」の他に、一度だけ書き込める(消去・上書きできない)「DVD-R」、書き換え可能な「DVD-RW」「DVD-RAM」がある。記録型メディアを巡って業界内で規格の分裂があり、別の業界団体DVD+RWアライアンスが独自に規格を定めた「DVD+R」「DVD+RW」もある。
映像や音声を記録するための標準のディスクフォーマットやファイル形式のセットなども定められており、映像とそれに付随する音声・字幕を記録するための「DVD-Video」が映像ソフトの流通などに、「DVD-VR」がHDDレコーダーなどでよく利用される。商品としての「DVD」の呼称はDVD-Video形式の映像ソフトを指す場合がある。
<$Fig:dvdapplication|center|true>DVD-ROM 【DVD Read Only Memory】
製造時にデータが固定的に記録され、利用者の手元では読み出し専用となるDVDのこと。ソフトウェアやビデオゲーム、映像作品などの販売・配布用としてよく用いられる。
工場で専用の機械を用いてディスクの記録面に微細な窪み(ピット)を形成する手法で量産され、読み取り時には窪みの有無や長さによってレーザー光の反射の変化することを利用して信号を読み出す。信号が物理的な凹凸で表現されるため、記録層の物質の化学変化などを利用する記録型DVDよりも劣化しにくい。
一般的な12cmディスクの場合、記憶容量は片面1層記録で4.7GB、片面2層(DL)で8.5GB、両面2層で17GB、両面各1層で9.4GBとなっている。論理フォーマットの標準としてUDF(Universal Disk Format)が採用されており、コンピュータでファイルシステムとして内容を読み出すことができる。映像を記録する場合には、この中にDVD-Video規格に従って動画ファイルなどを配置する。
DVD-RAM
利用者が何度も内容の消去や上書き、再書込を行える、書き換え可能型DVDの規格の一つ。業界団体のDVDフォーラム(DVD Forum)が策定したもので、最大記録容量は他のDVD規格と同じ片面一層で4.7GB。
他のDVD規格と同じ形状、サイズだが内部構造の異なる専用のディスクを用い、データの記録や追記、消去、再書込ができる。ディスク上の特定の領域を指定して選択的に消去あるいは上書きすることはできず、すべてのデータを消去(再フォーマット)して空のディスクに戻し、再書き込み可能にする。DVD-Rのように空き領域に追記していくことはできる。
パナソニック(当時は松下電器産業)の書き換え可能な光学ディスク「PD」の技術を元に開発された相変化型の記録方式を採用し、1997年に発表された最初の規格では他のDVD規格より少ない2.6GBのデータを記録できた。その後、バージョン2規格で他と同水準の4.7GBまで記憶容量が拡張された。
当初は専用のカートリッジにディスクを収納したメディアを用いたが、後に他のDVDメディアと同じむき出しのディスクを利用するよう変更された。他の規格とはメディアや記録方式の物理的な特性が大きく異なり互換性が低く、特別にDVD-RAMに対応しているドライブでなければ再生できないという難点があった。
「RAM」は書き換え可能な半導体メモリのRAM(Random Access Memory)に由来する。初期のDVD規格は書き込み不可能な「DVD-ROM」で、「ROM」が書き込みできない半導体メモリのROM(Read Only Memory)に由来していたことから、その対義語として書き込み可能メモリの「RAM」の名が拝借された。
DVD-RW/DVD+RWとの違い
DVDフォーラムは同じく書き換え可能型DVD規格としてDVD-RWを制定しているが、DVD-RWが主にAV機器などでの映像記録用として用意されたのに対し、DVD-RAMはコンピュータなどでのデータ記録用を想定しており、書き換え可能回数が10万回と他の規格(多くは1000回程度)より大幅に高いなどの特徴がある。
また、DVD+RWアライアンス(DVD+RW Alliance)という別の業界団体が、書き換え可能なDVD拡張規格として「DVD+RW」を策定しており、ディスクのサイズや形状、最大記憶容量(4.7GB)などは共通しているが、仕様が異なるためディスクやドライブに互換性はない。
DVD-R 【DVD Recordable】
利用者が一度だけ内容を書き込める記録型DVDの一つ。ディスク容量はDVD-ROMなどと同じ片面4.7GBだが、片面2層記録の「DVD-R DL」規格の場合は8.54GB。
何も記録されていない「空の」ディスクを利用者が購入し、内容を一度だけ書き込むことができる。書き込んだ内容は消去したり上書きしたりできないが、容量の範囲内で複数回に分けて書き込みができるため「追記型」とも呼ばれる。容量いっぱいに書き込みが行われるとそれ以上書き込むことはできない。
DVD-Rへの書き込みを行うにはドライブ装置が対応している必要があるが、書き込まれた内容の読み出し・再生は書き込み機能のないDVDドライブでも可能である。DVD-R規格の策定以前に製造された古い装置の中にはDVD-Rが読み込ないものもあったが、現在はDVD-Rの利用を想定した製品がほとんどである。
追記型のDVD規格としては他に「DVD+R」(プラスアール)が、内容の消去や再書き込みが可能な記録型としては「DVD-RW」(リライタブル)や「DVD-RAM」もあり、DVD-Rとはドライブ装置やディスクの仕様が異なる。ドライブに関しては現在製造される機種の多くはこれらのすべての規格に対応している。
Blu-ray Disc 【ブルーレイディスク】
DVDに次ぐ第3世代となる大容量の光ディスクの標準規格の一つ。CDやDVDと同じ直径12cmの樹脂製ディスクを用い、片面一層あたり25GB(ギガバイト)の高密度なデータの記録が可能。
ディスクをドライブ装置内で高速で回転させながら近接させた光ピックアップからレーザー光を照射して信号の読み書きを行う。片面一層あたり25GBを記録でき、両面記録や複層記録にも対応する。標準(1倍速)のデータ伝送速度は4.5MB/s(メガバイト毎秒)。
名称の由来は波長405nm(ナノメートル)の青色レーザー(正確には青紫色)を用いる点で、記録面上のトラックピッチ(隣接するトラック間の距離)をDVDの約半分の320nmに、最短ピット長を140nm程度に微細化している。
<$Fig:bluraymedia|center|true>DVDより高画質・長時間収録が可能な民生機器での映像記録を主な用途と見込んでおり、動画・音声の記録形式(BDMV/BDAV)や著作権保護機能(DRM)が標準で盛り込まれている。
CDやDVDと同様、工場でのディスク製造時にデータが記録され利用者側で追記・書き換えできない読み出し専用の「BD-ROM」と、利用者が一度だけ記録することができる追記型の「BD-R」(BD Recordable)、何度も繰り返し消去・再書き込みが可能な書き換え型の「BD-RE」(BD Rewritable)の3種類のディスク仕様が規定されている。
<$Fig:blurayvideo|center|true>主に映像ソフトやゲームソフトの販売、デジタル家電での録画、コンピュータのストレージ(外部記憶装置)などの用途で標準的に用いられ、パソコンやハードディスクレコーダー(ビデオレコーダー)、家庭用ゲーム機などの多くが対応しているが、機器側のほとんどがDVDとの両対応であることもあり、同じ用途でDVDも根強く使われ続け、置き換えはあまり進んでいない。
Blu-ray Disc Association (BDA/ブルーレイディスクアソシエーション)
Blu-ray Discの規格策定や普及促進を行う業界団体。ソニー、松下電器産業(現パナソニック)、シャープ、パイオニア、日立製作所、蘭フィリップス(Philips)社、韓LG電子、韓サムスン電子、仏トムソン・マルチメディア(Thomson Multimedia/現Technicolor)社らが2002年に設立したBlu-ray Disc Foundersが2004年に改称されて発足したもの。
現在では対応機器メーカーや映像産業から約140社が加盟しており、規格策定・更新の他に会員企業への技術情報の提供や、「Blu-ray Disc」の名称や「b」をかたどったロゴなどの商標について利用許諾などを行っている。
フラッシュメモリ
半導体素子を利用した記憶装置の一つで、何度も繰り返し書き込みができ、通電をやめても記憶内容が維持されるもの。近年、データを永続的に保存するストレージ(外部記憶装置)製品の記憶素子として急激に普及している。
フラッシュメモリは半導体メモリのうち、電源を落としても記録されたデータが消えない不揮発性メモリ(nonvolatile memory)に分類される。電気的に繰り返し自由に消去や再書き込みができる特徴はRAMと同じだが、技術的にはROM(の一種であるEEPROM)に由来するため「フラッシュROM」とも呼ばれる。
素子の構造や動作方式により大きくNAND型とNOR型の二種類に分かれる。最初に開発されたのはNOR型で、バイト単位で高速に読み出しができ、信頼性が高いが、後に開発されたNAND型の方が集積度を高めやすく、書き込みが高速であるという特徴の違いがある。
SLCとMLC
初期のフラッシュメモリはメモリセル(記憶素子)の電荷の有無にデジタル信号の「0」と「1」を対応付ける1ビット記録の素子(SLC:Single Level Cell/シングルレベルセル)が用いられた。後に、セルに投入した電荷量を段階的に識別することで1セルに複数ビットを保存できる素子(MLC:Multi-Level Cell/マルチレベルセル)が開発された。
初期のMLCは4段階識別・2ビット記録だったため、現在でもこれを指してMLCと呼ぶことが多いが、8段階識別・3ビット記録の「TLC」(Triple Level Cell/トリプルレベルセル)や、16段階識別・4ビット記録の「QLC」(Quad-Level Cell/クアッドレベルセル)も開発されており、MLCはこれら多値記録方式全体の総称を指すこともある。
特徴と用途
フラッシュメモリは磁気ディスクや光学ディスクなどに比べ、半導体素子に電気的にアクセスするためデータの読み書き速度が桁違いに速く、ドライブ装置に可動部がないため動作音もなく衝撃や振動にも強い。
ただし、素子の構造上劣化の進みが速く、初期には数百回程度、近年でも数万回程度の再書き込みによって素子が破損することが知られている。この点をカバーするため、制御回路により書き込み回数を各素子に均等に分散させる「ウェアレベリング」(wear leveling)と呼ばれる処理が行われる。
他方式のメディアに比べ価格も桁違いに高く小容量の製品しかなかったが、2000年代半ば頃からは量産効果や技術の進歩により飛躍的に低コスト化され、磁気ディスクなどの用途を奪う形で普及が拡大している。
主な用途としては、スマートフォンなどの携帯情報端末の内蔵ストレージや、数cm角の薄いプラスチックケースに収めたカード型の記憶媒体である「メモリーカード」、指先大の短い棒型や角型のケースに収めUSB端子でコンピュータに接続する「USBメモリ」などがある。
USBメモリ 【USB stick】
コンピュータなどのUSB端子に差し込んで使用する、フラッシュメモリを内蔵した小型の外部記憶装置(ストレージ)。着脱・持ち運びが容易な記憶メディアとして、パソコンなどの情報機器間のデータの移動によく用いられている。
一般的なUSBメモリは親指ほどのサイズの箱型や棒状の機器の先端部がUSBコネクタとなっており、パソコンなどのUSBコネクタに差し込むとハードディスクなどと同じように記憶装置として読み書きできるようになる。
内部には通電しなくても内容が消えない不揮発性の半導体メモリの一種であるフラッシュメモリのICチップが実装されており、USB端子を通じてコンピュータ側から供給される電力(USBバスパワー)により駆動する。
2000年前後から普及し始めた製品カテゴリーで、記憶容量は当初は数十MB(メガバイト)程度の製品から普及し始めたが、近年ではハードディスクやSSDなどのストレージ装置に劣らない数百GB(ギガバイト)から1TB(テラバイト)を超える製品まで存在する。
日本では「USBメモリ」の呼称が浸透しているが、英語では正式な場面では “USB flash drive” と呼ばれることが多い。日常的には様々な呼び方が用いられ、“USB drive”“USB stick”“USB flash”“flash drive”などと呼ばれることが多い。
利点と欠点
極めて小型、軽量で記憶容量が大きく、USB端子があれば読み書きのための特別な装置(リーダー/ライター)やドライバソフトなどが不要で、半導体装置であるため衝撃に強く、読み書き速度も磁気メディアや光学メディアより格段に高速などの利点がある。
一方、磁気ディスクや光学ディスクに比べ容量あたりの単価が高い、寸法や形状の規格や標準がないため大量に保管する際は収納や整理が難しい、同じ可搬型フラッシュメモリ装置のメモリーカードよりは大きくかさばるといった難点もある。
<$Fig:storagecomparison|center|true>また、フラッシュメモリに共通する特徴として、書き込み動作を繰り返すと次第に記憶素子が劣化していくため、頻繁に何度も消去や書き換えを行う用途には向かない。光学ディスクなどは静電気の放電や水濡れに強いが、USBメモリは電子機器であるためこれらには弱い。
USBメモリの利用
USBの規格には元々、「USB Mass Storage Class」という、記憶装置に対する基本的な操作を提供する仕様が含まれており、USBメモリはこれを利用して読み書きを行うようにすることで、特別なドライバソフトなどをコンピュータのオペレーティングシステム(OS)に導入しなくても利用できるようにしている。
特に準備などをしなくても初めて使用するコンピュータに差し込むだけで即座に読み書き可能となるが、内部にファイルシステムを設けてからファイルやディレクトリを作成するため、FAT32、exFAT、NTFSなどファイルシステムの種類によっては特定の機種で読み書きできない場合がある。
一般的なUSBメモリ製品はUSB Type-Aコネクタを備えているが、近年の最新USB規格ではコネクタ仕様がUSB Type-Cに統一されたため、Type-Cコネクタの製品やType-AとType-Cの両対応になっている製品もある。iPhoneやiPadなど米アップル(Apple)社製品で利用できるようにするためLightningコネクタを備えた製品もある。
SDメモリーカード 【Secure Digital memory card】
事実上の標準として広く普及しているメモリーカードの規格。切手大あるいは小指の先ほどのプラスチック製のカードにフラッシュメモリが内蔵されており、データを記録・保存・交換することができる。
フルサイズのカードは幅24mm×長さ32mm×厚さ2.1mmの切手大で約2g、小さなサイズの「microSDメモリーカード」(マイクロSD)は幅11mm×長さ15mm×厚さ1.0mmの小指の先ほどの大きさで約1g。これらはサイズ以外の仕様は共通となっている。
当初の規格では最大記憶容量2GB(ギガバイト)、データ転送速度は2MB/s(メガバイト毎秒)程度だったが、後継のSDHC規格では最大32GBに、SDXC規格では最大2TB(テラバイト)に、SDUC規格では最大128TBに拡張された。
転送速度は製品により異なるが、大容量のものでは数十MB/sから100MB/s以上へ高速化が進んでいる。これらの拡張仕様は古い仕様の上位互換となっており、「SDカード」はこれらを含めた総称、あるいは上位規格のいずれかを指すことが多い。
<$Fig:sdcard|center|false>2000年前後には主要なものだけで5種類ほどが乱立していたメモリーカード規格のうちの一つに過ぎなかったが、徐々に他の規格を淘汰して市場シェアを広げ、2010年代には事実上の標準として広く普及している。
多くのノートパソコンやスマートフォンにはSDカードスロットやmicroSDカードスロットが設けられているほか、デジタルカメラやデジタルビデオカメラ、HDDレコーダー、家庭用ゲーム機、カーナビゲーションシステムなど、デジタル家電を中心に標準のストレージ(外部記憶装置)の一つとして普及している。
SDHC/SDXC/SDUC
1999年に発表された初期のSD規格はファイルシステムに古いWindowsやMS-DOSで標準だった「FAT16」を採用したこともあり、幅広い機器で汎用的に利用できた反面、すぐに容量上限の2GBに到達する製品が現れた。
2006年には標準のファイルシステムを「FAT32」に変更し、最大容量を32GBに拡張した「SDHCメモリーカード」(SD High Capacity)が策定された。しかし、フラッシュメモリの半導体素子の微細化・高密度化は予想以上に速く進み、2年後には早くも上限の32GBに到達した。
2009年にはフラッシュメモリ製品向けに新たに開発された「exFAT」ファイルシステムを利用する「SDXCメモリーカード」(SD Extended Capacity)が発表され、最大容量は2TBに大幅に拡張された。2018年には「SDUCメモリーカード」(SD Ultra-Capacity)が発表され、exFATの上限である128TBまでのカードを作れるようになった。
miniSD/microSD
小型の携帯機器で利用しやすいよう、一回り小さいサイズの「miniSDメモリーカード」(幅20mm×長さ21.5mm×厚さ1.4mm)規格が2003年に策定され、主に携帯電話で用いられた。
2005年にはさらに小さな「microSDメモリーカード」が策定され、以降は小型の機器ではmicroSDが主に使われるようになった。miniSD/microSD共にカードサイズ以外の仕様はフルサイズのカードとほぼ同等であり、スロットに形状を適合させるだけの簡易なアダプタを通じてフルサイズカードとして使用することができる。
スピードクラス
データ伝送速度はカードや機器(カードスロット/カードリーダー)の性能によって左右され、光学ディスク/ドライブと同じように150KB/s(キロバイト毎秒)を基準とする「n倍速」表記が用いられることもある。例えば、「10倍速」「10x」は1.5MB/sを意味する。
また、カード側で最低限保証するスピードを表す規格として「スピードクラス」が定められており、初期の「SDスピードクラス」では、2MB/sを保証する「Class 2」、4MB/sを保証する「Class 4」、6MB/sを保証する「Class 6」、10MB/sを保証する「Class 10」などがある。
「UHS」(Ultra-High Speed)と呼ばれる高速な接続仕様を実装したカードでは「UHSスピードクラス」が用いられ、10MB/sを保証する「Class 1」や30MB/sを保証する「Class 3」が定義されている。
<$Fig:sdspeed|center|false>テープドライブ 【テープデバイス】
主に業務用のコンピュータシステムなどで用いられるストレージ(外部記憶装置)の一種で、磁気テープカートリッジを装着してデータの読み書きを行う装置。
磁気テープは磁性体を塗布した細長いフィルムをリール(軸)に巻き付けた記憶媒体(記録メディア)で、民生用としては音声録音用のカセットテープや映像録画用のビデオテープがよく知られるが、コンピュータの記憶媒体としても1970年代頃までは最も広く普及していた。
ストリーマは磁気テープへの読み書きを行うコンピュータの周辺機器で、筐体内にカートリッジを挿入して軸(リール)に固定し、軸を回転してテープを前後に繰り出すことで目的の位置の読み書きを行う。カートリッジの開口部から目的の部分を露出させて磁気ヘッドを近づけ、表面の磁化状態を読み取って記録された信号やデータを取り出したり、磁化状態を変化させて記録したりする。
磁気テープには様々な規格があり、それぞれ形状やサイズ、記録方式が異なるため、ドライブもそれぞれのテープに対応したものを利用する必要がある。業務用では主にDLTやLTOなどデータ記録用のテープが用いられるが、個人用コンピュータでは音声用テープカセットに信号を記録するドライブも利用された。
一般的なドライブではカートリッジの着脱は手作業で行うが、大量のテープを管理する用途に向けて、テープの保管庫とドライブ装置を一体化し、保管庫からの取り出しや収納とドライブへの着脱を完全に自動化した「テープライブラリ」と呼ばれるシステムも存在する。
1950年代のコンピュータ創成期から主要なストレージ装置として広く利用された。テープは先頭から順に読み書きするシーケンシャルアクセス(順次走査)しかできないため、1980年代以降は新たに考案された磁気ディスクや光学ディスクなどに主要ストレージの座を明け渡したが、記録密度が高くバイト単価が安いことから現在でも大規模データの長期保管などの用途で用いられる。
ウェアレベリング
記憶装置の書き込み制御の手法の一つで、記憶媒体(メディア)上の各箇所・素子の書き込み回数がなるべく均等になるように、物理的な書き込み位置を選択すること。
メディアの物理的特性により、書き込み・書き換え回数に制限がある場合に用いられる。同じ箇所に書き換えが集中するとその箇所が他よりも先に劣化して使用不能になってしまうため、どの箇所にも均等に書き換えが行われるよう制御することでメディアの寿命を伸ばすことができる。
ハードディスクなどの磁気ディスク媒体は書き換え回数の制限が数万回以上と大きく、あまりこのような制御は行われないが、制限が数百回から数千回であるフラッシュメモリを利用した記憶装置(SSD、USBメモリ、メモリーカードなど)で用いられる。
書き換え型の光学ディスク(CD-RW、DVD-RW、BD-REなど)も書き換え回数の制限が厳しいが、媒体が着脱式で記録位置ごとの書き換え回数の把握が困難であり、一回の書き換えに時間がかかり寿命を迎えるまで繰り返し使う人も少ないため、このような制御は行われない。
バス
乗合自動車という意味の英単語。コンピュータの分野では、データ伝送路および伝送方式の一種で、複数の装置や機器、回路が一つの信号線を共有し、それらの間で相互にデータをやり取りできる構造のものをバスという。
単にバスといった場合はCPUなどのICチップ内部やチップ間、電子基板上のデータ伝送回路を指すことが多い。コンピュータ本体と周辺機器の接続や、コンピュータ間の接続についても、一つの伝送経路を複数の機器で共有する方式をバス型接続、バス型ネットワークということがある。
一般的な構成のコンピュータでは、CPUの内部で回路間を接続するバスを「内部バス」(internal bus)、CPUと別の装置(メインメモリなど)を接続するバスを「外部バス」(external bus)、コンピュータ本体(のマザーボード)と拡張カードや周辺機器などを接続するためのバスを「拡張バス」(extension bus)という。
一つのバスは、データ本体を伝送するための「データバス」(data bus)、データの所在を示すアドレス信号を伝送する「アドレスバス」(address bus)、タイミングなどの制御信号を伝送する「制御バス」あるいは「コントロールバス」」(control bus)を組み合わせて構成することが多い。
以前は複数の信号線を同期して複数ビットを同時に伝送する「パラレルバス」(parallel bus)方式が主流だったが、多数の信号線を同期するよりも一本の信号線を高周波で駆動する方が高速に伝送できるようになったため、現在では「シリアルバス」(serial bus)方式が一般的となっている。
アドレスバス
コンピュータ内部で装置間を結ぶ共用のデータ伝送路(バス)の一部で、データの読み書きを行うメインメモリやI/O(入出力装置)上のアドレス(所在地)信号の伝送を行うためのもの。
バスはコンピュータを構成するCPU(マイクロプロセッサ/MPU)やメインメモリ(RAM)など複数の装置を互いに結び、相互にデータを送受信することができる主要なデータの伝送路である。
一つのバスは複数の信号線で構成されるが、このうち、CPUが読み書きしたいデータの所在地(アドレス)をメモリやI/Oなど外部の装置に伝達するための信号を流すものをアドレスバスという。
アドレスバスが一回の伝送で何ビットのデータを送れるかをアドレスバス幅と呼び、この値が大きいほどCPUが広いアドレス空間に直接的にアクセス可能になる。例えば、16ビット幅の場合は64KB(216バイト)まで、32ビット幅では4GBまで、64ビット幅では16EB(エクサバイト、2の60乗)まで単一の領域として管理することができる。
一方、装置間で送受信するデータ本体の伝送に用いられるものは「データバス」(data bus)、タイミングなどの制御信号を伝送するためのものは「制御バス」「コントロールバス」(control bus)と呼ばれ、これらの組み合わせによってバスが構成される。
データバス
コンピュータ内部で装置間を結ぶ共用のデータ伝送路(バス)の一部で、データ本体の伝送を行うためのもの。一度の伝送で何ビットを運べるかをバス幅と呼び、大きいほど高速にデータを伝送できる。
バスはコンピュータを構成するCPU(マイクロプロセッサ/MPU)やメインメモリ(RAM)など複数の装置を互いに結び、相互にデータを送受信することができる主要なデータの伝送路である。
一つのバスは複数の信号線で構成されるが、このうち、装置間でやり取りされるデータ自体を運ぶ信号を流すものをデータバスと呼ぶ。通常は複数の信号線で構成され、一度の伝送動作で複数ビットを送受信することができる。
データバスが一度に運べるビット数のことをバス幅と呼び、例えば32ビットバスはクロック周波数など他の仕様が同じであれば16ビットバスの2倍、8ビットバスの4倍のデータを一度に伝送できる。
