読み方 : コンティンジェンシーりろん

コンティンジェンシー理論【contingency theory】

概要

コンティンジェンシー理論とは、組織の効果的なマネジメントやリーダーシップの形は状況によって異なり、単一の最適解は存在しないとする考え方。環境、技術、規模などの要因に合わせて柔軟に対応することが必要であるとする。
コンティンジェンシー理論のイメージ画像

1960年代にオーストリアの心理学者、フレッド・フィードラー(Fred E. Fiedler)によって提唱された。当時の経営学では、特定の原則に従って組織を設計すれば、どのような状況でも最大の効率が得られると考えられていたが、現実の複雑な組織活動はそのような単純なモデルでは説明しきれなかった。この理論が提示するのは、組織の内部構造やプロセスと、その外部・内部の状況要因が適合(フィット)しているかどうかこそが重要だという視点である。

この理論における「コンティンジェンシー要因」とは、組織の外部環境の不確実性、使用する技術の種類、組織の規模、そして戦略など多岐にわたる。たとえば、市場の変化が激しく不確実性が高い環境にいる組織は、柔軟で分権的な有機的組織が適している一方、市場が安定している組織には、明確な階層とルールを持つ機械的組織がより効果的であるとされる。また、製造業とサービス業では最適な組織構造やリーダーシップのあり方が異なるといった研究も、この理論の代表的な成果である。

コンティンジェンシー理論は、組織が直面する固有の課題に応じて、最適な戦略、構造、リーダーシップ、および管理システムを選択する必要性を強調する。これによって、組織は単なる理想論ではなく、現実の状況に即した実践的な意思決定を行うための枠組みを得ることになる。これは、組織論や経営戦略論における最も影響力のある考え方の一つであり、現代の組織設計や人事管理にも深く根付いている知見である。

(2025.11.23更新)