サーマルプリンタ 【thermal printer】
概要
サーマルプリンタ(thermal printer)とは、印字ヘッドから熱を発することで印刷を行うプリンタの総称。熱を加えると発色する特殊な用紙(感熱紙)を用いる「感熱式プリンタ」、インクを塗布したテープを紙に押し当てヘッドから熱を加えてインクを転写する「熱転写プリンタ」などの種類がある。印字ヘッドに並んだ微細なノズルからインクを噴射するインクジェット方式にも、ノズル内でインクを熱して沸騰させ、生じた泡の圧力でインクを噴射する「サーマル方式」があるが、一般にはこれはサーマルプリンタには含めない。
熱転写プリンタ (thermal transfer printer)
サーマルプリンタのうち、インクを塗布したテープに熱した印字ヘッドを押し当て、インクを溶かして紙に転写するものを熱転写プリンタという。
顔料などでできたインクを薄く塗布したロール状のテープ(インクリボン)を用い、これを回転して繰り出しながら紙に密着させ、印刷したい部分だけを印字ヘッドで熱してインクを紙に転写して印刷を行う。熱を加えることで固形のインクを溶融させて紙に付着させる方式のものを「熱溶融型プリンタ」、インクを昇華させる方式のものを「昇華型プリンタ」という。
モノクロ印刷の場合は黒のインクリボンのみを用いるが、カラー印刷の場合は原色(通常は色の三原色+黒)の数だけインクリボンを用意する。各色毎にリボンからの転写を行うため時間がかかり、色ごとに印刷位置がわずかにずれてしまうこともある。
熱溶融型はプリンタ装置のほかにワープロ専用機やファクシミリ(FAX)の印字装置などとしても広く普及したが、近年では多くの用途でインクジェットプリンタに取って代わられつつある。昇華型は細かな濃度調整が可能で耐水性に優れた美しい印刷が可能なため、写真印刷専用の機器で用いられることがある。
昇華型プリンタ (dye-sublimation printer)
熱転写プリンタのうち、固形インクを塗布したリボンに印字ヘッドで熱を加えてインクを昇華(固体から直接気化すること)させ、特殊な材料でコーティングした専用の用紙に付着させるものを昇華型プリンタという。
インクリボンに薄く塗布された固体状のインクは熱によって直に気体となり、専用紙の表面に塗布されたコート材を着色する。加える熱を制御することで印字濃度を連続的に細かく変化させることができ、他の方式では難しい銀塩写真のような美しい階調表現が可能という特徴がある。色の三原色に対応する3つのリボンを組み合わせてカラー印刷できるようになっているものが一般的。
構造上、リボンに塗布されたインクの一部しか利用しないため不経済で高コストな点や、専用紙にしか印刷できない点、色の数(通常は黒と3原色の4色)だけ印刷動作を繰り返すため印刷速度が遅い点などの問題があり、汎用の普及機種で利用されることはあまりなかったが、高い表現能力を活かして写真印刷やデザイン業界向けなど特定の用途・対象に特化した機種で採用例がある。
感熱式プリンタ (thermal paper printer)
サーマルプリンタのうち、熱を加えると変色する特殊な用紙(感熱紙)に熱した印字ヘッドを押し当てて印刷するものを感熱式プリンタという。
熱すると黒く変色する特殊な紙を用い、印字ヘッドで印刷したい部分を熱することにより印刷を行う。ロール状に丸めた感熱紙を繰り出しながら印刷する機器が多い。専用の用紙が必要で普通紙など他の素材には印刷できず、また、黒一色しか印刷できない。印刷から時間が経つと色あせたり消えたりする場合もあり、長期的に保管する用途には向かない。
一方、他の方式に比べ動作音が小さく、機構が簡素で装置を小型化しやすく、また、専用紙さえあればインクなど他の消耗品を必要としない。限られた用途であれば低コストで導入・運用できるため、店舗のレジ(キャッシュレジスター)や自動券売機、伝票発行機などの印字装置として用いられることが多い。
TA方式 (サーモオートクローム方式)
感熱式プリンタのうち、TA用紙と呼ばれる特殊な専用紙を用いてカラー印刷ができるものをTA方式(Thermo-Autochrome:サーモオートクローム)という。
TA用紙は3層の熱発色層を重ねた用紙で、加熱することによりそれぞれシアン、マゼンタ、イエローの三原色に発色する。各層に含まれる発色素材の発色階調濃度を調節することで、一つの画素(ドット/ピクセル)中で原色の重ね合わせを表現できる。
フィルムから現像した銀塩写真や昇華型プリンタと同レベルのきめの細かいフルカラー画像を印刷することができる。デジタルカメラの画像を印刷するための小型のデジタルフォトプリンタなどに採用されており、家庭で画像データを印画紙に「現像」することができる。