一方、データの所在を示すアドレス信号を伝送するためのものは「アドレスバス」(address bus)、タイミングなどの制御信号を伝送するためのものは「制御バス」「コントロールバス」(control bus)と呼ばれ、これらの組み合わせによってバスが構成される。
制御バス 【コントロールバス】
コンピュータ内部のデジタル信号の伝送路(バス)の一部で、データの読み書きのタイミングなど、装置の動作の制御に関する信号を伝達するためのもの。
コンピュータ内でCPUと各種の装置やチップ間を結ぶ共用のデータ伝送路を「バス」(bus)という。コントロールバスは装置間で入出力を行うタイミングを伝達したり、メインメモリ(RAM)からの読み出しなのか書き込みなのかを指示したり、制御に必要な情報を伝送する。
これに対し、データ本体を伝送するためのものは「データバス」(data bus)、データの読み書きを行うメモリ上のアドレス(所在地)信号の伝送を行うものは「アドレスバス」(address bus)と呼ばれ、これらの組み合わせによってバスが構成される。
システムバス 【CPUバス】
コンピュータ内部で各装置間を結ぶデータ伝送路(バス)のうち、CPUと他の装置を接続するためのもの。システムの大動脈となる重要な伝送路で、その性能がシステム全体の性能を大きく左右する。
一般的なパソコンのようにチップセットを介して各装置が通信する構成の場合には、CPUとチップセット(のCPU側のチップ)を結ぶ伝送路をシステムバスということが多い。シンプルな構成のコンピュータでは、CPUとメモリ、外部入出力などがすべて単一のシステムバスで接続される場合もある。
DMI (Direct Media Interface)
米インテル(Intel)社のx86系マイクロプロセッサを搭載したコンピュータで、チップセット間やCPUとチップセットの間を結ぶデータ伝送路。バスではなくポイントトゥポイント(一対一)接続のインターコネクトである。
もともとチップセットが二つに分かれたシステムでノースブリッジとサウスブリッジを結ぶ専用の伝送路として開発されたが、チップセットが一つに統合されると従来のフロントサイドバス(FSB)に代わってCPUとチップセットの接続にも用いられるようになった。
QPI (QuickPath Interconnect)
米インテル(Intel)社のx86系マイクロプロセッサを搭載したコンピュータで、CPU間やCPUとチップセットを結ぶデータ伝送路。バスではなくポイントトゥポイント(一対一)接続のインターコネクトである。
従来のフロントサイドバス(FSB)に代わってCPUとチップセット間の通信を担うほか、マザーボード上に複数のCPUを搭載するマルチプロセッサ型システムにおいてCPU間の高速な通信を可能にする。
UPI (Ultra Path Interconnect)
米インテル(Intel)社のx86系マイクロプロセッサを搭載したコンピュータで、CPU間やCPUとチップセットを結ぶデータ伝送路。QPIを高速化した技術で、ポイントトゥポイント(一対一)接続のインターコネクトである。
QPIと基本的な仕様や用途などは共通で、QPIを置き換えて用いられる。QPIよりも転送効率が向上して高速にデータを伝送できるほか、消費電力も削減されている。
フロントサイドバス (FSB:Front-Side Bus)
米インテル(Intel)社のx86系マイクロプロセッサを搭載したコンピュータで、CPUとチップセット(のノースブリッジ)を結んでいたバス型のデータ伝送路。
かつてCPUと外部を結ぶバスは一つだったが、Pentium II以降はチップセットと接続するものと2次キャッシュに接続するものの二つに分離された。このうち、チップセット側のバスをフロントサイドバス、2次キャッシュ側をバックサイドバス(BSB:Back-Side Bus)と呼んだ。
当初はマザーボードから供給されるベースクロックとFSBの動作周波数は同じだったため、ベースクロックの意味でFSBあるいはFSBクロックということもあったが、Pentium 4以降両者は一致しなくなったため、混乱を招いた。
PCIバス 【Peripheral Component Interconnect】
コンピュータ内部で装置間を結ぶデータ伝送路(バス)の規格の一つで、主にCPU(マイクロプロセッサ)と周辺機器などを接続するためのもの。2000年前後にパソコン向けの拡張カード接続仕様の事実上の標準として普及していた。
初期の仕様はバス幅(一回の動作で伝送できるデータ長)32ビット、動作周波数33.33MHz(メガヘルツ)で、データ伝送速度は133.33MB/s(メガバイト毎秒)だった。後に66.67MHz駆動で266.67MB/sを伝送できる仕様や、バス幅64ビット(66.67MHz駆動で最高533.33MB/s)の拡張仕様が追加された。64ビットPCIの差込口(スロット)は32ビット版より端子数が増え長くなっているが、32ビットカードを差し込んで32ビットモードで通信できる上位互換となっている。
PCIで通信する拡張カードを「PCIカード」、これをコンピュータ内部の主基板(マザーボード)に差し込むための端子を「PCIスロット」という。最も普及していた時期の一般的なデスクトップ型やタワー型のコンピュータではPCIスロットが2基~6基程度搭載され、ビデオカードやネットワークカードなどに利用された。
当初はカード側へ5V(ボルト)で給電する方式だったが、3.3V駆動の仕様が追加され、最後の規格であるPCI 3.0では逆に5Vの仕様が廃止された。誤差し込みによる破壊を防ぐため両方式はカードの切り欠きの位置が異なり、異なる電圧の端子へは差し込めないようになっている(両対応の製品もある)。
歴史
最初の規格は米インテル(Intel)社によって1992年に発表されたが、以降は業界団体のPCI SIG(PCI Special Interest Group)が仕様策定と標準化を担当した。それまで業界標準だったが性能的に時代遅れとなっていたISAバス(Industrial Standard Architecture)を代替してパソコン向け拡張バスの事実上の標準となり、1995年頃からいわゆるPC/AT互換機やNEC PC-9821シリーズなどに広く普及した。
1990年代後半にはISAバスとPCIバスの両方を備えたパソコン製品が多く見られたが、2000年前後にはPCIスロット数基+グラフィックカード専用のAGPスロットという構成が一般的となった。2003年には後継のPCI Expressが登場し、PCIとAGPを置き換えていった。2005年頃にはPCI Expressが優勢となり、PCIは過去の規格として互換性のために僅かに残されるのみとなった。
シリアルバス
コンピュータ内部の装置間や本体と周辺機器を接続する伝送路であるバスの一種で、1本の信号線で1ビットずつ順番に信号を伝送するもの。狭義にはRS-232C方式のことを指す場合もある。
バス(bus)はコンピュータの構成要素間でデータを送受信するための通信路で、電子基板内のICチップ間の接続(内部バス)や、コネクタで接続された基板間や装置間の接続、ケーブルで接続された周辺機器との接続(外部バス)などに分かれる。
シリアルバスはデータを送受信するための信号線が片方向につき1本(双方向で2本)だけ用意されており、1ビットずつ順番に信号を伝送していく。信号線や端子自体は複数用意されていることが多く、制御信号やクロック信号、アース(GND)などのために用いられる。
一方、複数の信号線で同時にデータを送受信し、一回の転送動作で複数ビットをまとめて伝送するバスを「パラレルバス」(parallel bus)という。1990年代頃まではパラレルバスの方が転送速度が高かったため大容量のデータを送受信するプリンタ接続(IEEE 1284)や外部ハードディスク接続(SCSI)などに用いられ、シリアルバスは低速で構わない用途を中心に利用された。
この時代に広く普及したシリアルバスの標準規格にRS-232Cがあり、狭義にはこれを指して、あるいは後継のRS-422、RS-485なども含めた総称としてシリアルバスと呼ぶことがある。2000年代以降はパラレル伝送の高速化が頭打ちとなり、新しい伝送規格はほぼシリアル伝送に回帰したため、広義にはUSBやSATA、IEEE 1394、PCI Expressなど現代的な規格の多くがシリアルバスに分類される。
バス幅
コンピュータ内部のデータ伝送路であるバスが一回の転送動作で運べるデータ量。「32ビットバス」といったようにビット数で表される。
コンピュータの主基板(マザーボード)上では、CPUやメインメモリなどの主要部品を「バス」(bus)と呼ばれる共用の伝送路が結んでいる。バスの制御回路が一度の動作で運べるビット数がバス幅で、32ビットバスであれば32本の信号線を同時に使用して、一度に32ビットのデータを運ぶことができる。
バス幅はCPUが一度に処理できるビット数に連動して拡張され、32ビットCPUであれば32ビットバスを、64ビットCPUであれば64ビットバスを用いることで本来の性能を十全に発揮することができる。ただし、技術革新の端境期には、CPU内部は32ビット処理だが外部バス幅は従来通り16ビットといった設計になる場合もある。
データバス幅
バスのうち、データを伝送するものを「データバス」(data bus)という。CPUとメインメモリなどの間で処理に必要なデータを伝送するためのバスで、その幅が広いほど、高速にデータを出し入れして処理を高速化することができる。クロック周波数など他の条件が同じならば、64ビットバスは32ビットバスの2倍、16ビットバスの4倍、8ビットバスの8倍のデータ伝送能力がある。
アドレスバス幅
バスのうち、データ伝送の対象となるメインメモリのアドレス(番地)を指定するデータを運ぶものを「アドレスバス」(address bus)という。アドレスバスの幅が広いほど広いメモリ空間を直接的に管理することができるため、コンピュータの扱うメモリ容量の上限を大きく左右する。
例えば、16ビット幅の場合は64KiB(216バイト)まで、32ビット幅では4GiB(232バイト)まで、64ビット幅では16EiB(264バイト)までの範囲を単一の領域として管理することができる。
入出力インターフェース 【I/Oインターフェース】
コンピュータ本体と周辺機器の間で信号を入力あるいは出力するための接続規格。コネクタやケーブル、通信方式、通信回路の仕様などで構成される。
コンピュータの中枢部である主基板(マザーボード)およびCPU、チップセットなどから、端子やケーブル、無線などを介して別の機器を接続し、データや制御情報を送受信する仕組みを指す。様々な種類の機器を接続できる汎用的な規格と、特定の機器との通信に特化した規格がある。
現代の一般的なパソコン製品などの場合、キーボードやマウス、プリンタなどの装置は汎用のUSB(Universal Serial Bus)を、ディスプレイとの接続には専用の規格(DVI、DisplayPort、HDMIなど)を用いることが多い。マイクやスピーカー、イヤフォンなどの音響装置は、一般的なオーディオ機器と共通のステレオミニプラグがよく用いられる。
ハードディスクやSSD、光学ドライブなどストレージ装置の接続にはSATA(Serial ATA)やThunderbolt、NVMe、M.2、IEEE 1394(FireWire)、Fibre Channelなどが、拡張カードの接続にはPCI Expressが広く普及している。スマートフォンなどの携帯機器ではBluetoothやNFCなど電波による無線通信で機器間を接続するインターフェースも利用される。
複数の信号線で同時に信号を伝送する方式を「パラレルインターフェース」(parallel interface)、一本の信号線で順番に信号を伝送する方式を「シリアルインターフェース」(serial interface)という。かつては高速なデータ伝送を要する用途によくパラレル方式が用いられた(SCSIやパラレルポートなど)が、技術的な限界に達し、現在は高速な用途でもシリアル方式が主流(USBやSATAなど)となっている。
多くの接続仕様は公的な標準化団体や業界団体によって標準化されており、メーカーをまたいで接続することができるが、米アップル(Apple)社の製品に採用されているLightningケーブル/ポートなど、メーカー独自の接続仕様も存在する。
インターフェースは技術の進歩に合わせて時代とともに移り変わり、かつて広く普及していたが現在ではあまり用いられない(あるいは特定分野・業界でしか見られない)ものもある。PS/2ポート、シリアルポート(RS-232Cなど)、パラレルポート(セントロニクス仕様/IEEE 1284)、IDE/ATA、SCSI、PCカード、IrDA、アナログRGB(VGA端子)、ISAバス、PCIバスなどである。
USB 【Universal Serial Bus】
主にコンピュータと周辺機器を繋ぐのに用いられるコネクタおよびデータ伝送方式の標準規格。キーボードやマウス、プリンタ、外部ストレージ装置などの接続方式として広く普及しており、スマートフォンなどモバイル機器の充電や外部との通信でも標準的な接続方式となっている。
金属線ケーブルで機器間を結び、データ通信や電力供給を行うことができる。シリアル伝送方式を採用したバス型(信号線共有型)の接続規格で、一つの伝送路を最大127台までの機器で共有することができる。
コンピュータ側には通常1~4つ程度のポート(差込口)が用意されており、これで足りない場合は「USBハブ」と呼ばれる集線装置を介してポートを増やすことができる。機器本体の電源を落とさずにコネクタを着脱する「ホットプラグ」に対応している。
初期に普及した規格(USB 1.1)では12Mbps(メガビット毎秒)、最新の規格(USB4)では80Gbps(ギガビット毎秒)までの通信速度に対応する。当初はキーボードやマウスなどの入出力装置から普及が始まったが、通信速度が向上するに連れて、ネットワークアダプタ(EthernetアダプタやWi-Fiアダプタ)や外部接続の光学ドライブ、ハードディスクなどに利用が広がっていった。
フラッシュメモリを内蔵した親指大のストレージ装置である「USBメモリ」もよく使われており、以前のフロッピーディスクや書き込み型光学ディスク(CD-R/DVD-Rなど)に代わって手軽なデータの受け渡し手段として普及している。日常的にはこれを指して「USB」と呼ぶことも多い。
コネクタ形状
<$Img:USB-Connector.jpg|right|USB-Type Aコネクタ[PD]|https://commons.wikimedia.org/wiki/File:USB-Connector-Standard.jpg>コンピュータ側を想定した大きなコネクタ形状と、周辺機器側を想定した小さなコネクタ形状が規定されている。当初はコンピュータ側は長方形の「USB Type-A」、プリンタなどケーブルが別になっている周辺機器では正方形に近い「USB Type-B」が用いられた。
USB 2.0ではデジタルカメラなど小型の機器向けに、小さな台形に近い形状の「ミニUSB」(Mini-A/Mini-B/Mini-AB)が規定された。Aはコンピュータ側、Bは携帯機器側、ABは携帯機器同士の接続(USB On-The-Go)用だったが、B以外は廃止になり、Type-AとMini-Bを両端に持つケーブルが一般的となった。Miniよりもさらに小型化された「マイクロUSB」(Mirco-A/Micro-B)も規定され、スマートフォンやタブレット端末などでよく利用されている。
USB 3.0ではType-BとMicro-Bの形状が変更になり、従来と互換性のない形になった。新たな小型のコネクタ仕様として「USB Type-C」が規定され、これまでのすべてのコネクタを置き換える新世代の標準として普及が進められている。USB4以降はType-Cのみが標準とされ、過去のコネクタ形状は廃止となった。
給電機能
<$Img:USB-Bus-Power.png|right|>USBにはデータ通信だけでなくケーブルの金属線を利用した送電(電力供給)についての仕様も定めており、装置を駆動するのに必要な電力の供給やバッテリー充電などに用いられている。小さな電力であれば電源ケーブルをコンセントから別に引いてくる必要がなく、利便性が大きく向上した。
初期の規格から存在する「USBバスパワー」では、電圧5V、電流500mA、電力2.5Wまでの給電が可能で、キーボードなどの大きな電力を必要としない装置の駆動に用いられる。プリンタやハードディスクなど消費電力の大きな機器には足りないため、電源ケーブルで別途給電する必要がある。スマートフォンなど小型の機器や携帯機器ではUSBバスパワーが標準の充電方式になっていることも多い。
USB 3.1では従来より大電力の「USBパワーデリバリー」(USB PD:Power Delivery)が導入され、USB Type-Cケーブルを用いて100Wまでの電力供給が可能となった。液晶ディスプレイやコンピュータ本体などの電源ケーブルを代用できるほか、給電方向の切り替え、数珠繋ぎに他の機器を経由しての給電にも対応している。
USBデバイスクラス (USB device class)
<$Img:USB-Icon.png|right|>USBでは機器の種類ごとに標準の動作仕様と対応するドライバ仕様を「USBデバイスクラス」として規定しており、この範囲内の動作についてはオペレーティングシステム(OS)に付属する汎用ドライバだけで利用することができる。USBメモリを別のコンピュータに挿してすぐにデータが移せるのもこの仕組みを利用している。
以前の接続規格では個別の製品ごとに必ず製造元が提供するドライバソフトを導入しなければ通信できなかったが、デバイスクラスで規定された一般的な機能は個別のドライバ不要で動作する。機器に固有の機能を利用したい場合などには、これまで通り付属のドライバを導入して利用する形となる。
Thunderbolt 【Light Peak】
米インテル(Intel)社と米アップル(Apple)社が開発した、コンピュータ本体と周辺機器などを結ぶシリアル通信インターフェース規格の一つ。最高40Gbps(ギガビット毎秒)の双方向通信が可能。
PCI ExpressあるいはDisplayPortの外部接続インターフェースとして機能し、両方式の信号を混在させて通信することもできる。アダプタを用いればUSBやIEEE 1394(FireWire/i.LINK)、Gigabit Ethernet、Fibre Channelなどで通信することもできる。
通信ケーブルはメタルケーブル(銅線)または光ファイバーケーブルが使用でき、銅線の場合は接続した機器に最大10W(Thunderbolt 3からは100W)の電力供給が可能。光ファイバーの場合は銅線よりも長距離(最長60メートル)の通信が可能となる。
接続形態は中心となる機器や集線装置にすべての機器を接続するハブ型のほか、他の機器の通信をバケツリレー式に中継するデイジーチェーン(数珠つなぎ)型の接続も可能。コネクタとプラグの形状は当初はMini DisplayPortのものを流用したが、Thunderbolt 3からはUSB Type-Cコネクタが使われている。
歴史
初版の規格は2011年に発表され、メタルケーブルを用いて最高10Gbpsでの通信が可能である。Apple社のMacシリーズなどに採用された。Thunderbolt 2は2013年に発表され、伝送速度が20Gbpsに向上し、光ファイバーケーブルに対応した。
Thunderbolt 3は2015年に発表され、コネクタがMini DisplayPortからUSB Type-Cに変更された。給電能力が100Wに引き上げられ、伝送速度は40Gbpsに向上した。2020年にはThunderbolt 4が発表され、USB4との統合が進んだ。USBポートとして使用できるほか、Thunderbolt 3以前との互換性も維持されている(逆にUSB4ポートでのThunderboltサポートはオプション)。
RS-232C 【Recommended Standard 232 version C】
電子機器間でシリアル通信を行うための接続規格の一つ。コンピュータのシリアルポートと周辺機器を接続する仕様として、かつては広く普及していた。15mまでの距離を最高115.2kbpsの速度で接続することができる。
コネクタ形状はD-Sub 9ピンとD-Sub 25ピンの2種類がよく用いられる。コンピュータと周辺機器の接続にはストレートケーブルを、コンピュータ同士の接続には内部の配線の一部が交差しているクロスケーブル(リバースケーブル)を用いる。
1980~90年代にパソコンに標準搭載されており、モデムやプリンタ、マウスとの接続などによく使われた。クロスケーブルでコンピュータ同士を繋いで相対でデータを送受信する用途にも用いられた。現在ではUSBなどにその座を譲り、一般的なパソコン製品からは廃止されている。
制御回路が比較的単純で、長距離を安定的に伝送できることから、現在でも産業機械や測定機器などの制御用といった通信の高速性が重視されない用途では現役で利用されている。伝送速度などを向上させた後継規格の「RS-422」(EIA-422)や「RS-485」(EIA-485)などもよく用いられる。
ルータやネットワークスイッチなどのネットワーク機器をコンピュータに繋いで管理を行う「コンソールポート」も元はRS-232C仕様で、機器側がD-Sub 9ピン、コンピュータ側がRJ45(Ethernetコネクタ)となっている特殊なLANケーブル(コンソールケーブル)が用いられることがある。
歴史
1960年に当時のCCITT(現在のITU-T)が、通信システムにおけるモデムなどのDCE(回線終端装置)とコンピュータなどのDTE(データ終端装置)の間の通信仕様としてV.24勧告およびV.28勧告を発行した。これを1968年に当時のEIA(米電子工業会)が「RS-232C」の名称で汎用の通信仕様として採用し、1991年にANSI(米国国家規格協会)によって標準化された。
「RS-232C」は初期版の名称で、改訂版は「EIA-232-D」および「EIA-232-E」、最終版は「ANSI/TIA/EIA-232-F-1997」の規格名で知られる。RS-232C対応をうたう製品には、実際に初期のRS-232C仕様のみに対応しているものと、これらの新版に対応済みのものがある。EIAは2011年に解散しており、その後はTIA(米電気通信工業会)が規格を引き継いでいる。
SATA 【Serial ATA】
コンピュータ本体とSSDやハードディスク、光学ドライブなどのストレージ(外部記憶装置)を接続する標準規格の一つ。パソコンやサーバなどの一般的な機種で、内蔵ストレージ装置の接続方式として広く浸透している。
Ultra ATAなど従来のATA規格で採用されていたパラレル伝送方式をシリアル伝送方式に変更した規格で、7ピンの平たいケーブルおよびコネクタで高速なデータ転送を実現することができる。制御信号の体系などは従来のパラレル方式のATA諸規格から引き継いでいる。
最初の規格であるSerial ATA 1.0は2000年に業界団体のSerial ATA Working Group(現在のSATA-IO)によって策定された。物理的な伝送速度は1.5Gbps(ギガバイト毎秒)で、8ビット送るごとに2ビットの制御信号を付け足す8B/10Bエンコーディングを行うため実効データ伝送速度は150MB/s(メガバイト毎秒)となる。
2004年には物理レート3Gbps(実効レート300MB/s)に高速化したSATA2(Serial ATA 2.0/SATA300/SATA 3G)が、2009年には6Gbps(600MB/s)に高速化したSATA3(Serial ATA 3.0/SATA600/SATA 6G)が策定されている。コネクタ形状などは同一で、後方互換性があるため新しい機器に古い機器を接続すると古い規格で動作する。
デスクトップパソコンやサーバなどで用いられる一般的なコネクタおよびケーブルの他に、薄型光学ドライブなどのために薄型化した「Slimline SATA」(スリムラインSATA)や、ノートパソコンなどに用いるために小型化した「mSATA」(Mini SATA/ミニSATA)、これをさらに小型化した「Micro SATA」(マイクロSATA/μSATA)などの仕様も用意されている。
HDMI 【High-Definition Multimedia Interface】
映像や音声をデジタル信号として伝送するインターフェース規格の一つ。パソコンやスマートフォン、ゲーム機、デジタル家電などと、テレビ、ディスプレイなどの表示装置を接続する方式の標準として広く普及している。
ケーブルやコネクタ、信号形式などの物理的な仕様と、データの伝送制御についての仕様を定めている。1本のケーブルで映像信号、音声信号、制御信号をすべて合成して送受信するため、取り回しが容易である。データ圧縮やアナログ信号への変換などを行わず直接デジタルデータとして出力機器まで伝送するため、伝送途上で品質が劣化することがない。
映像や音声をそのまま伝送するのではなく、コピー防止技術の「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)によりデータを暗号化して送受信する。認証を受けた正規の出力先以外の装置で伝送信号を読み取って、映像や音声のデジタルコピーを作成することはできないようになっている。
コネクタの種類は「タイプA」から「タイプE」までの5種類が規定されている。このうち、パソコンやディスプレイなど据え置き型の機器に用いられる標準的なタイプAと、デジタルビデオカメラなどに用いられるやや小型の「タイプC」(ミニHDMI)、デジタルカメラやスマートフォンなどに用いられる小型の「タイプD」(マイクロHDMI)がほとんどを占める。
