HSPA 【High Speed Packet Access】
概要
HSPA(High Speed Packet Access)とは、第3世代(3G)携帯電話のW-CDMA方式の拡張仕様で、データ通信を高速化した規格。下り(基地局→端末)方向を高速化する「HSDPA」と、上り(端末→基地局)方向を高速化する「HSUPA」の総称。第4世代(4G)との中間という意味で俗に「3.5G」と呼ばれることもあった。HSDPA (High Speed Downlink Packet Access)
第3世代(3G)携帯電話の「W-CDMA」方式のデータ通信を高速化する仕様の一つで、下り(基地局→端末)方向の通信速度を向上させるもの。パケットの伝送を従来の5倍以上に高速化できる。
2002年3月に3G方式の標準化団体3GPPの発行した「Release 5」規格で標準化されたもので、従来は下り384kbps(キロビット毎秒)~2Mbps(メガビット毎秒)程度だったパケット通信速度を仕様上は最高で14.4Mbpsに高速化できる。日本ではNTTドコモが2006年8月に「FOMAハイスピード」の名称で、ソフトバンクモバイルが2006年10月に「3Gハイスピード」の名称で、それぞれ導入している。
高速化は電波の状態に応じてより高密度な変調方式や符号化方式を自動的に選択することにより行われる。具体的には、電波の状態の悪いときには、安定性は高いが低速な「QPSK」(Quadrature Phase Shift Keying)による変調と誤り訂正能力の大きい符号化方式(オーバーヘッドが大きいため低速になる)を用いる。
電波状態が良好なときは、より高速な「16QAM」(16 Quadrature Amplitude Modulation)による変調と誤り訂正能力の小さい符号化方式に自動的に切り替わる。また、再送制御方式に「ハイブリッドARQ」方式を採用し、エラー検出時の再送回数を抑えている。
DC-HSDPA (Dual Channel HSDPA)
W-CDMAのデータ通信を高速化するHSDPA仕様をさらに拡張し、2つの周波数帯域を同時に使用して並列にパケットを伝送することでHSDPAの2倍の伝送速度を実現する方式。
2008年12月に3GPPの発行した「Release 8」規格で標準化された。日本ではイー・モバイル(当時)の「EMOBILE G4」、ソフトバンクモバイル(当時)の「ULTRA SPEED」などで提供された。
電波状況が良好かつ基地局が混雑していない場合に使用可能な方式で、隣り合った2つの周波数帯を占有して2回線分の帯域を束ねて通信することにより従来の2倍の速度で通信する。HSPA+の下り21Mbpsを2本束ねれば最高42Mbpsでの通信が可能となる。隣り合った周波数帯を確保できないときには通常のHSDPAとして機能する。
HSUPA (High Speed Uplink Packet Access)
第3世代(3G)携帯電話のW-CDMA方式のデータ通信を高速化する仕様の一つで、上り(端末→基地局)方向の通信速度を向上させるもの。パケットの伝送を従来の5倍以上に高速化できる。規格上の正式名は「EUL」(Enhanced Uplink)。
2002年3月に3G方式の標準化団体3GPPの発行した「Release 5」規格で標準化されたもので、従来は下り384kbps程度だったパケット通信速度を仕様上は最高で5.76Mbpsに高速化できる。日本では2008年に当時のイー・モバイルが採用し、その後NTTドコモのFOMAでも用いられた。
HSPA+ (HSPA Evolution/Evolved HSPA)
第3世代(3G)携帯電話のW-CDMA方式のデータ通信を高速化するHSPAを高度化した規格。下り21.6Mbps、上り11.52MbpsとHSPA(HSDPA/HSUPA)の1.5~2倍に高速化する。
2007年12月に3G方式の標準化団体3GPPの発行した「Release 7」規格で標準化されたもので、基本的な通信方式はHSPAを踏襲し、MIMOや64QAMなどの採用により通信効率を高めている。日本では2009年に当時のイー・モバイルが採用し、その後ソフトバンクモバイル(当時)でも導入された。