ISO 9660 【High Sierra】
概要
ISO 9660(High Sierra)とは、CD-ROMにファイルやディレクトリを記録するファイルシステムの標準規格の一つ。1988年にISO(国際標準化機構)が策定したもので、同様のものがECMA-119、JIS X 0606など他団体でも標準化されている。CDにコンピュータのデータを記録する方式の標準として広く普及しており、ISO 9660で記録されたファイルは機種やオペレーティングシステム(OS)を問わず同じように読み出すことができる。企業などが独自に拡張した派生規格もいくつかある。
初期の仕様では、ファイル名・ディレクトリ名として使用できる文字は数字(10種)と英大文字(26種)、「_」(アンダースコア)の37種で、長さは31文字以内となっている。「.」で前半部と後半部に分けることができ、後半部に拡張子などを記述する。
また、末尾に「;」(セミコロン)に続けてバージョン番号(1から32767までの整数)を追加することができ、同じファイルの複数バージョンを記録して区別することができるが、実用上はほとんど使われていない。階層型ディレクトリを使用でき、8段階まで入れ子状にすることができる。
2013年の改訂によって、名前の長さは207文字まで、「.」による前後の区分やバージョン番号は無くてもよい、ディレクトリ階層は8段階を超えて無制限に作成可能、といった変更が行われた。
レベルによる仕様の制約
OSによって扱えるファイルシステムの仕様に違いがあるため、「Level 1」から「Level 3」まで3段階の制約が定められている。Level 3は制約なくすべての仕様が利用でき、一つのファイルの実体を複数の異なる位置の領域にまたがって記録する「マルチエクステント」を利用できる。
Level 2ではファイル名などの仕様に制約はないが、一つのファイルは連続した領域に記録しなければならない(シングルエクステント)。Level 1は最も厳しい制約で、Level 2の制約に加え、前半部8文字以下、後半部3文字以下(8.3形式)、ディレクトリ名8文字以下に制約される。
派生規格
いくつかの企業や標準化団体によってISO 9660の上位互換となる拡張規格が提唱された。「Joliet」は米マイクロソフト(Microsoft)社が提唱した拡張で、日本語などのUnicode文字(USC-2)を含む名前、64文字までの長い名前、8段階を超えるディレクトリ階層などに対応する。Windowsが標準で対応している。
「Rock Ridge」は標準化団体のIEEEが「IEEE P1282」として標準化した規格で、主にUNIX系OSで用いられる。UNIXの他のファイルシステムと適合するよう、シンボリックリンクやアクセス権(パーミッション)の設定、大文字・小文字の区別、255文字までの名前、8段階以上のディレクトリ階層などに対応している。
他にも、128文字までの名前に対応する米アダプテック(Adaptec)社の「Romeo」や、旧Mac OSの「HFS」ファイルシステムに適合する米アップル(Apple)社の「Apple ISO9660 Extenstions」などがある。
ISO 9660 | CD-ROMのファイルシステムの国際標準。ほとんどのOSが対応している。フォルダやファイルの名前には制限がある。OS独自の情報は記録できない。 |
---|---|
Joliet | ISO 9660をWindows向けに拡張。ファイル名が64文字(Unicode)まで使え、大文字と小文字の区別も可能。 |
Romeo | Windows専用形式。128バイトまでのファイル名をつけられるが、8.3形式のファイル名は記録せず、Unicodeにも対応していない。 |
Apple ISO | ISO 9660をMac OS向けに拡張。Mac特有の情報も書き込める。Windowsとデータを共有することができる。 |
HFS | Mac OS専用形式。Mac特有の情報が扱えるようになっている反面、他OSとの互換性はない。 |
RockRidge | ISO 9660をUNIX向けに拡張。ファイル名やディレクトリ数の制限が大幅に緩和されている。パーミッション情報なども記録可能。 |
UDF | パケットライト方式で使われるファイルシステム。互換性も高く、DVDにも採用されている。 |
Hybrid CD ハイブリッドCD |
ISO 9660とHFSを一枚のCDに共存させたもの。WindowsでもMacでもデータが読み出せる。 |
歴史
CD-ROMに標準のファイルシステムを策定する動きはコンピュータ業界の大手企業のグループを中心に進み、1986年に業界標準の「High Sierra」(ハイシエラ)フォーマットが考案された。同年、標準化団体のECMA(現Ecma International)によって「ECMA-119」として標準化され、わずかな調整を経て、ほぼ同様のものがISO 9660として1988年に発行された。厳密に言えば当初のHigh SierraとISO 9660には差異があるが、慣用的に双方を同じものとして扱うことが多い。