異なる製造元の製品間で互換性を確保するための認証プログラムがあり、HDMI対応製品は検査機関による試験を受けて合格しなければならない。また、対応製品のメーカーはライセンス管理団体に加盟し会費および製品一つあたりに賦課されるロイヤリティを支払わなければならず、ケーブルの価格が他方式より高額であると指摘されることが多い。
歴史
コンピュータとディスプレイのデジタル伝送仕様「DVI」(Digital Visual Interface)を発展させた仕様で、物理層の信号伝送に「TMDS」(Transition-Minimized Differential Signaling)を用いるなど共通点が多い。暗号化に対応したことで著作権で保護されたコンテンツのデジタル出力が可能になった。
最初の規格であるHDMI 1.0は2002年に発表され、米シリコンイメージ(Silicon Image、現Lattice Semiconductor)社を中心とする企業連合が規格を策定した。動画は最高でフルHD(1920×1080)サイズ、毎秒60フレーム(1080/60p)に対応し、音声はサンプリング周波数192kHz、量子化24ビットの品質を最大8チャンネルまで同時に伝送できる。
2006年の「HDMI 1.3」では48bppまでの色深度に対応し、2009年の「HDMI 1.4」ではタイプC(ミニHDMI)、タイプD(マイクロHDMI)コネクタの追加、USB Type-Cコネクタへの対応、4K解像度(3840×2160、4096×2160)への対応などが行われた。2017年の「HDMI 2.1」では8K解像度(7680×4320)や可変リフレッシュレート(VRR)に対応した。
DisplayPort 【DP】
コンピュータとディスプレイ装置を接続し、映像や音声をデジタル方式で送受信するインターフェース規格の一つ。ケーブルや端子、信号などの仕様を定めたもので、業界団体のVESA(Video Electronics Standards Association)が策定している。
従来、パソコンからディスプレイに映像を出力するのに用いられてきた、いわゆる「アナログVGA」(VGA端子)や「DVI」(Digital Visual Interface)を置き換える目的で開発された仕様である。これらよりコンパクトで薄型のコネクタを使うため、携帯機器にも端子を設けやすくなっている。
DisplayPortは主にパソコンで用いられており、テレビやHDDレコーダー、家庭用ゲーム機などのデジタル機器では同じデジタル接続インターフェースの「HDMI」(High-Definition Multimedia Interface)が普及している。ディスプレイ製品などは両対応の機種も多い。
主な仕様
1本のケーブルで映像と音声を多重化して伝送したり、複数のディスプレイを接続する際に数珠つなぎ(デイジーチェーン)に接続することができる。コンテンツの著作権保護は当初独自方式の「DPCP」(DisplayPort Content Protection)を用いていたが、HDMIなどで用いられる「HDCP」(High-bandwidth Digital Content Protection)を用いるよう改められた。
DisplayPortのケーブルでは最大で4対の信号線を用い、それぞれ独立にシリアル伝送を行う。この伝送路は「レーン」と呼ばれ、当初の仕様では2.7Gbps×4で最高10.8Gbps(実効8.64Gbps)、DisplayPort 2.0では20Gbps×4で最高80Gbps(実効77.4Gbps)のデータ伝送が可能となっている。
当初の仕様ではフルHD(1920×1080)の映像をリフレッシュレート144Hzで伝送できたが、DisplayPort 1.2では4K解像度(3840×2160)を75Hzで伝送できるようになり、最新のDisplayPort 2.0では8K解像度(7680×4320)を60Hzで伝送することができる。
コネクタ形状
標準サイズのコネクタは幅16.1mm×高さ4.76mmで、片方の端に誤挿入防止のための切り欠きがある。携帯機器向けに小型の「Mini DisplayPort」が用意されており、こちらは幅7.5mm×高さ4.6mmとなっている。ピン数(20本)や信号形式、伝送性能などに違いはない。
また、ノートパソコンなどの筐体内で液晶パネルに信号を伝送する方式として「eDP」(embedded DisplayPort)も策定されている。DisplayPort 1.3からは標準コネクタの代わりにUSB Type-CポートにDisplayPort信号を流すことができる「DisplayPort Alt Mode」(DisplayPort代替モード)が用意された。
Bluetooth 【BT】
携帯情報機器などで数メートル程度の距離を接続するのに用いられる近距離(短距離)無線通信の標準規格の一つ。コンピュータと周辺機器を接続したり、スマートフォンやデジタル家電でデータを送受信するのによく用いられる。スウェーデンのエリクソン(Ericsson)社が開発したもので、IEEE 802.15.1として標準化されている。
各国で免許不要で使用できるよう開放されている2.4GHz(ギガヘルツ)帯の電波を利用し、10m程度の範囲にある機器を相互に結んでデジタル通信を行うことができる。赤外線を用いる同種の技術と異なり小出力の電波を利用するため、互いに見通せない位置にある機器間でも電波が届く範囲ならば接続することができる。電波を送受信するトランシーバーは1cm角程度であり、小型軽量で消費電力も少なく安価に製造できるため、小さな電子機器にも容易に実装できる。
マウスやキーボードなど、パソコンと入出力機器との接続をワイヤレス化したり、スマートフォンなどの携帯機器とイヤホンやスピーカーなどを繋ぐ用途に普及している。初期の仕様では通信速度は最高1Mbps(メガビット毎秒)だったが、現在では最高24Mbpsまで可能となっている。IoT機器などでの利用を見越して従来の1/3の電力で動作するBLE(Bluetooth Low Energy)と呼ばれる派生仕様も追加された。
Bluetoothプロファイル
様々な機器や用途での利用を想定し、いくつかの機器の類型について実装すべき機能や通信規約(プロトコル)などの標準仕様を定め「Bluetoothプロファイル」として公表している。
製品によって接続仕様がバラバラだとコンピュータ側に個別にデバイスドライバを導入するなど使用できるようするための準備に手間がかかるが、各製品がプロファイルに準拠した実装を行うことで、標準的な機能についてはすぐに利用できるようになっている。USBの「USBデバイスクラス」と似た仕組みといええる。
主なプロファイルとして、マウスやキーボードなどの入出力機器を扱う「HID」(Human Interface Device)、イヤホンマイク(ヘッドセット)を扱う「HSP」(Headset Profile)、汎用的な無線ネットワークを構築する「PAN」(Personal Area Network)、プリンタを扱う「BPP」(Basic Printer Profile)などがある。
歴史
Bluetooth 1.0は主にEricsson社が開発し、1999年に同社を中心に設立された業界団体Bluetooth SIGから正式に発表された。通信速度は1Mbpsで、後にBR(Basic Rate)と呼ばれる通信モードである。
2004年には最高3MbpsのEDR(Enhanced Data Rate)モードを追加したBluetooth 2.0が発表され、続く2007年の2.1でNFC(Near Field Communication)対応やスリープ(一時停止)動作時に消費電力を低減する仕様が追加された。EDR対応はオプションであるため、対応している場合は「Bluetooth 2.0+EDR」のように表記される。
2009年のBluetooth 3.0では、無線LAN(Wi-Fi)用の装置(および物理層・MAC層の仕様)をBluetoothによる通信に流用することで最高24Mbpsでの通信を実現するHS(High Speed)モードが追加された。HSモードもオプションであるため、「Bluetooth 3.0+HS」のように表記される。
2010年のBluetooth 4.0では、従来型の約1/3の省電力で動作する新たな通信方式として「Bluetooth Low Energy」(BLE)が追加された。通信速度は1Mbpsと低速で、送受信されるデータ単位も小さいが、これはセンサーなど間欠的に通信する極小型のIoT機器などでの利用を想定している。BLE対応の場合には「Bluetooth 4.0+LE」などと表記する。
2016年のBluetooth 5.0では、BLEの最高速度が2Mbpsに拡張されたほか、通信速度をあえて低速に抑える代わりに伝達距離を伸ばす仕様が盛り込まれた。Bluetooth機器同士がネットワークを形成し、バケツリレー式にデータを離れた機器まで転送することもできるようになった。
BLE 【Bluetooth Low Energy】
近距離無線通信技術Bluetoothの拡張仕様の一つで、極低電力で通信が可能なもの。2009年にBluetooth 4.0規格の一部として策定された。
Bluetoothはモバイル機器と周辺機器の接続などに用いられる近距離無線通信方式で、微弱な電波で数メートル程度までの範囲にある機器と交信することができる。データ伝送速度は控えめだが、低コストで様々な装置に内蔵でき、低消費電力で長期間通信し続けられることを重視している。
BLEはBluetoothの消費電力をさらに抑えた仕様で、免許なく使える2.4GHz帯(ISMバンド)の電波を用いる。Bluetooth 5.0場合、仕様上は2Mbpsで100m程度、125kbpsなら400m程度まで通信可能だが、到達距離と通信速度を抑えれば消費電力を抑えられるため、実用上は数十kbs、数mでの運用が多いとされる。
対応チップはフル機能のBluetoothの1/3程度の電力で動作することができ、ボタン電池一つで数年稼働することも可能とされる。通常のBLEはパソコンやスマートフォンなどと周囲にある入出力装置(イヤフォンやキーボード、マウスなど)の接続が主用途だが、BLEは各種のセンサーや体に身につける小型の電子機器、周囲に特定の信号を発信するビーコンなどでの利用が想定されている。
Bluetooth Smart/Smart Ready
当初、BLEに対応していることを示すブランド名として「Bluetooth Smart」(BLEのみ対応)「Bluetooth Smart Ready」(通常のBluetoothとBLEに対応)が用意されていた。筐体などに掲示するロゴが決められており、「Smart」はセンサー装置などで、「Smart Ready」はコンピュータなどでの利用が想定されていたが、2016年に廃止された。
ZigBee
IoTやセンサーネットワーク、家電の遠隔制御などに用いられる近距離無線通信規格の一つ。通信速度は遅いが低消費電力で、多数の装置がバケツリレー式にデータを運ぶメッシュネットワークに対応している。
物理層の規格はIEEE 802.15.4としてIEEEが標準化しており、その上で機能するプロトコル(通信規約)などの仕様は業界団体のZigbee Allianceが策定している。「Zigbee」の商標は同団体が保有しており、対応機器などの認証を行っている。IEEE 802.15.4に対応しているだけではZigbee対応をうたうことはできず、また、物理層を別の方式に替えてZigbeeシステムを構成することも可能である。
通信に用いる電波の周波数帯は868MHz帯(主に欧州向け)、915MHz帯(主に米国向け)、2.4GHz帯(全世界向け)の3つが用意され、最高通信速度は順に20kbps(キロビット毎秒)、40kbps、250kbpsとなっている。日本では2.4GHz帯が使用される。装置間が直接通信可能な実用的な距離は10~20m程度までとされる。
Zigbee機器は機能や役割に応じて、無線ネットワークを管理するコーディネータ(Zigbee Coordinator)、他の装置間の通信の中継を行うことができるルータ(Zigbee Router)、末端に接続され間欠的に通信するエンドデバイス(Zigbee End device)の3つがある。
ルータは他のルータやエンドデバイスからの通信を別のルータやコーディネータに中継することができるため、網(メッシュ)状に連結してバケツリレー式に端から端までデータを転送することができる。距離的にコーディネータと直接通信できない位置にあるエンドデバイスも含めて一つのネットワークを形成することができる。
各装置には製造時に64ビットの固有な識別子が割り当てられているほか、ネットワークに参加する際に16ビットのアドレスが割り当てられる。仕様上は一つのネットワークで65,536(216)台の機器を識別できるが、実際の製品仕様などでは数百台程度までの接続が可能なものが多い。
機器の種類や用途に応じて実装すべき仕様のセットを定めたアプリケーションプロファイルが規定されており、家電制御などを行うための「Home Automation Profile」、機器間の電力制御などを行うための「Smart Energy Profile」、スマートホーム向けリモコン仕様「Remote Control Profile」などの種類がある。
IrDA 【Infrared Data Association】
赤外線を利用して近距離の無線データ通信を行う技術規格の一つ。また、同規格を策定する業界団体。初期の携帯電話などでよく利用されていた。
電波の代わりに赤外線を用いる無線通信方式で、1m程度の近距離を接続することができる。赤外線は光に性質が近いため遮蔽物を回り込む性質は弱く、障害物で見通しが遮られると通信できない。
1994年に策定された最初の規格では最長1mまでの距離を115kbps(キロビット毎秒)で結ぶことができた。1995年には4Mbpsに、1998年には16Mbpsに高速化された。小型機器向けに最長30cmまでの低消費電力の仕様も用意され、機器をかざしたり隣り合わせて利用した。
規格が策定された当初はなかなか用途開拓が進まなかったが、1990年代後半に携帯電話が爆発的に普及し始めると最大手のNTTドコモが端末と周囲の機器の通信手段として標準採用し、他社も追随し広まった。2000年前後には携帯電話による連絡先交換や機種変更時のデータ移行などの標準的な手段として定着していた。
スマートフォンの時代になると電波を用いる近距離無線通信技術のBluetoothが新たな標準となり、旧来型の端末製品カテゴリー「ガラケー」と共に廃れていった。初期の一対一の伝送モードに加え、周辺機器など複数台を双方向接続する「IrDA Control」や通信速度を高速化した「IrSimple」などの拡張仕様も登場したが、限定的な採用に留まっている。
NFC 【Near Field Communication】
最長十数cm程度までの至近距離で無線通信を行う技術。広義にはそのような近距離無線通信の総称、狭義にはその標準規格であるISO/IEC 18092(NFC IP-1)やNFCフォーラム仕様などを指す。
10cm程度の距離に近接させた電子機器やICカードなどの間で数百kbps(キロビット毎秒)までの速度でデータを伝送できる無線通信で、装置をかざしたり重ねるだけですぐに通信できる手軽さが大きな特徴である。
非接触ICカードの通信方式として用いる場合は電池や電源が不要で、アンテナが電波を受信する際の電磁誘導で発生した電力だけで通信やデータの書き換えができることも大きな利点である。
非接触ICカードとして交通機関のICカード乗車券やカード型電子マネー、各種の身分証、ICタグ(RFID)などに広く用いられているほか、スマートフォンなどの携帯情報機器に内蔵されて機器間の通信や電子マネー機能などに用いられている。
歴史と規格
1990年代にソニーの「FeliCa」(フェリカ)やオランダのフィリップス(現NXPセミコンダクターズ)社による「Mifare」(マイフェア)などが開発され、2000年頃からIC乗車券などで実用化が始まった。いずれも13.56MHzの電波を用い、標準では100~400kbps程度で通信ができる。
2000年に非接触ICカードの標準規格としてISO/IEC 14443が策定され、MifareはType A仕様としてその一部に採用された(他に当時の米モトローラ社などが推したType B仕様がある)。また、2004年には近距離無線の通信規格としてISO/IEC 18092(NFC IP-1)が策定され、Mifareに加えてFeliCaがType F仕様として収録された。
2004年にはソニーとフィリップス、フィンランドのノキア(Nokia)社が業界団体のNFCフォーラム(NFC Forum)を設立し、これら公的な規格に加えて機器間でやり取りするデータ形式などを定めた包括的な標準仕様を発行するようになった。同フォーラムの主催する互換性テストに合格した機器には「N」の文字をかたどったNFCロゴの掲示が許可される。
シリアル通信 【シリアル伝送】
1本の信号線や回線を使って1ビットずつ順番にデータを送受信する伝送方式。一度に伝送できるデータは少ないが、複数の信号線を同期する必要がないため伝送頻度を高めやすい。
これに対し、複数本の信号線などで一度に多くのデータを送受信する方式を「パラレル通信」(parallel communication)あるいは「パラレル転送」「パラレル伝送」(parallel transmission)などという。
シリアル方式はパラレル方式と比較すると、信号線が片方向1本ずつの一対2本で済むため、複数の信号線間の送受信タイミング(クロック)の同期が不要で、周囲の環境からの電磁ノイズ対策もしやすく、信号線や端子間の混信や干渉(漏話)も少ないという特徴がある。
公衆回線を経由するような長距離の通信はほとんどシリアルデータ転送方式なため、シリアル方式であることが意識されることは稀であり、パラレル方式も混在するコンピュータ内部の伝送路や本体と周辺機器の接続などでよく用いられる用語である。
コンピュータ関連では「USB」や「IEEE 1394」(FireWire/i.LINK)、「Serial ATA」(SATA)、「InfiniBand」、「PCI Express」、「Serial Attached SCSI」(SAS)、「Fibre Channel」などがシリアル方式である。
コンピュータ内部のチップ間や、電子機器(組み込み機器)の内部では「SPI」(Serial Peripheral Interface)や「I2C」(Inter-Integrated Circuit)、「ModBus」、「JTAG」、「1-Wire」なども用いられる。
シリアル方式の通信インターフェースを「シリアルポート」(serial port)あるいは「シリアルインターフェース」(serial interface)と言う。単にシリアルポートといった場合には、かつてパソコンで標準的に用いられていたRS-232Cポートやその派生・後継仕様(RS-422やRS-485など)を指すことが多い。現在のシリアル方式の接続端子は「USBポート」のように具体的な規格名で呼ばれるのが普通である。
パラレル通信 【パラレル伝送】
複数の信号線や回線を使って一度の動作で複数の信号やデータを送受信する通信・伝送方式。一度に多くのデータを伝送できるが、複数の信号線を同期させなければならないため伝送頻度を高めにくい。
数本から数十本の端子や信号線で並行して複数の信号を伝送する方式で、伝送路が多い分だけ通信速度を向上させやすい。ただし、端子間の伝送タイミングの同期を図る制御を行わなければならず、信号線間の電磁的な干渉(漏話)により伝送距離が伸びると通信品質が下がるといった難点もある。
もともとコンピュータ内部のICチップ間の伝送路(バス)やコンピュータ本体と周辺機器の通信など、近接した機器間の通信でよく用いられ、ISA、PCI、IDE、ATA、SCSI、IEEE 1284(セントロニクス仕様)などの通信規格がパラレルデータ転送方式である。
近年では伝送速度が向上するにつれてデメリットの方が大きくなってきたため、ATAがSATA(シリアルATA)になるなど、近距離間の通信でも一本の信号線で伝送を行うシリアル伝送方式に移行する例が増えている。
パラレル方式の通信インターフェースを「パラレルポート」(parallel port)あるいは「パラレルインターフェース」(parallel interface)と言う。単にパラレルポートといった場合には、かつてパソコンに標準的に用いられていたセントロニクス仕様およびその派生規格を指すことが多い。
トポロジー
「位相幾何学」という意味の英単語。図形を連続的に変形しても保たれる抽象的な性質を研究する数学の一分野だが、IT分野では複数の装置や機器を結ぶ配線や接続形態の類型をトポロジという。
複数の装置や機器をケーブルなどで繋ぐ場合、具体的な装置の数や位置関係、配線の長さなどに違いがあっても、「繋がり方」はいくつかの類型に分類することができる。信号の伝送や通信路の制御の仕方は類型ごとに共通しており、それぞれ特徴がある。
装置の配線のトポロジー
コンピュータや電子機器の内部の装置や回路間の接続、あるいは機器本体と外部の装置などとの接続形態は典型的ないくつかのトポロジに分類される。最も単純なのは「ポイントツーポイント接続」で、2つの装置が直に一対一に繋がれた形態である。
複数の装置を共通の信号線を通して同時に接続する方式は「バス接続」という。このうち、信号線を枝分かれさせて複数の装置に繋ぐ方式を「マルチドロップ接続」、装置から装置に数珠つなぎに配線していく方式を「デイジーチェーン接続」という。
ネットワークトポロジー
コンピュータネットワークを構成するコンピュータや通信機器、集線装置などの接続形態もいくつかのトポロジに分類することができる。共用の通信路にすべてのノードを接続するバス型、直列に数珠繋ぎにしたデイジーチェーン型(ライン型)などは装置の配線と同様の類型である。
他に、集線装置を中心に各ノードを繋いだスター型、ノード間を環状に繋いだリング型(ループ型)、各ノードが一つ以上の他のノードと結ぶメッシュ型、一つのノードから枝分かれする木のように繋がるツリー型などがある。これらを組み合わせた複合型のトポロジも用いられることがある。
物理トポロジーと論理トポロジー
物理的な配線形態を「物理トポロジー」、信号が届く範囲を基準とする論理的な構造を「論理トポロジー」という。どのネットワークにもこの二つの側面があり、両者が一致している場合もあれば異なっている場合もある。
例えば、イーサネット(Ethernet)の集線装置の一種であるネットワークスイッチ(スイッチングハブ)は、各端末からの信号を解析して必要な相手にだけ転送するため、物理トポロジーも論理トポロジーもスター型であると言える。
一方、同じ集線装置でもリピータハブは内部で各端末からの信号線を電気的に繋いでいるだけで、どの端末からの信号も機械的にすべての端末に転送する。このため、ケーブルの配線がスター型でも論理トポロジーはバス型となっている。
アナログ
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報を電圧の変化など連続的な物理量の変化に対応付けて表現し、保存・伝送する方式のこと。元の情報を高精度に表現することができるが、伝送や複製の際に劣化・変質を避けられない。
対義語は「デジタル」(digital)で、情報を離散的な数値に変換し、段階的な物理量として表現する。アナログで情報を扱う利点として、デジタル化では避けられない離散化に伴なう本来の信号からのズレ(量子化誤差)が生じないという点があり、情報の発生時点では正確に表現して記録することができる。
一方、保存や伝送、再生、複製に際して劣化やノイズによる影響を受けやすく、変化した情報は復元することができないため、伝送・複製を繰り返したり長年に渡って保存すると内容が失われたり変質してしまう難点がある。
かつて音楽の販売に用いられたレコード盤は、樹脂表面に刻まれた溝の凹凸の変化が音声信号の変化に直接対応付けられたアナログ記録方式だったが、コンパクトディスク(CD)では音声信号をサンプリング(標本化)して離散的な数値の列に変換し、これを表面の溝の凹凸にデジタル信号として記録している。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
1990年代頃までは、コンピュータなどによる情報のデジタル処理は限られた用途にのみ用いられてきたが、半導体チップやデジタル機器の性能向上や低価格化により、現代では身近な情報の多くがデジタル方式で保存、加工、伝送されるようになってきている。
比喩や誤用
コンピュータやデジタル方式の情報機器、通信サービスなどが普及するに連れ、旧来の機器や仕組み、考え方などを比喩的にアナログと称するようになった。
そのような用例の多くは情報の表現形式のデジタル・アナログとは無関係で、単に「コンピュータやインターネットによらない」という意味だったり、さらには「電気機械を使わない」ことを表していたりする。
中には本来の語義では誤用と思われる用例もある。例えば、ビデオゲームと対比してカードゲームやボードゲームを「アナログゲーム」と呼んだり、パソコンや電卓と対比してそろばんを「アナログな計算方法」と評することがあるが、これらが扱う情報は離散的な数値であり、電気機械を使っていないだけで情報の取り扱い方自体はデジタル的である。
デジタル 【ディジタル】
