シェアードリーダーシップ【shared leadership】

概要

シェアードリーダーシップとは、特定の役職者だけでなく、チームのメンバー全員が、状況や必要性に応じて自発的にリーダーの役割を担い、それを共有する概念である。複雑な課題や急速な環境変化に対応するため、メンバーの多様な能力や知見を最大限に活用し、組織全体の意思決定と問題解決能力を高めることを目的とする。

従来のリーダーシップとの違い

従来のリーダーシップは、権限を持つ一人の人間が組織の方向性を決定し、メンバーがそれに従うトップダウンの構造であった。これに対し、シェアードリーダーシップは、権限を意図的に分散させ、チーム内の相互作用を通じてリーダーシップを発揮する。すなわち、特定の業務やプロジェクトにおいて最も専門性の高いメンバーが一時的にリーダーシップを発揮し、その役割を必要に応じて他のメンバーに引き継いでいく流動性が大きな特徴である。

知識が高度に専門化し、複数の部署や外部パートナーとの連携が不可欠な現代のビジネス環境において、一人のリーダーの知見だけで対応することは困難である。そのため、多様な視点と専門性を持つチーム全体が知恵を出し合い、共同責任を持って目標達成を目指すシェアードリーダーシップが有効な手段として注目されている。

導入のメリットとプロセス

シェアードリーダーシップを組織に導入することによる最大のメリットは、意思決定の質とスピードの向上である。現場に近いメンバーがリーダーシップを発揮することで、より実態に即した迅速な判断が可能になることが期待される。

また、メンバー一人ひとりが当事者意識を持つため、モチベーションやエンゲージメント(組織への愛着や貢献意欲)が高まり、組織全体のパフォーマンス向上やイノベーション促進なども期待できる。特に、高度な専門職が集まる研究開発チームや、迅速な対応が求められるプロジェクトベースの組織などで効果を発揮するとされている。

このリーダーシップを機能させるためには、組織内にいくつかの前提条件が必要とされる。まず、メンバー間の相互信頼と、オープンな議論を可能にする心理的安全性が不可欠である。さらに、組織は、メンバーの自律的な行動を促進するために、権限委譲を行い、失敗を恐れずに挑戦できる文化を醸成する必要がある。リーダーの役割は、自ら意思決定をするのではなく、チームがリーダーシップを共有できる場を設計し、調整することへと変化する。

(2025.11.23更新)