地上デジタル放送 【digital terrestrial broadcasting】 地デジ

概要

地上デジタル放送(digital terrestrial broadcasting)とは、地上の電波塔などから放送波を送信する地上波テレビ放送をデジタル化したもの。日本では2003年に一部地域で、2006年に全国で導入が開始され、2011年(一部では2012年)に従来のアナログテレビ放送から完全に移行した。愛称は「地デジ」。

従来のアナログ放送では映像や音声をアナログ信号のまま電波で送信していたが、デジタル放送ではこれをデジタルデータで表し、一定のデータ形式で圧縮符号化して送信する。同じ音声・映像品質なら従来より狭い周波数帯域で効率的に伝送でき、受信状況による品質の劣化も起こりにくい。

デジタル伝送では様々な種類の情報を混在させるのが容易なため、映像と音声だけでなく静止画や文字などを組み合わせた関連情報を画面の脇に表示するといったデータ放送やEPG(Electronic Program Guide:電子番組表)の配信が可能となっている。テレビ受像機がインターネットに接続されていれば投票やクイズなどに視聴者が参加できる双方向サービスを利用することもできる。

主な仕様

日本方式のISDB-Tでは、HD画質HDTV/ハイビジョン画質)による放送の場合は1440×1080のインターレース方式(1080i)の画面サイズを採用し、これをMPEG-2圧縮し、MPEG-TS(Transport Stream)形式のデータとして配信する。音声の圧縮符号化にはAACAdvanced Audio Coding)を用いる。

画面サイズは480i(720×480/インターレース)、480p(同プログレッシブ)などのSD画質アナログ放送相当)、720p1280×720/プログレッシブ)のDVD-Video相当のHD画質1080p1920×1080/プログレッシブ)のフルHD画質も選択できる。

セグメント

地上デジタル放送の一つチャンネルの放送波は13のセグメントと呼ばれる独立したデータ伝送路に分かれており、これを組み合わせて複数の異なる放送を同時にうことができる。

このうちの1セグメントは移動体向けの低解像度の放送用に固定的に割り当てられており、これを1セグメント放送、略して「ワンセグ」という。固定機器向けの放送と同じ内容をQVGA320×240ピクセル)サイズに縮小して同時送信しており、車載端末やスマートフォンなどの携帯機器に対応製品がある。

残りの12セグメントは固定設置の受像機向けのフルセグメント放送フルセグ)で、すべてを一つのHD画質放送に用いる場合が多い。放送局や時間帯によってはSD画質(4セグメント)の番組を2つか3つ同時に放送したり、画質を落としたHD画質(8セグメント)とSD画質の組み合わせなどの編成がわれる場合もある。

B-CASカード

固定設置のフルセグ受像機には「B-CASカード」と呼ばれる機器認証用のカードを挿入しなければ、受信した信号から映像・音声データを取り出せないようになっている。

カードはテレビ受像機やデジタルビデオレコーダーなどには同梱されており、専用の挿入口に差し込んで利用する。BS放送やCS放送と共用の赤いカードと地上デジタル放送専用の青いカードがある。

ダビング10

デジタルデータは無劣化で複製できるため、違法な複製データが流通しないよう、地上デジタル放送では機器間や記憶媒体間の複製や移動を一定のルールに基づいて制限するコピー制御信号(CCICopy Control Information)が添付されている。

現在運用されているルールは「ダビング10」と呼ばれるもので、デジタルレコーダーなどにある一次録画からコピー9回とムーブ(別のメディアへの移動)1回が可能となっている。制限回数の上限に達すると、それ以上の複製・移動はできなくなる。

各国の放送方式

1998年にイギリスやアメリカなどで導入が始まり、主要国では概ね2008年頃までの間にデジタル方式による放送が開始されている。いずれも放送開始から数年~十年程度でアナログ放送の終了(停波)を実施してデジタルへ完全移行している。

主な放送方式は3つある。アメリカで開発され北中米などで導入されている「ATSC」(Advanced Television Systems Committee)、ヨーロッパで開発され欧州・アフリカ・アジアなどで導入されている「DVB」(Digital Video Broadcasting)、日本で開発され日本・フィリピン・南米などで導入されている「ISDB」(Integrated Services Digital Broadcasting)である。

単純な導入国・地域数ではDVBが圧倒的に多く、他はそれぞれ10ヶ国程度である。中国・香港・マカオは中国開発の独自方式「DTMB」(Digital Terrestrial Multimedia Broadcast)を導入している。

(2019.2.3更新)

他の辞典による解説 (外部サイト)

この記事を参照している文書など (外部サイト)

  • 同志社大学 知的システムデザイン研究室 第106回月例発表会「地上デジタル放送外部リンク」(PDFファイル)にて引用 (2009年4月)
この記事の著者 : (株)インセプト IT用語辞典 e-Words 編集部
1997年8月より「IT用語辞典 e-Words」を執筆・編集しています。累計公開記事数は1万ページ以上、累計サイト訪問者数は1億人以上です。学術論文や官公庁の資料などへも多数の記事が引用・参照されています。
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