機械で情報を扱う際の表現方法の一つで、情報をすべて整数のような離散的な値の集合として表現し、段階的な物理量に対応付けて記憶・伝送する方式のこと。特に、情報を2進数の「0」と「1」の組み合わせに置き換えて表現する方式。
現代のコンピュータはデータをすべて2進数の値の列に置き換え、これをスイッチのオン・オフや電圧の高低など明確に区別できる2状態の物理量に対応させて保存・伝送する。これに合わせて、通信回線や記憶媒体などもデジタル方式で情報を取り扱うようになっている。
対義語は「アナログ」(analog)で、情報を連続した物理量で表現する方式を意味する。初期の情報機器はアナログテレビ放送や音楽レコードのようにアナログ方式で情報を記録・伝送していたが、現代ではコンピュータの普及に合わせて動画配信やCDのようにデジタル方式への置き換えが進んでいる。
デジタルで情報を扱う利点として、保存や伝送、再生、複製などを行う際に劣化やノイズの影響を受けにくく、伝送・複製を何度繰り返しても内容が変化しない点や、様々な種類の情報を数値の集合として同じように扱うことができ、情報の種類によって媒体の選択に制限を受けない点などがある。ただし、連続的に変化する信号を離散値に変換する際に、必ず本来の信号からのズレ(量子化誤差/標本化誤差)が生じる。
機器などの内部的にはデジタル処理が行われていても、人間には連続的に感じられる多段階の値で量を識別するような方式を便宜上アナログと呼ぶ場合がある。例えば、ゲーム機のコントローラの種類の一つで、方向の指示を多段階に滑らかに変化させられるものをアナログコントローラという。
比喩や誤用
コンピュータやデータ通信、デジタル方式の記憶媒体などが普及するに連れ、「デジタル」という語をコンピュータやインターネットに関連するものの総称、「アナログ」をその逆、すなわち「電気・電子技術に依らないもの」とする比喩的な用法が広まった。
このような用例の多くは本来の情報の表現形式の違いとは無関係に用いられるため、カードゲームやボードゲームなどをビデオゲームに対比して「アナログゲーム」と呼んだり、そろばんを計算機と対比して「アナログな計算方法」と呼んだりするが、これらは離散的な数値しか扱わないため、情報の扱い方そのものはデジタル的である。
スター型ネットワーク 【スター型トポロジー】
通信ネットワークの接続形態(トポロジー)の一つで、中心となる通信機器を介して端末を相互に接続する方式。
各機器はネットワークの中心となる集線装置や通信拠点と接続し、他の機器や別のネットワークとはこの中心の機器などを介して接続される。イーサネット(Ethernet)の10BASE-T/100BASE-TX/1000BASE-Tなどはハブやネットワークスイッチを中心とするスター接続となっており、LANの配線方式と最もよく見られる形態である。
リング型やバス型などに比べ配線の自由度が高く、末端の障害が全体に障害を及ぼしにくいが、中心となる機器や拠点が停止すると接続されたすべての端末が通信不能になるリスクがある。メッシュ型などに比べ、中心となる機器が通信経路やデータ転送の制御を集中的に管理するため、通信制御が比較的単純である。
カスケード接続 【多段接続】
一台の集線装置を介して多数の機器が繋がれるスター型ネットワークで、集線装置同士を接続すること。双方に繋がれている機器が通信できるようになり、ネットワークを広げることができる。
ハブやスイッチなど比較的単純な集線装置で構成されるネットワークを相互に繋ぐことを意味し、例えば10ポートのハブ同士を繋ぐと、(双方を繋ぐケーブルにそれぞれ1ポート使うため)18台までの端末を同じネットワークに接続することができる。
カスケード接続に専用のポートを用いる場合、これを「カスケードポート」「アップリンクポート」「MDIポート」「デイジーチェーンポート」などという。専用のポートはなく、どのポートに繋いでも自動認識するよう設計されている製品もある。
単純なリピータハブでは接続段数に制限があるのが一般的で、イーサネット(Ethernet)の10BASE-Tでは4段まで、100BASE-TXでは2段までと決まっている。スイッチングハブ(ネットワークスイッチ)には接続段数の制限はなく、何台でも数珠つなぎにしてネットワークを拡張できる。
ハブ
車輪やプロペラなどの中心にある部品や構造のこと。転じて、中心地、結節点、集線装置などの意味で用いられる。IT分野では構内ネットワークなどで用いられる集線装置を指すことが多い。
電気通信や光通信では、機器間をケーブルで結んで通信する際に、複数のケーブルを接続して相互に通信できるようにする集線装置、中継装置のことをハブという。用途や通信方式の違いにより「イーサネットハブ」「USBハブ」など様々な種類がある。
ネットワークハブ
有線LAN(構内ネットワーク)の標準であるイーサネット(Ethernet)では、各機器からケーブルをハブに接続し、ハブが信号の中継・転送を行うことによって機器間の通信を行う。このような接続形態を「スター型ネットワーク」という。
ハブには銅線ケーブル(UTPケーブル)を差し込むためのRJ45ポートや光ファイバーケーブルを差し込むための光ポートが並んでおり、各機器から通じるケーブルを接続する。あるケーブルから流れてきた信号を他のケーブルに流すことで相互に通信できるようにする。
単純に受信したすべての信号を増幅してすべてのケーブルに再送出するハブを「リピータハブ」(repeater hub)、信号からイーサネットフレームを復元し、宛先のMACアドレスを解析して関係するケーブルにだけ選択的に転送するハブを「スイッチングハブ」(switching hub)という。
現在ではスイッチングハブが一般的になったため、ハブと呼ばずに「ネットワークスイッチ」(network switch)「イーサネットスイッチ」(Ethernet switch)「LANスイッチ」(LAN switch)「L2スイッチ」(Layer 2 switch)あるいは単にスイッチと呼ぶことが多い。
USBハブ
コンピュータと周辺機器や携帯機器の接続に用いられるUSBでは、複数の機器からの接続を受け入れてコンピュータ側に一つのUSBケーブルで接続する集線装置を「USBハブ」という。コンピュータ側は一つのUSBポートで複数の機器を接続することができる。
コンピュータ側のUSBポートに接続するためのUSBケーブルと、数個のUSBポートを備えた小型の機器で、ポートの数だけUSB機器を接続し、コンピュータへ信号を中継する。液晶ディスプレイなどにUSBハブの機能が埋め込まれて提供される場合もある。
データハブ
情報システムやソフトウェアの分野では、システム間でやり取りするデータを集積・中継する専門のシステムを「データハブ」あるいは単にハブと呼ぶことがある。SOA(サービス指向アーキテクチャ)などで用いられるミドルウェアで、データの出し手からデータを受け取って保管し、そのデータを必要とする受け手へ引き渡す役割を果たす。
デイジーチェーン 【数珠繋ぎ】
三つ以上の機器をケーブルで繋いで通信する接続形態の一つで、前の機器に次の機器を「数珠繋ぎ」に連結していく方式。“daisy chain” とはヒナギクの花冠のことで、一般的な作り方では花同士が茎で連結されているように見えるためこのように呼ばれる。
大本の機器に1台目の装置を繋ぎ、2台目の装置を1台目に繋ぎ、3台目を2台目に繋ぎ…といった具合に、末端の装置に別の装置を繋ぐ形で装置を連結していく。データや信号は装置間をバケツリレー式に次々転送されて目的の装置まで運ばれる。
中心となる集線装置にすべての機器を繋ぐスター型の配線に比べ、多数のコネクタを備えた機器が不要で、各装置に二つのコネクタがあれば多数の機器を連結できる。ただし、一方の端から反対側の端まで一筆書きに配線しなければならないため、機器の配置や移動の自由は大きく制約される。
また、一本の伝送路をすべての機器で共有するため、データの送受信頻度や量の多い機器や用途では台数が増えると極端に性能が低下することがある。台数に応じて末端までの信号線の長さや電気的な接点の数も増えていくため、信号の減衰や歪みなどが問題となる場合もある。際限なく機器を増やすことはできず、接続規格によって連結できる台数に上限が設けられている。
ターミネータ 【終端抵抗】
コンピュータの周辺機器などのコネクタやケーブルに取り付ける終端装置。信号が終端で反射して伝送路内の状態を乱すのを防止する。
主に数珠つなぎ(デイジーチェーン)型の接続形態で各機器を繋ぐ通信方式で用いられる装置や器具で、末尾に接続された機器の空いている側のコネクタやケーブル末端などに取り付ける。内部には抵抗があり、信号が届くとエネルギーを消尽して反射が起きないようにする。
周辺機器の接続規格として一般的だったSCSIや、LAN標準のイーサネット(Ethernet)の初期の規格にあった10BASE2や10BASE5で用いられる器具が有名だった。SCSI機器も後期にはターミネータ内蔵型の機器が増え単体の器具としては用いられなくなり、そのうちにSCSI自体が廃れていった。
USBなど現代の接続規格の多くでは(単体の)ターミネーターがなくても良好に動作するようあらかじめ設計されているため、利用者がその存在を意識することはなくなった。ただし、USBではコンピュータ本体の空いているUSB端子から電磁ノイズが生じるのを防止する器具のことをUSBターミネーターということがある。
DMA 【Direct Memory Access】
コンピュータシステム内でのデータ転送方式の一つ。CPUを介さずに周辺機器やメインメモリ(RAM)などの間で直接データ転送を行う方式。
DMAがない場合、システム内のすべてのデータ転送はCPUが転送元からデータを読み込み、転送先に書き込むという処理を行う必要があるが、DMAに対応したシステムでは、CPUはチップセットなどにある専用のコントローラに指示を出し、コントローラがデータの読み書きを行う。
これにより、CPUが各機器の動作に比べ低速の場合(DMAが導入された当初)、負荷を専用のチップに分担させることでCPUの負荷を軽減してシステム全体の性能を向上させることができ、CPUが各機器よりはるかに高速な場合(現代)、CPUが機器の応答を待たずに処理を進めることができる。
DMAコントローラ (DMAC:DMA Controller)
DMA転送の制御を行う専用のICチップ。コンピュータのマザーボードなどに搭載され、CPUやメモリ、周辺機器(拡張バス)などに接続されている。CPUに代わってデータ伝送の制御を行う。通常は一つのチップで同時に複数の伝送を制御できるようになっている。
DMAチャネル (DMA channel)
DMA転送において各装置がDMAコントローラに対して転送を要求するために用いる通信経路のこと。通常、コントローラチップは複数の伝送を同時に制御できるようになっており、2個、4個、8個といった数のチャネルを有している。
各装置はこの中から一つを占有してデータ伝送を行う。伝送が終わるとチャネルは解放され、他の装置が使用できるようになる。チャネルの識別や指定は0から始まる通し番号で行われることが多く、これをチャネル番号という。
PIOモード 【Programmed I/O】
コンピュータ本体とハードディスクなどのストレージ(外部記憶装置)を繋ぐ「ATA」(AT Attachment)インターフェースで利用される転送方式の一つで、データ転送をCPUが管理する方式。
ATA規格は2000年代初頭までパソコンのストレージ接続方式として標準的に用いられていた規格で、プログラム制御方式は初期のATA規格で規定された通信方式である。周辺機器とメインメモリの間のデータ転送をCPUが制御する仕組みで、基本的にすべてのATA機器はプログラム制御方式による転送に対応している。
最高転送速度が3.3MB/s(メガバイト毎秒)の「PIO Mode 0」、5.2MB/sの「PIO Mode 1」、8.3MB/sの「PIO Mode 2」、11.1MB/sの「PIO Mode 3」、16.7MB/sの「PIO Mode 4」の5つの動作モードが規定されている。
後にCPUを介さずに装置とメモリの間で直にデータを転送する「DMA」(Direct Memory Access:ダイレクトメモリアクセス)方式が開発され、プログラム制御方式よりもCPUの負荷が少なく高速に転送できるため、ATA規格の終盤にはそちらの方が一般的となった。
DMAを利用する場合でも、通信開始時に機器間で通信方式やモードの調整(ネゴシエート)を行うための通信にプログラム制御方式が利用されるほか、何らかの理由でDMAを利用できない状況に陥った際には自動的にプログラム制御方式に切り替えて動作することがある。
デバイスドライバ 【ドライバソフト】
コンピュータ内部に装着された装置や、外部に接続した機器などのハードウェアを制御・操作するためのソフトウェア。OSの一部として取り込まれて一体的に動作する。
オペレーティングシステム(OS)がハードウェアを制御するための橋渡しを行なうプログラムで、利用者が直接操作することは稀で、OSに組み込まれてその機能の一部として振舞うようにできている。単に「ドライバ」と呼ばれることも多い。
OSや各プログラムは定められた手順でデバイスドライバに処理を依頼する形を取ることで、それぞれが個別のハードウェアの制御仕様に直接対応する必要がなくなり、また、機種の違いに依らず同じ機能は同じ手順で利用することができるようになる。
個別ドライバと標準ドライバ
個々のハードウェアはそれぞれ固有の機能や制御仕様を持っているため、原則として機種ごとに対応するデバイスドライバを入手・導入しなければ使用・操作することはできない。
ただし、キーボードやマウスなど機種毎の機能や仕様の差異が小さい装置については業界団体や有力メーカーが主導して共通仕様が定められている場合があり、OSに付属する標準のドライバ(ジェネリックドライバなどと呼ばれる)で大半の機能を使用できることが多い。
ドライバの入手・導入
コンピュータ周辺機器はパッケージの一部として添付された記憶メディアに電子マニュアルやユーティリティソフトなどとともにデバイスドライバが同梱され、簡単な操作でOSに導入できるようになっていることが多い。
また、開発元のWebサイトでダウンロードできるようになっている場合もあるほか、Windows UpdateなどOSのソフトウェア更新プログラムを経由して入手できるようになっていることもある。
デバイスドライバはOSごとに開発する必要があるため、Windowsのような有力なOSではほとんどのメーカーがデバイスドライバを用意しているが、マイナーなOSだと物理的に装着できてもドライバが提供されず使用できない場合がある。
プラグアンドプレイ 【PnP】
「繋げばすぐに使える」という意味の英語表現で、コンピュータに周辺機器や拡張カードなどの装置を追加・接続する際に、システムが自動的に導入・設定を行い利用可能な状態にするもの。狭義には、Windowsにおけるそのような機能のこと。
かつてのコンピュータでは、周辺機器を追加・接続した後に、オペレーティングシステム(OS)へのデバイスドライバなど関連ソフトウェアの導入や、システムへの装置の情報の登録、I/OポートアドレスやIRQといった一般の利用者にはまったく意味不明な技術的な項目の設定などの作業を手動で行わなければならなかった。
プラグアンドプレイの仕組みが整備されたコンピュータや接続規格では、装置の種類や機種の自動検出、基本的な機能を利用するための制御方式の標準化・共通化(共通ドライバでの制御)、ドライバソフトのインターネット経由での自動取り寄せなどの機能を用いて、導入時の利用者の設定作業をほとんどあるいはまったく不要にしている。
現在では、PCI Express、SATA、USB、IEEE 1394など主要な接続規格および対応製品の多くがプラグアンドプレイの仕組みに対応しており、人手で設定作業を行うことはほとんどなくなった。手動設定がほとんど過去の遺物となっていくに従い、プラグアンドプレイという用語もほとんど使われなくなっている。
WindowsのPlug and Play
なお、狭義には、Windowsの機能および仕様の一つである「Plug and Play」を指すことがある。米マイクロソフト(Microsoft)社と米インテル(Intel)社が協力して策定した仕様で、Windows 95で導入された。
装置の追加時に他の装置と重複しないよう自動的に通信設定を行い、装置側に種類や型番を照会、システムへの登録や設定、ドライバソフトの導入などを自動的に行なってくれる。導入初期には手動での調整が必要になることもあったが、ハードウェア側の対応が広まるとほぼ自動で設定が可能となった。
後に、Microsoft社は同一ネットワーク内にあるコンピュータと情報機器などの間で接続・設定作業を自動化する「UPnP」(Universal Plug and Play)仕様を策定し、概念や実現する機能こそPlug and Play仕様と似ているが、技術的な詳細には共通する部分がまったくない別物である。
ホットスワップ 【活線挿抜】
機器の電源が入り稼動状態のまま、部品やケーブルなどを装着、交換、抜去すること。また、そのような仕組みやコネクタなどの構造のこと。
ホットプラグに対応していない機器や部品では、一旦機器の電源を落としてから部品の着脱を行わなければならないが、ホットプラグ対応の場合は機器を稼働させたまま部品の取り付けや取り外しを行うことができる。取り付けた部品は自動的に認識され、すぐに制御可能になる。
コンピュータの場合、本体やコネクタなどのハードウェアがホットプラグに対応し、かつ、ファームウェア(BIOS/UEFI)やオペレーティングシステム(OS)、制御用のソフトウェア(デバイスドライバなど)もホットプラグを前提とした設計や仕様になっている必要がある。
もともと、連続稼働や高い耐障害性が求められる企業向け情報システムの分野で、稼動状態のまま部品を交換したり、ケーブルを繋ぎ替えたり、故障した部品を取り外したりする必要から生まれた技術だが、近年はパソコンに周辺機器を接続する標準的な通信インターフェース(USB、IEEE 1394、SATA、PCI Expressなど)でもホットプラグ対応が当たり前となっている。
デバイス
機器、装置、道具という意味の英単語。ITの分野では、比較的単純な特定の機能・用途を持った部品や装置という意味で用いられることが多い。
コンピュータについてデバイスという場合は、筐体内に取り付けられた電子部品や接続された周辺機器のことを指すことが多い。CPU(マイクロプロセッサ)やメインメモリ(RAM)、ストレージ(外部記憶装置)、チップセットなどの各種の制御用IC、キーボード、マウス、プリンタ、ディスプレイなどが含まれる。
USB接続の周辺機器を総称して「USBデバイス」と呼んだり、マイクやスピーカー、イヤフォン、オーディオカードなど音声の入出力を行う装置を総称して「オーディオデバイス」と呼ぶように、様々な種類の装置や機器を総称する用法が多く見られる。
デバイスドライバ
コンピュータに取り付けたデバイスを動作させ、オペレーティングシステム(OS)から制御するには専用のソフトウェアが必要な場合が多く、これを「デバイスドライバ」(device driver)「ドライバソフト」などという。
現代の一般消費者が使用するOS製品では、主要なデバイスのドライバがあらかじめOSに同梱されていたり、USB機器のように汎用ドライバが整備されていたり、機器の初回接続時に自動的にインターネットを通じて開発元から取得して導入する仕組みが整備されている。
かつては装置ごとに一つ一つ利用者がドライバを導入する設定作業を行わなければならないのが一般的で、現在でも発売間もない最新の装置や、利用環境があまり整備されていないマイナーなジャンルの装置ではこの作業が必要になる場合がある。
他の用法
コンピュータ本体に付随する装置という意味の他に、「モバイルデバイス」「スマートデバイス」「マルチデバイス」「iOSデバイス」「Androidデバイス」のようにコンピュータ本体など単体で完結した機器や機械そのものを指す場合がある。主に携帯機器について用いられる。
また、電子工業などの産業分野、電子工学などの学問分野では、「半導体デバイス」(コンデンサやトランジスタなど)「光デバイス」(レンズや受光素子など)「マイクロデバイス」のように、装置を構成する微細な部品や素子などのことをデバイスと総称することがある。
なお、外来語としてのカナ表記は “device” という綴りに引き摺られて「デバイス」が定着しているが、本来の発音は「ディヴァイス」に近い。英語の原義は様々な種類の機器や装置などの全般を指す広い概念の言葉である。
入力装置 【入力機器】
コンピュータなどの機器本体にデータや情報、指示などを与えるための装置。一般的には人間が操作して入力を行う装置のことを指し、手指の動きや打鍵を電気信号に変換して伝達するキーボードやマウス、タッチパネルなどが該当する。
コンピュータの登場以前から、ボタンやレバー、ツマミ、ペダルなどの入力装置が機械の操作に用いられてきたが、情報機器ではこれらに加えてより複雑で汎用的な情報入力を実現するため、多数の操作要素や高度な機構を持つ装置が発明された。
例えば、文字が刻印された小さな鍵盤が敷き詰められたキーボード、手で位置や移動を入力するためのマウスなどのポインティングデバイス、画面表示と位置入力を兼用するタッチパネルなどが発達した。特殊なゴーグルなどを利用して視線の方向を検知し、画面上の位置を指示して入力する装置なども開発されている。
ビデオゲームでは、数種類のボタンやスティック、加速度センサーなどを手のひらサイズに収めたゲームコントローラ(ジョイパッド/ジョイスティック)が最も一般的な入力装置として用いられるほか、カメラやセンサーなどを組みわせて四肢の動きを検知するシステムが用いられたり、実在の機械を模した専用の装置(ハンドルやレバー、フットペダルを組み合わせたレースゲーム用筐体など)が用いられることもある。
広義には、人間の動作に限らず外界から情報を取り込んで電気信号やデジタルデータとしてコンピュータに伝達する機器全般が含まれる。マイクやイメージスキャナ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、バーコードリーダー、指紋センサー、X線撮影装置、超音波診断装置、光学式読み取り装置(OCRやOMR)などである。
ポインティングデバイス
コンピュータの入力装置の分類の一つで、画面上での入力位置や座標を指定する機器の総称。マウスやタッチパネル、ペンタブレット、タッチパッド、トラックボール、ジョイスティックなどの種類がある。
画面内で操作を行いたい位置を入力することができ、表示された要素を指定して処理や操作を指示することができる。キーボードなどから文字で指示を与える方式に比べ、直感的に操作でき、操作法に習熟していない状態でも指示を出しやすい。
マウスなど手元で操作する機器の場合、画面上で対応する現在位置を示す絵記号が表示され、これを「ポインタ」(pointer)あるいは「カーソル」(cursor)という。手元の機器を操作すると、その動きに応じて画面上のポインタが移動するため、指示したい場所にポインタを重ねて操作を行う。
タッチパネル(タッチスクリーン)の場合には画面に接触位置を検知するセンサーが内蔵されており、指やペンなどで画面に直接触れ、その位置に操作の指示を行なうことができる。画面上にはポインタなどは表示されないことが多い。
アイコンやウィンドウなどのグラフィック表示とポインティングデバイスによる位置入力を基本とする操作体系(ユーザーインターフェース)を「GUI」(Graphical User Interface)という。現代では一般の利用者が使うコンピュータ製品のほとんどがGUIを備えており、何らかの形でポインティングデバイスを用いる。
マウス
コンピュータの入力装置の一種で、平らな面の上で卵大の装置を動かし、移動量や方向を指示するもの。姿がネズミに似ていることからこのように呼ばれる。表側には一つから数個のボタンがあり、決定やキャンセルなどの指示を伝えるのに用いられる。
画面上には現在位置を示す小さな絵記号が表示され、これをマウスポインタ(mouse pointer)あるいはマウスカーソル(mouse cursor)という。面に接する裏側には移動を検知するセンサーが搭載されており、手で軽く押さえて盤上を滑らせると、その方向や速さを検出してコンピュータ本体に伝え、画面上のポインタが同じように移動する。利用者から見て手前側が画面下方向に、奥が上方向にそれぞれ対応している。
表側の指のかかる部分にボタンがあり、これを押して素早く離す動作(クリックという)を行うと、ポインタの指し示す位置にある対象物を選択・指定された状態にすることができる。ボタンが左右に分かれて2つある場合は、右ボタンと左ボタンで機能や役割が異なる。左右のボタンの間に回転する車輪状の部品(ホイールという)が組み込まれた製品もあり、これを回転させたり押し込む操作が利用できる。
最初に実用化されたのは内部にゴムなどでできたボールを仕込んだもので、メカニカルマウスあるいはボールマウスと呼ばれる。内部にはボールの回転を検知するセンサーがあり、裏側からボールの一部を露出させて、面上を動かすと連動してボールが転がる仕組みである。現在普及しているのは、裏面に光源と光センサーがあり、接地面からの反射光の変化を読み取って移動を検知する光学式マウス(オプティカルマウス/レーザーマウス)である。
マウスの感度
マウスの感度(センサーの分解能)を表す性能指標として「カウント数」という単位を用いることがある。物理的にどのくらいの距離動いたら1単位の移動としてコンピュータに伝達するかを表す値で、1インチあたりの検出回数を「dpi」(dot per inch/ドット毎インチ)という単位で表す。
例えば、分解能400dpi(400カウントとも表記される)の製品の場合、手で400分の1インチ移動させるとコンピュータ本体へ信号が送られ、対応する距離だけ画面上のポインタを移動させる。コンピュータ側の設定によるが、1カウントあたり1ピクセル移動させる設定の場合、1インチの移動が画面上で400ピクセルの移動に相当する。
感度が高ければ微妙な動きも検知することができるが、高すぎるとわずかな移動でポインタが大きく動いてしまい、かえって使いにくくなってしまうため、スイッチなどでカウント数を切り替えて好みの値に設定できるようになっている製品も多い。
タッチパネル 【タッチスクリーン】
指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う装置。表示装置(ディスプレイ)と入力装置が一体化したもので、指が触れた位置をセンサーで検知して、どの表示要素が指定されたかを特定し、対応する動作を行なう。
銀行のATMや駅の券売機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、カーナビゲーションシステムなどでよく利用されている。複数の個所に同時に触れたことを検知できるものを特に「マルチタッチパネル」「マルチタッチスクリーン」などと呼ぶことがある。
タッチパネルは画面上に見えているものに直接触れて指示できるため、直感的で簡単に操作できる点が最大のメリットである。反面、マウスなどに比べ細かい位置の指定が難しいため、表示要素をある程度大きくしたり間隔を空けて配置しなければならない点や、文字入力はキーボードより効率が悪い、ボタンと異なり打鍵感がないため正しく入力されているか分かりづらい、そのままでは視覚障害者が利用できない、といった難点もある。
タッチパネル 【タッチスクリーン】
指先や専用のペンで画面に触れることで入力を行う装置。表示装置(ディスプレイ)と入力装置が一体化したもので、指が触れた位置をセンサーで検知して、どの表示要素が指定されたかを特定し、対応する動作を行なう。
銀行のATMや駅の券売機、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機、携帯音楽プレーヤー、カーナビゲーションシステムなどでよく利用されている。複数の個所に同時に触れたことを検知できるものを特に「マルチタッチパネル」「マルチタッチスクリーン」などと呼ぶことがある。
タッチスクリーンは画面上に見えているものに直接触れて指示できるため、直感的で簡単に操作できる点が最大のメリットである。反面、マウスなどに比べ細かい位置の指定が難しいため、表示要素をある程度大きくしたり間隔を空けて配置しなければならない点や、文字入力はキーボードより効率が悪い、ボタンと異なり打鍵感がないため正しく入力されているか分かりづらい、そのままでは視覚障害者が利用できない、といった難点もある。
ジョイスティック
コンピュータの入力装置の一つで、鉛直方向に立てた棒状の装置(レバー)を傾けることで方向の指示を行うもの。位置を入力するポインティングデバイスの一種で、ビデオゲームの操作などによく使われる。
台座にレバーといくつかのボタンがついた形状で、レバーを握って前後左右に倒して方向を指示する。傾き具合によって強さ(移動の速さなど)を同時に指示できるものもある。手を離すと中央に戻るようにできていることが多い。
レバーや台座にはボタンが配置されている。レバー上のボタンは握った手を離さずに片手で押せる位置に配置されている。人差し指でトリガーのように押す前部のボタンや親指で押す頂上部のボタンなどである。
航空機の操縦桿を模して考案された装置で、産業機械などでは機械の操縦用に機器に固定的に設置されている場合もある。コンピュータ向けとしては、パソコンや家庭用ゲーム機にケーブルで接続する単体の装置として販売されている。アーケードゲームの筐体などに埋め込まれている場合もあり、左手側にレバーが、右手側にボタン群が配された形状になっているものが多い。
トラックボール 【トラックボールマウス】
コンピュータの入力装置の一つで、球が筐体に嵌めこまれ、上部が露出した構造の機器。球を指などで転がして操作する。画面上の位置を入力するポインティングデバイスの一種。
筐体内部のセンサーが球の転がる向きや速さを検知し、これに応じて画面上に表示されたカーソル(ポインタ)を移動させる。球の脇などにボタンがあり、これを押すことで対象や指示内容の決定などの動作を行なうことができる。
マウスと異なり装置そのものは固定された状態で利用するため、指先の動きだけで使用でき、狭い場所でも利用できる。手(指)以外の場所で触れて球を転がしても操作できるため、体が不自由な人が使用したり、特殊な状況で足による操作に用いることもある。
一般的な製品は机上に置いて手を覆い被せるように置く。球の位置や大きさによって掌で転がすタイプ、人差し指や中指で転がすタイプ、親指で転がすタイプに分かれる。コンピュータ側ではマウスと同じ方式の機器として認識されるため、左右のボタンやスクロールホイールなどマウスと共通のボタンなどが配されていることが多い。
デスクトップパソコンなどに繋いで利用する単体の機器のほかに、ノートパソコンなどの筐体の一部に埋め込まれているものや、マウスの一部がトラックボールになっている製品もある。球が小さすぎると正確な操作が難しくなるため、マウスほどの小型化は進まず、携帯機器での採用も縮小している。
デジタイザ 【ディジタイザ】
信号や人間の操作をデジタル化(digitize)し、データとしてコンピュータに取り込む装置。デジタル化する対象や方式により、まったく異なるいくつかの機器をこのように呼ぶ。
入力装置のデジタイザ
コンピュータの入力装置の一種で、板状の装置とその上をなぞるための手持ちの装置(カーソル)を用いて、図形や座標をデジタルデータとして送信する機器をデジタイザーという。主に1980年代に産業分野の業務用途で用いられた。
カーソルが板上のどの位置にあるかを検知するセンサーがあり、これを用いて2次元の座標データをコンピュータに入力することができる。板の上に紙に作図した図面などを固定して上からカーソルでなぞり、頂点や線などの情報を座標データの集合としてデジタル化するため装置であるためこのように呼ばれる。
機械や建物の設計図面などを読み取る必要から、板状の装置はA1版やA0版などの大きな用紙を丸ごと乗せられる自立する傾いた作業台のような形状となっている。カーソルはボタンの付いたルーペのような形状の装置が一般的だった。黎明期のビデオゲーム業界ではキャラクターなどのグラフィックス制作によく利用された。
デジタイザとペンタブレット
1990年代になると、机の上に置いて作業できる平置きの板とペン型のカーソルを組み合わせた小型の装置が開発され、その形状から「タブレットデジタイザー」などと呼ばれた。次第に従来の大型のデジタイザーは使われなくなり、タブレット型の製品は「ペンタブレット」あるいは略して「タブレット」と呼ばれるようになっていった。
主な用途も産業分野での図面入力から、絵画やイラストレーションの描画、グラフィックス製作へと移っていった。1990年代後半にはワコムが個人向けの低価格な装置を製品化したことから、パソコンの一般家庭への普及と共に個人用途での利用が広まっていった。
信号波形入力装置のデジタイザ
オシロスコープのように電気信号の波形を読み取り、デジタルデータとして取り込む装置をデジタイザーということがある。オシロスコープが信号をアナログのまま読み取って表示するのに対し、デジタイザーはA/Dコンバータ(ADC)を内蔵し、アナログ信号のサンプリング(標本化)と量子化を行なってデジタル化する。パソコンなどに繋いで入力装置として利用し、制御用のソフトウェアを用いて表示・操作する製品が一般的である。
ペンタブレット 【ペンタブ】
コンピュータの入力装置の一つで、位置を指示するためのペン型の装置と、位置を検出するための板状の装置を組み合わせたもの。ポインティングデバイスの一種。
板の上でペン先を触れて滑らせると、画面上の対応する場所に軌跡をそのまま入力することができる。ペイントソフトなどと組み合わせてイラストや絵画を描くのによく用いられる。
機種によっては押し付ける圧力の強さ(筆圧)、ペンの傾き角度などを入力できるものもあり、ソフトウェアが対応していれば筆圧に応じて線の太さや色の濃さが滑らかに変化するといった現実の画材に近い描画を行うことができる。
盤面が液晶ディスプレイになっており、画面上で直に位置を指示することができる製品は「液晶タブレット」(液タブ)と呼ばれる。ペンが触れた位置でそのまま描画が行われるため、紙に描くのと同じ感覚で細かい位置の調整が可能となる。
かつては単に「タブレット」と呼ばれることが多かったが、近年ではいわゆるタブレット端末のことをタブレットと呼ぶことが増えたため、省略せずに「ペンタブレット」とするか、略して「ペンタブ」と呼ぶことが多い。また、原型となった大型で高精度の製品は「デジタイザ」(digitizer)と呼ばれる。主にCADでの設計図面の入力、製図など業務用に利用される機器である。
キーボード 【KB】
指で押し込むことができる小さな部品(鍵やボタン)が規則正しく並んだ盤状の装置。楽器の場合は音を発することができ、コンピュータの入力装置の場合は文字や記号を入力したり指示や命令を発行することができる。
音楽の分野では、ピアノのように細長い鍵が横一列に並んだ楽器(の操作部分)を意味し、「鍵盤」とも呼ばれる。コンピュータの分野では、正方形や横長の小さなボタンが縦横に整然と並び、文字や記号、コンピュータへの指示などを送信するための入力装置のことを指す。
一般的な製品には100前後のキーが4~5段に渡って並んでおり、各キーの上面(キートップ)に入力される文字や機能などが記されている。文字や記号を入力するキーは小さな正方形になっていることが多く、特殊な機能を与えられたキーは横長になっていることが多い。キートップに指先などで触れて押し込むことで、そのキーが押されたという信号がコンピュータへ送信される。
文字キーにはアルファベットやアラビア数字、記号などが割り当てられており、日本国内で使用される装置にはかな文字が刻印されているものもある。一つのキーには通常複数の文字が割り当てられており、単に打鍵したときと、「Shift」キーを押しながら打鍵したとき、かな入力モードで打鍵したとき、などのように使い分けられる。
文字キー以外に特殊な文字の入力や機能の呼び出しを行うためのキーがあり、スペース(空白)文字を入力するスペースキー(横長のためスペースバーとも呼ばれる)や、タブ文字を入力するTabキー、選択のキャンセルなどを行うEscキー、現在地の文字の削除などを行なうDeleteキー(Delキー)、「↑」など矢印の刻印された方向キー(矢印キー)など様々な種類がある。
また、他のキーと組み合わせて(同時に押して)使用するためのキーは修飾キーと呼ばれ、別の文字を呼び出すShiftキーや、文字キーをソフトウェアの機能の呼び出しに用いるCtrlキー(Controlキー)やAltキーなどがある。WindowsパソコンにしかないWindowsキーやMacにしかないCommandキーなど、機種固有の特殊なキーもある。
キーの並び方にはいくつかの標準があり、アルファベットの配列は「QWERTY」と呼ばれる並べ方が標準的に用いられる。パソコン向けにはこれに記号や特殊キーを追加した101型(英語圏向け)や、さらに日本語入力用のキーを追加した106型や109型などの規格がよく用いられる。かな文字の配列の標準としてはJIS配列や親指シフト配列(NICOLA配列)などがよく知られている。
マイク 【マイクロフォン】
周囲の空間を伝わる音を電気信号に変換する装置。空気の振動である音波を振動板などで受け、連続的な電圧の変化などとして出力する。端子などでは “mic” の略号で示されることもある。
最も基本的な音響機材の一つで、音を電気信号として取り出し、他の機器に伝送したり媒体に記録できるようにする。音を電気に変換する原理の違いにより、ダイナミックマイク、コンデンサーマイク、リボンマイクなどに分類され、それぞれ特性や用途が異なる。
録音や放送などのために用いる単体の機器の他に、電話やインターホンなどの一部としても組み込まれ、多くの人が意識せず日常的に使用している。イヤホンと一体化した装置は「イヤホンマイク」、ヘッドホンと一体化した装置は「ヘッドセット」と呼ばれる。
一般的なスマートフォンやノートパソコンは音声入力装置が本体の機能として内蔵されていることが多く、マイク専用の外部入力端子は用意されていないが、設定によりイヤホン用の外部出力端子の機能を切り替えてマイク入力に用いることができる場合がある。デスクトップパソコンなどではスピーカー出力用などと並んでマイク入力用の端子(ステレオミニプラグ)が設けられていることが多い。
イメージスキャナ
紙面など平面的な対象物の表面を読み取って画像データとしてコンピュータなどに取り込む装置。書類や写真、図版などを画像としてコンピュータに入力することができる。
コンピュータの入力装置の一種で、原稿面に光学ヘッドをかざして光源から光を当て、反射光を光学センサーで読み取って表面の様子を電気信号に変換する。ヘッドは微細な光源とセンサーが一列に並んだ細長い形状が多く、これを原稿面に沿って上から下に走査して全体の画像を得る。
読み取った画像は点の集まりとして表現され、どのくらい細かく画像を読み取るかの性能指標として「ppi」(pixel per inch:ピクセル毎インチ)や「dpi」(dot per inch:ドット毎インチ)が使われる。200dpiなら対象面の長さ1インチを200の点の集まりに分解して読み取る。この値が高いほど、原画に近い精細な画像が得られる。
種類
コンピュータの周辺機器として最も一般的なのは、平たい原稿面に紙面を伏せて置き、下から光学ヘッドを動かして読み取る「フラットベッドスキャナ」(flatbed scanner)である。近年ではプリンタと一体化し、コピー機の機能も併せ持つ「プリンタ複合機」の形で販売されることが多い。
自動原稿送り装置(ADF)で複数枚の原稿を連続的に装置に差し入れて自動的にスキャンする方式の機器は「シートフィードスキャナ」(ADFスキャナ)あるいは「ドキュメントスキャナ」と呼ばれる。多数の原稿を読み取る必要があるオフィス用途などで用いられる。
また、POSシステムでバーコードなどを読み取る「バーコードスキャナ」(ハンディスキャナ)や、銀塩写真のフィルムを読み取る「フィルムスキャナ」、雑誌や書籍の紙面を読み取る「ブックスキャナ」あるいは「スタンドスキャナ」(書画カメラ)など、特定の用途や対象に特化した製品もある。
脆弱性スキャナ
コンピュータシステムにアクセスし、外部から悪用可能な保安上の弱点(脆弱性)を発見するソフトウェア。
ネットワーク上の指定されたホストに対して擬似的に様々な攻撃をしかけ、稼働中のソフトウェアの欠陥や、不適切なアクセス権限(パーミッション)が設定されたファイルやディレクトリなど、攻撃者に悪用される危険性のある問題点を洗い出す。
Webサーバを対象としたものやネットワーク機器を対象としたものなど、分野や対象により製品が分かれている。具体的にどこまで検査するかはソフトウェアの種類によって異なるが、一般に広く知られている弱点や設定の不備などについてはかなり発見することができる。
ただし、独自開発のプログラムや無名な製品の問題点や未知の脆弱性の検知は苦手で、検査の品質は熟練者による詳細な調査には及ばない。基本的な検査項目を低コストで素早く調べる補助的なツールとして用いるのが好ましいとされる。
OCR 【Optical Character Reader】
紙面を写した画像などを解析して、その中に含まれる文字に相当するパターンを検出し、書かれている内容を文字データとして取り出す装置やソフトウェアのこと。また、そのような方式による自動文字認識。
文字が印刷された紙などをイメージスキャナやカメラなどで撮影し、その中に含まれる線の形状などのパターンを解析して、人間の使う文字や数字、記号に相当するものを発見して文字データの並びとして出力する。
古くから郵便番号の読み取り装置などとして利用されてきたが、近年ではパソコンやスマートフォンなどでも利用できる精度の良い安価なソフトウェアも増え、書類や書籍の電子化、帳簿や伝票などの読み取りシステムなどに応用されている。
書籍のように印刷された紙面の文字は字形が美しく規則正しく並んでいるため認識しやすいが、かすれや汚れで不鮮明な箇所や、人間が手書きした文字などでは認識精度が下がる。また、漢字文化圏では文字の種類の多さや互いにそっくりな形の異なる文字の識別という独特の困難さがあり、アルファベット文化圏では筆記体の読み取りという困難さがある。
これに対し、択一式試験のマークシート式答案用紙の読み取りなどに用いられる、紙面の所定の位置が黒くマークされているか否かを光学的に読み取る装置やシステムのことを「OMR」(Optical Mark Reader:光学式マーク読取装置)という。
OMR 【Optical Mark Reader】
紙面からコンピュータに情報を自動入力する仕組みの一つで、紙面に光線を当てて反射光を読み取り、あらかじめ決められた位置に黒い小さなマークがあるかどうかを符号に変換していくもの。「光学式マーク認識」(Optical Mark Recognition)とも呼ばれ、一般には「マークシート」の呼称でよく知られる。
専用の用紙(マークシート用紙)には、あらかじめ決められた位置に長方形や楕円形などの小さな記入枠が並んでおり、回答者は鉛筆などの筆記具で中を塗りつぶす。黒インクでマークを印刷する場合もある。
OMR機器はこの用紙に光を当てて端から順に走査していき、反射光の強度からどの枠が塗りつぶされているかを読み取ってデータに置き換えていく。
手書きの回答を人力で入力するより遥かに高速かつ低コストで、OCR(光学式文字読み取り装置)による文字入力より正確で公平なため、資格試験や入学試験、アンケート調査、くじなどで幅広く実用化されている。
ただし、その原理上、並んだ選択肢から該当するものを選ぶ形式でしか回答できないため、入力できる情報の量や自由度は乏しい。例えば、任意の数字を記入できるようにしようとすると各桁ごとに0~9の10個のマーク枠を用意しなければならず、文字による自由記述は事実上できない。
デジタルカメラ 【デジカメ】
光に反応する半導体素子(イメージセンサー)を用いて外界からの光をレンズを通じて受光し、デジタルデータに変換して記憶媒体に記録する装置。現代ではスマートフォンなどにその機能が統合されており、撮影機能のみを持つ機器をこのように呼ぶ。
静止画像を撮影できるものを「デジタルスチルカメラ」(DSC:Digital Still Camera)、映像を録画できるものを「デジタルビデオカメラ」(DVC:Digital Video Camera)というが、単にデジタルカメラといった場合は前者を指すのが一般的である。
スチルカメラのうち、レンズ固定式で光学式ファインダーを省略するなど簡略な機構を採用し、小型・軽量で安価な機種を「コンパクトデジタルカメラ」(compact digital camera)あるいは略して「コンデジ」、レンズ交換式で光学式ファインダーを備え、高性能だが大型で高級な機種を「デジタル一眼レフカメラ」(DSLR:Digital Single Lens Reflex camera)あるいは略して「デジ一眼」という。
両者の中間で、レンズ交換式だが内部のミラーを省略してファインダーをデジタル化したものは「ミラーレス一眼カメラ」(MILC:Mirrorless Interchangeable-Lens camera)という。現在では単に「デジタル一眼」といった場合はミラーレス型を指すことが多い。
筐体背面(レンズの逆側)などに小型の液晶画面を備え、レンズの捉えた光景を確認しながら撮影したり、撮影した画像や映像をその場で表示・再生して確認することができる。画像はフラッシュメモリなどの記録メディアにデジタルデータとして記録する。
20世紀以前のフィルムカメラなどに比べ、コンピュータなど別の機器や記憶媒体に無損失で伝送・複製でき、フィルムのように経年劣化せず、気に入らないものはその場で消去して再び撮影することができる。また、媒体の容量によっては数万枚の静止画像や数十時間の映像を記録できるものもある。
20世紀末に実用化され、当初はパソコン周辺機器の一種として登場したが、パソコンの普及とも相まって次第に従来の銀塩式のフィルムカメラの代替品として認識されるようになり、2000年代中頃までにはほぼ従来式のカメラに取って代わった。
ちょうどその頃からカメラ機能を内蔵した携帯電話が登場しはじめ、2010年代になるとスマートフォンのカメラ機能が主流となった。コンパクトデジタルカメラはスマートフォンに置き換えられ消えつつあり、近年では単に「デジタルカメラ」と言えば一眼型を指すことが多い。
A/Dコンバータ 【ADC】
アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路。連続量であるアナログ信号の強度を一定時間ごとに記録(標本化/サンプリング)し、その値を一定のビット数の値で表現(量子化)する。
単位時間あたりの標本化の回数をサンプリング周波数(サンプリングレート)と呼び、毎回の標本データを表現する値のビット数を量子化ビット数という。これらの値が大きいほどアナログ波形をより正確にデジタルデータの集合として記録できるが、単位時間あたりの記録に必要なデータ量は増大する。
音声や光(画像・映像)、電気信号、電波などを電子機器に取り込んでデジタル処理するためには、センサーやアンテナなどが得たアナログ信号をA/Dコンバータでデジタルデータに変換する必要があり、様々な機器の内部に内蔵されている。
A/Dコンバータとは逆に、デジタル信号を元にアナログ信号を生成する電子回路のことをDAC(D/Aコンバータ、デジタルアナログ変換器)という。
出力装置 【アウトプットデバイス】
コンピュータが扱う情報を利用者に認識できる形式で提示する装置。ディスプレイやプリンタ、スピーカーなどが含まれる。
コンピュータシステムを構成する主要な装置の一つで、データを人間に認識できる形で外部に物理的に出力する装置である。光の像を投影して画面を映し出すディスプレイ(モニタ)やプロジェクタ、紙などに印字・印刷を行うプリンタやプロッタ、音声を発するスピーカーやイヤフォンなどが該当する。
主に人間の視覚や聴覚に働きかける原理の機器が多いが、振動で情報を知らせるバイブレーターや、ゲームコントローラなどで操作感(押しやすさ、回しやすさなど)を状況に応じて変化させるフォースフィードバック機構など、触覚を利用する装置もある。
映画館や体験型アミューズメント施設などに見られる、映像に合わせて霧や風を吹き出す装置なども広義には出力装置の一種と言える。未だ研究段階ながら、香り(触覚)や味(味覚)を動的に合成してコンピュータからの出力とする装置も構想されている。
これに対し、人間や環境、外部の機器から情報を取り込んでデータとしてコンピュータ本体に伝える装置を「入力装置」(input device:インプットデバイス)といい、キーボードやマウス、タッチパネル、ゲームコントローラ、マイク、イメージスキャナ、各種センサーなどが含まれる。
出力装置と入力装置を合わせて「入出力装置」(I/O device)と総称することもある。イヤホンマイクやプリンタ複合機(イメージスキャナとしても利用できるプリンタ)、振動機能付きコントローラなど、入出力の両方の機能を一体的に提供する装置もある。
液晶ディスプレイ 【LCD】
コンピュータの操作画面を映し出す画面表示装置(ディスプレイ装置)の一種で、物質の特殊な状態の一つである液晶の性質を利用して光を制御し、像を映し出すもの。テレビ受像機としての機能を持つものは「液晶テレビ」と呼ばれる。
薄い板状の形状で、陰極線管(ブラウン管)を用いる箱型のCRTディスプレイなど旧来の装置に比べ小型、軽量、薄型という特徴がある。このため、当初はノートパソコンなど携帯型の情報機器の表示装置として採用され、徐々に据え置き型のディスプレイ装置でも主流となった。携帯電話・スマートフォンやタブレット端末などもほとんどが筐体前面に液晶ディスプレイを備えている。
液晶パネルの構造
2枚のガラス板の間に液晶状態の特殊な物質を封入した構造になっており、部分的に電圧をかけることでその位置の液晶分子の向きを変え、光の透過率を制御する。
液晶物質そのものは発光しないため、背後に蛍光灯やLEDなどの光源(バックライト)を設置し、この光を遮ったり通したりすることで像を映し出す。背面光源ではなく明るい場所で反射光を利用する装置もある。
駆動回路による分類
液晶の駆動回路の構造として、縦横2方向に格子状に電極線を巡らし、両方向から一つずつを選んで電圧を加えることで交点の位置にある液晶を駆動する「単純マトリクス方式」(パッシブマトリクス方式)と、これに加えて画素ごとにアクティブ素子を配置してより確実に駆動させる「アクティブマトリクス方式」がある。現在ではほとんどが後者で、特にその中の一方式であるTFT方式が広く普及している。
駆動方式による分類
液晶の駆動方式としては、最も初期に実用化されたTN方式やその派生形のSTN方式、DSTN方式や、VA方式、IPS方式などがある。
TN方式は液晶分子を向きの異なる2枚の偏光板の間で90度ねじれるように並べ、電圧をかけるとねじれが失われて光を遮断する方式で、安価で低消費電力だが発色や視野角では劣る。VA方式は液晶分子を垂直に並べて光を遮り、電圧を加えると分子が水平になって光を通す方式で、コントラストが高い。IPS方式は水平に寝かせた分子の向きを電圧を加えて90度回転させる方式で、視野角や発色、応答速度など多くの面で優れているが、コストが高くコントラストが低い難点もある。
ノーマリーホワイトとノーマリーブラック
液晶パネルのうち、液晶に電圧がかかっていない時に透過率あるいは反射率が最大となり、白い画面になる構造のものを「ノーマリーホワイト」(normally white)という。TN方式の液晶パネルが該当する。液晶に電圧を加えると配列が変化して透過率が下がり、光を遮って暗い色を表示できる。画面全体に黒を表示するよりも白を表示したほうが消費電力が少なくなる。
一方、液晶に電圧がかかっていない時に透過率あるいは反射率が最小となり、黒い画面になる構造のものは「ノーマリーブラック」(normally black)という。VA方式やIPS方式の液晶パネルが該当する。液晶に電圧を加えると配列が変化して透過率が上がり、光を透過・反射して明るい色を表示できる。画面全体に白を表示するよりも黒を表示したほうが消費電力が少なくなる。
TFT液晶 【Thin Film Transistor LCD】
液晶パネルの方式の一つで、ガラス基板上に薄い膜状の微細なトランジスタを規則正しく並べたもの。現代ではほとんどの液晶パネルがこの方式である。
アクティブマトリクス駆動方式を採用しており、各画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)でできたアクティブ素子が配置されている。これを利用して画素の点灯や消灯などの制御を行う。
初期の液晶パネルによく採用されていたSTN液晶などの方式に比べ、視野角が広く、応答速度が素早いため動きの激しい映像を正確に表示でき、高コントラストで細かい中間階調を表現できるなど性能面で優れている。
1990年代までは先行する他方式に比べ相対的に高価だが高性能な方式として知られ、上位機種などでよく採用されていたが、製造コストの低減が進んで他方式を圧倒するようになり、現代ではほとんどの製品がTFT液晶となった。他方式と区別する意味でTFT液晶という用語を用いる場面は今ではほとんどなくなった。
TN型/IPS型/VA型
<$Img:TFT.png|right|>TFT液晶は内部の液晶分子の制御方式の違いにより、「TN型」「IPS型」「VA型」の3種類、およびその派生方式に分類される。
TN液晶(Twisted-Nematic)は、2枚の偏光板の間にねじれ構造を持つ液晶を封入し、電圧の強さでねじれの状態を制御してバックライトから透過する光の強さを変化させる。低コストで応答速度が速く、透過度が高いため電力消費も少ないが、色の再現性が低く視野角が狭い。
IPS液晶(In-Plane Switching)は、液晶分子に電圧をかけるとパネル面に水平な方向に回転する方式で、回転具合を制御して光の透過度を変化させる。色の再現性が高く視野角が広いが、高コストでコントラストが低く、応答速度が遅い。
VA液晶(Vertical Alignment)は、液晶分子をパネル面に垂直な向きで並べ、電圧をかけると平行になる方式で、傾き具合を制御して光の透過度を変化させる。応答速度が速くコントラストが高いが、視野角が狭く色の再現性が低い。
現在のところ、すべての特性で他の方式を凌駕する方式はなく、製品の用途や利用者のニーズによって使い分ける。例えば、動きの激しいゲームなどの用途では応答速度が良好なTNパネル、映像鑑賞ならコントラストが高く黒色がきちんと暗いVAパネル、画像や映像の編集、デザインなど制作用途なら発色の鮮やかなIPSパネルといった具合である。
STN液晶 【Super Twisted Nematic liquid crystal】
液晶パネルの駆動方式の一つで、2枚の偏光板の間にねじれ構造を持つ液晶を封入し、電圧の強さで90度を超える大きなねじれを生じさせて透過光の強さを変化させる方式。
TN液晶(ねじれネマティック液晶)の一種で、互いに向きがずれた2枚の偏光板を重ね合わせ、その間に液晶分子を満たす。分子は両偏光板の近くではそれぞれの偏光板と同じ方向を向いており、上下端で互いに180~260度回転した向きにあるが、中間では滑らかに角度が変化し、巻き簾の両端を持ってねじったような構造で配列する。
この状態で一方からバックライトの光を入射すると、ねじれに沿って偏光が回転し、両偏光板とも通り抜けることができる。偏光板に垂直な方向に電圧を加えていくと、液晶分子も垂直に立ち上がっていき、ねじれ構造が崩れ、次第に光を通さなくなっていく。完全に分子が立ち上がると偏光が回転しなくなり、反対側の偏光板を通過できなくなる。
初期のTN液晶から発展した方式で、単純マトリックス方式で制御する。後に登場したアクティブマトリクス方式のTFT液晶などに比べると廉価に製造できるが応答速度では劣る。1990年代に携帯型ゲーム機や初期のノートパソコンの液晶画面に採用されていた。現代のTN液晶はアクティブマトリクス方式で駆動する製品が一般的である。
有機ELディスプレイ 【OELD】
ある種の有機化合物を用いた層状の構造体に電圧をかけると発光する有機EL(エレクトロルミネッセンス)現象を応用した表示装置。コンピュータ用ディスプレイや薄型テレビ、スマートフォンなどの携帯情報機器の画面として利用されている。
ガラスなどでできた基板に有機物の発光体を蒸着し、微細な電極で電圧をかけることで発光させる。赤、青、緑の光の三原色を発する画素を規則正しく並べ、その組み合わせで色を表現する。
発色の方式には、それぞれの色を発する発光体を並べる方式と、白色光を発する発光体を敷き詰めてそれぞれの色のついたカラーフィルタを被せる方式などがある。
液晶ディスプレイなどと同じように、機器を薄い板状にすることができる薄型ディスプレイの一種で、液晶など他方式に比べ、低い消費電力で高い輝度・コントラストを得ることができ、視認性、応答速度、薄さ、軽さなどの点で優れた特性を持つ。
また、曲がった面や(プラスチックなどの)柔らかい面を表示面とすることができるなど、他方式では難しい用途や装置への応用も可能とされる。
一方、加工・製造の難しさから低コスト化や大画面化には問題を抱え、2000年代初頭の実用化からしばらくは普及が進まず、2010年代後半になりようやく薄型テレビやスマートフォンなどで液晶に代わり広く採用されるようになってきた。
無機ELディスプレイ (inorganic electroluminescent display)
特定の種類の無機化合物に電圧を加えると発行する無機EL現象を利用する表示装置を無機ELディスプレイという。有機ELディスプレイと合わせてELディスプレイと総称されることもある。
硫化亜鉛や銅などを組み合わせた無機化合物の発光体をガラス基板に蒸着し、100~200Vの交流電圧により点灯・消灯する。表示面に柔らかい素材を利用でき、大型化しやすいなどの特徴は有機ELと同様で、発光材料は有機ELより安価である。
しかし、輝度や電力効率が低く、色の再現性が悪くカラー表示が難しい、高電圧の交流電源が必要、寿命が短いなどの欠点が多く、現在まで広く普及するには至っていない。実用化された例としては医療機器のモニタやキャッシュレジスターのディスプレイ装置、スペースシャトルに搭載されたコンピュータ用のモニタなどがある。
有機発光ダイオード (OLED:Organic Light Emitting Diode)
発光ダイオードの一種で、発光材料に有機化合物を用いるもの。有機EL(有機エレクトロルミネッセンス)と呼ばれる現象を応用した発光素子の一種である。
電子輸送層、発光層、正孔輸送層を層状に重ねあわせた構造になっており、両端から電圧をかけると発光層内で電子と正孔が結合し、そのエネルギーが発光物質を励起させ発光する。この発光物質に有機化合物を用いるものがOLEDである。
液晶などに比べ薄型軽量で低消費電力、高速応答、高コントラストなどの特徴があり、テレビやコンピュータ用ディスプレイ、特殊用途の照明器具などに採用されている。OLEDを利用したディスプレイやテレビを「有機ELテレビ」「有機ELディスプレイ」(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)あるいは「OLEDテレビ」「OLEDディスプレイ」という。
エレクトロルミネッセンス現象 (EL:electroluminescence)
物質がエネルギーにより励起され起こるルミネッセンス(発光)現象の一つで、半導体などに電圧を加えて起きるもののこと。
蛍光体物質が励起源から受け取ったエネルギーを発光して放出することをルミネッセンス(luminescence)という。励起源の種類から、電界により励起するエレクトロルミネッセンス(EL)、光により励起するフォトルミネッセンス(PL:photoluminescence)、電子線により励起するカソードルミネッセンス(CL:cathodoluminescence)に分類される。
ELは発光原理から注入型ELと真性ELに分類されるが、狭義には真性ELのことをELと呼ぶ場合もある。注入型EL(分散型EL)は、電界を印加することにより、半導体内に注入された電子と正孔が再結合して発光する。発光ダイオードなどが注入型ELである。真性EL(薄膜型EL)は、電界により加速した電子が半導体内で発光中心に衝突、発光中心を励起されて発光する。薄膜EL素子などがこれに分類される。
薄膜EL素子は、厚さ0.5mm程度の発光板の面上で、均一・広範囲にわたる発光が可能な点が特徴である。液晶ディスプレイのバックライトなどに使われたほか、それ自体を発光体とするELディスプレイも実用化されている。発光体にジアミン類などの有機物を使うものを「有機EL」(organic EL)、硫化亜鉛などの無機物を使うものを「無機EL」(inorganic EL)という。
ヘッドマウントディスプレイ 【HMD】
ゴーグルやヘルメット、眼鏡のような形状の、頭部に装着して使用する表示装置。目を覆うように頭部に固定すると、眼前の小さな表示面にコンピュータなどから送られてきた像が投影され、見ることができる。
頭部装着型のディスプレイ装置で、装着者の視界全体を覆うように像を写すものと、映画館のように少し離れた場所に大画面の表示装置が現れたように見えるものがある。表示面をハーフミラーにしたり、外界を写す小さなビデオカメラを内蔵するなどして、眼前の外の光景が見えるようになっている製品もあり、「透過型ヘッドマウントディスプレイ」などと呼ばれる。
左右の表示面に少しずつ違った映像を表示することで立体感や奥行きの感じられる3次元的な表示を可能としたものや、身体の移動や頭部の動きをセンサーで検知して表示内容に反映させることで映像世界内への没入感を高めることができる製品もある。
人間の感覚器官に働きかけ現実感のある環境を人工的に作り出す技術を「VR」(Virtual Reality:バーチャルリアリティ/仮想現実/人工現実感)というが、コンピュータによりリアルタイムに生成した映像をHMDに表示するシステムはVRを実現する方式の中でも特に有望なものとして近年急激に発展し、ビデオゲームなどに応用されている。
インターレース 【インターレーススキャン】
画像や映像の記録、伝送、描画の方式の一つで、画素や走査線を上や左などの端から順番に取り扱うのではなく、一定間隔で飛び飛びに取り扱うこと。
アナログテレビ放送の放送信号などで用いられた最も単純なインタレースモードは走査線を上から奇数番目と偶数番目に分けて交互に走査するもので、一回の走査で画面の半分を描画することができる。単位時間あたりの走査回数を増やして動きを滑らかに表現できるが、常に画面の半分が残像となるため、細部が不鮮明なぼんやりした画質となる。
上下か左右のどちらかの並び順のみを対象とするインタレースモード方式を「1次元インタレースモード」、上下と左右のいずれの方向にもインタレースモードを行う方式を「2次元インタレースモード」という。一枚の画像の記録・伝送をn回の走査に分割して行うことを「n:1インタレースモード」と呼び、奇数番目と偶数番目の2回に分ける場合は「2:1インタレースモード」となる。
また、完全に描画された画像の全体像を「フレーム」、各走査によって得られる部分的な画像を「フィールド」という。2:1インタレースモードで毎秒60回走査を行う場合、得られる映像は60フィールド毎秒、30フレーム毎秒(fps:frames per second)となる。
映像だけでなく静止画の記録形式などでもインタレースモード方式は用いられ、画素の記録・描画を端から順にではなく飛び飛びに行うことで、低速の回線や大きなサイズの画像でも素早くぼんやりと全体像を伝えることができる。GIF形式では「インタレースモードGIF」(interlaced GIF)、PNG形式では「インタレースモードPNG」(interlaced PNG)、JPEG形式では「プログレッシブJPEG」(progressive JPEG)がそれぞれインタレースモード方式で画像データを格納する。
ノンインターレース (non-interlaced/順次走査/プログレッシブスキャン)
表示装置や動作原理や映像表示方式の一つで、画像を毎回上端などの端から順番に描画していく方式を「ノンインターレーススキャン」(non-interlaced scan)あるいは「プログレッシブスキャン」(progressive scan)という。日本語では順次走査と訳される。
装置や伝送路の性能が高く十分な走査回数が得られるならくっきりとした鮮明な映像を表示できるが、走査回数に制約がある場合にはインターレース方式のほうが滑らかな表示が得られる。
例えば、画面全体を毎秒60回書き換えられるならば、奇数番目と偶数番目のラインを交互に60回ずつインターレース走査(毎秒120フィールド)にするより、毎秒60フレームのノンインターレース走査の方がチラつきや輪郭のぼやけがを抑えることができる。しかし、毎秒15回しか書き換えられない環境では、毎秒15フレームのノンインターレースでは動きがカクついてしまい、毎秒30フィールドのインターレースのほうが自然な映像となる。
インターレース 【インターレーススキャン】
画像や映像の記録、伝送、描画の方式の一つで、画素や走査線を上や左などの端から順番に取り扱うのではなく、一定間隔で飛び飛びに取り扱うこと。
アナログテレビ放送の放送信号などで用いられた最も単純なノンインタレースモードは走査線を上から奇数番目と偶数番目に分けて交互に走査するもので、一回の走査で画面の半分を描画することができる。単位時間あたりの走査回数を増やして動きを滑らかに表現できるが、常に画面の半分が残像となるため、細部が不鮮明なぼんやりした画質となる。
上下か左右のどちらかの並び順のみを対象とするノンインタレースモード方式を「1次元ノンインタレースモード」、上下と左右のいずれの方向にもノンインタレースモードを行う方式を「2次元ノンインタレースモード」という。一枚の画像の記録・伝送をn回の走査に分割して行うことを「n:1ノンインタレースモード」と呼び、奇数番目と偶数番目の2回に分ける場合は「2:1ノンインタレースモード」となる。
また、完全に描画された画像の全体像を「フレーム」、各走査によって得られる部分的な画像を「フィールド」という。2:1ノンインタレースモードで毎秒60回走査を行う場合、得られる映像は60フィールド毎秒、30フレーム毎秒(fps:frames per second)となる。
映像だけでなく静止画の記録形式などでもノンインタレースモード方式は用いられ、画素の記録・描画を端から順にではなく飛び飛びに行うことで、低速の回線や大きなサイズの画像でも素早くぼんやりと全体像を伝えることができる。GIF形式では「ノンインタレースモードGIF」(interlaced GIF)、PNG形式では「ノンインタレースモードPNG」(interlaced PNG)、JPEG形式では「プログレッシブJPEG」(progressive JPEG)がそれぞれノンインタレースモード方式で画像データを格納する。
ノンインターレース (non-interlaced/順次走査/プログレッシブスキャン)
表示装置や動作原理や映像表示方式の一つで、画像を毎回上端などの端から順番に描画していく方式を「ノンインターレーススキャン」(non-interlaced scan)あるいは「プログレッシブスキャン」(progressive scan)という。日本語では順次走査と訳される。
装置や伝送路の性能が高く十分な走査回数が得られるならくっきりとした鮮明な映像を表示できるが、走査回数に制約がある場合にはインターレース方式のほうが滑らかな表示が得られる。
例えば、画面全体を毎秒60回書き換えられるならば、奇数番目と偶数番目のラインを交互に60回ずつインターレース走査(毎秒120フィールド)にするより、毎秒60フレームのノンインターレース走査の方がチラつきや輪郭のぼやけがを抑えることができる。しかし、毎秒15回しか書き換えられない環境では、毎秒15フレームのノンインターレースでは動きがカクついてしまい、毎秒30フィールドのインターレースのほうが自然な映像となる。
VGA 【Video Graphics Array】
IBM社がパソコン製品に搭載したグラフィック表示システムの名称。転じて、同システムで採用された640×480ピクセルの画素数や表示モード。また、同システムからディスプレイへアナログRGB信号を出力するコネクタ(端子)を指すこともある。
オリジナルのVGAは同社が1987年に発売したPS/2に初めて搭載したディスプレイ表示用の専用ICチップおよびその仕様を指し、256KBのVRAM(ビデオメモリ)を内蔵し最高で横640×縦480ピクセル、262,144色(RGB各6ビットの18ビット)から指定した16色を同時発色できる能力があった。
VGA回路と同等の表示モードは同社のパソコン製品や他社の互換製品(PC/AT互換機)に広く普及し、ビデオチップが新しい仕様に切り替わっていく中で標準の出力画素数の名称として使われ続けた。HVGA、WVGA、QVGA、SVGAなど、VGAを基準として縦横の長さを変えた派生仕様が数多く生み出されている。
VGAではコンピュータ本体からディスプレイへ信号を出力するためのコネクタや通信方式としてD-Sub15ピンのVGA端子(VGAコネクタ)を利用しており、パソコンにおける標準のディスプレイ出力端子として長年に渡って標準搭載されてきた。文脈によってはこのVGA端子を略してVGAと呼ぶことがある。
ハーフVGA (HVGA:Half VGA)
画面や画像、動画などの表示・構成画素数の通称の一つで、480×320、320×480、640×240ピクセルのいずれかのサイズのこと。アスペクト比(縦横比)はそれぞれ3:2、2:3、8:3。
VGA(640×480)の長辺または短辺を半分にしたサイズの総称であり、縦長の320×480が携帯電話や携帯情報端末の液晶画面などのサイズとしてよく用いられた。変則的な640×240は電子辞書やキーボード付きのポケットサイズのコンピュータなどで採用例がある。
SVGA 【Super Video Graphics Array】
画面や画像、動画などの表示・構成画素数の通称の一つで、800×600ピクセルのこと。画素数は480,000ピクセルでアスペクト比(縦横比)は4:3。VGA(640×480)を縦横に1.25倍に拡大したものであるためこのように呼ばれる。
本来はビデオカードなどの規格としてのVGA(640×480ピクセル、16色表示)の性能を向上させた規格の総称で、640×480ピクセルの256色表示や、800×600ピクセル、1024×768ピクセル、1280×1024ピクセルなどの表示画素数を含むものだった。このうち800×600ピクセルの表示モードを最もよく用いていたことから、この画素数のことを指してSVGAと呼ぶようになった。
WSVGA (Wide SVGA/ワイドSVGA)
SVGAから派生した画素数の通称の一つで、1024×600ピクセルあるいは1024×576ピクセルをWSVGAという。アスペクト比(縦横比)は前者が128:75、後者が16:9。
SVGA(800×600)の横幅を広げたワイド型のサイズであるためこのように呼ばれる。かつてカーナビなど車載ディスプレイ装置や超小型ノートパソコン(ネットブック)などによく見られたサイズである。
XGA 【eXtended Graphics Array】
IBM社がパソコン製品に搭載したグラフィック表示システムの名称。転じて、同システムで採用された1024×768ピクセルの画素数や表示モード。
オリジナルのXGAはVGA、SVGAに続いて1990年に発売したディスプレイ表示用の専用ICチップの規格で、標準では512KB(キロバイト)のVRAM(ビデオメモリ)を内蔵し、640×480ピクセル(VGAサイズ)なら262,144色(RGB各6ビットの18ビット)中256色同時発色、1024×768ピクセルなら16色同時発色が可能だった。VRAMを1MBに拡張すれば640×480で65,536色、1024×768で256色同時発色が可能。
現在では単に画面や画像、映像の画素数(XGAサイズ)を表す用語として用いられており、発色数などに関わらず1024×768ピクセルのものをXGAと呼んでいる。SXGA、WXGA、UXGA、QXGAなど、XGAを基準に縦横の長さを変えた派生仕様が数多く存在する。
電子ペーパー 【EPD】
電気的な原理を用いる表示装置のうち、紙に似た特性を持つもの。モノクロ表示の製品は実用化されており、電子書籍端末などに採用されている。
液晶ディスプレイなどに比べ、極めて薄型・軽量で、表示の維持にほとんどあるいはまったく電気を消費せず、外光の反射だけでくっきりとした精細な表示が可能という特徴がある。将来的には、丸めたり折り曲げたりできる柔軟性や製造コストなども「紙並み」とすることが構想されている。
様々な動作原理の装置が提唱されているが、製品として主流なのは米イー・インク(E Ink)社が開発・製造している電気泳動ディスプレイと呼ばれる方式である。この方式では表示面のフィルムの内側に大量のマイクロカプセルが敷き詰められており、カプセル内部は液体と白および黒の粒子で満たされている。
粒子の一色はプラス、もう一色はマイナスに帯電しており、背面の電極をプラスとして印加するとプラスの粒子が表面に、マイナスとして印加するとマイナスの粒子が表面に移動し、表示色が変化する。電圧を制御して中間階調を表現することもでき、モノクロ4~16階調程度の装置が製品化されている。
表示の変化には電気を使うが、変化後の表示状態は通電しなくても維持され、透過型液晶のような背面の光源(バックライト)も不要なため、極めて消費電力の少ない表示装置となっている。一度の充電で平均数週間使用できる電子書籍端末もある。ただし、電気泳動方式はカラー表示には対応しておらず、反応速度も0.5秒前後(画面の書き換え速度が最速で毎秒1~2回)と遅いため、動画の表示や素早い表示の変化を伴うユーザーインターフェースなどには対応できない。
ドットインパクトプリンタ 【ドットマトリクスプリンタ】
プリンタの印字方式の一つで、微細なピンを縦に並べた印字ヘッドを紙に重ねたインクリボンに叩きつけ、紙にインクを写すことで印刷する方式。
字の形に合わせて、着色したい位置のピンを押し出し、それ以外のピンを引っ込める。これをインクリボンを挟んで紙に強く打ち付けると、押し出されたピンの位置にあるリボンの表面からインクが紙に付着して印刷される。
一回の打刻で縦一列の点を印刷でき、ヘッドを一列分ずつ横に動かしながら数回から数十回繰り返し打刻することで一文字分の印刷ができる。これを紙幅の端から端まで繰り返して一行分が印刷される。
プリンタとして初めて実用化された方式で、1950年代から使われている。当初は7ピンのヘッドが用いられ、これを5回打刻して5×7ドットで英数字や記号を印刷することができた。16ピンや24ピンの製品が登場すると漢字など日本語文字の印字も可能になった。
動作音が大きく解像度も上げにくいため、インクジェットプリンタやレーザープリンタの高性能化・低価格化に伴い一般的な用途では使われなくなっていったが、複写用紙(カーボン紙)を使う伝票などの重ね印刷はこの方式でしかできないため、事務用途では現在でも使われている。
プリンタ
出力装置の一つで、コンピュータなどから文字や画像、図形などのデータを受け取り、紙などに印刷する装置。
用紙をセットするカセットやトレイ、紙送り装置、印字ヘッドなどの印字機構、インクやトナーなど着色材料を貯める容器などで構成され、用紙を一枚ずつ繰り出し、端から順に必要な箇所に着色して印刷を行う。
黒など単色の印刷しかできないものと、複数の原色の着色材料を使用してカラー印刷できるものがある。多くの機種はB5版やA4版の普通紙の印刷に対応しているが、B4版やA3版などの大きな用紙に印刷できるものや、はがきや写真用紙、CDやDVDなどのレーベル面に印刷できるものなどもある。
コンピュータとはUSBケーブルやネットワークケーブル(イーサネット:Ethernet)など有線で接続する場合と、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothなどで無線接続する場合がある。デジタルカメラやスマートフォンと接続して写真などを印刷できる機種もある。
近年では、筐体上面にイメージスキャナ(画像読み取り装置)を備え、紙面を読み取ってコンピュータに画像データとして入力したり、印刷機能と連動してコピー機(複写機)として利用できる「プリンタ複合機」(インクジェット方式のプリンタの場合はインクジェット複合機とも)が一般的になっている。
印字方式によりいくつかの種類に分類される。現在主流なのは、ヘッドの先端の微細なノズルからインクを噴射して印刷する「インクジェットプリンタ」(ink jet printer)と、感光体にレーザーを照射して微細な粉末を付着させ紙に転写する「レーザープリンタ」(laser printer)である。
他にも、ヘッドの先端のピンをインクのついたテープ(インクリボン)に打ち付けて紙に転写する「ドットインパクトプリンタ」(dot impact printer)、熱を加えると黒く変色する特殊な用紙に熱したヘッドを押し当てて印刷する「感熱式プリンタ」などがある。
シリアルプリンターの性能は主に解像度と印字速度で表される。印刷解像度はどれくらい微細な点で像を構成するかを1インチあたりの点の数を意味する「dpi」(dots per inch:ドット毎インチ)という単位で表すことが多い。
印字速度は、1分あたりに印刷できる平均枚数を意味する「ppm」(pages per minute:ページ毎分)や、印字面数を意味する「ipm」(images per minute:イメージ毎分)などの単位で表すことが多い。
ラインプリンタ (line printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一行ずつ印刷していくものをラインプリンタ(line printer)という。
帳票などの印刷を行う業務用の製品で主に用いられる方式で、一度の印字動作で用紙の横幅に相当する数の文字を同時に印刷することができる。印刷方式としては縦横に並んだ微細なピンをインクリボンに打ち付けて紙にインクを写し取るドットインパクト方式(インパクトプリンタ)が多い。
シリアルプリンタ (serial printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一文字ずつ印刷していくものをシリアルプリンタ(serial printer)という。
印字ヘッドを用紙上で左右に移動させ、端から一文字ずつ順番に印字していくプリンタのことを指す。よく用いられる印字方式としては、微細なピンでインクリボンを打ち付けるドットインパクト方式(インパクトプリンタ)や、微細なノズルからインクを噴射するインクジェット方式などがある。
ページプリンタ (page printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、一度に紙面一ページをまとめて印刷できるものをページプリンタ(page printer)という。一度の印刷動作で用紙全面を印刷できるプリンタで、ほとんどの製品は印刷方式としてコピー機(複写機)などと同じ乾式電子写真方式を用いる。
光源にレーザーを用いるものを「レーザープリンタ」(laser printer)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いるものを「LEDプリンタ」という。他の方式に比べ高速で高品質の印刷が可能だが、筐体が大きく高価なため、オフィスで利用する業務用の製品が多い。
プリンタ
出力装置の一つで、コンピュータなどから文字や画像、図形などのデータを受け取り、紙などに印刷する装置。
用紙をセットするカセットやトレイ、紙送り装置、印字ヘッドなどの印字機構、インクやトナーなど着色材料を貯める容器などで構成され、用紙を一枚ずつ繰り出し、端から順に必要な箇所に着色して印刷を行う。
黒など単色の印刷しかできないものと、複数の原色の着色材料を使用してカラー印刷できるものがある。多くの機種はB5版やA4版の普通紙の印刷に対応しているが、B4版やA3版などの大きな用紙に印刷できるものや、はがきや写真用紙、CDやDVDなどのレーベル面に印刷できるものなどもある。
コンピュータとはUSBケーブルやネットワークケーブル(イーサネット:Ethernet)など有線で接続する場合と、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothなどで無線接続する場合がある。デジタルカメラやスマートフォンと接続して写真などを印刷できる機種もある。
近年では、筐体上面にイメージスキャナ(画像読み取り装置)を備え、紙面を読み取ってコンピュータに画像データとして入力したり、印刷機能と連動してコピー機(複写機)として利用できる「プリンタ複合機」(インクジェット方式のプリンタの場合はインクジェット複合機とも)が一般的になっている。
印字方式によりいくつかの種類に分類される。現在主流なのは、ヘッドの先端の微細なノズルからインクを噴射して印刷する「インクジェットプリンタ」(ink jet printer)と、感光体にレーザーを照射して微細な粉末を付着させ紙に転写する「レーザープリンタ」(laser printer)である。
他にも、ヘッドの先端のピンをインクのついたテープ(インクリボン)に打ち付けて紙に転写する「ドットインパクトプリンタ」(dot impact printer)、熱を加えると黒く変色する特殊な用紙に熱したヘッドを押し当てて印刷する「感熱式プリンタ」などがある。
ラインプリンターの性能は主に解像度と印字速度で表される。印刷解像度はどれくらい微細な点で像を構成するかを1インチあたりの点の数を意味する「dpi」(dots per inch:ドット毎インチ)という単位で表すことが多い。
印字速度は、1分あたりに印刷できる平均枚数を意味する「ppm」(pages per minute:ページ毎分)や、印字面数を意味する「ipm」(images per minute:イメージ毎分)などの単位で表すことが多い。
ラインプリンタ (line printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一行ずつ印刷していくものをラインプリンタ(line printer)という。
帳票などの印刷を行う業務用の製品で主に用いられる方式で、一度の印字動作で用紙の横幅に相当する数の文字を同時に印刷することができる。印刷方式としては縦横に並んだ微細なピンをインクリボンに打ち付けて紙にインクを写し取るドットインパクト方式(インパクトプリンタ)が多い。
シリアルプリンタ (serial printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一文字ずつ印刷していくものをシリアルプリンタ(serial printer)という。
印字ヘッドを用紙上で左右に移動させ、端から一文字ずつ順番に印字していくプリンタのことを指す。よく用いられる印字方式としては、微細なピンでインクリボンを打ち付けるドットインパクト方式(インパクトプリンタ)や、微細なノズルからインクを噴射するインクジェット方式などがある。
ページプリンタ (page printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、一度に紙面一ページをまとめて印刷できるものをページプリンタ(page printer)という。一度の印刷動作で用紙全面を印刷できるプリンタで、ほとんどの製品は印刷方式としてコピー機(複写機)などと同じ乾式電子写真方式を用いる。
光源にレーザーを用いるものを「レーザープリンタ」(laser printer)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いるものを「LEDプリンタ」という。他の方式に比べ高速で高品質の印刷が可能だが、筐体が大きく高価なため、オフィスで利用する業務用の製品が多い。
プリンタ
出力装置の一つで、コンピュータなどから文字や画像、図形などのデータを受け取り、紙などに印刷する装置。
用紙をセットするカセットやトレイ、紙送り装置、印字ヘッドなどの印字機構、インクやトナーなど着色材料を貯める容器などで構成され、用紙を一枚ずつ繰り出し、端から順に必要な箇所に着色して印刷を行う。
黒など単色の印刷しかできないものと、複数の原色の着色材料を使用してカラー印刷できるものがある。多くの機種はB5版やA4版の普通紙の印刷に対応しているが、B4版やA3版などの大きな用紙に印刷できるものや、はがきや写真用紙、CDやDVDなどのレーベル面に印刷できるものなどもある。
コンピュータとはUSBケーブルやネットワークケーブル(イーサネット:Ethernet)など有線で接続する場合と、無線LAN(Wi-Fi)やBluetoothなどで無線接続する場合がある。デジタルカメラやスマートフォンと接続して写真などを印刷できる機種もある。
近年では、筐体上面にイメージスキャナ(画像読み取り装置)を備え、紙面を読み取ってコンピュータに画像データとして入力したり、印刷機能と連動してコピー機(複写機)として利用できる「プリンタ複合機」(インクジェット方式のプリンタの場合はインクジェット複合機とも)が一般的になっている。
印字方式によりいくつかの種類に分類される。現在主流なのは、ヘッドの先端の微細なノズルからインクを噴射して印刷する「インクジェットプリンタ」(ink jet printer)と、感光体にレーザーを照射して微細な粉末を付着させ紙に転写する「レーザープリンタ」(laser printer)である。
他にも、ヘッドの先端のピンをインクのついたテープ(インクリボン)に打ち付けて紙に転写する「ドットインパクトプリンタ」(dot impact printer)、熱を加えると黒く変色する特殊な用紙に熱したヘッドを押し当てて印刷する「感熱式プリンタ」などがある。
ページプリンターの性能は主に解像度と印字速度で表される。印刷解像度はどれくらい微細な点で像を構成するかを1インチあたりの点の数を意味する「dpi」(dots per inch:ドット毎インチ)という単位で表すことが多い。
印字速度は、1分あたりに印刷できる平均枚数を意味する「ppm」(pages per minute:ページ毎分)や、印字面数を意味する「ipm」(images per minute:イメージ毎分)などの単位で表すことが多い。
ラインプリンタ (line printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一行ずつ印刷していくものをラインプリンタ(line printer)という。
帳票などの印刷を行う業務用の製品で主に用いられる方式で、一度の印字動作で用紙の横幅に相当する数の文字を同時に印刷することができる。印刷方式としては縦横に並んだ微細なピンをインクリボンに打ち付けて紙にインクを写し取るドットインパクト方式(インパクトプリンタ)が多い。
シリアルプリンタ (serial printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、文字を一文字ずつ印刷していくものをシリアルプリンタ(serial printer)という。
印字ヘッドを用紙上で左右に移動させ、端から一文字ずつ順番に印字していくプリンタのことを指す。よく用いられる印字方式としては、微細なピンでインクリボンを打ち付けるドットインパクト方式(インパクトプリンタ)や、微細なノズルからインクを噴射するインクジェット方式などがある。
ページプリンタ (page printer)
プリンタの印字動作の違いによる分類の一つで、一度に紙面一ページをまとめて印刷できるものをページプリンタ(page printer)という。一度の印刷動作で用紙全面を印刷できるプリンタで、ほとんどの製品は印刷方式としてコピー機(複写機)などと同じ乾式電子写真方式を用いる。
光源にレーザーを用いるものを「レーザープリンタ」(laser printer)、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を用いるものを「LEDプリンタ」という。他の方式に比べ高速で高品質の印刷が可能だが、筐体が大きく高価なため、オフィスで利用する業務用の製品が多い。
レーザープリンタ 【LBP】
コンピュータなどに接続して印刷を行うプリンタ装置のうち、着色された微細な粉末(トナー)を感光体にレーザー光で付着させ、これを熱と圧力で印刷面に転写するもの。コピー機と同じ原理で印刷する。
コンピュータから送られてきた出力イメージに従って「ドラム」(drum)と呼ばれる筒状の感光体の表面にレーザー光を照射し、「トナー」(toner)と呼ばれる色付きの粉末を付着させる。ドラムを回転させながら印刷面に押し付け、同時に表面を熱してトナーを溶かすことにより、紙面にイメージを転写する。
これは電子写真式のコピー機(複写機)と同様の原理で、コピー機の機能を兼ねた製品も多い。モノクロ印刷には黒色のトナーが用いられるが、これに加えて3種類の原色(CMY)のトナーを組み合わせてカラー印刷できるようにした「カラーレーザープリンタ」もある。
インクジェットプリンタなど他方式に比べると高精細で高速に印刷でき、動作音も静かである。一方、機構が複雑で筐体が大きくて重く、発熱量や消費電力も大きく、本体価格やトナーやドラムなどの消耗品、交換部品の価格も高い。このため、印刷関連業界の業務用の製品や、大量の文書を印刷するオフィス向けのコピー機兼用の製品が主流となっている。
インクジェットプリンタ
プリンタ(印刷機)の種類の一つで、印刷面に近づけたノズルの先端から微細なインクの滴を噴射して着色する方式のもの。個人用、家庭用のプリンタとして最も一般的な方式。
紙などの印刷したい媒体を装置内で奥から少しずつ手前に繰り出し、その上を左右に動く印字ヘッドからインクを噴射して印刷を行う。初期には黒インクでモノクロ印刷のみ可能だったが、現在では黒に「色の三原色」に対応する水色(シアン)、薄紫(マゼンタ)、黄色(イエロー)の三色を組み合わせた「CMYK」によるフルカラー印刷ができる機種が一般的である。
レーザープリンタなどに比べると機構が簡素で安価であり、装置も小型・軽量で、機器によっては平らな面以外に印刷できるものがある。静粛性や印刷速度、印字品質、解像度などではレーザー方式などの方が優れるが、上位機種は品質面ではほとんど人の目には見分けがつかないほど高品位化が進んでいる。
初期の機種は単機能のプリンタだったが、現在は原稿読み取り台やネットワーク通信機能を備え、イメージスキャナやカラーコピー機などとしても使える「インクジェット複合機」が主流となっている。A3用紙やB4用紙への印刷や、原稿の連続読み取りなどに対応したオフィス向けの高機能・高性能な製品の普及も進んでいる。
インクを噴出する機構には主に二つの方式がある。一つは電圧を加えると変形する圧電素子(ピエゾ素子)でノズルを圧してインクを押し出す「ピエゾ方式」で、セイコーエプソンは「マッハジェット」と呼んでいる。もう一つはノズルをヒーターで加熱して気泡を生じさせてインクを押し出す「サーマル方式」で、キヤノンは「バブルジェット」と呼んでいる。
3Dプリンタ 【3次元プリンタ】
微細な材料を一層ずつ積み重ねて立体物を造形する装置。紙に印刷するプリンタのように、断面の形状に合わせて上から材料を吹き付けたり光線を照射したりすることからこのように呼ばれる。
材料には石膏や樹脂、金属の粉末や液体が使われ、熱やレーザー、紫外線、接着剤などの作用により固化させて層を形成する。積層面に均等に配置した材料に、断面形状に合わせて上部から光線などを当てて固化させる方式と、材料そのものを断面形状に合わせて上部から噴射する方式がある。
工業的な大量生産手法に比べると装置や原料が高額で製造に時間がかかるため、一般消費者向け製品の大量生産などには向かず、試作のような一品物、あるいは、多品種・少量をオンデマンドで素早く提供するような用途に適している。
精度を高めるほど装置が高額になり造形に時間がかかるが、3D設計データと原材料があれば即座に製作することができ、工具や工作機械、職人的な技能の熟達が不要という利点がある。従来の製造法が苦手とする様々な部材や材料の一体成型、複雑な内部構造の造形などは得意である。
データを伝送・配布すれば同じ物体をどこでも誰でも同じように作り出せる点も今までにない特徴で、模型などの分野では立体物のデータ販売(購入者が自らの3Dプリンタで造形する)など新たな試みも行われている。
1980年代初頭に発明され、当初は高額な製品がほとんどだったため一部の特殊な業務用途で用いられていたが、2010年頃から個人向けの低価格製品の登場などを受け様々な用途で使われるようになった。
製造業を中心に、製品や部品の試作、デザインモデルの製作、可動部の機構検討、治具・工具・交換部品の製造などに用いられている。建築分野で建築模型の製作に用いられたり、医療分野でCTスキャンやMRIの画像を元に患部を再現した医療用モデルの製作に用いられることもある。
プロッタ 【XYプロッタ】
コンピュータなどで作成した図形を紙面に印刷する装置。平面上を上下左右に自在に移動できるペンを備え、出力データに従って用紙の上に線画を描くことができる。主に設計図面の出力などに用いられた。
1950年代に登場した機器で、当時のプリンタは決まった大きさの文字しか印刷することができず、図形を印刷できる唯一の装置であった。当初は固定されたレールの上をペン先が左右に移動し、ローラーによって前後に繰り出される紙面の上に図形を描画した。後に紙面は固定してレール部分を前後に動かして描画する方式が一般的となった。
建築や機械設計のためにCADなどで製図した図面を出力するのが主な用途で、通常の書類よりも大判の用紙に対応した製品も多かった。複数色のペンを切り替えてカラー印刷する製品などもあったが、ペンで線を引くという動作原理のため線を組み合わせた図形しか印刷できず、面の塗りつぶしやグラデーション、自然画の印刷などができないという制約があった。
1980年代頃からプリンタの性能が飛躍的に向上し、文字だけでなく任意の図画を高精度に印刷できるようになったため、印刷装置としてのプロッターはインクジェットプリンタやレーザープリンタに取って代わられたが、ペン先の代わりにカッターを装着し、複雑な形状を正確に裁断するカッティングプロッタは今も見ることができる。
D/Aコンバータ 【DAC】
デジタル信号をアナログ信号に変換する電子回路。離散値で表現されたデジタル電気信号を入力すると、対応する連続量のアナログ信号を出力する。
コンピュータでは、メモリ上でデジタルデータとして管理されている画面の表示情報をアナログ信号に変換してディスプレイ装置に送出したり、音声データをアナログ信号としてスピーカーに送出したりといった用途で主に用いられている。
アナログ信号を何段階のデジタル値で近似するかを分解能と呼び、ビット単位で表す。8ビットなら256段階、10ビットなら1024段階で波形を表現できる。また、1秒間に何回変換を行うことができるかをサンプリング速度(サンプリングレート/サンプリング周波数)と呼び、ヘルツ(Hz)単位で表す。1MHzなら毎秒100万回、1GHzなら10億回の変換を行う。
いずれの値も大きければ大きいほど元の波形に近い滑らかなアナログ信号を再現できる。ただし、両者はいずれかを向上させるともう一方の性能を高めるのが難しいトレードオフの関係にあるため、用途に応じてどちらを重視するか考えて方式や製品の選択などを行う必要がある。
D/Aコンバータには原理が異なる複数の方式があり、得意な分野や用途が異なっている。よく知られるのは多数の抵抗を並べた抵抗ラダー型や抵抗ストリング型、キャパシタ(コンデンサ)を用いる容量アレイ型、オーバーサンプリングという手法を応用したΔΣ(デルタシグマ)型、電流の大きさを変化させて信号を出力する電流出力型などがある。
D/Aコンバータとは逆に、アナログ信号をデジタル信号に変換する電子回路のことを「A/Dコンバータ」(ADC:デジタルアナログ変換器)という。電波や電気信号の受信、写真や映像の撮影、音声の録音など、自然界の物理状態をデジタル値の列に変換してコンピュータで利用するために必要となる。
プロジェクタ
画像や映像を表示するディスプレイ装置の一つで、壁面などに設けられた平たい投影面に向かって光を照射して像を映し出す装置。大型スクリーンなどを用いて極めて大画面の表示を得ることができる。
コンピュータなどから受信した映像信号を筐体側面のレンズから強力な光線の束として照射する装置で、光を平たい面で受けると像を結んで表示内容が見える。ただの壁面でも表示できるが、布や樹脂などで作られた白色のスクリーン(幕)を用意することが多い。
映画の映写機と同じ動作原理であり、面自体が発光・発色して表示する液晶ディスプレイなどの装置に比べ低コストで巨大な表示面を得ることができる。大人数で同じ画面を見る必要がある会議や発表などの場でよく利用されるほか、機器の低価格化でホームシアターなどでの採用例も見られる。
主な種類
1970年代に実用化され、当初はテレビやモニターに用いられる「CRT」(陰極線管、ブラウン管)に表示された像をレンズで投影する「CRTプロジェクタ」が普及した。1990年代になると光源からの光を液晶パネルを通して投影する「液晶プロジェクタ」が実用化された。
2000年代には光源からの光を数百万の極微細な鏡(DMD:Digital Micromirror Device)を内蔵したマイクロチップに通して像を形成する「DLPプロジェクタ」(DLP:Digital Light Processing)が普及した。現在は液晶型とDLP型が主流となっている。高級機種には反射型液晶を内蔵した「LCOSプロジェクタ」(LCOS:Liquid Crystal On Silicon)も見られる。
ストレージ 【外部記憶装置】
コンピュータの主要な構成要素の一つで、データを永続的に記憶する装置。磁気ディスク(ハードディスクなど)や光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)、フラッシュメモリ装置(USBメモリ/メモリカード/SSDなど)、磁気テープなどがこれにあたる。
一般的には通電しなくても記憶内容が維持される記憶装置を指し、コンピュータが利用するプログラムやデータなどを長期間に渡って固定的に保存したり、他の機器へのデータの運搬や複製、配布などのために用いられる。
コンピュータ内には補助記憶装置とは別に、半導体記憶素子などでデータの記憶を行う主記憶装置(メインメモリ)が内蔵されており、利用者がプログラムを起動してデータの処理を行う際には補助記憶装置から必要なものをメモリに呼び出して使う。
同じコンピュータに搭載される装置同士で比較すると、補助記憶装置はメモリに比べて記憶容量が数桁(数十~数千倍)大きく、容量あたりのコストが数桁小さいが、読み書きに要する時間が数桁大きい。一般的な構成のコンピュータではメインメモリ容量の百倍から千倍程度の容量の固定内蔵ストレージを用意することが多い。
記録原理による分類
補助記憶装置装置は駆動装置(ドライブ)が記憶媒体(メディア)を操作して、記憶素子の物理状態に信号を対応付けて記録する。様々な動作原理の装置があり、主に磁気を利用するもの、レーザー光を利用するもの、電荷(半導体素子)を利用するものに分けられる。
磁気記録方式の補助記憶装置には磁気テープやハードディスク、フロッピーディスクなどがある。平たい媒体表面の磁性体の磁化状態を変化させて信号を記録する装置で、媒体を薄いテープ状にしてリールに巻き取った「磁気テープ」と、平たい円盤(ディスク)状にして中心軸(スピンドル)で高速に回転させる「磁気ディスク」に分かれる。
一昔前まで補助記憶装置の大半を占めていた方式で、現在でもパソコンに内蔵される固定補助記憶装置としてハードディスクがよく用いられる。磁気テープは容量あたりの単価が極めて安いという特徴から、現在でも企業や官公庁などの大規模なデータ保管に用いられることがある。
光学記録方式の補助記憶装置はCDやDVD、Blu-ray Discなどの光学ディスクで、信号を媒体表面の細かな凹凸や化学的な状態の変化として記録し、高速で回転させながらレーザー光を照射して反射光の変化を読み取る。
製造時にデータを記録する読み出し専用ディスクと利用時にデータの書き込みや上書きができる追記型や書き換え型のディスクがあり、前者は映像やソフトウェアなどのコンテンツの販売で、後者は映像の録画やデータのバックアップ、機器間のデータの運搬などでよく利用される。
近年では、読み出し専用メモリ(ROM)から発展した書き換え可能な不揮発メモリ(電源を落としても内容が消えない半導体メモリ)であるフラッシュメモリの大容量化、低価格化が進み、補助記憶装置装置として広く普及している。ハードディスクの代わりに固定内蔵ストレージとして用いられる「SSD」(Solid State Drive)、携帯機器の内蔵ストレージ、データの運搬に用いられるUSBメモリやメモリーカードなどがフラッシュメモリを応用した補助記憶装置である。
<$Fig:storagecomparison|center|true>記録メディア 【記憶媒体】
信号やデータを何らかの物理状態に置き換えて記録することができる装置や部品のこと。磁気ディスクや磁気テープ、光学ディスク、フラッシュメモリなどが該当し、文脈によっては単にメディア、媒体と呼ばれることもある。
コンピュータなどの情報機器でデータの永続的な保管に用いられるストレージ(外部記憶装置)は、データを何らかの微細な物理的パターンに置き換えて記録・保持するメディアと、これを駆動して読み書き操作を行なう「ドライブ」(drive)と呼ばれる装置からなる。
記憶媒体がディスク(円盤)やカセット、カートリッジ式になっており、ドライブ装置から着脱・交換可能(リムーバブル)になっている装置と、装置内部にメディアが封入・固定されていて入れ替えられない機器がある。フロッピーディスクや光学ディスク(CD/DVD/Blu-ray Discなど)などは前者、ハードディスクやSSD、USBメモリは後者に分類される。
ハードディスク 【HDD】
コンピュータなどの代表的なストレージ(外部記憶装置)の一つで、薄くて硬い円盤(ディスク)の表面に塗布した磁性体の磁化状態を変化させてデータを記録するもの。一台あたりの容量が大きく容量あたりの単価が安いため、パソコンなどに内蔵されるストレージとして標準的な存在となっている。
構造・原理
装置内にはガラスや金属でできたプラッタ(platter)と呼ばれる円盤型の記憶媒体が数枚封入されており、表面には磁性体が塗布されている。これを回転軸で高速(毎分数千回)で回転させ、アームの先端に取り付けられた磁気ヘッドを近接させる。特定の箇所の磁化状態を変化させることでデータを書き込むことができ、状態を読み取ることでデータを読み出すことができる。
プラッタの直径は主流の製品で3.5インチ(約8.9cm)だが、小型の機器向けに2.5インチや1インチの製品も存在する。一台の装置にプラッタが1~8枚程度備え付けられ、通常はその両面を記録に用いる。内部的な制御や区画分けはプラッタごとに行われるが、外部から見た記憶領域としては全体で一つとなる。
他媒体との比較
「ハードディスク」とは硬い円盤という意味だが、これはフロッピーディスクなどのようにプラッタの素材に柔らかいプラスチックフィルムなどを用いる装置と対比した表現である。フロッピーディスクなどは記憶媒体と駆動装置(ドライブ)が分離していてディスクだけを取り外して交換したり持ち運べるが、ハードディスクはディスクとドライブが一体化しているため、「ハードディスクドライブ」(HDD:Hard Disk Drive)とも呼ばれる。
磁気ディスクや光学ディスクなどの中では最も記録密度が高く、同じ世代で比較すると装置(媒体)一台あたりの記憶容量は飛び抜けて大きい。読み書きも高速で、パソコンやサーバなどのコンピュータ製品では基幹的な記憶媒体として広く普及している。ドライブ一体型なこともあり一台あたりの価格が高いことや、振動に弱いという難点もある。
SSDへの置き換え
装置の寸法や接続仕様をハードディスクに揃え、内部の記憶媒体をフラッシュメモリに置き換えた製品はSSD(Solid State Drive)と呼ばれ、ハードディスクの代替として近年急速に浸透している。
読み書き速度が桁違いに速く衝撃にも強いという長所があるが、半導体メモリのため価格が高く一台あたりの容量も少ないという欠点があった。近年では低価格化と記憶容量の向上が劇的に進み、従来のハードディスクの用途を置き換える形で普及が加速している。
接続方式
コンピュータ本体に内蔵されるハードディスクの場合、接続インターフェースとして初期にはIDE/ATA(パソコン向け)やSCSI(サーバ・ワークステーション向け)が、2000年代以降はSATA(Serial ATA)が主に用いられている。独自の筐体を持ちケーブルでコンピュータと繋ぐ外付けの装置もあり、USBやIEEE 1394、eSATAなどの規格で接続される。
SSD 【Solid State Drive】
外部記憶装置(ストレージ)の一つで、記憶媒体にフラッシュメモリを用いる固定型の装置。ハードディスクと同じようにコンピュータに接続し、プログラムやデータの永続的な保存に用いる。
ハードディスクなどの磁気ディスク装置は磁気的に、DVDなどの光学ディスク装置は光学的に信号の読み書きを行うが、SSDは半導体素子に電気的にデータの記録、読み出しを行うため、極めて高速に読み書きすることができる。
また、高速で回転する円盤(ディスク)やモーター、盤上を移動する読み書き装置(ヘッド)といった機械部品がないため、消費電力が少なく、耐衝撃性に優れ、振動や駆動音もなく、装置の形状を小型、薄型、軽量にすることができる。
ただし、フラッシュメモリは書き込みを行うごとに素子が劣化するため、同じ容量なら磁気ディスクより書き換え寿命が短い。この欠点を補うため、多くのSSD製品では、なるべく満遍なく各素子に書き込み動作が分散するよう制御装置が記録位置の選択を行う「ウェアレベリング」と呼ばれる制御を行っている。
また、現在のところ容量あたりの単価は磁気ディスクや光学ディスクよりフラッシュメモリのほうが高額なため、同世代の同じ容量の製品の中では割高となる。コンピュータにSSDとハードディスクを両方搭載し、システムファイルや頻繁にアクセスされるプログラムやデータをSSDに保存して、それ以外はハードディスクに保存するといった使い分けが行われることも多い。
筐体仕様(フォームファクタ)やコンピュータ本体との接続インターフェースは、当初は既存の機器と置き換えられるよう3.5インチ筐体やSATA(シリアルATA)などハードディスクと同じ規格が流用されたが、SSDの高速な読み書き性能や省スペース性を最大限活用すべく、mSATAやM.2、NVMe、SATA ExpressなどSSDにより適した規格も策定され、普及しつつある。
SLC/MLC/TLC/QLC
SSDの記憶媒体に用いられるNAND型フラッシュメモリのうち、一つの記憶素子(メモリセル)に2値(1ビット)のデータを格納する方式を「SLC」(Single Level Cell)、3値以上からなる多ビットのデータを格納する方式を「MLC」(Multi-Level Cell)という。
初期のMLC型は4値(2ビット)を記録する方式だったため、狭義にはこれを指してMLCと呼ぶ。これを3ビット以上と区別する場合は「DLC」(Double Level Cell)と呼ぶこともあるが、この呼称は普及していない。3ビット(8値)記録できるものは「TLC」(Triple Level Cell)、4ビット(16値)のものは「QLC」(Quad-Level Cell)、5ビット(32値)のものは「PLC」(Penta-Level Cell)と呼ばれる。
セルに記録できるビット数が少ない方が動作が高速で信頼性、耐久性(書き換え寿命)も高いが、容量あたりの単価が高くつく。SLC型は記録密度が低すぎるためほぼ廃止されており、多値記録セルで記録密度を高める方向に発展している。
メモリーカードリーダー/ライター
パソコンなどに接続してメモリーカードの読み書きを行う単体の装置。USBケーブルで本体に接続する製品が多い。機器内蔵のメモリーカードスロットもリーダー/ライターの一形態とする場合もある。
メモリーカードの挿入口のある手のひらサイズの小型の機器で、ケーブルの端子をパソコンなどに接続するとコンピュータ側からは光学ドライブなどと同じリムーバブルドライブ(記録メディアを着脱できる外部記憶装置)の一つに見える。
デスクトップパソコンにはメモリーカードスロットが存在しない機種が多いため、携帯機器との間のデータ交換の方法の一つとしてSDカードリーダーを利用することがある。また、かつては多数のメモリーカード規格が乱立していたため、様々なカードに対応するために複数規格に対応したリーダー/ライターが必要になることもあった。
近年はノートパソコンにSDメモリーカードのスロットが標準装備されることが増え、SDカード以外の規格もあまり使われなくなっている。メモリーカードをデータ記録媒体とする携帯機器などもWi-FiやUSB 3.0など高速な通信手段を備えていることが多く、以前ほどSDカードリーダーは必要とされなくなっている。
本来は読み出しを行う装置を「リーダー」(reader)、書き込みを行う装置を「ライター」(writer)というが、メモリーカードの場合、どちらか一方のみを行う装置はほとんど存在しないため、読み書きの両方が可能な製品を指して「メモリーカードリーダー」と略すことも多い。
CD-RWドライブ 【CD-RW drive】
コンピュータの記憶装置の一つで、光学ディスクのCDに記録されたデータの読み込みと、書き込みや消去が可能なCDであるCD-RW(CD Rewritable)への書き込みが可能な装置。一度だけ記録可能なCD-R(CD-Recordable)への書き込みにも対応している製品が多い。
CD-RWはCD(Compact Disc)の拡張仕様で定められて記録可能なCDで、利用者がディスクに繰り返しデータを書き込んだり消去したりできる。書き込み後は通常のCDと同じように様々な機器で内容を読み出すことができる。部分的な消去や上書きはできず、内容を全消去して初期化すると再書き込みが可能となる。
CD-R/RWドライブはCD全般の読み出しに加え、CD-RWへの書き込みや書き込み済みCD-RWの消去などに対応したドライブ装置で、CD-RWに音声データを記録して音楽CD(CD-DA)を作成したり、コンピュータの他の外部記憶装置に保存されているファイルなどのデータをコピーしたりすることができる。
コンピュータ本体とケーブルなどで接続する単体の機器と、コンピュータの筐体に内蔵して利用する機器がある。ノートパソコンなどの内蔵光学ドライブがCD-R/RWドライブになっている例もある。音楽CD再生時の読み出し速度(150KB/s)を「1倍速」とし、最高で48倍速(7.2MB/s)までの書き込み速度に対応する。
当初は高速で書き込みを行うとコンピュータ本体からの書き込みデータの転送が間に合わず書き込みに失敗することも多かったが、書き込みデータを蓄積してから記録を開始するエラー防止技術などが普及し、失敗することは少なくなった。
これに対し、CD-Rの記録のみに対応したドライブは「CD-Rドライブ」、CDの読み出しのみ可能なドライブは「CD-ROMドライブ」と呼ばれる。CD-R/RWドライブのほとんどはCD-Rドライブを兼ねているため「CD-R/RWドライブ」と表記されることもある。
ブルーレイドライブ 【Blu-ray Disc drive】
コンピュータのストレージ(外部記憶装置)として用いられる光学ディスクドライブ装置の一つで、Blu-ray Disc(BD)の再生や記録の機能を持つもの。
読み込みのみ対応の「BD-ROMドライブ」と、BD-Rへの書き込みに対応した「BD-Rドライブ」、BD-REの書き換えに対応した「BD-REドライブ」などの種類がある。通常、単に「ブルーレイドライブ」という場合はBD-RやBD-REへの書き込みや書き換えにも対応した製品を指す。
また、コンピュータの筐体に内蔵して開口部からディスクの出し入れを行う内蔵ドライブと、本体とはケーブルなどで接続して使用する外付けドライブがある。ほとんどの機種はCD/DVDの再生・記録にも対応した「ブルーレイコンボドライブ」だが、近年ではCDの対応を終了しDVDとBDのみの製品もある。
コンピュータの記憶媒体としてCDからDVDへの置き換えはスムーズに進み、DVD普及に伴ってほとんどの光学ドライブはCD対応のDVDドライブとなったが、DVDからBlu-ray Discへの置き換えはあまり進んでいない。機器単体の価格はブルーレイドライブの方が2倍から数倍高額だが、Blu-ray Discの利用が低迷しており希望する利用者が少ないため、現在でもDVDドライブとブルーレイドライブが市場で共存している。
テープドライブ 【テープデバイス】
主に業務用のコンピュータシステムなどで用いられるストレージ(外部記憶装置)の一種で、磁気テープカートリッジを装着してデータの読み書きを行う装置。
磁気テープは磁性体を塗布した細長いフィルムをリール(軸)に巻き付けた記憶媒体(記録メディア)で、民生用としては音声録音用のカセットテープや映像録画用のビデオテープがよく知られるが、コンピュータの記憶媒体としても1970年代頃までは最も広く普及していた。
磁気テープ装置は磁気テープへの読み書きを行うコンピュータの周辺機器で、筐体内にカートリッジを挿入して軸(リール)に固定し、軸を回転してテープを前後に繰り出すことで目的の位置の読み書きを行う。カートリッジの開口部から目的の部分を露出させて磁気ヘッドを近づけ、表面の磁化状態を読み取って記録された信号やデータを取り出したり、磁化状態を変化させて記録したりする。
磁気テープには様々な規格があり、それぞれ形状やサイズ、記録方式が異なるため、ドライブもそれぞれのテープに対応したものを利用する必要がある。業務用では主にDLTやLTOなどデータ記録用のテープが用いられるが、個人用コンピュータでは音声用テープカセットに信号を記録するドライブも利用された。
一般的なドライブではカートリッジの着脱は手作業で行うが、大量のテープを管理する用途に向けて、テープの保管庫とドライブ装置を一体化し、保管庫からの取り出しや収納とドライブへの着脱を完全に自動化した「テープライブラリ」と呼ばれるシステムも存在する。
1950年代のコンピュータ創成期から主要なストレージ装置として広く利用された。テープは先頭から順に読み書きするシーケンシャルアクセス(順次走査)しかできないため、1980年代以降は新たに考案された磁気ディスクや光学ディスクなどに主要ストレージの座を明け渡したが、記録密度が高くバイト単価が安いことから現在でも大規模データの長期保管などの用途で用いられる。
トラック
跡、形跡、足跡、線路、軌道、走路、小道、進路、道筋、手順、追跡する、監視する、など意味を持つ英単語。貨物自動車などを意味するトラックの方は英語では “truck” と綴る。
ディスク型メディアのトラック
磁気ディスクなど円盤(ディスク)状の記憶媒体(記録メディア)を用いる記憶装置では、記録位置の管理のために盤上を木の年輪のような等間隔の同心円で分割する。そのようにして区切られた同じ太さのドーナツ型(円環状)の領域のことをトラックという。光学ディスクでは外周から内周まで渦巻状に一本の繋がっており、一周分をトラックという。
隣接するトラックとの距離(トラックの幅)を「トラックピッチ」(track pitch)と呼び、これが小さいほどトラックの密度が大きく、より大容量となる。CDでは1.6μm(マイクロメートル)、DVDでは0.74μm、Blu-ray Discでは0.32μmとなっている。
トラックはさらに半径によって同角度毎に分割され、扇子型の「セクタ」(sector)に分割され、これが最小の記録単位となる。実用上は連続するセクタをいくつか連結した「クラスタ」(cluster)を単位に管理することが多い。
音楽CDのトラック
CD(コンパクトディスク)では、記録面上に渦巻状に配された記録領域の意味の他に、音楽CD(オーディオCD、CD-DA)に音声を曲単位で分けて収録するための記録単位のこともトラックという。記録データの開始を意味する「リードイン」(lead-in)という特殊なデータに続けて、音声データ本体、データ終了を表す「リードアウト」(lead-out)で構成される。再生機は音楽CDの内容をトラック単位で頭出しすることができ、選択・指定したトラックの音声を即座に再生することができる。
シリンダ 【シリンダー】
円筒、円柱という意味の英単語。磁気ディスク記憶装置の記録単位の一つで、複数のディスクの同じトラックをまとめた領域をシリンダという。
データの記録単位としてのシリンダは、同じ回転軸に等間隔に複数のディスク(装置内ではプラッタと呼ぶ)を重ね合わせた構造になっているハードディスクでよく用いられる記録単位である。
装置内の各プラッタは、木の年輪のように同心円状に分割された「トラック」(track)を一つの単位としてデータを記録する。この各トラックをプラッタをまたいで円筒状に束ねた集まりのことをシリンダと呼ぶ。各シリンダは最外周から内側に向かって割り当てられた通し番号(シリンダ番号)で識別される。
セクタ 【セクター】
扇形、部門、部分、区域などの意味をも英単語。対象全体を分類・分割したうちの個々の部分、組織内の部門、物理的に扇形の形状になっているものなどを指す。
ディスクセクタ
磁気ディスクや光学ディスクなど、コンピュータの記憶装置に用いられる円盤(ディスク)状の記憶媒体(記録メディア)における最小の記録単位を「ディスクセクター」(disk sector)あるいは略してセクターという。
ディスク型の媒体はまず、木の年輪のように一定間隔の同心円で分割されたドーナツ状の「トラック」(track)に分割される。トラックの内部は一定の角度ごとに半径によって区切られ、小さな扇子型の領域に分割される。これを「トラックセクタ」(track sector)あるいは略してセクターという。
媒体の種類やフォーマットにもよるが、一つのセクターあたりの記憶容量(セクターサイズ)は概ね512バイトから2048バイト(2KB)程度とすることが多い。実用上は連続するセクターをいくつか束ねたクラスタ(cluster)を一単位として管理する場合が多い。
かつては内周側も外周側も同じセクター数に分割するのが一般的だったが、外周の方が一周が長いため、外周側では記録密度が低くなる問題があった。現在では回転数の制御が高度になり、外周側をより多くのセクターに分割することで記録密度を高める方式が一般的になっている。
部門・区分などを表すセクター
一般の外来語としては、組織の内部を事業や業務の性質などで分類した「部門」(必ずしも組織に対応しない)のことや、社会における事業体の分類(公共セクター/民間セクター第三セクターなど)、産業や企業の分類(産業セクター)などの意味で用いられる。
なお、歴史的な経緯から、IT分野では3音以上の外来語で “-er” および “-or” 音や “-y” 音などで終わる場合の末尾の長音記号(伸ばし棒)を省く慣習があり、「セクタ」と末尾を伸ばさない表記が好まれる傾向にあるが、一般の外来語としては「セクター」と長音記号を付けるのが一般的である。
デフラグ 【デフラグメンテーション】
ハードディスクなどのストレージ装置(外部記憶装置)の中でファイルの内容を記録した領域を再配置し、各ファイルの記憶領域や空き領域がなるべく連続した状態にすること。また、そのような処理を行うソフトウェア(デフラグツール)。
ストレージ内の記憶領域は、ある決まった大きさ(通常は数キロバイト程度)の「セクタ」(sector)を単位に管理され、ファイルなどを保存する際には必要な容量だけ空いているセクタを集めてきて記録する。
使用開始当初はほとんどが空き領域のため、端から連続した領域に保存されていくが、ファイルの作成、追記、削除を繰り返していくに従って細かな空き領域が増え、大きなファイルを保存する際に少しずつ分割されて様々な領域にまたがって飛び飛びに記録されるようになる。
ハードディスクなど回転する円盤(ディスク)を利用した記憶装置はデータの配置が物理的に連続している時に最も高速に読み書きできるため、このようにファイルの保存領域や空き領域の断片化(フラグメンテーション)が進むと次第に性能が劣化する。同じ量のデータの読み書きにより多くのディスクの回転やヘッダの移動を要するため、そのまま使い続けると装置の負荷も大きくなるとされる。
デフラグメンテーションはこのような領域の断片化を解消するために行われる操作で、記録されたデータを端から順番に連続した並びになるよう再配置し、一つのファイルがなるべく少ない数の連続した領域に記録された状態になるよう再編する。また、記録済みの領域と空き領域を分離して広大な連続した空き容量を創出する。
デフラグメンテーションを行うソフトウェアは以前は独立したアプリケーションソフトとして開発・販売されることが多かったが、最近ではWindows標準機能の「ドライブの最適化とデフラグ」のように、オペレーティングシステム(OS)のストレージ管理機能の一つとして取り込まれることが多くなっている。
DTE 【Data Terminal Equipment】
データ通信回線の末端に接続される装置で、受信した信号を情報として利用者に提示したり、利用者が入力した情報を信号に変換して送信したりするもの。
データ通信を利用するコンピュータや利用者が直接操作する端末のことで、パソコンや入出力端末(ターミナル)、ホストコンピュータなどが該当する。
DTE速度
DTEとDCEの間の通信速度をDTE速度という。コンピュータとケーブルやコネクタで接続されたモデムやターミナルアダプタなどの間の速度を指す。
これに対し、公衆回線網をはさんだモデムなどの通信機器間の通信速度はDCE速度と呼ばれる。DTEはコンピュータにコネクタで直に接続されたり短いケーブルで通信するため、広域回線を経由するDCE速度よりはるかに高速になるのが一般的である。
CCU (Communication Control Unit/通信制御装置)
コンピュータなどの機器と通信回線の間で通信の制御を行う装置。コンピュータから受け取ったデータを回線を流れる信号に変換したり、逆に、信号からデータを組み立ててコンピュータに渡したり、誤り検出や誤り訂正などを行なう。
CCUの機能は末端側ではパソコンなどのDTEやモデムなどのDCEに内蔵され、単体の機器として提供されることは少ないが、多数の接続を受け入れるホストコンピュータなどでは本体の処理を肩代わりするためCCUを介して通信することがある。
イメージセンサ 【撮像素子】
小さな板状の電子部品の一つで、外界の光を取り込んで電気信号に変換するもの。通常は可視光を捕えるが、赤外線や紫外線などに反応する製品もある。
人間の目の網膜のような働きをするセンサーで、デジタルカメラの受光部などに内蔵されている。信号の読み出し方法などの違いによりいくつかの方式があり、CCDイメージセンサーやCMOSイメージセンサーがよく使われる。
撮像装置の表面には微細な半導体素子が縦横に隙間なく敷き詰められ、それぞれが感知した光の強度を電気信号として発信する。この信号を集めて再構成することでデジタル化された画像を得ることができる。実際の製品ではセンサーの手前に集光するためのレンズを装着することが多い。
素子の集積度は半導体プロセスの進化とともに高密度化が進み、より精細な画像を得ることができるようになっている。現在主流の製品では数cm角のサイズに縦横数千個ずつ、全体で数百万から一千万以上に及ぶ素子が並んでいる。
センサーの性能は受光面のサイズ(広さ)と画素数に大きく影響される。サイズには規格があり、デジタル一眼レフカメラなどの1型(13.2mm×8.8mm)、スマートフォンなどの1/2.3型(6.2mm×4.6mm)などがよく知られる。広いほど光を集めやすく高性能だが製造は難しくなり高価格となる。同じサイズなら画素数が大きいほど得られる画像は精細になるが、素子一つあたりの光量は減っていき画像が暗くなっていくというトレードオフの関係がある。
NIC 【Network Interface Card】
コンピュータなどの機器を構内ネットワーク(LAN)に接続するためのカード型の拡張装置。筐体背面や側面などに用意された拡張スロットなどに挿入して使用する。本体内蔵の装置を指す場合もある。
接続するネットワークの種類によって仕様やコネクタ形状などが異なるが、単に有線LANインタフェースカードといった場合は最も普及している「イーサネット」(Ethernet)に接続するためのコネクタ(RJ45端子)や通信用ICなどを内蔵した拡張カードのことを指す。
イーサネット規格は様々な世代や仕様に分かれており、同じRJ45ポートを備えていても対応している規格や通信速度は製品ごとに異なる。現在は100Mbpsで通信可能な100BASE-TXと1Gbpsで通信可能な1000BASE-Tに両対応した製品が主流となっている。
拡張カード以外にもUSBアダプタ型の製品などもあり、これらを総称して「ネットワークアダプタ」「LANアダプタ」「Ethernetアダプタ」などという。「有線LANインタフェースカード」をこの総称の意味で用いることもある。さらに、コンピュータの設定画面などでは無線LAN(Wi-Fi)に接続するための「Wi-Fiアダプタ」や、内蔵Wi-Fi接続機能も総称して有線LANインタフェースカードと呼ぶ場合がある。
かつてはコンピュータ本体にネットワーク機能が用意されておらず、拡張スロットなどに有線LANインタフェースカードを差し込んで機能を追加するのが一般的だったが、現代では有線あるいは無線(あるいは両方)のネットワーク通信機能が内蔵されている機種がほとんどで、単体の有線LANインタフェースカード製品を用いることは少ない。
本体内蔵型も含めたネットワーク機能の総称として用いる場合は、「NIC」を「Network Interface Controller」の略とする場合もある。また、物理コンピュータ内部にソフトウェアにより仮想的に構築した仮想マシン(VM)では、ソフトウェアで再現されたネットワーク接続機能を「仮想NIC」(vNIC)と呼ぶことがある。
無線LANカード 【wireless LAN card】
コンピュータなどの情報機器に差し込んで装着し、無線LAN(Wi-Fi)による通信機能を追加する小さなカード型の装置。
デスクトップ型やタワー型のコンピュータの場合は、筐体背面などにあるPCIバスやPCI Expressバスの拡張スロットに挿入する拡張カード(拡張ボード)の形になっている製品が多い。ノートパソコンの場合はWi-Fi機能はほぼ全機種に内蔵されており、カードで拡張する方式はほとんど用いられない。
かつては、ノートパソコンの筐体側面のカードスロットに挿入するPCカードやExpressCardなどの拡張カード型の製品や、デジタルカメラなどで利用できる、SDメモリーカードのスロットに挿入するタイプの製品も存在した。
無線LANルータ(Wi-Fiルータ)や無線LANアクセスポイント(Wi-Fiアクセスポイント)などとセットで販売されている製品では「無線LAN子機」「Wi-Fi子機」などと呼ばれることもあるが、これもカード型はほとんど姿を消しUSB接続のアダプタ型となっている。
無線LANインタフェースカードはコンピュータなどに無線LAN(Wi-Fi)機能を追加する「無線LANアダプタ」(Wi-Fiアダプタ)のうちカード型の形状のものの総称で、アダプタ製品には他に、USBポートに差し込むタイプのものや、有線LAN(イーサネット:Ethernet)ポートに差し込んで通信を無線化するメディアコンバータ型の製品などもある。
無線LAN(Wi-Fi)には通信方式の違いによりIEEE 802.11a/b/g/n/ac/axなど様々な種類があり、どの方式に対応しているかが製品パッケージなどに記載されている。接続先のアクセスポイントやルータと同じ方式に対応していなければ通信できないため、どの方式の製品か確かめて購入する必要がある。